第7話まで! 『ワンダヴィジョン』CMの謎を考察。各話の関連作品とキーワードをまとめて解説 | VG+ (バゴプラ)

第7話まで! 『ワンダヴィジョン』CMの謎を考察。各話の関連作品とキーワードをまとめて解説

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CMの謎を考察

2021年1月15日(金)よりDisney+で配信を開始したドラマ『ワンダヴィジョン』。ファン待望のMCU最新作でありながら、謎多きドラマとして話題になっている。

バゴプラでは、第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話のネタバレ解説記事をお届けしてきたが、特に焦点を当てたいポイントがある。それは、劇中に流れるCMだ。昔ながらのシットコム (シチュエーション・コメディ) の体でストーリーが進められていく『ワンダヴィジョン』では、第4話を除く各話にCMが挿入されている。そして、このCMが意味深なものばかりなのだ。

このCMも物語に絡む重要な意味を持つのか、現時点では不明だが、復習として各CMの特徴と共通点をおさらいしていこう。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ワンダヴィジョン』第7話までの内容に関するネタバレを含みます。

各話CMの解説&考察

第1話「トーストメイト2000」

第1話のCMは、スターク・インダストリーズのトーストメイト2000。ご存知の通り、スターク・インダストリーズとはアイアンマンことトニー・スタークがCEOを務めていた企業だ。そして、トニー・スタークといえば、ヴィジョンの前身である人工知能J.A.R.V.I.S.の生みの親である。加えて、ワンダと双子のピエトロは幼い頃にスターク・インダストリーズの不発弾が間近に着弾し、いつ死ぬかも分からない恐怖を体験している。両親を殺したのも、スターク・インダストリーズ製のミサイルだ。

さて、CMの方はという「トーストを焦がして旦那さまにウンザリされていませんか? (Is your husband tired of you burning his toast?)」と、主婦に語りかけているにもかかわらず、男性目線の問いかけがなされる。トーストメイト2000を紹介する際には「賢い主婦の必需品です (It’s the go-to for clever housewives.)」と、暗に“賢くない主婦”を揶揄すると、主婦役の女性が「すごい、このトースター輝いてるわ」と機能と関係のない感想を口にする。

トーストをセットするとカウントダウンが始まる。見逃しがちだが、ここではトーストの赤いランプに色が付いている。そう、『ワンダヴィジョン』第1話のショーはここまで白黒で展開されているが、このランプだけは色が付いているのだ (トーストメイトで作れる料理を紹介する前は光が点滅しているものの色は付いていないが、料理の映像の後は点滅する光に赤い色が付いている)。

『ワンダヴィジョン』第1話と第2話の中盤までは、おもちゃのヘリコプターやドッティの血など、このシットコムの世界に属さないものに色が付いているように思われていた 。現実世界で並行して何かが起きており、誰かが焼かれたり、誰かが血を流したりしているということもあり得るかもしれない。妙に長い赤いランプの点滅はそんな不安を掻き立てる。あるいはワンダに接触しようとする何者かからの信号なのだろうか。

そして、最後の商品紹介の画面も、非常に不穏で気になる表現が使われている。字幕で「あなたの未来を作ります」とだけ書かれているが、吹き替え版で「過去は忘れましょう。これが未来です」となっている通り、商品のキャッチコピーは「過去は忘れて、これがあなたの未来 (Forget the past, this is your future!)」なのだ。ワンダとヴィジョンに過去の記憶がないことを踏まえると、ワンダ自身が過去を忘れたいという思いの現れか、または、この状況を仕組んだ誰かがワンダに過去を忘れさせようとしているのだろうか。あるいは、ワンダの欲望と誰かの目論見が一致した結果がこのシットコムの世界なのかもしれない。

第2話「ストラッカーの腕時計」

第2話のCMは、「男のお洒落には絶対に欠かせないアクセサリーが二つある」から始まる。一つ目は「特別な女性」。現代では一般的になった、女性は男性のアクセサリーではない、という考えに逆行するスタンスだ。そして二つ目として紹介されるのが「ストラッカー」の腕時計である。第1話のCMはスターク・インダストリーズの商品だったが、第2話では言及こそされないものの、ヒドラの商品を紹介している。そして、ストラッカーは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) などに登場したヒドラのメンバーで、ワンダの別名である“スカーレット・ウィッチ”の生みの親。この辺りの詳細は、第2話のネタバレ解説記事でも紹介した。

