ネタバレ考察!『ロキ』第1話 マルチバースの3つの要素を解説。X-MENやスパイダーマンの合流に影響? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察!『ロキ』第1話 マルチバースの3つの要素を解説。X-MENやスパイダーマンの合流に影響?

© 2021 Marvel

ドラマ『ロキ』第1話で衝撃の事実が明らかに

MCUドラマ最新作『ロキ』の第1話が2021年6月9日(水)より配信を開始した。トム・ヒドルストン演じるロキを主人公に据えた本作は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で四次元キューブを利用して逃げ出したロキが、TVAこと時間変異取締局に捕まるところから幕を開ける。

TVAはその名前の通り、時間軸の流れを監視する組織。第1話からその存在意義と歴史が明らかになったが、同時に、かねてから噂されているMCUのマルチバース化(複数の世界線が入り混じること)に向けて大きなヒントが提示された。今回は、『ロキ』第1話で明らかになった“多元宇宙の歴史を通して、MCUのマルチバース化について考察していく。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ロキ』第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『ロキ』第1話に登場した3つのマルチバース要素

「マルチバース」という言葉

ドラマ『ロキ』第1話では、ミス・ミニッツによって多元宇宙の歴史が語られた。曰く、大昔に多元宇宙にまたがる大戦争が起き、その混乱を治めるためにタイムキーパーと呼ばれる存在が多元宇宙を一つにまとめた“神聖時間軸”を創り出したのだという。ロキがTVAに逮捕された罪状は「神聖時間軸への抵抗材」。このタイムキーパーが創り出した神聖時間軸が、アベンジャーズが活躍してきたMCUの正統な時間軸なのだろう。

第1話で明らかになったことは、世界はかつて多元宇宙に別れていた=マルチバースだったということだ。ミス・ミニッツは多元宇宙にまたがる戦争を「multiversal war」と呼んでおり、ここで遂に「マルチバース」という単語が登場する。タイムキーパーとTVAの目的は時間軸の分岐に起因する多元宇宙による戦争が起きるのを防ぐことであり、『ロキ』でその時間軸の分岐が始まってしまった以上、今後のMCUでは多元宇宙による戦争=multiversal warが再び起きると考えるのが順当な考察と言えるだろう。

「ネクサス」という概念

そして、MCUのマルチバース化で大きな役割を果たすとされているキャラクターが二人存在する。最初の一人はワンダだ。MCUフェーズ4の先陣を切ったドラマ『ワンダヴィジョン』では、第7話の劇中CMで「ネクサス」という名の抗うつ剤が紹介された。ネクサスとは原作コミックで別次元のユニバースを繋ぐゲートの名前であり、多次元をつなぐ力を持った人物は「ネクサス・ビーイング」と呼ばれる。コミック版ではワンダがこのネクサス・ビーイングの一人なのだ。

そして、ワンダを演じるエリザベス・オルセンは、2013年11月の時点で「ワンダはネクサス」と発言し、「別のユニバースと交信できる唯一の人間」と説明している。詳しくはこちらの記事で。

ワンダがMCUのマルチバース化において大きな役割を果たすことは明らかだが、今回、ドラマ『ロキ』第1話でもこの「ネクサス」という単語が登場したのだ。やはりミス・ミニッツによる解説の中で、変異体が道を外れた時に「分岐イベント」が起きると説明されているのだが、英語では「nexus event」と表記されており、映像でも「NEXUS」という言葉が大文字でデカデカと強調して描かれている。英単語の「nexus」は「結びつき」「結合」という意味だが、ここでは真逆の「分岐イベント」という意味で使用されている。分岐する=本来存在していなかった他の次元に繋がってしまうということだろう。

いずれにせよ『ロキ』第1話では、いきなり『ワンダヴィジョン』に登場した要素が盛り込まれることになった。また、『ワンダヴィジョン』第7話のネクサスのCMでは、ネクサスを使うことで起きる4つの副作用の一つとして、「運命に直面してしまうこと」が挙げられていた。これはドラマ『ロキ』における、運命に囚われたロキの立場を想起させる。『ワンダヴィジョン』最終回を見る限り、ワンダは子ども達を取り戻すために多次元を繋ぐ力を得ようとしていると考えられる。多次元をつなぐ“ネクサス”は、結果的に再び「死」という運命をそれぞれに直面させることになってしまうのだろうか。

なお、このCMでは、「ドクターの助言の下でネクサスを使えば、自由に現実を選んで前に進める」と付言されている。そう、MCUマルチバース化のもう一人のキーパーソンは、あの“ドクター”なのだ。

「マッドネス」の危険性

ミス・ミニッツの解説では、ドクター・ストレンジの存在を想起させるフレーズも登場した。それは「マッドネス」だ。注目は、発生した分岐イベントを放っておくと時間軸が分岐し、多元宇宙にわたる戦争を引き起こすと解説するシーン。日本語では省略されているが、英語では、「変異体が道を外れて (step off) 、マッドネスに足を踏み入れてしまう (branch off into madness) と、多元宇宙にわたる戦争が起きる」と表現されている。

