ネタバレ解説!『ワンダヴィジョン』第8話 カオス・マジックとは? スカーレット・ウィッチの力に迫る… あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説!『ワンダヴィジョン』第8話 カオス・マジックとは? スカーレット・ウィッチの力に迫る… あらすじ&考察

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『ワンダヴィジョン』第8話を徹底解説

Disney+で独占配信されているMCUドラマ『ワンダヴィジョン』は、2021年1月に配信を開始し、いよいよ第8話でクライマックスに突入する。全9話で制作された『ワンダヴィジョン』は、第7話で遂にあの人の正体が明らかになり、事態は急展開を迎えた。

遂にラスト2話を残すのみとなったが、第8話では果たしてどんな展開が待っているのか、今回は第8話をネタバレありで徹底解説していく。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ワンダヴィジョン』の第8話までの内容に関するネタバレを含みます。

『ワンダヴィジョン』第8話のあらすじ&ネタバレ解説

明らかになるアガサの過去

第7話のラストで遂にその正体を現したアグネス。実はアガサ・ハークネスという名の魔女で、このヘックス内の現象は全て「アガサの仕業」だったのだという。第8話はここに来て「前回までは」という、エピソードそのものが過去の振り返りである印象を持たせるタイトルになっている。

第8話の冒頭は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) でワンダがヴィジョンのマインド・ストーンを破壊するシーンを含むワンダの過去と、アガサが正体を現した場面が提示される。『エンドゲーム 』後、“ワンダ事変”に至るまでの経緯が第8話で示されることを暗示している。

第8話の冒頭の舞台は、1693年のマサチューセッツ州セイラム。17世紀といえば魔女狩りの時代。そしてセイラムは悪名高い“セイラム魔女裁判”が行われた土地として知られている。このセイラム魔女裁判では、約200人の村人が魔女であるとして告発され、25名もの死者を出した。犠牲者には男性もいたが、それでも女性に対する敵視やミソジニーが魔女狩りの暴虐の根底にあったことは確かだ。

一方、当時のセイラムにいたアガサは、実際に魔女だったという設定のようだ。囲まれた魔女たちにアガサは「お前は魔女か」と聞かれ、「私は魔女」と答える。アガサは掟を破り、強力な黒魔術を使ったとして、魔女たちに裏切り者と咎められている。アガサは若くして強力な力を持つ魔女だったようだ。自身でもコントロールできないほどの力を持つアガサは、ワンダと似た存在と言えるのかも知れない。

アガサが「力の抑え方を教えて」とすがる魔女のリーダーは、アガサの母親だ。助けは聞き入れられず、アガサは魔女たちからのエネルギー波を一身に浴びる。だが、アガサはこれらの波動を自らの力に変え、魔女たちの全てのエネルギーを吸い取ってしまう。この時、母の亡骸から拾い上げたのが、いつもアグネスが付けていたペンダントだった。

「過去の再放送」の世界へ

時は現在に戻り、アガサは「考えを読もうたって無駄」とワンダに告げる。確かに第7話では、ワンダに近い能力を持つビリーでも、アガサの心が「空っぽ」ということしか分からなかった。双子の居場所を聞き出そうとするワンダだが、この地下室の空間ではワンダは能力を使えないようだ。“ルーンの魔術”により、結界の中ではアガサしか魔法を使えなのだという。“ルーン魔術”とは、北欧にルーツを持つ魔術のことだ。

この時、アガサはワンダの英語にソコヴィア訛りが戻っていることを指摘するが、これは第5話でワンダがヘックスを出た時以来のことだ。つまり、この時点でワンダがシットコムの世界=自分の領域を出ているということを示している。

どうやらアガサはワンダのことを魔女だと思っているらしい。正体を明かすように迫る中で、アガサはピエトロも偽物 (=ニセトロ。英語では Fake Pietro→Fietro) だったという事実を明かす。英語では水晶玉を使って操っていたと説明している。本物のピエトロの死体は別の大陸にあるため降霊術は使えなかったのだという。

アガサはセミに「心を操る魔術」をかけるが、アガサもヘックス内で何が起きているのかを完全には理解していないようだ。何千人もの人間を操っていたワンダの力、複雑な筋書き通りに人々を行動させ、町全体の姿を変えてしまう圧倒的な「現実改変能力」の源を探ろうとしている。これを「どうやったのか」をワンダに吐かせようとするアガサだったが、ワンダは「何もしていない」と答えるだけ。

痺れを切らしたアガサは魔術を使い、地下室の扉の一つを通して「過去の再放送」をワンダに見せる。アガサにはビリーとトミーという人質がいる。指示通りにドアをくぐったワンダは、幼い頃に過ごしたソコヴィアの自宅にいた。そこにあったのはワンダの両親の姿だった。

