ドラマ『ロキ』第2話配信開始
MCU最新作『ロキ』は、『マイティ・ソー』(2011) から登場しているヴィランのロキを主人公に据えたドラマシリーズ。主演のトム・ヒドルストンは10年間ロキを演じており、『ロキ』がMCU7作品目となる。ロキにたっぷり焦点が当てられた本作は、ドラマならではの充実度でロキ自身の生き方とMCU世界をめぐる物語が展開される。
『ロキ』は2021年6月9日(水)に第1話の配信を開始すると、ラストにはやはり衝撃の展開が待ち受けていた。今回は物語が大きく動き出す第2話のあらすじと解説を、ネタバレありでお送りしよう。
以下の内容は、ドラマ『ロキ』第2話の内容に関するネタバレを含みます。
ドラマ『ロキ』第2話のあらすじ&ネタバレ解説
#マーベルスタジオ 最新作
『#ロキ』第2話配信スタート‼️アベンジャーズから逃げ出して、時間の流れを守る組織TVAに囚われた #ロキ💥
そこで、衝撃の事実を知らされた彼が次に取る行動とは❓
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— ディズニープラス公式 (@DisneyPlusJP) June 16, 2021
止まらない変異体
ドラマ『ロキ』第2話「変異体」は前回の振り返りからスタート。TVAの歴史や“神”であるロキを上回る力が存在していること、そしてロキが自身の哀しき未来を知り、TVAが追う変異体がもう一人のロキであることを告げられる様子が回想された。この各話の回想は意外と重要で、毎度そのエピソードで扱われるポイントがまとめられている。
第2話の幕開けは1985年のウィスコンシン州オシュコシュから始まる。この時流れている曲はジョン・デブニーの「The Build Master’s Gigue」(2011)。ジョン・デブニーは『アイアンマン2』(2010) の音楽を手掛けた作曲家で、『スパイダーマン2』(2004) や『スパイダーマン3』(2007) の音楽にも携わっている。MCUでハッピー・ホーガン役を演じ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で製作総指揮を務めたジョン・ファヴローが監督した作品では、『ジャングル・ブック』(2016) を含めて4度音楽を担当している。
16世紀のルネサンスを再現するルネサンス祭が行われているウィスコンシンの町に現れたのは、TVAの部隊。テントで流れ出したアナウンスは“賞品”に“姫”を挙げており、女性をもの扱いする古き悪しき時代を反映している。そして「ヒーローが現れるか」という台詞と共にボニー・タイラーの「ヒーロー (HOLDING OUT FOR A HERO)」(1984) が流れ出す。この曲は1984年にヒットした映画『フットルース』からのシングルカット曲であり、今回の舞台である1985年という時代設定に合致した選曲となっている。
すると次の瞬間、TVAの司令官は仲間を襲い始める。TVAが追う変異体は敵を操る力を持っているようだ。部隊を殲滅し謎の変異体は隊員から道具を奪って“タイムドア”を起動する。タイムスリップするあの四角い枠は“タイムドア”という名前だったのだ。“どこでもドア”と“タイムマシン”の合わせ技である。そしてこの変異体は司令官の体を引きずってタイムドアの向こうへ消えていくのだった。
新入社員ロキ
『ロキ』のタイトルロゴの後、ロキがホログラムのミス・ミニッツから研修を受けている様子が映し出される。ミス・ミニッツ、3D化できるのか……。
なんだか重要なキャラクターになりそうなミス・ミニッツについては、こちらの記事で解説及び考察している。
曰く、分岐イベント(Nexus Event)の枝がレッドゾーンを超えると、分岐イベントをリセットできなくなり、その影響によって「私たちの現実」が崩壊するのだという。
なお、この時ロキの前に置かれたPCモニターにはサノスを例にあげたクイズが表示されている。クイズの内容と答えはこちらの記事で確認していただきたい。
そこに現れたメビウスはロキに襲撃があったことを知らせ、すぐに出動させる。TVAのジャケットをもらったロキはなんだか嬉しそう。新入社員ロキの初めてのお仕事だ。だが、直後にこのジャケットは背中に「変異体」という文字が入っていることが明かされ、ロキのご機嫌は斜めになる。
