【ネタバレ解説】『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」【あらすじ・音楽・ビリー・ジョエル】 | VG+ (バゴプラ)

【ネタバレ解説】『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」【あらすじ・音楽・ビリー・ジョエル】

©️Amazon Studios

話題の『ザ・ボーイズ』シーズン2

2020年9月4日(金)より配信を開始した『ザ・ボーイズ』シーズン2。Amazonドラマの中でも人気ナンバーワンを誇る人気作品の最新シーズンだ。全話が一挙に配信されたシーズン1とは打って変わって、シーズン2では初週に三作品を配信した後、毎週新エピソードを更新している。

今回は、9月11日に配信を開始した『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」のネタバレレビューをお届けする。シーズン2は全8話で構成されているため、このエピソード4で早くも折り返し。今回もまた、衝撃の展開が待ち受けている。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4までの内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」 あらすじ&ネタバレ解説

ストームフロントとホームランダーの明暗

エピソード3におけるストームフロントの“ヘイトクライム”による被害者は59名に及んでいた。だが、この事件はケンジおよびシャイニングライトの仕業とされている。一方の真犯人のストームフロントは、新たなヒーローとして支持を広げる。これがフェイクニュースの力だ。

ストームフロントは市民の怒りをヴォートに向け、急速に支持を拡大する。これにイラつくホームランダーは、ある場所を訪れる。そこには、死んだはずのマデリンが……。エピソード4「この世に類を見ないもの」のスペシャルゲストは、シーズン1でヴォートの副社長マデリン・スティルウェルを演じたエリザベス・シュー。かつて「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで人気を集めた大物俳優だ

ホームランダーはマデリンと共にマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の映画『タクシードライバー』(1976)を観ている。

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ベトナムからの帰還兵で屈辱に塗れた主人公トラヴィスに自分の姿を重ねあわせているようだ。SNSを使いこなして共感を呼ぶストームフロントとの対比が成立している。ホームランダーはアメリカン・ニューシネマをテレビで見て共感している世代なのだ。

ストームフロントにイラつきつつも、マデリンに「セブンはあなたのチーム」と言われ、自己肯定感に包まれるホームランダー。だが、ここでマデリンの正体が明らかに。やはりマデリンは死んでおり、その正体は返信能力を持つドッペルゲンガーだったのだ。ドッペルゲンガーは、シーズン1でハニートラップ要員としてマデリンが重用していた人物だ。

ホームランダーはドッペルゲンガーにその弱みを見せていることになる。かなりのリスクをとっているようにも思えるが……。

新たな任務

一方のブッチャーは、ザ・ボーイズの創設者で元CIAのグレイスから、70年代のヒーローであるリバティーの情報を受け取る。グレイスは、指定した住所にMMことマザーズミルクを会いに行かせるよう指示する。そして、ホームランダーを追わせてベッカの捜索を打ち切った罪を償うため、グレイスはベッカの居場所に関する情報をブッチャーに与える。ブッチャーはベッカ救出を優先し、MMをリーダーに指名してザ・ボーイズを離れることに。

ヒューイを庇ったことをホームランダーに責められ、命からがら生き延びたたスターライトことアニーは、久しぶりにヒューイと会うが、二人の気持ちは晴れない。コンパウンドVの情報をリークしても状況が変わることはなく、アニーは「もう続けられない」と本心を告げる。

アニーの姿を見かねたヒューイは、アニーを任務に同行させる。ヒューイはアニーを心配しているが、MMはヒューイがアニーを必要としていることを見抜いていた。MMはヒューイが「行き過ぎ」を知らせてくれる“カナリア”だと気づいている。アニーを同行させることを認め、3人は車でノースカロライナを目指す。

その頃、ブラック・ノワールはヴォートのスタッフを使い、ブッチャーの情報を集めていた。言葉を発さないため、スタッフも相当な忖度が必要だ。Aトレインはというと、ホームランダーからセブンをクビになることを言い渡される。ホームランダーはシーズン3の排水路でAトレインが走れなくなっていることを見抜いていた。ホームランダーは「弱点だらけ」と語るセブンを整理しようとしているようだ。

それぞれの再会

アニー、ヒューイ、MMがノースカロライナに向かう道中、看板には「ヒーローを中絶したかも」の文字が。そう、3人が向かうノースカロライナはアメリカ南部に位置しており、人工中絶に反対する保守的な土地柄だ。なお、この広告の文言は、スーパーヒーローたちがコンパウンドVを使って後天的に生まれた存在だと分かった今では意味のない広告になってしまっているという、非常に皮肉の利いた演出だ……。

車中はビリー・ジョエルの「ハートにファイア」(1989)の曲で盛り上がるが、MMは「旅行じゃない」と切り捨てる (「ハートにファイア」についての解説は後述)。その直後に映る農場の建物には、南北戦争で奴隷制を維持することを掲げた南軍の旗をマントにしたホームランダーの姿が描かれている。黒人であるMMにとって、どのような歓迎を受けるか分からない命がけの任務だ。

