『キャシアン・アンドー』第5話はどうなった?
ドラマ『キャシアン・アンドー』は「スター・ウォーズ」ドラマ最新作。『マンダロリアン』(2019-) 以降、Disney+オリジナルの「スター・ウォーズ」シリーズでは広大な銀河のさまざまな人々に焦点が当てられている。
とりわけ、『キャシアン・アンドー』がスポットライトを当てるのは“普通の人々”。ジェダイが姿を消した時代にあって、後に反乱軍の情報将校になるキャシアン・アンドーが徐々に反乱分子の戦いに身を投じていく様子が描かれる。今回は『キャシアン・アンドー』第5話のトピックと注目ポイントをネタバレありで解説していこう。
以下の内容は、ドラマ『キャシアン・アンドー』第5話の内容に関するネタバレを含みます。
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『キャシアン・アンドー』第5話「やった側は忘れる」ネタバレ解説
作戦実行のメンバーたち
ドラマ『キャシアン・アンドー』は第5話から邦題がつくようになった(これまでは「エピソード4」など)。第5話のタイトルは「やった側は忘れる」。
第4話で実家に帰った企業保安局のシリル・カーンは分かり易いほどに落ち込んでいた。母のイーディ・カーンは皮肉屋だが、なんだかんだシリルを気にかけており、ハーロおじさんに受け入れを頼むという。シリル役のカイル・ソーラーはシリルが家庭に問題を抱えていてファシズムに傾倒したと話していたが、その真相やいかに。
帝国軍の武器庫を襲撃する計画に加わったキャシアン・アンドーは、目を覚ますとアーヴェル・スキーンに持ち物を調べられていた。その中には第1話で保安員から奪って殺すのに使ったブラスターも。スキーンの身体に刻まれた印の意味を聞かれたキャシアンは「クレイト・ヘッド (Krayt Head)」と「バイ・ザ・ハンド (By the Hand)」と答える。帝国の収容施設で入れられる印らしい。
ちなみに「クレイト・ヘッド」の「クレイト」は、惑星タトゥイーンに生息するクレイト・ドラゴンと同じ綴り。直近ではドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) ではその骨が登場した。
キャシアンがいたのはシポという名の少年院で、13歳から3年間そこにいたという。これは第4話で16歳の時にはミンバンで戦っていたというキャシアンの主張と一致する。少しずつキャシアンの過去の年表が埋められていくようだ。スキーンはこの戦いに参加する理由を「復讐」と話す。ここでキャシアンも参加した理由を尋ねられるが「助けを頼まれた」としか応答できず、更なる不信感を生むことになる。
そして、スキーンはネミックを信念がある少年と説明し、シンタ・カースを「冷徹で恐れ知らず」と説明する。シンタには「お相手はいる」と言うセリフは英語では「She’s already sharing a blanket.(もうブランケッはシェアしてる)」と言っており、その言葉通りブランケットを羽織るリーダーのヴェルの姿が映し出されている。
「スター・ウォーズ」映像作品での同性愛描写は、『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019) のラストシーンでようやく登場して話題を呼んだ。それもまたレジスタンスのの人々だったが、「普通の人々」を描くことを掲げている『キャシアン・アンドー』で改めて描写される意味は小さくない。
タイ・ファイターの恐怖
元老院議員のモン・モスマは夫のペリンだけでなく娘のリーダ・モスマにも手を焼いていた。リーダはこれが映像作品初登場となる。リーダは反抗期のようだが、それよりも腹が立つのは手を汚さずに母と娘を分断しようとする夫ペリンの狡猾さだ。第4話に引き続き、モスマの家庭がうまくいっていない様子の描写が続いている。
キャシアンはネミックと話し、その政治的熱心さ、芯の強さを理解する。キャシアンは金のために、スキーンは復讐のために、そしてネミックは自由と権利のためにと、それぞれが違う目的のために集っている。タラミンとヴェルに船の飛ばし方を聞かれたキャシアンは、メンバーがそれを知らなかったことに驚愕し、船はキャシアンが操縦することになる。
帝国軍は街中に本部を作ろうとしているが、ここで登場するのはデドラ・ミーロとやり合っていたブレヴィン。ティーゴ大尉を呼びつけて指示をしているが、大尉は「昇給はないらしいが」と話しており、帝国軍の待遇に不満を持っていることが窺える。
キャシアン一行は帝国兵のとして潜入する際の練習に励んでいるが、ここでキャシアンは各メンバーの利き腕を言い当てる観察眼を披露する。まだメンバーとの溝が埋まらないキャシアンだが、そのスキルには信頼を得ていく。
ここで飛来したのは帝国軍のタイ・ファイター。農家を装う一同を威嚇するかのように地上スレスレを飛んでいく。タイ・ファイターは「スター・ウォーズ」を代表する軽量機体だが、ここまで恐怖を感じるのは、徹底して地上からの視点で映像を映し出すことを意識しているからだろう。
スパイである帝国のゴーン中尉は、サボっているキムジ伍長を見つける。先住民が100人以下になっても「におった」と話すキムジのレイシズムにゴーンは反応しそうになるが、今は任務の遂行に集中するのだった。
デドラの執念
前話でフェリックスの管轄から外されたデドラ・ミーロは、それでもアシスタントと共に、部品の盗難に関する全ての書類をチェックしていた。「軍に絡むミスを認めるはずはない」とは帝国の欠点をよく言い表している言葉である。