ハンターB15は、この部隊を襲撃した変異体が「どのロキかは不明」と話す。変異体のロキが複数いるという口ぶりだ。そして、メビウスはTVAが追っているのは「ロキの変異種」だと紹介。TVAはこれまでに数多くのロキの変異体を“剪定”してきたという。剪定とは盆栽などで使われる言葉で、枝を切ることを指すが、分岐イベントの枝を切るという意味で使っているのだろう。
ホログラムには青い肌のロキやスポーツウェアを着てトロフィーを抱えるロキ、ツノの生えた悪魔のような姿のロキが次々と映し出される。TVAはこれをロキによる幻覚の術だと思い込んでいたが、ロキはこれを増殖の術であると解説。ロキを演じらトム・ヒドルストンは『ロキ』の製作にあたって関係者らにロキ講座を実施したと言われているが、作中でも見事な“自己分析”を披露している。
メビウスは“専門家”であるロキと共に行動することを宣言し、ロキには協力すればタイムキーパーと会える可能性を匂わす。タイムドアで飛んだウィスコンシンで、メビウスはロキに分岐イベントは時を不安定にするため分岐イベントの直前には戻れず、実時間(リアルタイム)を追わなければならないのだと説明。やはりタイムトラベルには様々なルールがあるようだ。
ロキの策略
ここでロキはTVAの思想宣伝(プロパガンダ)に嫌気が差して訓練ビデオをしっかり見ていないと漏らす。TVAの施設がSF映画に登場する独裁国家のようなデザインになっていることは明らかだが、ここで初めてTVAが自分たちの歴史と思想を正しいものだと信じ込ませようとするプロパガンダを行っているということが指摘された。
また、TVAの部隊が使っている道具は“リセットチャージ”といい、周囲を破壊しつつ汚染範囲を剪定して自然治癒させることも紹介される。研修を受けたロキの知識を試す形で、世界設定やガジェットの機能が明らかになっていく。なかなか巧みな展開だ。
テントに入る一同。変異体に連れて行かれたTVAの司令官は人質となっているようだ。ロキは「狼の耳あるところ、狼の牙近し」というアスガルドの諺を引用して“自分”が何をしようとしているかを推測する……と見せかけて、これはすぐにタイムキーパーに会おうとするうためのハッタリ。あっさりメビウスに見破られ、TVAはリセットチャージを使用して痕跡と枝を消してしまうのだった。
メビウスは第1話で裁判官を務めていたラヴォナ・レクサス・レンスレイヤーのオフィスへ。ここで流れている音楽はテルミン奏者のクララ・ロックモアの「Morceaux (18) for piano, Op. 72: Berceuse」(1987)。ラヴォナはメビウスが「壊れたものに弱い」と指摘。一方で、「悪の根源」という神聖時間軸でのロキの役割も、「タイムキーパーが認めれば変われる」という何でもありの謎ルールがあることが明らかに。メビウスもタイムキーパーには会ったことがないというが、ラヴォナはタイムキーパーが今回の一件を注視していることを明かす。この時メビウスが署名に使っているペンには「FDルーズベルト高校」と書かれているが、これは実在するニューヨークの高校の名前だ。
ロキは部屋から出てきたメビウスに一生懸命言い訳をするが、メビウスは聞く耳を持たない。ロキの承認欲求を利用しようとしたが、他者を出し抜こうとするばかりだと指摘。また、メビウスがロキにチャンスを与えるという危険を冒した理由は、同情と任務遂行のためだと伝えるのだった。ここでのロキとメビウスのやり取りは、まるでベテラン刑事と新米刑事のようである。
一生懸命なロキ
ロキは「最後のチャンス」として書類読みを通した調査を指示される。現場は失格ということだ。ロキはTVA創設や時の始まりについての資料を読もうとするが、どれも極秘扱い。やはり何かが隠されているらしい。ロキは資料の中に、アスガルドの滅亡に関する情報を見つける。「変異エネルギーは非検出」とある通り、これは映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) で起きた歴史で、分岐イベントは関わっていなかった。ロキは“故郷”の消滅を知り、目に涙を浮かべるのだった。