この腕時計には「HYDRA」という文字と、MCUではおなじみのヒドラのロゴが記されている。「SWISS MADE」とも記されているあることからスイス産であることが分かる。「1000M」と記されているのは、水深1000mの気圧に耐えられる防水機能が備わっているという意味だ。

CMの最後には「ストラッカー、あなたのために時を告げるもの (字幕では「ストラッカーは常に時を刻む)」というキャッチコピーが告げられるが、英語では「Strücker. He’ll make time for you.」となっている。直訳すれば「彼があなたのために時間を作ってくれる」という意味で、時計そのもののアピールというより、ヒドラのリーダーであるストラッカーを崇拝するニュアンスが込められているのだ。

第3話「ヒドラ・ソーク」

カラーになった第3話では、第2話までの雰囲気から一転して明るい雰囲気のCMに。時代が70年代ごろまで進んだこともあり、女性が主役の作りになっている (1970年代前半のアメリカといえば、ウーマンリブの時代である)。ところが、主人公の女性は家事のストレスに追われている。子ども達が遊んでいたボールが自分のコーンフレークに直撃、飼い犬が家の中でおしっこをして、料理は丸こげ、ミキサーは暴走する散々な状況だ。

これらはいずれも育児、ペットの世話、料理と、女性に押し付けられている家事労働における出来事。ミキサーでのスムージー作りもコップが二つ用意されており、自分のための作業ではなさそうだ。ストレスを抱えた女性に「一休みしたい?」と商品を進める展開に。女性が家事労働を一手に担う状況に対し、消費によって癒しを与えようという発想がいかにも70年代の資本主義社会らしい。

場面は移り変わり、女性がバスタブで入浴しているシーンに。この場面では、「世界から逃げ出し、すべての問題を水に流せる自分だけの世界に浸りましょう。逃げ出したいけれど、どこにも行きたくない時に。 (Escape to a world all your own, where your problems float away. When you wanna get away, but you don’t wanna go anywhere.)」というナレーションが入っている。「世界から逃げ出す」「問題を水に流す」とは、愛する人を失い、過去の記憶を失ったワンダの状況を言い表すフレーズだ。「逃げ出したいけれど、どこにも行きたくない」とは、第3話のラストで明らかになるように、ウエストビューの町に閉じこもってしまったワンダの心境を示す言葉なのだろうか。

そして、今回の商品は入浴剤の「ヒドラ・ソーク」。ヒドラ・ソークのパッケージにはヒドラのマークをシルエットだけ印刷し、ただのタコに見えるようにうまくカムフラージュしている。キャッチフレーズは「“ヒドラ・ソーク” 女神の入浴剤」。ヒドラ・ソークは4次元キューブを思わせる色と形になっており、“女神”とは『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) に登場した “死の女神” ことヘラを思い出させる。

第1話はスターク・インダストリーズの製品だったが、第2話と第3話では二話連続でヒドラの製品になっている。やはりこの世界を操っているのはヒドラで、ワンダの気持ちを利用する形で成り立っていると考えることができる。

実は、“ヒドラの石けん”というアイテムは、ドラマ『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) のシーズン4の第17話「反対の世界 (英題: Identity and Change)」でも言及されている。仮想空間である”フレームワーク”の中で、ヒドラの一員となったフィル・コールソンは「ヒドラは石けんに薬を混ぜて皆の記憶を操作してる」と信じ、手作りの石けんを使用していた。

これと関係があるのかどうかは不明だが、『ワンダヴィジョン』の世界が『エージェント・オブ・シールド』で登場したフレームワークの技術を用いて構成されている可能性も出てきた。少なくとも、コアなマーベルファンに対してはそのように勘ぐらせる演出は意図してのものだろう。