明らかになるワンダの過去

ワンダの父オレグのカバンに入っていたのは、『奥様は魔女』(1964-1972) や『アイ・ラブ・ルーシー』(1951-1957) といったアメリカ産シットコムのソフト。『マルコム in the Middle』(2000-2006) もあるので、時代は2000年代だろうか (DVDが登場するので、1996年以降だということも分かる)。オレグはビデオテープを売るビジネスをしていたようだが、うまくいっていないようで、売れなかったビデオを家族で見ようと提案する。

ここで入ってきたのは、テレビの日は英語で話す約束だと主張するピエトロ。両親はかなり訛りの強い英語でピエトロに話しかけている。ワンダは子どもの頃に戻り、父に『ディック・ヴァン・ダイク・ショー』(1961-1966) のビデオを取り出してもらう。ワンダのお気に入りという設定らしい。『ワンダヴィジョン』では、95歳のディック・ヴァン・ダイクがコンサルタントを務めており、第1話では『ディック・ヴァン・ダイク・ショー』の撮影手法をそのまま取り入れている

ワンダは幼い頃からアメリカのシットコムが好きだった。家族と過ごす楽しい時間はかけがえのない思い出。だから、ワンダはヘックスの中で自分が好きだったシットコムの世界を再現していたのだろう。ところが2010年代のドラマの記憶がワンダにはないため、2010年代を舞台にした第7話では、ドキュメンタリーチックな作りでメランコリーな内容になっていたのだと想像できる。

そして、まさに家族でシットコムを見ているその時に、一家は爆撃に巻き込まれた。ソファに座っていた両親は瓦礫の下敷きになり、ピエトロと共にベットの下に隠れたワンダの目の前には、「スターク・インダストリーズ」のロゴが入った不発弾が落ちてくる。

この爆弾に付いていたランプが点滅を始めるが、これは『ワンダヴィジョン』第1話のCMでスターク・インダストリーズのトースターが紹介された時に点滅していたランプを想起させる。

いつ死ぬとも知れない恐怖の中で、ワンダのよりどころとなったのは瓦礫の中のテレビから流れる『ディック・ヴァン・ダイク・ショー』だった。「この話の最後ですべて悪い夢だったと分かる」「これは現実じゃない」と言い聞かせたところで、ワンダはアガサに現実に引き戻される。

アガサは爆弾が炸裂しなかった理由について、ワンダが「確率操作の魔法」を使ったと主張する。2日間もの間閉じ込められていたが傷一つつかなかったワンダを、この時点で「シットコムに夢中な駆け出しの魔女」だと断定する。ワンダがスーパーパワーを手に入れたのは、アベンジャーズに復讐するためにヒドラの人体実験に参加した時だったはずだが……。

ワンダが見たスカーレット・ウィッチの姿

次にアガサが案内したのは、両親を殺された後にワンダとピエトロが加わったヒドラによる人体実験の施設だ。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014) のエンドロール後の映像で登場した施設だろう。そこにはワンダとピエトロに力を与えたマインド・ストーンがロキの杖の中で輝いている。

被験者の中で生き残った者は一人もいなかったというが、マインド・ストーンに触れたワンダは、光の中にスカーレット・ウィッチの姿を見て倒れる。だがその光景はワンダにしか見えていなかったらしい。マインド・ストーンは後にヴィジョンの額に埋め込まれることになるインフィティ・ストーンだが、ワンダはこの頃からマインド・ストーンと共鳴していたのだろうか。アガサは、人体実験によってワンダがパワーを「得た」のではなく、元々持っていた力を「増大させた」と分析する。

そして次の舞台はヴィジョンと暮らしていたアベンジャーズの本部。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) の時の記憶だ。ここでもワンダはシットコムを見ている。ここでヴィジョンが壁をすり抜けて入ってくるが、『シビル・ウォー』でもヴィジョンは同じことをしてワンダから「前に話した」と叱責される場面が登場する。どうやら、ワンダはこの時のことを言っていたようだ。

ワンダはピエトロを失ったことで精神的に疲れ切っており、「立ち上がろうとするとまた波が来る」と、ヴィジョンに伝える。ヴィジョンは、「愛するものがいなかったから失う悲しみもなかった。嘆くのは愛を貫いている証拠なのでは?」と、”持たざる者”の立場からワンダを励ます。

ワンダはここでもヴィジョンとシットコムを観て幸せな時間を過ごすが、結局はヴィジョンをも失ってしまう。アガサは、両親、兄弟、愛する人を失ったワンダが「心の闇」に引き摺り込まれたと推測。次にヴィジョンの遺体を保管していたソードへ出向いたワンダの記憶を辿る。

ソードに向かったワンダの真実

舞台はヴィジョンの遺体が保管されていたソード。液晶画面には「指パッチン後の家族の再会」が映し出されている。指パッチンから生還したワンダには再会はなかった。ヴィジョンの遺体との面会を求めるワンダをソードに招き入れたのは、ほかでもないヘイワード長官だった。監視カメラに映っていた、ワンダがパワーを使ってドアを開けるシーンも、職員がドアを開けようとしたところを自分で開けていたのだった。

