第9話ネタバレ解説『キャシアン・アンドー』「反乱が最優先」の意味、キノ・ロイは遂に…あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

第9話ネタバレ解説『キャシアン・アンドー』「反乱が最優先」の意味、キノ・ロイは遂に…あらすじ&考察

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『キャシアン・アンドー』第9話はどうなった?

2022年9月21日(水) より配信を開始した「スター・ウォーズ」最新作『キャシアン・アンドー』シーズン1は、全12話で構成されている。第9話で全体の4分の3を終えることになる。いよいよシーズン1のクライマックスに突入していくことになるが、一体どんな展開が待っていたのだろうか。

今回はドラマ『キャシアン・アンドー』第9話を解説していく。以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずDisney+で本編を観てから読むようにしていただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『キャシアン・アンドー』第9話の内容に関するネタバレを含みます。

『キャシアン・アンドー』第9話「誰も聞いちゃいない!」ネタバレ解説

恐怖の拷問

第9話ではナーキーナ・ファイブに収監されたキャシアン・アンドー。かつて最高指導者スノークを演じたアンディ・サーキスが演じるキノ・ロイ監督の下で強制労働に従事することになり、ディストピア飯を食って1ヶ月が経過した。一方、キャシアンを追うデドラ・ミーロは初めてシリル・カーンと接触。デドラがキャシアンを知るビックスを捕らえたところで第9話は幕を下ろした。

『キャシアン・アンドー』第10話ではデドラによるビックスの尋問で幕を開ける。パアクは2年前に分離主義者の女性と出会い、連絡係になったという。分離主義勢力は旧共和国からの分離を求めた勢力で、ドゥークー伯爵が率いていたが裏で操っていたのはパルパティーンだった。分離主義勢力は独立を目指す国家の連合である独立星系連合に再編されたが、パルパティーンの野望が成就した後、首脳陣はダース・ベイダーによって全滅させられた。

銀河帝国は表向きには共和国の正統性を引き継いでいるため、分離主義勢力の残党は引き続きその巨大な機構に反対する勢力として活動を続けた。分離主義者の人間が反帝国を掲げ、後に反乱同盟軍に参加したのはそうした経緯によるものである。

全ての経緯を知っているデドラは、脅しながらも懐柔を試みる巧みな尋問を見せるが、ビックスは応じない。反帝国勢力が組織的に帝国の備品を盗んで捌きながらネットワークを形成し、そこで見出されたキャシアンがルーセンに紹介され、アルダーニでの革命的な強盗事件に至った。今、ビックスは帝国の備品を盗んできた実行犯とキャシアン、ルーセンの全てを繋ぐハブになっている。

結局デドラは“ドクター”を使った拷問を命じるのだが、この尋問シーンのデドラ役を演じたデニース・ゴフの演技力がすごい。これほどまでにヴィランらしい表情を作れる役者もそうそういない。そのドクターも、月にいたダイゾン・フレイという知覚種族が虐殺され、その断末魔を加工して精神にダメージを与える拷問音声を作ったという恐ろしい話を、あたかも治療について説明するかのようなテンションで説明する。グロテスクな映像を使わずに恐怖を煽る見事な演出だ。

一方、日々の労働に臨むキャシアンは、シフトで他の班に勝利することに勤しんでいた。勝てばディストピア飯に味がつく。順応しきってしまったかに見えたが、キャシアンは諦めていなかった。トイレの配管に細工し、班の外に仲間を作っている。看守がブーツを履いていないということは電撃を流す気が無いということであり、施設内の動くものは通電しない、新人が入ってくる時がチャンスということまで見抜いている。

収監された当初はかなり精神的に参っているように見えたキャシアンだが、ナーキーナ・ファイブ内も従順な囚人ばかりではないことに、勇気づけられたのだろうか。キャシアンはアルダーニでの作戦で銀河中の人々に勇気を与えたが、キャシアンもまた抵抗を諦めない人々と連帯してこの抑圧から抜け出そうとしていた。

「Rebellion comes first.(反乱が最優先)」

第8話で反乱のための資金移動に挑んでいたモン・モスマは出身国のシャンドリラ代表として、銀河元老院で新治安法に反対する演説を行なっていた。アルダーニでの事件以降、帝国は間接的にでも帝国に影響を与える犯罪は第一級犯罪とする公序再判決指令を下した。完全な独裁へ向けて段階を踏んでいるというのがモン・モスマの見立てだ。そして、歴史を見る限りこのモスマの懸念は当たっている。