第4話はCMなし

そして全9話構成の『ワンダヴィジョン』の折り返しに位置する第4話「番組を中断します」は、遂にCMのない回になった。第4話は、第3話までの内容について外の世界から見た種明かしの回になっているが、CMに触れる内容は登場しなかった。

CMではヒドラの存在が強調されてきたが、第4話ではワンダ自身がこの世界を作り出しているという可能性も強くなってきた。第4話の内容に関する考察は、こちらの記事からチェックしていただきたい。

第5話「ラゴスの紙タオル」

再びシットコムの世界に戻った第5話「問題エピソード」ではCMが復活。第3話と同じく二人の子どもがキッチンで粗相をやらかし、母親が後始末をするパターンだ。出演者は前回と同じだが、第5話本編の内容と合わせるとある疑問に行き着く。これについては、この後に「各話のCMに共通しているもの」の“俳優”の項目で詳述する。

2回連続でヒドラの商品が続いたが、今回紹介されているのは“ラゴス”の紙タオル。キッチン用品だ。90年代を舞台に敷いた第5話では、まだキッチンは女性の場所として捉えられているが、ビールをこぼした夫には自分で掃除をさせており、ようやく男性が自分で後始末をするようになっている。

今回のCMで製品名として使われている“ラゴス”は、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)  に登場した土地で、現実に存在するナイジェリア最大の都市だ。1976年まではナイジェリアの首都であった。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、ヒドラの残党であるブロック・ラムロウがラゴスの街で生物兵器を盗み出すことを企む。ワンダ、キャプテン・アメリカ、ブラックウィドウ、ファルコンの4人はラムロウの企みを阻止するためにラゴスへ向かった。

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アベンジャーズとヒドラが交戦した末に、ラムロウはキャプテン・アメリカを巻き込んでの自爆を試みる。ワンダは能力を使ってこれをすんでのところで食い止めるが、ラムロウをキャプテンから引き離した先にあったのは民間のビルだった。民間人を爆発に巻き込んでしまい、ワンダは強いショックを受けた。自身もアベンジャーズの戦いによって両親を失っていたのだから尚更だ。

そして、CMのキャッチコピーは「好きで失敗したんじゃない」。英語では「For when you make a mess you didn’t mean to. (わざとじゃないけど、めちゃくちゃにしてしまった時に)」だ。紙タオルで汚れを拭き取るように、ワンダにも忘れたい過去があるのだろう。吹き替え版では「好きで失敗したんじゃない」の後に「しょうがないでしょ」という言葉が入っており、ワンダがラゴスで犯した罪に対して開き直っているようにも聞こえる。やはりこれらのCMはワンダの記憶に結びついているようだ。

第6話「ヨーマジック」

第6話「ハロウィーンの不気味な夜に」では、CMも予期せぬホラー展開を見せる。『ワンダヴィジョン』のCMとしては初めてクレイ・アニメーション (ストップモーションを活用し、人形などでアニメを作る手法) で製作されており、ロサンゼルスに拠点を置くAcho Studioが制作を手掛けている。エンドクレジットによると、このCMを製作したチームのメンバーはたった3人だ。

気になるのは、今回のCMの情報量の少なさ。これまで「スターク」や「ストラッカー」「ラゴス」など、MCUに関連する固有名詞が登場してきたが、第6話では一切登場せず。「ヨーマジック」という商品のCMになっている。今回のCMでは、孤島で空腹に苦しむ少年が「腹ペコだ。何でもいいから食べたい」と呟くと、海から現れたサメが「昔は俺もいつも腹ペコだったぜ」と言い、少年は「今は違うの?」と尋ねる。サメは「ヨーマジックを食べてヒレまでピチピチだ」と答え、ヨーグルトのヨーマジックを欲した少年にヨーマジックを与える。だが、少年はヨーマジックの蓋をうまく開けることができず、月日は流れて白骨化してしまう。商品パッケージをバックにサメが「ヨーマジックで生き延びな」と言い、CMは終わる。