だが、ロキはここであることに気がつきメビウスに報告する。この時、自分の仮説を解説するロキの姿は見たこともないくらい一生懸命だ。曰く、アスガルドの滅亡(ラグナロク)のような大災害の前では何をしても後の時間軸に影響を与えられない(分岐する前に破壊される)ため、変異体のロキが身を隠すなら大災害の前だというのだ。
またロキが裏切ろうとしていると疑い、「これまでに文字通り人を後ろから50回刺している」と指摘するメビウスに、ロキが「もうしない!」と答えると、メビウスも思わず笑ってしまう。これがロキの人懐こさであり、憎めないところだ。
メビウスとロキは西暦79年のイタリアはポンペイへ。ブリューロフの絵画「ポンペイ最後の日」(1833) で知られるヴェスヴィオ噴火が起きた日時へ飛んだようだ。大災害を前に興奮するロキをメビウスは不謹慎だと注意するが、「でもどうせ皆死ぬし!」と聞く耳を持たない。なんだか親子のように見えてきた。二人は、大災害前のポンペイで本来の歴史にない行動を起こすことで、ロキの仮説を実証しようとしているのだった。
ロキはラテン語でこれから起きることを人々に告げるが、分岐イベントは発生しない。ロキの仮説は正しかったのだ。なお、ロキを演じるトム・ヒドルストンは、語学が堪能で、フランス語やスペイン語、古代ギリシャ語など、複数の言語を操ることができる。
ロキとメビウスのバディ
現場で仮説が実証できた二人。だが、次に待っているのは変異体ロキが隠れる可能性がある突発的な自然災害を当たっていく作業。ペーパーワークに疲れ切った二人の姿はやっぱりバディもの刑事ドラマを想起させる。休憩中にメビウスのジェットスキーに乗りたいという夢を聞いたロキは、改めてTVAの全てを信じているのかと問いかける。だが、メビウスから帰ってきた言葉は「信じるとかじゃなく目の前のことを受け入れるだけ」と官僚的な回答が帰ってくる。曰く、メビウスを含むTVA職員もタイムキーパーが創り出したのだという。
これを疑うロキに対し、メビウスはロキ自身もその「氷の巨人」や「神々を司る神オーディン」といった出生を疑っていないと指摘する。「存在とは混沌」「自分が信じる限り真実だ」という名言が飛び出し、メビウスが一枚上手であることが証明される。
それでも、ロキにとっては「自由意志」が譲れないものであることや、タイムキーパーが創り出そうとしている「たった一つのエピローグ」(混沌のない秩序だけが残る“時の終わり”)をつまらないものと感じること、など、そして、本当の悪人も本当の善人もいないという信念など、重要なロキの思考の側面が語られる。
この対話の中で、第1話の1549年のフランスでメビウスが出会った子どもが持っていた「Kablooie」という名のチューイングガムに答えがあるということに思い至る。このチューイングガムが製造されていた2047年から2051年の災害を二人で調べ上げ、ロキは変異体ロキが隠れている地点を2050年のアラバマであると特定する。メビウスに褒められたロキは嬉しそうだ。
最後の人物の正体は…
メビウスは上司のラヴォナ・レクサス・レンスレイヤーに反対されながらも、承認を勝ち取る。ガッツポを見せるロキ。ドラマ『ロキ』で初めて未来へ。舞台となるのはアラバマ州の大型スーパー・ロックスカート。ロキはメビウスではなくハンターB15と組むよう指示を受けるが、その様子を監視カメラの向こうから見守る影があった。その人物がセットしたリセットチャージは20分後に設定されていた。
二人きりになったB15とロキだったが、変異体はB15の身体乗っ取ってロキに語りかける。メビウス組はさらわれたTVAの司令官を発見するが、怯えきった様子を見せている。ロキの方は変異体とマウントの取り合いを繰り広げていたが、変異体はB15から別の人物に乗り移る。人の身体を乗り換えられるとは、相当な能力の持ち主だ。
それでも、ロキは変異体にタイムキーパーを一緒に排除することを提案し、右腕(lieutenant=佐官)にならないかと持ちかける。変異体は、自分を「ロキ」と呼ぶロキに「こう呼んで……」と返し、遂にヴィランの正体が明らかになる……かと思いきや、乗っ取った人物の胸についていたネームプレートを見て「ランディと」と答えるねちっこいジョークを飛ばす。「兄上の気持ちが分かった」と言うロキは、英語でボソッと「This is annoying…(むかつく)」とこぼしている。
