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ドラマ『ロキ』第3話配信開始
MCUドラマ『ロキ』は2021年6月9日(水)より配信を開始。2021年に配信を開始した『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に続き、『ロキ』もまたMCU本編に大きな影響を与える作品だ。
6月23日(水)には、全6話の内の折り返し地点にあたる第3話の配信を開始。ここまで毎話で驚きの展開を見せているが、前半戦のクライマックスにあたる第3話ではどのような展開が待っていたのだろうか。今回は『ロキ』第3話をネタバレありで解説していく。
ドラマ『ロキ』第3話のあらすじ&ネタバレ解説
ラメンティスへ
ドラマ『ロキ』第2話のラストでは、TVAの部隊を殺してきた変異体の姿が明らかになったが、その名は明かされないままだった。ロキはこの変異体を追ってタイムドアの向こうへ。「ラメンティス」と題された第3話ではどんな展開が待っているのだろうか。
今回は、いつものマーベルのタイトルロゴの音楽が違っている。ヘイリー・キヨコの「Demons」(2019) が流れているのだ。ヘイリー・キヨコはレズビアンのロマンスを描く楽曲で知られており、この曲では「私の中には悪魔がいる」「何かが私から全てを奪っていく」と歌っている。
そして映し出されたのは普段着の変異体と仲睦まじくレストランで時間を過ごすC20。変異体に精神を乗っ取られているようだ。そしてC20は、タイムキーパーへと繋がるエレベーターが金色であることを変異体に教えてしまうのだった。
ロックスカートからタイムドアを通った変異体が向かった先は、なんとTVAだった。神聖時間軸が大量に分岐を始めたことでTVAの部隊であるミニットメンが出払っており、護衛はガラ空き。なんとも手際の良い犯行である。TVAの域内に入ったことでその魔力が封じられてしまった変異体だが、容赦無く武力でミニットメンを排除していく。
ロキは前話で没収されていたダガーナイフをロッカーから取り出して変異体に追いつく。ロキもやはり「本当にロキか?」と、変異体の正体を勘繰っているようだ。揉み合いになる二人にレンスレイヤーが追いつくが、ロキが咄嗟の判断でタイムドアを開いて二人は逃げ延びる。だが、このワープを最後にタイムパッドはバッテリー切れを起こしてしまう。
変異体はワープした先でも「ロキ」と呼ばれることを嫌がっている。と、ここで二人がワープした先がラメンティス1号星だということがわかる。ラメンティスは原作コミックに登場する星の名前で、ピーター・クィルらを中心に据えた「Annihilation: Conquest」というコミックシリーズに登場する。時は2077年、惑星の衝突によって滅ぶ直前のラメンティスにロキたちは降り立ってしまっていたのだ。
その名はシルヴィ
変異体はその力でロキを操ろうとするが、ロキにはこれが効かず、ロキは「私の心が強いから」と説明する。変異体は異様にロキへ噛みついているが、長年の計画を邪魔されたことに腹を立てているらしい。そして、この変異体は遂にその名前を明らかにする。その名はシルヴィ。「もうロキじゃない、今はシルヴィ」と話す通り、元はロキだったということになっている。
しかし、このシルヴィという名前は、原作コミックに登場するエンチャントレスというキャラクターの本名と一致する。これまで、変異体がレディロキではなくエンチャントレスである可能性に言及してきたが、製作側もこの人物がレディロキなのかエンチャントレスなのか、両方の可能性を示したまま物語を進めるつもりらしい。
シルヴィに対して「ロキらしくない」と話すロキに「ロキらしさってなに」と問いかけるシルヴィ。脚本家のマイケル・ウォルドロンが話していた通り、「ロキとは何か」を問う展開になりつつある。これに対し、ロキが出した答えは「独立心や権威、そしてスタイル」。TVAを転覆させる“革命”を目論むシルヴィに対して、ロキは「私ならやらない」ときっぱり否定する。やはりシルヴィとロキには全く違う個性がある。
二人は騙し合い、マウントを取り合いつつ、ようやく人を見つける。世界の終わりにあっても逃げようとしない女性がロキとシルヴィを「悪魔たち」と呼び、第3話冒頭で流れた曲「Demons」に結びつく。今回の第3話は二人の悪魔の旅路なのだ。
過去のMCUの記憶を辿る