一方、ナーキーナ・ファイブでは、廊下での待機中に事件が起きていた。手話でのやり取りは各階の情報を交換する手段だったようだ。2階で何かが起きているという情報に、一時的な停電と、明らかに異常事態にもかかわらず、「無駄なことをするな」と激昂するキノ・ロイ。従属したリーダーは非常事態には頼りにならない。

モン・モスマの自宅には“いとこ”が来ていたが、その正体はヴェルだった。ヴェルのことを心配するモスマにヴェルは「反乱が最優先」と言い返すが、これは前回シンタに釘を刺されたことをそのままモスマに言っているだけだ。なお、ヴェルが言う「反乱が最優先 (Rebellion comes first.)」という言い回しは、アメリカの職場などでよく用いられる「家族が最優先 (Family comes first.)」を言い換えたものである。

例えば、野球のメジャーリーグなどでも選手が大事な試合を欠場して出産に立ち会う際に、監督らは「Family comes first.」と言って選手を送り出す。家族至上主義のアメリカの作品で「反乱が最優先、他(家族など)は二の次)」というセリフが用いられる意味は小さくない。帝国の時代をひっくり返すには、それほどまでに妥協を許さない抵抗が必要だったのだ。

ヴェルはモン・モスマを「こんなところに閉じ込められて」と心配するが、モスマはモスマで戦っている。外で戦うヴェルと体制の内側で戦うモスマはかつて誓いを交わしたようで、意外なつながりが示されている。

ビックスのリスト

キャシアンは房でキノ・ロイに脱獄を考えたことはないのかと聞いていた。体制側に従順なキノ・ロイだが、出所まで残り217シフトに迫っているという。第8話では249シフトと話していたので、それから32シフトが経過したことが分かる。出所を目前に控えたキノ・ロイは、そこにリスクがほとんどないように思われても、「各階の看守の数は?」と聞くキャシアンの脱獄への協力を徹底して拒否するのだった。

デドラはISB(保安局)に戻っており、ゴーストと呼ばれるドクターを駆り出して情報を得たことを褒められていた。拷問の末、ビックスから情報を得たようだ。字幕には反映されていないが、英語では「(ビックス・)カリーンが差し出したリストには——」と、ビックスがフェリックスを経由した備品のリストをデドラに渡したことに触れている。

ドクターが使った拷問装置の強力さもさることながら、普通の人間というのは拷問には耐えきれない。ビックスが口を割ったということは、ここまでの“英雄を描かない”という『キャシアン・アンドー』のルールには則っている気がする。

フェリックスを経由した帝国軍の備品は、マヤ・ペイが関連する複数の組織に流れていたという。マヤ・ペイは前話でソウ・ゲレラが名前をあげていた反乱勢力の重要人物の一人。ゲレラはマヤ・ペイを新共和主義者としていた。

デドラの部下は髭を剃っていたという襲撃犯の特徴がキャシアンのそれと一致していることを説明し、キャシアンがアルダーニの襲撃に参加していたことまで掴もうとしていた。会議の場でも部下に発言を譲るデドラの姿は良き上司のそれである。自身の経験を反映しているのだろう。

ナーキーナ・ファイブでは、ユニット25の100人がブリッジごと焼かれたという情報が出回っていた。別班の監督ジンスカは囚人が騒いだことによって起きたと話す。一瞬取り乱したキノ・ロイは「いつも通り働け」とメンバーに告げるが、それは「黙って働いていれば出られる」という信仰が揺らぎ始めた自分に言い聞かせるようでもあった。

哀れなペリン

シリル・カーンは母イーディ・カーンと相変わらず折り合いが悪い。世話をしてやっているイーディと、それに頼りながも干渉を嫌がるシリル。イーディは前職の期間にほったらかしにされていたことに怒るが、昇進したと聞くやいなや態度を変えて喜ぶ。家を空ける時間は長くなるが、それでもイーディは喜んでおり、シリルは自分ではなく世間体を気にしている母にうんざりするのだった。

モン・モスマ一家と食事をとるヴェルはモスマの夫ペリンから「夫探しは?」と聞かれる。ヴェルはレズビアンまたはバイセクシャルだが、ヘテロセクシャルだと決めつけたペリンからのマイクロアグレッションだ。モスマはこれに顔を曇らせるが、ヴェルの「いい人は売り切れ」という返しに笑みが溢れる。ペリンと結婚したモスマのことを言っているのだろう。異性愛しか頭にない哀れなぺリンは、自分の妻のことを言われていることにも勘付けない。