ポイントは、最後のサメのセリフが英語では「Yo-Magic! The snack for survivors! (ヨーマジック! サバイバーのための食べ物)」になっていることだろう。幼い頃に両親を失い、『エイジ・オブ・ウルトロン』でピエトロを失い、『インフィニティ・ウォー』でヴィジョンを失ったワンダは、まさに生き延びた人物でありサバイバーだ。そして、「ヨーマジック」とは、「Your Magic=あなたの魔法」を意味している (米英語では「Your」を「Yo」と略すことがある) と考えられ、「自分の魔法の力を使って生き延びろ」というメッセージを発していると捉えるのが妥当だろう。

空白に苦しむ少年は、自分の愛する人々を失って飢えるワンダを象徴している。そして、少年は「ヨーマジック」を手に入れたにもかかわらずそれを使いこなせず白骨化してしまう。この時の骸骨はヒドラのマークにあるドクロにそっくりだ。だとすれば、「魔法を使えばサバイブできる」とワンダをそそのかした“サメ”がどこかにいるはずだ。「昔は俺もいつも腹ペコだった」と語るその存在は、ヒドラの一員なのだろうか。

最後のポイントは、ここまで見てきたCMが全てワンダの記憶に関連しているということだ。「ヨーマジック」のCMが、ワンダにとってより最近の記憶を表しているとすれば、「ヘックスがどうやった始まったのか分からない」と吐露した第6話本編の内容とリンクする。やはりヘックスはワンダの力で動いてはいるが、そもそもの仕掛け人が存在しているはずだ。

なお、第6話のCMは、内容とは関係のないところで第5話までのCMからの大きな変化が存在している。CMの出演者が変更になっているのだ。クレジットによると、Commercial Shirk=サメの声はAdam Gold、Commercial Kid=少年の声はTristen Chenが担当している。この点については「各話のCMに共通しているもの」の“俳優”の項目で詳述する。

第7話「ネクサス」

第7話「第4の壁を破って」では、精神的に不安定になったワンダの状況を反映するように、抗うつ剤の「ネクサス」のCMが挿入される。主人公の女性は遊んでいる子どもに一瞬気を取られながらも、憂鬱な表情を浮かべ、「気が滅入りますか?」というナレーションが入る。ナレーションの声は「世界から取り残された気分?」「それとも一人になりたい?」と誰もがどちらかは抱えているであろう不安を煽る言葉を落としていく。空に暗雲が立ち込めると、次の瞬間には女性はベッドの上に横たわっている。

ここで今回の商品「ネクサス」が紹介される。パッケージには「Nexulpromocide」という架空の成分が10.3%含まれていることと、「詳しくはウェストビュー新聞の広告を」という文字が記載されている。注目は「あなたを現実につなぎとめる抗うつ剤」と紹介されている点。「どの現実かは選択可能 (on the realty of your choice)」とされており、通常の抗うつ剤でないことは明らかだ。

副作用については、第7話のネタバレ解説でも紹介している通り字幕では省略されており、英語では以下の四つの副作用が挙げられている。

・Feeling your feelings 感覚や感情をはっきり知覚してしまうこと
・Confronting your truth 真実に直面してしまうこと
・Seizing your destiny 運命に直面してしまうこと
・More depression さらなるうつ状態

「前に進めるという医師の診断が必要です」という注意の後、「世界はあなた中心に回っていません」「いえ、(あなたを中心にして) 回ってる?」と、冒頭の「世界から取り残された気分?」「それとも一人になりたい?」という問いかけに対する逆方向のキャッチコピーが謳われてCMは終わる。

これは、自分が中心にいる世界か、そうではない世界か、“好きな現実を選べる”という意味だろう。「ネクサス」のCMがこれまでのCMと明らかに違うのは、ワンダの“解放”を示唆しているということだ。現実に直面し、さらなるうつ状態に陥る危険もあるが、ドクターの助言の下でネクサスを使えば、自由に現実を選んで前に進めるというのだ。

MCUの「ドクター」といえばドクター・ストレンジ。ドクター・ストレンジの次回作『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス (原題)』(2022年公開予定) には、ワンダが重要な役割で登場することが明らかになっている。また、ワンダと同じ能力を持つ息子のビリーは、コミック版ではドクター・ストレンジとは師弟に近い関係だ。