幻覚の術と催眠術を組み合わせて、ラメンティスを逃げ出すための箱舟(アーク)と呼ばれる船に乗り込んだ二人は、ロキの身の上話を始める。自分が養子だという事実を知っていたと嘯くシルヴィだが、ロキが自分が養子だということを知ったのは映画『マイティ・ソー』内であり、それは2011年の出来事だ。ドラマ『ロキ』ロキは2012年のロキだから、自分が養子だと知ったのは1年前。長年計画に取り組んできたというシルヴヴィは、『マイティ・ソー』の出来事を経験しておらず、養子の事実は知らないはずだ。
それにシルヴィは自分の母親のことをよく知らないという。ますますロキであるかが怪しくなってくる。
ロキは、自分の魔法は母親譲りのものだったと話す。ロキだって、手の中で花火を起こす素敵な魔法を使える。次にロキはシルヴィの洗脳の術をどうやって身につけたのか聞くが、シルヴィは独学で身につけたという。シルヴィの素性は謎に包まれたままだ。
そしてロキはラメンティスで先ほど出会った女性を「死を選んだ女」と呼び蔑む。ロキは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) の出来事を知らないが、「死を選んだ女」と聞いてMCUファンが思いつくのはブラックウィドウことナターシャ・ロマノフだろう。
シルヴィが彼女の選択を「愛」と呼んだことから、話題はシルヴィの恋人に。郵便配達員と恋仲にあったと話すが、『ワンダヴィジョン』(2021) で何かありげで何もなかった郵便配達員のデニスを思い出さないだろうか。そんなやり取りを経て、ここで重要な会話が登場する。
ロキのジェンダーが明らかに
「プリンセス候補、もしくはプリンス候補」を聞いたシルヴィに対し、ロキは「その両方だ。お前もだろ?」と問い返す。確かに第1話で登場していたTVAのプロファイルには、ロキの性別は「フルイド(流動的)」と記されていた。これはTVAの記録であるため、ロキが流動的な性自認を持つジェンダーフルイドなのか、それとも異性版のロキの存在を示しているのか、判断が別れるところではあった。
しかし、第3話のこの会話により、ロキはMCU初のバイセクシャルまたはジェンダーフルイドの主人公ということが確定した。『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) から登場しているヴァルキリーはバイセクシャルという設定があるが、はっきり描かれている限りではヘテロセクシャル(異性愛者)だけを主役に据えてきたMCUにとって、大きな変化である。
『ロキ』の監督を務めるケイト・ヘロンは、ロキがバイセクシャルであるということを明かしたこの展開について、その思いを語っている。詳細はこちらの記事で。
性の対象が広くても、誰も本物だと感じないと話すロキとシルヴィ。ロキは「愛とは……」に答えを導きだろうとするが、うまくいかない。ロキは愛を知らないのかもしれない。
ロキが信頼する相手
ロキとシルヴィはこの星の人々の最後の希望である箱舟の動力を奪う作戦に備え、一時の休憩を取ることに。シルヴィが目を覚ましたときには、酔ったロキは歌と踊りを披露している。意外とパリピなのだ。このシーンで、ロキは「もう一杯!」と言いながらワイングラスを叩きつけて割っているが、これは『マイティ・ソー』でソーが見せたアスガルドにおける「おかわり」の意思表明だ。アスガルド以外では伝わらないが、大丈夫、お兄さんのソーも一年前に学んだばかりのことだ。
そしてロキは「愛とは短剣」「遠くからでも近くでも力を発揮する武器であり、自分の姿を映す美しいもの、傷つけるまでは。掴もうとすると(消える)」と語り出す。
このシーンについて、トム・ヒドルストン自らがロキの心情と過去について解説している。詳しくはこちらの記事で。
しかし、酔っ払ったロキはその素性を疑われて警備隊との乱闘に。二人は列車から放り出され、ロキが持っていたタイムパッドも壊れてしまう。ロキは「奴らには勝てない」とTVAの強大な力の前に諦めているし、シルヴィはこの状況に癇癪を起こす。すべての希望が断たれたかに思われたその時、ロキは、歴史上はどちらにせよ壊れて脱出できなかった箱舟を助けて、この星の住民とともに脱出することを提案する。自分たちが生き延びるためではあるが、今、ロキは確かに大勢の人を救う行動を起こそうとしている。