それでも、立ち寄ったドーナツ屋さんで、アニーとマザーズミルクは父親についての思い出話を共有する。ここで、アニーはマザーズミルクが強迫性障害であることを理解する。潔癖症で、物をきちんと並べたくなったり、無意味と分かっていても決まった行動をとったりする傾向を持っている。

MMを演じたラズ・アロンソは、アフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』で、自身も強迫性障害であることを明らかにしている。曰く、共演者の控え室を自分で掃除するのだという。ラズ・アロンソは、このエピソード4について「演じやすかった」と語っている。

その頃ブッチャーは、早速ヴォートの施設に忍び込み、難なくベッカとの再会を果たしていた。二人の愛を確かめ合うと、ベッカは、シーズン1のラストでホームランダーがブッチャーを殺さなかった理由を明らかにする。ベッカはホームランダーに対し、ブッチャーを殺せば息子の前でホームランダーのせいだと言って自殺すると脅したというのだ。息子との関係を切望していたホームランダーは、その要求を飲まざるを得なかった。

アニーとヒューイ、ブッチャーとベッカは、それぞれ久しぶりのひと時を過ごす。アニーはセブンで、ベッカはヴォートの施設で偽りの自分を演じる生活を強いられていた。ブッチャーはベッカのおかげで救われたこと、なのに自分はベッカを救えなかったことを悔やみ、この先の人生をベッカに捧げることを誓う。

“整理”を続けるホームランダー

ホームランダーはセブンの“整理”を続ける。テレビのインタビューを受けたホームランダーとクイーンメイヴは、ヒーローの92%が白人であり「#HeroesSoWhite」というハッシュタグが流行しているという質問を投げかけられる。これはアカデミー賞のノミネートおよび受賞者の多くが白人であることへの抗議活動に用いられた「#OscarSoWhite」を転用したものだろう。

これに対し、ホームランダーはクイーンメイヴがレズビアンであり、セクシャルマイノリティであるということを明らかにし、その事実を盾にする。人種の話をしているのだが、滅茶苦茶である。更に、クイーンメイヴにはヒスパニックの恋人がいると、元恋人のエレナの存在を明らかにする。無茶苦茶である。

収録後、ホームランダーは「私は多くのウソをつかれ限界に達している」と、クイーンメイヴに告げる。これは正直な気持ちだろう。一方で、エレナとの関係を認めたクイーンメイヴに対しては「幸せを願う」と言い、意外な反応を見せる。

一方、ストームフロントはコンパウンドVの抗議集会に登場し、スピーチを繰り広げていた。企業やスーパーヒーロービジネスを批判しながらも、「国境を越えて、隣であなたを狙っているかも」と語る。疑心暗鬼を煽る典型的なヘイトスピーチだ。ホームランダーに頼るか、ヴォートや政府に改善を迫るかを民衆に問い、喝采を浴びる。

そして、復讐のためにストームフロントに近づくキミコの手を取ったのはフレンチー。エピソード4では登場時間は少ないものの、ケンジの死をきっかけにキミコとの関係が崩れ、もがくフレンチーの姿が描かれている。シーズン1にも登場したシェリーの「ランプライターに焼かれた子どもとたち」という気になるワードも登場している。

なかったことにされる黒人への暴力

ヒューイ、アニー、MMの3人は、指示された住所に到着。住所の家の主である黒人女性のハンターに、MMは弁護士としてヴォートと戦って死んだ父の戦いを引き継いだと説得し、話を聞くことに成功する。女性は黒人少女の話など誰も信じてもらえなかったと当時のことを回想する。MMは「当然だ」と答え、若い白人であるヒューイとアニーの二人はやるせない表情を浮かべる。

『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』によると、このエピソードの撮影が行われたのは2019年の夏だったという。現在、警察による黒人への暴力に抗議する「#BlackLiveMatter」運動が盛り上がりを見せているが、『ザ・ボーイズ』シーズン2は、当時からこの話題をエピソードに登場させる予定だったのだ。

MMを演じたラズ・アロンソは、ハンターとの会話のシーンについて、「アフリカ系アメリカ人には馴染みのある話」「話したことがなくても、同じような経験をしているから共感できることがある」と、多くの黒人がこの社会で経験していることだ説明する。

市民を守るはずの警察を呼んだとしても、何が起きるか分からないという現実を生きているのだ。ラズ・アロンソは、警察による黒人への暴力について、ようやく黒人以外も話題にするようになり、自由に議論できるようになった、これまでは誰も意見しなかったと、目に涙を浮かべながら語っている。

ハンターの少女時代、ハンターの兄はスーパーヒーローのリバティーに言いがかりをつけられ、殴り殺されたという。リバティーはヒーローとして「黒人を掃除している」と主張していたという。ハンターの話は信じてもらえるはずもなく、ヴォートからわずか2,000ドル (約20万円) を受け取り、この出来事に蓋をする。Aトレインに恋人を殺されたヒューイに対する対応と同じだが、金額は雲泥の差だ。