テイ・コルマがモン・モスマの元カレだったことも明らかになり、モスマはヴェルを送り出す時に金持ち娘だと世間に印象付けさせるよう告げる。「暗黒と戦う道を選んだ」「それに命を捧げてる」とモスマに言うヴェルもまた、シンタからの言葉を自らに言い聞かせているようだった。再び外の世界へと歩を進めるヴェルを見送ったモスマの背中からは、内側の世界で戦う悲壮な覚悟が滲み出ている。

シリル・カーンはISBへ。昇進したのはデドラの口添えだと思い礼を言いに行ったが、違った模様。字幕ではシリルはデドラを「君」と呼んでいるが、シリルの性格からしても、立場から考えても「あなた」と呼んでいるのではないだろうか。今後二人が親密になる可能性もあるが、この時点ではシリルにISB監査官を「君」と呼ぶほどの度胸はないように思われる。

シリルは、自分が唯一危険性を見出したキャシアンをデドラも追っていたことで、生きる意味ができたという。自らが執着していた正義が存在しうるという希望が持てたのだろう。ストーカーと化したシリルに、デドラは次に近づいたら外縁部の監獄に送ると言うが、すぐにはそうしない。立場が違いすぎるがデドラもシリルの能力に可能性を感じているのかもしれない。

モン・モスマの危機

モン・モスマはテイ・コルマに過去に行われた40万クレジットの資金移動について監査が入るまでに対処しなければならないと告げられていた。この40万クレジットはルーセンに渡ったものだと思われるが、反乱活動に資金提供をしていた証拠であり、モスマは思っていたよりも危険な状況にあった。

テイ・コルマは、すぐに融資を受けて埋め合わせをすることを提案するが、その候補はシャンドリラの銀行家ダヴォ・スカルダンだという。焦るモン・モスマの口ぶりからして、ダヴォ・スカルダンは実力者であると同時にジャバ・ザ・ハットのような悪党でもあるようだ。リスクを埋め合わせるために別のリスクを取ることを迫られるモン・モスマ。モスマもまた、静かだがリスクの大きい残酷な闘いに身を投じている。

ISBは捕えたアント・クリーガー派の反乱分子のパイロットから、スペルハウスの発電所を襲う計画を掴んでいた。アント・クリーガーは前話のラストでルーセンがソウ・ゲレラを会わせようとしていた人物で、分離主義勢力の一人として挙げられていた。仲間はカフリーンにいると言われているが、カフリーンは映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) に登場した小惑星帯で、同作の冒頭でキャシアンが情報員と接触していた場所である。

この時キャシアンが接触したティヴィックという情報員はソウ・ゲレラが率いるパルチザンの情報員であり、キャシアンはティヴィックを足手まといになると判断して容赦なく殺してストームトルーパーから逃げた。キャシアンの冷酷さを象徴するシーンだったが、反乱のために手を組むことに賛同しないソウ・ゲレラの態度を見ると、キャシアンがパルチザンの人間を切り捨てると判断した背景には一定の根拠があったようにも思えてくる。

デドラは持ち前の頭の回転の速さを発揮して、情報を引き出して用済みになったパイロットを始末する隠蔽工作を提案する。細かな対応を含む帝国側の作戦会議が描かれる貴重なシーンである。

ナーキーナ・ファイブの無限地獄

ナーキーナ・ファイブでは、残り40シフトと出所を目前にした老いたウラフがいよいよ崩れ落ちる。どこか『イカゲーム』(2021) を想起させる展開だ。しかし、自身も出所を目前に控えて班内で問題を起こしたくないキノは、医者に見せずに房に戻すよう告げる。ウラフが倒れ込むと流石に医務員を呼び、通常ではない状況に緊張が高まる。ウラフを「兄弟」と呼ぶ医務員にキャシアンは「ウラフだ」と名前を告げるが、これはキャシアンが工場に入ったばかりの時にメルシがとった行動と韻を踏んでいる。

なお、ここでキノが40シフト=数日という計算になることを明かしている。キノの残り217シフトというのは1ヶ月もない感覚だろうか。しかし、医務員は脳卒中になったウラフを安楽死させようとする。医務員は「誰も救えない」と話しており、囚人には医療コストをかける気がないのかと思いきや、医務員は衝撃の事実を明かす。