歩き始めた二人は対話を重ねる。ロキはシルヴィに「信用できるか知りたい」と、その魔法について問いかける。ロキを演じたトム・ヒドルストンは、ロキにとってメビウスが「初めて信頼できるかもしれないと思えた人物」と語っていた。その出会いを通して、ロキは相手が信じられるかどうか、まず相手のことを知ってみるという最初のステップを踏み出すようになったのかもしれない。
シルヴィの精神乗っ取り能力は、精神が強い相手には手こずる仕様になっている。それでも、ロキは「私よりすごい」とその実力を認める。シルヴィは前話で乗っ取ったC20から「TVAに入る前の記憶」を呼び起こしたと説明する。英語では「何百年も前の記憶 (memory from hundreds of years prior)」と話しており、C20が数百年間もTVAで働いていたことも明らかになっている。
そしてロキが驚いたのは、「TVA職員はタイムキーパーが作り出した」というミス・ミニッツやメビウスの話とは全く異なる事実をシルヴィが話しているからだ。シルヴィはTVA職員全員が変異体であるとロキに告げるのだった。
ロキとシルヴィはお互いを信頼し合うことを確認し、この「世界の終わり」に立ち向かう。目指すは富裕層だけが乗り込んだ箱舟。民を見捨てようとする上級国民にロキはどんな思いを抱くのか。そして二人が街に入るこのシーンから、圧巻の長回し(ワンカット)が始まる。CG合成もアクションもエキストラも巻き込んだこの長回しは是非ともメイキングを見てみたいものだ。
だがしかし、走り続けるロキとシルヴィの目の前で、隕石が衝突した箱舟は真っ二つに壊れてしまう。呆然と立ち尽くすロキをよそに、シルヴィが立ち去っていくシーンでドラマ『ロキ』第3話は幕を閉じる。
そして第3話のエンディングで流れる音楽はボニー・ギターの「Dark Moon」(1957)。「暗い月、輝きを失っていく」「それは愛を失ってしまったから?」「でも、時には愛が暗い月をもたらす」と歌われている。
これまで本物の愛を見つけられなかった二人。今回は互いを信頼しあってこの難局に挑んだが、希望は脆くも崩れ去ってしまった。成長しようとするロキの変化を尻目に、「世界の終わり」がラメンティス1号星に刻一刻と迫る。ロキのピンチに、果たしてメビウスは現れるのだろうか。
第3話「ラメンティス」の考察
『ロキ』第3話では、変異体の名前がシルヴィであることが分かった。先述の通り、この名前は原作コミックでロキが魔術の力を与えたエンチャントレスの名前に一致する。一応ロキの変異体という体で話してはいるが養子に関する会話など、不自然な点も見られる。
そして、今回はTVAの職員が洗脳状態にあることも明らかになった。シルヴィがロキの変異体ではないのに嘘をついている可能性も考えられるが、シルヴィ自身が誰かに操られている可能性も捨てきれない。それこそ、シルヴィに力を与えたのがレディロキで、レディロキが偽の記憶をシルヴィに植え付けているという展開も考えられるだろう。
第3話を通して明らかになったTVAとシルヴィの真実に関する考察はこちらにまとめているので、ぜひチェックしていただきたい。
ドラマ『ロキ』は早くも前半終了の折り返し地点。後半戦ではどんな展開が待っているのか、配信を楽しみに待とう。
ドラマ『ロキ』はDisney+で独占配信中。
ドラマ『ロキ』第4話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。
変異体の目的と正体に関する考察はこちらから。
ドラマ『ロキ』のヴィランに関する考察はこちらの記事で。
キーパーソンになりそうなラヴォナ・レクサス・レンスレイヤーの設定についてはこちらの記事で。
第2話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。
第1話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。
『ロキ』の出演キャストと吹き替え声優の情報はこちらの記事で。
『ロキ』のエンディングテーマ曲「TVA」は配信を開始している。
2021年7月8日(木)の劇場公開、7月9日(金)からのDisney+ プレミア アクセスでの配信開始を予定している映画『ブラック・ウィドウ』のあらすじと考察はこちらの記事で。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のネタバレ解説はこちらから。
ドラマ『ワンダヴィジョン』で残された12の疑問はこちらから。