そしてハンターは驚愕の事実を提示する。1979年以降姿を見せていないリバティーというヒーローの正体がストームフロントだというのだ。今や国民的ヒーローになったストームフロントの正体が、ヘイトクライムに手を染めた人物だった——この事実に行き着いたが故にCIA副長官のレイナーは頭を吹き飛ばされたのではないか……パズルのピースが埋まっていく。

それぞれの別れ

ホームランダーはというと、エゴサをして溢れるネットミームにブチ切れていた。“人事業務”の最後の刃がストームフロントに向けられる。「俺がセブンの顔だ」「愛されているのは私だ」と主張するホームランダーに、ストームフロントは「痛々しい」と言い返す。

ストームフロントは、ホームランダーが指示を出したマーケティングのまずさ、全国民に愛されようとする無謀さを指摘。必要なのは「愛してくれる5,000万人」より「憤る500万人」だと主張する。「You have fans, I have soldiers (あなたのはファン、私のは兵士)」だというのだ。

ストームフロントはホームランダーを「時代と共に変わらなきゃ」となだめるが、ホームランダーは「助けは必要ない」と突き放す。ホームランダーはストームフロントを言いまかせないまま、その場を立ち去るしかなかった。

ベッカと共に逃げようとしていたブッチャーだったが、ベッカはこれを拒否する。ブッチャーがライアンの存在に耐えきれないと判断したのだ。ブッチャーはライアンのことを「freak=化け物」と呼んでしまうブッチャーが気にしていたのは、ライアンにスーパーヒーローとしての力が宿っているかどうかだった。

ベッカは、ホームランダーにレイプされた時にまずヴォートに頼ったこと、つまりブッチャーを頼れなかったことを明かす。ブッチャーはベッカに出会う前から“戦い”に身を投じている。何かあった時にベッカには止めることができない。そう考え、ベッカはブッチャーに別れを告げる。

ベッカを演じたシャンテル・ヴァンサンテンは、『裏側』で、「ビリーがベッカを守って犠牲になることが許せない」と、ブッチャーのことを思っての決断だったと明かしている。

同じくアニーもヒューイに、「楽しんでる場合じゃない」「皆ひとり。それが現実」と、別れを告げる。ヒューイもブッチャーも再会を果たし、そして再び別れを経験する。

一方でディープは結婚相手を選ばれていた。イメージを改善してセブンに復帰させるための作戦だ。ディープはディープで強制的な“出会い”によって新しい一歩を踏み出そうとしていた (?)。

そして『ザ・ボーイズ』シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」のラストシーン。ストームフロントから「皆から愛されようとする痛たしさ」を指摘されたホームランダーは、「誰も必要ない。自分以外は」と、極端な結論に至っていた。

なんとかホームランダーを喜ばせようとするドッペルゲンガーはホームランダー自身に姿を変える。だが、ホームランダーが直面したのは、自身の哀れな姿だった。「皆に愛されなくていい」「誰も必要ない」との想いに拍車がかかり、ホームランダーはドッペルゲンガーを殺してしまう。

愛を欲していたモンスターは、愛を欲しないモンスターになってしまったのだろうか……。

「この世に類を見ないもの」で流れた音楽

カーリス「Le temps」

シーズン2エピソード4「この世に類を見ないもの」では、使用された音楽は少なかったものの、印象的な曲が使われていた。まず、タイトルシーンで使用されていたのはカーリス (Kaaris)の「Le temps」(2015)。フレンチーがコカインをキメている時に流れている曲だ。

カーリスはコートジボワール出身でフランスで活躍しているラッパーだ。シーズン2エピソード1では、フレンチーはアルジェリア系のフランスのラッパーメディンの曲を流していた。やはりフランスのラッパーの中でも、多様なルーツを持つラッパーをチョイスしているようだ。

ビリー・ジョエル「ハートにファイア」

ヒューイ、アニー、MMの3人がノースカロライナに向かう車中でラジオから流れてくるのはビリー・ジョエルの「ハートにファイア」(1989, 原題: We Didn’t Start the Fire)だ。この曲は、『ザ・ボーイズ』シーズン2のトレーラーに採用されていた曲でもある。

「ハートにファイア」はビリー・ジョエルが生きた時代を、各時代の象徴的な出来事と共に振り返る曲だ。「イラン革命、アフガン侵攻」「対外債務、ホームレス帰還兵」と歌われ、サビでは「We didn’t start the fire = 私たちが始めたわけじゃない」と歌われている。

もはやビリー・ジョエルの存在は欠かせなくなってきた感もあるが、それぞれの再会と別れを経て、『ザ・ボーイズ』シーズン2の後半はどのような展開を見せてくれるのだろうか。

シーズン2エピソード5のネタバレ解説は以下のリンク先から。

『ザ・ボーイズ』シーズン2は、Amazonプライムビデオで10月9日まで毎週金曜日に更新。

各話の裏側が語られるアフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』も同時公開中。

原作コミックの日本語版はG-NOVELSより発売中。

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齋藤 隼飛

1991年生まれ。
社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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