医務員はウラフを安楽死させるのだが、「スター・ウォーズ」で薬による安楽死という衝撃と共に、この安楽死が善意によるものだと分かる展開が恐ろしい。医務員は、先日4階で釈放された囚人が翌日2階に送られると、噂が回って騒ぎになり、囚人たちが始末されたと明かす。

つまり、釈放されても別の回に送られるだけで、ナーキーナ・ファイブから出ることはできないのだ。「今は無理」「今後は無理」と言う医務員は、この“無限地獄”処置がキャシアンらが起こした強盗事件を機に発令された公序再判決指令をきっかけに始まったことを示唆する。

安楽死の処置が、楽に死ねた方がマシだという医務員の慈悲だったことが明らかになると、キャシアンが改めて尋ねた「各階の看守の数は?」という房で聞いたのと同じ問いに、キノは「多くても12人だ」と答えるのだった。「事なかれでやり過ごせば自分だけは大丈夫」そんな考えはただの幻想だと分かった時、キノ・ロイもまた抵抗の道を選んだのだ。

『キャシアン・アンドー』第9話ネタバレ感想

“ナーキーナ・ファイブ編”は丸々2話を使ってクライマックスへ。第4〜6話の惑星アルダーニ編を思わせる『キャシアン・アンドー』らしいペースで進んでいる。第8話・第9話・第10話はトビー・ヘインズ監督&ポー・ウィリモン脚本で制作されており、ラスト2話はベンジャミン・キャロン監督&トニー・ギルロイ脚本となっている。つまり第10話でナーキーナ・ファイブ編は完結する可能性が高い。

そんな中でキノ・ロイの“転向”は、キャシアンにとって大きな追い風だ。既にトイレに細工をしたり、新人紹介の際に隙が生まれることを見抜いているキャシアンは、半分体制側に足を突っ込んでいる指導者も味方につけたことになる。しかも各階の看守は12人以下であり、各階に50人いる囚人が結束すれば十分にチャンスがあることが分かった。

一方で、これまで班を仕切ってきたキノが抵抗を決意した背景には、帝国による人民への締め付けが強化されたことがある。これは、前回ルーセンが「抑圧が反乱を生む」と予言した通りであり、アルダーニでの作戦成功によってナーキーナ・ファイブの抑圧が強化され、反乱が起こるとすれば、ルーセンの狙い通りということになる。しかもその中心にキャシアンがいれば、反乱勢力にとっていよいよキャシアンは見逃せない存在になるだろう。

第9話はデドラの有能さが更に際立った回でもあった。パータガス少佐もすっかりデドラに信頼を寄せているようだ。デドラの活躍で分離主義勢力のアント・クリーガーによる発電所襲撃作戦が帝国側に漏れてしまったが、下手をすればアント・クリーガーに会いに行っているルーセンが危険に晒される可能性もある。作戦がバレたことで、ソウ・ゲレラのルーセンとアント・クリーガーに対する印象も一層悪くなるだろう。

一方で、後に反乱同盟軍にはISBからの離反組も加わることになる。デドラやシリルがその一員になるのかとも思われたが、デドラは今回ビックスへの拷問で一線を越えてしまったようにも思える。とはいえ、キャシアンもルーセンもとっくに一線を越えているのだが……。

モン・モスマには悪党とリスクのある交友を持つという別の種類の恐怖が迫る中、キャシアンはいつになったら反乱分子に合流するのか……。第10話から始まるシーズン1のクライマックス、ラスト3話をしかと見届けよう。

ドラマ『キャシアン・アンドー』はDisney+で独占配信中。

『キャシアン・アンドー』(Disney+)

『ローグ・ワン』はBlu-rayセットが発売中。

最高指導者スノークに続いてキノ・ロイ役で「スター・ウォーズ」に再出演したアンディ・サーキスが語る再出演の理由とキノ・ロイのバックグラウンドについてはこちらの記事で。

『キャシアン・アンドー』第10話のネタバレ解説はこちらから。

第8話のネタバレ解説はこちらから。

第7話のネタバレ解説はこちらから。

第6話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

シリル・カーンのバックグラウンドについて俳優が語った内容はこちらから。

デドラ・ミーロのバックグラウンドについて俳優が語った内容はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

 

2023年配信開始のドラマ『マンダロリアン』シーズン3の予告編はこちらから。

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』最終話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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