デドラは時間が遅くなっているのでアシスタントに帰るよう言っているが、これは部下に残業をさせていたシリル・カーンとの違いを表す発言だ。アシスタントは「一緒に残ります」と自ら志願する。デドラは能力と部下からの人望があるが、やはり士官の中で唯一の女性ということで昇進を阻まれているということのようだ。実際に、デドラはあえてランダムに盗むという犯人の非作為的な作為に気づき、真相に迫りつつあった。
一方のシリル・カーンはおじさんに新しい仕事を見繕ってもらった様子。お母さんとの言い争いの様子を見ても、シリルは自立できていないことが分かる。シリルの新天地はどこに決まったのだろうか。この後、シリルは自室で手配の時に使ったキャシアン・アンドーのホログラムを見つめている。このまま退場するような人物ではなさそうだ。
ゴーン中尉の動機
キャシアンはヴェルにゴーン中尉が作戦に加わった理由を聞く。先住民の女性に恋をし、昇進と共にその女性を失ったことが反乱の理由だという。前話ではゴーン中尉はここで7年を過ごしていると話していた。先ほどの場面でサボっていた伍長が先住民を指して「におう」と言った時にはどんな心境だったのだろうか。ゴーン中尉の理由は「愛」ということが示されたところで、次はキャシアンの動機が問われることになる。
ゴーン中尉は翌日に迫る「目」の開眼に向けて部下に指示を出している。「目」とは、3年に一度アルダーニで見られる50の流星が降り注ぐ天文現象で「マック=アーニ・ブレイ・ダーニ」と呼ばれていることが前回解説された。ヴェルたちの戦略は人々がこの現象に夢中になっている間に作戦を遂行するというものだ。
ゴーン中尉は部下にあえて翌日の夜の業務を与えるが、狙い通り部下は「目」を見るために異議を唱え、ゴーンは「目」を見るための休暇を与えるのだった。そしてゴーンが塗装を命じた現場には、一同が狙う金庫室と思われる部屋があった。
異なる事情、同じ目的
スキーンはキャシアンがルーセンから前払金として預かったブルー・カイバーを見つけ出し、その素性を疑う。スキーンはこのカイバーを「3万クレジット」と言っているが、ルーセンは「最低でも5万クレジット」と話していた。十分にそれぞれの動機を聞いてきたキャシアンは、ここで自ら「金で雇われた」と正直に話す。
一同は作戦決行の場所である武器庫の近くにキャンプを張る。ヴェルに促されたスキーンは、農民だった兄が何世紀も守ってきた土地を帝国に奪われて自死したことをキャシアンに話し、二人は和解する。それぞれ異なる事情を抱えながらも、腹を割ってそれを共有することで、今は一つの目的に向かっていくことを確認しなければならない。
ここでヴェルが隊を離れ、タラミンが指揮をとることに。タラミンに対しては、潜入の練習時にキャシアンが一枚上手であるところを見せている。緊急事態でキャシアンがリーダーシップを発揮するフラグだろうか。
一方のルーセンは作戦決行を翌日夜に控えてナーバスになっていた。キャシアンを引き入れたことまで不安に感じ始めており、情緒が安定しない。アシスタントのクレヤの方がよっぽど肝が据わっている。やはりここでも完璧ではない「普通の人」たる指揮官ルーセンの姿が描かれている。だが、この作戦が終わりではなく「始まりかもしれない」というルーセンの予感は当たっているはずだ。
『キャシアン・アンドー』第5話感想
第5話のタイトル「やった側は忘れる」は、「やられた側は忘れない」という序盤のスキーンのセリフを反転させたものだ。第5話ではそれぞれの事情が語られたことで、やられた側は事情が異なっても連帯してやり返しに行くということが示されていたように思える。一方で、やった側は何をしたのかも覚えていないし、すっかり油断しているという帝国の傲慢さをも示していると言える。
第4話のラストが作戦決行の3日前。第5話ラストは作戦決行の前夜。非常にゆっくり進んでいるものの、描かれている内容に無駄はなく、2時間の映画では描ききれない様々な立場の人々の事情を丁寧に描いている印象だ。
また、全12話ともなれば、敵キャラは脱落していくのが既定路線だが、シリル・カーンの話が続いている点にも注目したい。デドラも諦めずにフェリックスの一件を追っており、二人が合流する可能性もあるだろう。真面目な二人の執念が帝国勢力の維持に寄与するのかどうかは分からないが……。
また、この作戦でキャシアンが結果を残すとして、その後も反乱軍に残り続けるためには確固たる動機が必要になる。既に反乱分子の人々との出会いで思うところはあるようだが、キャシアンのノンポリが同情などで覆るとは考えにくい。
となれば、キーになるのは第1話以降触れられていない妹の存在だろうか。同時にキャシアンも元は惑星ケナーリの先住民族であり、住む場所を追われた惑星アルダーニの先住民の人々の背景と重なる部分もある。第4話では16歳まで、第5話では13歳まで遡って触れられたキャシアンのルーツが物語に直接影響を及ぼし始めるまでは、そう遠くなさそうだ。
ドラマ『キャシアン・アンドー』はDisney+で独占配信中。
『ローグ・ワン』はBlu-rayセットが発売中。
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第4話のネタバレ解説はこちらから。
第3話のネタバレ解説はこちらから。
シリル・カーンのバックグラウンドについて俳優が語った内容はこちらから。
デドラ・ミーロのバックグラウンドについて俳優が語った内容はこちらから。
第2話のネタバレ解説はこちらから。
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