“ネクサス=Nexus”とは、英単語で「結びつき」や「繋がり」を意味するが、マーベルのコミックでは、ワンダは複数の世界線 (ユニバース) をつなぐことができる「Nexus Beings」と呼ばれる存在の一人。自分の好きな世界線=現実を選べるというわけだ。今回のCMが、ワンダが“マルチバース”を繋ぐ人物として『マルチバース・オブ・マッドネス』に登場することを示唆している可能性は十分にある。

ワンダと“ネクサス”については、こちらの記事にも詳しい。

出演したのは第5話までのCMに登場していた面々。クレイアニメーションになった第6話から打って変わって、おなじみの俳優たちが出演している。こちらは“俳優”の項目で後述する。

各話のCMに共通しているもの

次に、各話のCMに共通している点を見てみよう。

・俳優
まず第5話まで一致していたのは、CMに出演している二人の俳優だ。エンドクレジットで「Commercial Woman」として表記されているのはDCドラマ『ドゥーム・パトロール』(2019-) などに出演したヴィクトリア・ブレイド (Victoria Blade)。「Commercial Man」はNetflix『レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと』(2017-2019) などに出演したイタマール・エンリケス (Ithamar Enriquez)となっている。二人とも自身のSNSで『ワンダヴィジョン』への出演を報告している。

同じ人物がCMに出演しているということは、この二人は現実世界においても何らかの役割を担っているのだろう。CMの雰囲気から察するに、二人は後にヴィランとして登場する可能性が高そうだ。

第3話のCMでは女性が主役になっており、一見すると男性が登場していないようにも見えるが、ナレーションとバスタブに入る女性を扇で仰ぐ人物の役を務めている。そして第3話からは子役の二人が登場している。

気になるのは、第5話の本編でヴィジョンがヘックス内にはビリーとトミーを除いて子どもがいないと指摘していた点。子ども達を洗脳したくないワンダの良心によるものだと思われる。CMには子ども達が登場しているが、この子たちはどこから来たのだろうか。考えられる可能性は、このCMはワンダのコントロール下にはないという可能性だ。ヒドラに関連する内容が多いことを鑑みれば、子どもであっても平気で洗脳するであろうヒドラが背後にいる可能性が高いが、果たして。

そして、第6話ではこの二人の出演者がまさかの降板。前述の通り、サメの声はAdam Gold、少年の声はTristen Chenが担当している。クレイ・アニメーションを活用した第6話のCMも登場人物は二人だけになっており、二人をそのまま起用してもよかったはずだが、何か意図があるのだろうか。第1話と第2話は出演者が二人だけ、第3話と第5話は子役の二人が加わり、第6話では出演者変更と、二話ごとに動きが生まれているようにも見える。

だが、第7話ではメインの二人がカムバック。主人公の女性と薬局の薬剤師を演じている。分かりにくいが実は二人の子役も出演しており、CMが始まった瞬間の公園の場面で、二人で遊びながらフェードアウトしていく。第7話の本編と同じく、子ども (子育て) よりも自分自身のケアを大切にすることを咎めない現代らしいCMに仕上がっている。

・ジェンダーロール
第1話のCMでは「トーストメイトを使えば、あなたも賢い奥様に」と紹介される。トーストを焼くのは女性の役目と言わんばかりだ。前述の通り、主婦役の女性には「すごい、このトースター輝いてるわ」と機能と関係のない発言をさせたり、女性を見下した演出が散見される。第2話では女性をアクセサリーと捉える地雷をわざと踏みに行っている。第3話では前述の通り、女性がすべての家事労働を担っている。

時代錯誤なジェンダーロールを意識的に提示していることは明らかで、この演出にも何らかの意図があるのだろう。

とはいえ、ワンダとヴィジョンもまた、本編中にそれぞれのジェンダーロールを演じている。家事はワンダの仕事、外に働きに出かけるのはヴィジョンの仕事だ。「過去を忘れろ」「ストラッカーが時を刻む」というCMの中の言葉から察するに、ジェンダーロールの押しつけは誰かからの洗脳なのだろうか。それとも戦いから逃れたワンダが、このぬるくも息苦しい世界に自ら囚われているのだろうか。