「マッドネス」という英単語は「狂気」という意味だ。「chaos(混沌)」や「confusion(混乱)」という言葉ではなく、あえて「マッドネス」という強い言葉を選んでいるように見える。そして、この言葉を聞いて思い出すのは、「ドクター・ストレンジ」の第2作目として2022年3月25日(金)に米公開を予定している『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス(原題:Doctor Strange in the Multiverse of Madness)』だ。タイトルを直訳すると「狂気(マッドネス)の多元宇宙(マルチバース)の中のドクター・ストレンジ」となり、今回『ロキ』第1話でミス・ミニッツが危惧している状況が現実のものになる可能性が示されている。

『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』のあらすじは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』と『ワンダヴィジョン』の後、タイムストーンの研究に取り組んでいたドクター・ストレンジの前に敵となった旧友が現れて研究を邪魔し、ストレンジが悪を解き放ってしまうというもの。『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』にはワンダが重要な役で登場することが判明している他、『ワンダヴィジョン』でもドクター・ストレンジのカメオ出演が予定されていた(が、実現しなかった)ことが分かっている。

もし、この「旧友」がワンダのことで、タイムストーンを活用して子ども達を復活させることを試みたとすれば、ワンダが「分岐イベント=Nexus event」を発生させる可能性は十分にあるだろう。

もちろん、『ロキ』第1話の「マッドネス」という言葉は、ドクター・ストレンジとは全く関係なく使用された可能性もある。だが、このミス・ミニッツの解説の中だけで「マルチバース」「ネクサス」「マッドネス」という単語が一気に並べられたのは、ただの偶然だと言えるだろうか。

一方で、『ワンダヴィジョン』におけるクイックシルバーのように、これらの要素が“ブラフ”である可能性も否めない。第2話以降を慎重に見ていく必要があるだろう。

X-MENやスパイダーマン合流への影響は?

神聖時間軸が中心に

では次に、仮にワンダがドクター・ストレンジのタイムストーン研究を利用して分岐イベントを起こし、マッドネスなマルチバースを登場させると考えてみよう。その場合、マルチバース化によって期待されているX-MENのMCU合流や、サム・ライミ版「スパイダーマン」や「アメイジング・スパイダーマン」シリーズのMCU合流は、実現するのだろうか。

現時点では、それは難しいと考えざるを得ない。『ロキ』第1話のミス・ミニッツの話しぶりでは、この世界では既に多元宇宙が存在しているわけではない。今後ユニバースが分岐しないようにTVAは正しいタイムラインである神聖時間軸を守っているのだ。今まで描かれてきたMCUの世界が神聖時間軸であり、唯一の正統な時間軸だということだ。

つまり、今後MCUでマルチバースが描かれるとしても、並行世界からX-MENの集団が登場したり、全く容姿が異なるピーター・パーカーが3人登場するような展開は少々考えにくい。異なるバースが登場したとしても、それはあくまで神聖時間軸から分岐した世界に過ぎない。人物が丸々入れ替わったり、ミュータントが存在する世界が誕生するには、かなり大きな分岐イベントが伴わなければならないだろう。

MCUの物語に回収される?

一方で、ドラマ『ロキ』の予告編で破壊されたニューヨークの街が見られたように、分岐イベントによって、世界が根本から変わってしまったバースが誕生する可能性もあるだろう。太古に干渉すれば、X-MENのようなミュータントが大量に生まれる時間軸も誕生するかもしれない(分岐を作り出す“犯人”に太古へ行く動機があればの話だが)。

しかし、そのようにして『エンドゲーム』後に何者かの干渉によって生まれた分岐の世界が、過去のソニー版「スパイダーマン」や20世紀FOX版「X-MEN」の世界を“回収”してしまうのも、なんだか納得がいかない。MCU内で起きた事件によって生まれたのが過去の「スパイダーマン」世界や「X-MEN」世界だったというのは、フェアではない感じがするのだ。それぞれの世界が元から存在しており、それが交差するという形のマルチバースが見たい……というのが筆者の素直な思いである。

やはり過去のマーベル映画とMCUの合流はあまり期待しない方がよいのかもしれない。

いずれにせよ、『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』では「マルチバース」をタイトルに冠しながら、物語にタイムストーンが関連していることから、マルチバース=時間軸の分岐によって生まれた世界という解釈は間違いなさそうだ。それは『ロキ』第1話のミス・ミニッツによる解説でも確定したことだろう。

時間改変といえばSFの醍醐味だが、設定に矛盾が生じたり、物語が難解さを増したりしていく恐れもある。だが、そこはMCU。きっと分かりやすくて納得できるマルチバース展開を用意してくれているはずだ(大昔に存在していた統一される前の多元宇宙の存在も忘れてはいけない)。まずは引き続き、ドラマ『ロキ』の行く末を見守ろう。

『ロキ』は2021年6月9日(水)より、全6話が毎週水曜日に配信される。

『ロキ』視聴ページ (Disney+)

第1話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらから。

第2話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。

TVAを含む『ロキ』のヴィラン候補はこちらの記事にまとめている。

ドラマ『ロキ』の出演キャストと吹き替え声優の情報はこちらの記事で。

エンディングテーマ曲「TVA」は無料公開中。音楽を担当したナタリー・ホルトについてもこちらの記事で紹介している。

トムヒと脚本家のマイケル・ウォルドロンが語った第2話以降のポイントはこちらから。

ドラマ『ワンダヴィジョン』で残された12の疑問はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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