だが、変異体ロキはTVAの乗っ取りには興味がないと答え、襲撃するたびに奪っていたリセットチャージを利用した装置を起動させる。一方の怯えた司令官は、タイムキーパーの居場所を変異体に伝えてしまったことをメビウスらに伝える。
変異体は急により大柄な人物に乗り換え、力づくでロキを追い込む。ロキが応戦している間に変異体の本体は装置のセットを完了し、ついに姿を現す。フードを取った変異体の正体は、ソフィア・ディ・マルティーノ演じる……レディ・ロキ……? 結局第2話ではこの人物は名を名乗ることはなく、エンドクレジットでも役名は「変異体」となったままで、その名が明らかになることはなかった。
レディ・ロキは、原作コミックでロキの魂が女性の身体に入ったのキャラクターだ。レディ・ロキについてはこちらの記事に詳しい。
一方で、この人物はエンチャントレスである可能性も残されている。エンチャントレスは、原作コミックでロキの魔術によって力を与えられた魔女。ロキの副官を務めていた。頭の角から考えるとレディ・ロキの方がフォームは近いが、髪がレディ・ロキの特徴である黒髪ではなく、エンチャントレスの特徴であるブロンドヘアになっていることが引っかかる。それに、レディ・ロキであれば登場してもなおエンドクレジットに「変異体」と表記する必要性が感じられないのだ。
しかしこんなところまで視聴者に疑わせてくるなんて、流石は『ロキ』のドラマである……。
変異体の目的は?
姿を現した変異体は「あなたは眼中にない」とロキに告げると、セットしていた装置が起動し、「初期化」という文字を映し出す。小さなタイムドアが次々と開き、エネルギー体がどこかへ送られていく。TVAでは、時間軸の分岐が急速に増えていく様子が捉えられ、分析官は「神聖時間軸が爆破された」と報告する。音楽や演出からしても、とんでもないことが起こっているのだろう。
それを尻目に変異体はタイムドアで何処かへ立ち去る。ようやくロキに追いついたメビウスはロキを引き止めようとするが、ロキは変異体に誘われるようにして開かれたままのタイムドアへ足を踏み入れるのだった。
タイムドアが開きっぱなしだったことから、変異体はまだロキに関心を持っていることがうかがえる。変異体の狙いは何なのだろうか。変異体が仕掛けた装置は物理的なダメージを負わせる類のものではないように見えたが、TVAの分析官は「神聖時間軸が爆破された」と話していた。つまり、タイムキーパーの力で守られていた神聖時間軸のバリアのようなものが破れ、時間軸が自然と分岐し始めたのかもしれない。そして、変異体はどこへ消えたのか、その先でロキに何を見せるつもりなのだろうか。
変異体の目的、その正体と第2話ラストの描写については、こちらの記事で詳しく解説&考察しているので、ぜひチェックしていただきたい。
その答えは第3話へ。それにしても、メビウスとロキはまた仲睦まじく一緒に働けるのだろうか……。
脚本家のマイケル・ウォルドロンが語った第3話のヒントはこちらから。
トム・ヒドルストンが語った第2話ラストシーンのロキの心情とメビウスの存在感については、こちらの記事で。
ドラマ『ロキ』は2021年6月9日(水)より、全6話が毎週水曜日に配信される。
ドラマ『ロキ』第3話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。
第1話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。
『ロキ』の出演キャストと吹き替え声優の情報はこちらの記事で。
ドラマ『ロキ』にレディ・ロキが登場する可能性については、こちらの記事で。
『ロキ』のエンディングテーマ曲「TVA」は配信を開始している。
2021年7月8日(木)の劇場公開、7月9日(金)からのDisney+ プレミア アクセスでの配信開始を予定している映画『ブラック・ウィドウ』のあらすじと考察はこちらの記事で。
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