一方で、90年代に入った第5話では、まだ女性がキッチンに立たされているが、ビールをこぼした夫は申し訳なさそうにしていて、「お父さんでも簡単に使える」(吹き替え) と、自分の失敗は自分で掃除させている。第1話と第2話の様子を考えれば大きな進歩である。CMではただ単にアメリカにおけるジェンダーロールの変遷を示しているだけなのだろうか。

00年代を舞台にした第6話はジェンダーロールを強く感じさせる演出は登場せず。気になるのはサメがマッチョな態度を見せていることくらいだろうか。サメがヒドラ側の存在なのだとすれば、そのマッチョな男性的な振る舞いにも説明がつく。

2010年代を舞台にした第7話は、「よき母」であることを強いない本編と同じく、女性は家事や子育てをする姿は見せず、公園と寝室、薬局とパブリックな空間、プライベートな空間、ケアのための空間が舞台になっている。ジェンダーバイアスを感じさせる場面はほとんど登場せず、「〇〇しよう!」という強いキャッチコピーも登場しない。「世界はあなた中心に回っていません」「いえ、(あなたを中心にして) 回ってる?」と、問いかけるような間口を開いたフレーズが置かれているだけだ。

時代を経てジェンダーバイアスが解消される演出は、第7話で完結したように思える。このCM群には、あえてジェンダーバイアスの強い演出を見せつけるような意図はなく、むしろそれが解消されていく流れを見せていたということなのだろうか。このCMがマーベル製作陣の意図で進んでいるのか、それともヘックス内の誰かの意図で進められているものなのか、第8話と第9話も注視する必要がありそうだ。

・ワンダ&ヴィジョンとの関連
第1話のCMと第2話のCMに共通していたのは、ワンダとヴィジョン、それぞれの生みの親に関連するCMだったという点だ。スターク・インダストリーズについては、時代背景からして、トニーの父親ハワード・スタークがCEOを務めていた時代だろう。とは言え、ヴィジョン (J.A.R.V.I.S.) にとって大切な人であるトニーに関連するCMであることに違いはない。しかし、そんなCMに「過去は忘れて」とは、ずいぶんな言い方である。一方で、前述の通り、ワンダはスターク・インダストリーズの武器によって両親を失い、自身も死に直面する恐怖体験を味わったトラウマもある。

第2話のCMもまた、アベンジャーズに復讐するために志願したワンダへ人体実験を施し、スーパーパワーを与えたストラッカーの名前が登場する。トニーとストラッカーを並べられるのは複雑な気もするが、二人が存在していなければワンダとヴィジョンの出会いはなかったのだから、二人にとって関係の深い相手であることは間違いない。

第3話目では人物名は登場せず。ただ、前述の通り「ソー」シリーズを想起させる意図があった可能性がある。ソーと言えば、『エイジ・オブ・ウルトロン』でヴィジョンに雷を落とし、ヴィジョンが命を宿すきっかけとなった人物。またもヴィジョンの誕生に関わる人物が示唆されたと考えるのは、少々無理があるだろうか。

第5話では、場所ではなく“ラゴス”という土地の名前が登場。前述の通り、やはりワンダの思い出に関連するキーワードが登場した。しかも今度は「キャプテン・アメリカ」シリーズからの引用だ。ここまでのCMへの引用は、ワンダとヴィジョンが関連するMCU内の様々な作品からが行われている。

そして、第6話では、どうやらこれまでのMCU作品の内容ではなく、『エンドゲーム』から『ワンダヴィジョン』までの空白を埋めるワンダの記憶を表現しているように思われる。CMも徐々に核心に迫ってきたが、2010年代に入る第7話ではどの時点の記憶が扱われるのだろうか。

第7話で扱われたのは、前述の通り、過去の記憶ではなく今後のMCUの展開であるように思われる。確かに“ネクサス”は『エイジ・オブ・ウルトロン』に登場している。トニー・スタークが訪れたノルウェーのオスロに位置する施設の名前が「NEXUS Internet Hub」だったのだ。ここは世界的なインターネットの中継地点で、トニーはここでヴィジョンの前身であるジャーヴィスが核の発射コードをウルトロンから守っていたという事実を突き止める。