ヘイワードはバラバラに解体されるヴィジョンの姿をワンダに見せ、ワンダが心から愛した存在を「史上最も洗練された知覚兵器」と呼ぶ。ワンダの希望は、ヴィジョンを埋葬し、弔うことだけだった。ヘイワードはワンダの目的をヴィジョンの「復旧 (back online)」と言い、「復活 (back to life)」と言い直す。続けてヴィジョンを「30億ドル (約3,000億円) のヴィブラニウム」と表現するなど、完全にヴィジョンをモノ扱いしている。

ヘイワードはワンダに別れを言うよう求め、「彼は君のものじゃない」と告げる。ヴィジョンを近くで見たワンダは「あなたを感じられない」と、ソードを後にする。そのワンダが向かったのは、ニュージャージー州のウエストビューだった。これまでの『ワンダヴィジョン』で住民役として登場していた人々が、普段の姿で日常を生きている。

ワンダがたどり着いたのは、ヘックス内でワンダとヴィジョンの自宅になっている住所の土地。ワンダが持っていたのは土地の権利証書で、名義は「ワンダ・マキシモフとヴィジョン」になっている。戦いが終われば二人でここに家を建てて暮らすつもりだったのだろう。またも奪い去られた幸せな生活。悲しみに暮れるワンダは、ここで現実改変能力を爆発させる。瞬く間にヘックスの空間が生み出され、ワンダ自身から放たれたエネルギー波が死んだはずのヴィジョンの姿を創り出す。「おかえり」とワンダに告げたヴィジョンと共に、ワンダは幸せな思い出と共にあるシットコムの世界で新たな生活をスタートさせたのだ。

ワンダの力は「カオス・マジック」

こうして、ワンダは『ワンダヴィジョン』のシットコムの世界を生み出した。と、ここでワンダを呼ぶビリーとトミーの声が聞こえ、ワンダは外に飛び出す。そこにはビリーとトミーの首を絞めるアガサの姿が。アガサはこの一連の経緯を見て、ワンダの正体が分かったと話す。

曰く、ワンダに備わっているのは「無から創造する力」。英語では「You are supposed to be a myth.」つまり「あなたの存在は神話であるべき」と話している。その力を「家族の団欒のために使っている」と話す場面は、英語では「using it to make breakfast for dinner」と、第1話でハート夫妻に夕食として朝食の料理を出したことに触れている。

そして、アガサはワンダの力を「カオス・マジック」と形容し、遂にワンダをスカーレット・ウィッチ (緋色の魔女)」と呼ぶのだった。カオス・マジックとは、原作コミックでスカーレット・ウィッチことワンダが持つ力のことで、現実改変や次元間の移動を可能にするパワーだ。コミック版ではスカーレット・ウィッチはクトーンという神からこの力を授けられている。カオス・マジックについては、こちらの記事に詳しい。

『ワンダヴィジョン』第7話では、ワンダが異なるユニバース同士を接続するネクサス・ビーイングである可能性が示されていたが、やはりワンダにはマーベル・シネマティック・ユニバースを根元から変えてしまう力が宿っているのだろうか……。

エンドロールの後に映し出されるのは、ヘイワード長官。モニカに告げた、ワンダがヴィジョンを盗み出したという情報はヘイワードによる嘘だったわけだが、ヘイワードは「何百万回も解体しては組み直し」て、ヴィジョンを“復旧”させていた。そして、マインド・ストーンの力を宿したワンダのエネルギーを利用させ、遂にソードの兵器となったヴィジョンを起動させるのだった。

このヴィジョンの姿は、原作コミックに登場する「ホワイト・ヴィジョン」を思い出させる。ホワイト・ビジョンは以前の記憶を持たず、感情もない存在だが、果たして……。

第8話は第4話以来となるCMなしのガチ回。残り1話を残し、ヘックスが築かれた経緯、ヴィジョンを復活させた方法、ワンダの過去と現在の能力が明らかになった。しかし、ワンダの力の根源についてはまだ明らかになっていない。そして、結局全てはワンダの力によって生まれた事態だったのだろうか。この点についても注意深く見ていく必要がある。いよいよ最終回となる第9話で、残された謎が明らかになることを期待しよう。そして、ワンダとヴィジョン、ビリーとトミー、モニカと“ニセトロ”の運命やいかに。

ドラマ『ワンダヴィジョン』は、Disney+で2021年1月15日(金)より配信中。

Disney+

『ワンダヴィジョン』第1話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第2話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第3話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第4話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第5話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第6話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』第7話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

『ワンダヴィジョン』最終回、第9話のネタバレ解説・あらすじ&考察はこちらの記事から。

原作コミックにおけるビリーとトミーの設定とヒストリーはこちらの記事で。

CM解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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