これがきっかけで、トニーはジャーヴィスをヴィジョンの肉体に入れることを決意したのだから、“ネクサス”がヴィジョン誕生の一つの大きな要因であることは確かだ。一方で、トニーがネクサスを訪れていた時、ワンダはソウルでウルトロンがヘレン・チョ博士にヴィジョンの肉体を生成させる現場に立ち会っているため、ワンダの記憶にはネクサスは存在していないはずだ。故に、ワンダは第7話のCMでは、自身が複数のバースをつなぐネクサスになる未来を予知したと考えることもできるだろう。

・時計
最後に最も気付きにくいポイントを挙げておこう。それは、「時計」の存在だ。第2話が腕時計のCMだったことから「木を隠すなら森」状態になっているが、実は第1話のCMにも時計は二つ登場している。第1話のCMでは、冒頭の男性の背後に鳩時計が。こちらは6時を指している。男性がトーストメイト2000の前に移動すると、後ろにはまたも掛け時計が。しかしこちらは12時を指している。第2話の腕時計は、一度ズームになった時に9時10分ごろを指しており、商品紹介の画面では2時42分に。わざわざ何度も時計を登場させているのは、明らかに意図的な演出だ。

端的に言うと、指されている時間は滅茶苦茶だ。現時点では、この時計の表示に意味があるのかどうかも含めて謎だが、この世界が「まともな時間軸の世界ではない」ということを示唆しているとも考察できる。「ストラッカーが時を作る」とは、ストラッカーがこの世界を支配しているという意味なのだろうか、それに時間を操れるタイムストーンは関連しているのだろうか。直接時間を操っていなかったとしても、ワンダにパワーを与え、ヴィジョンを生み出したマインドストーンは心を操る力を持つ。6つのストーンはキャプテン・アメリカによってそれぞれの時代に返還されたはずだが、果たして……。

そして、気になるのは両CMにおける“カウントダウン”。第1話ではトースターの音が、第2話では腕時計の秒針の音が徐々に加速していく。トースターは理解できるが、時計の秒針が加速してしまっては使い物にならない。何らかのメッセージが込められていると考えていいだろう。ワンダの身に何らかのタイムリミットが迫っているのだろうか。また、時計自体には秒針が付いてないのだが、これは、この世界の時間が一方向に進行しているのではなく、スタッカーによって自由に操作されていることを表現しているのかもしれない。

しかし、第3話では遂にCM中に時計の存在はなくなってしまう。なぜなら今回のCMは、「安らぎのひと時を」と現実世界の時間を忘れることを促すCMになっているからだ。やはり時間の概念をキーにしていると考えられるが、第5話では一転して時間を象徴するものは登場していない。ただ、紙タオルがワンダにとって不都合な“過去を消す”という比喩で使われていることは間違いない。

第6話も時計は登場しないものの、ヨーマジックを受け取った少年が蓋を開けるのに苦労している間、高速で日が昇ってはが落ちていく。日昇と日没を8回繰り返したところで少年は骸骨に。やはり現実とは異なる時間の感覚が表現されている。

第7話では時間を意識させる演出は登場せず。ただし、「現実を選べる」というコンセプトがあるため、時間や空間の改変がCM全体のコンセプトになっていることは間違いなさそうだ。第7話の本編では驚きの事実が明らかになったが、残り2話のなかで、CMの謎は明らかになるのだろうか……。

 

考えれば考えるほどに謎が深まっていく『ワンダヴィジョン』のCM。だが、CMを通して誰かが何かを伝えようとしているということは確かだ。バゴプラでは、引き続き、第8話以降もCMに注目していく。

『ワンダヴィジョン』は2021年1月15日(金) より、Disney+で独占配信。

Disney+

『ワンダヴィジョン』第1話のネタバレ解説はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第2話のネタバレ解説はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第3話のネタバレ解説はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第4話のネタバレ解説はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第5話のネタバレ解説はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第6話のネタバレ解説はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第7話のネタバレ解説はこちらの記事から。

 

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