「キノ・ロイは元組合のリーダー」アンディ・サーキスが『キャシアン・アンドー』での「スター・ウォーズ」再出演とキャラクターについて語る | VG+ (バゴプラ)

「キノ・ロイは元組合のリーダー」アンディ・サーキスが『キャシアン・アンドー』での「スター・ウォーズ」再出演とキャラクターについて語る

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『キャシアン・アンドー』にあの人登場

映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977) と映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) の5年前を舞台に反乱分子の戦いを描くドラマ『キャシアン・アンドー』。2022年9月にシーズン1の配信を開始し、11月からはシーズン2の撮影も始まる。

シーズン1開始前から2シーズンの制作が決まっていた『キャシアン・アンドー』だが、描かれるのは英雄の物語ではなく、帝国の時代の銀河を生きる“普通の人々”。その人々が反乱同盟軍の結成に向け、数年後に控える帝国時代の終焉に向け、それぞれの戦いを見せるというのが本作の醍醐味だ。

その中でも「スター・ウォーズ」ファンの話題をさらったのは、アンディ・サーキス演じるキノ・ロイという人物。シーズン1の第8話「ナーキーナ・ファイブ」から登場したキノ・ロイは、主人公キャシアン・アンドーが収監される施設の“工場”で監督を務める。囚人でありながら囚人を管理する立場に回った人間である。

「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラムや「猿の惑星」シリーズのシーザーのモーションキャプチャー、『ブラックパンサー』(2018) のユリシーズ・クロウ役、『ザ・バットマン』(2022) のアルフレッド役で知られるアンディ・サーキスの登場に驚いた方も多いだろう。アンディ・サーキスは「スター・ウォーズ」続三部作では最高指導者スノークをモーションキャプチャーで演じており、『キャシアン・アンドー』で生身のまま出演したことで、「スター・ウォーズ」において一人二役を演じることになったからだ。

「スター・ウォーズ」再出演を語る

アンディ・サーキスは意外な形で「スター・ウォーズ」への再出演を果たしたことについて、米Vanity Fairのインタビューでその理由を語っている。なんでも再出演に際しては葛藤もあったそうで、再出演を決めた最大の理由についても明かしている。

(視聴者はキノとスノークに何らかのつながりがあると思う?)分かってますよ! それが難しいところだったんです。人々が絶対にそう考えるだろうと分かっていましたから。なんででしょうね? やるかどうか少し迷ったんですが、やると決めたのは純粋に『ローグ・ワン』が好きだったからです。

あの作品の現実的でありながらも壮大な世界観が本当に好きでした。同時に、非常に権力のある最高指導者とは対極のキャラクターを演じることができたんです。(キノ・ロイ)は現実世界にも存在するリアルな人物です。

アンディ・サーキスは、「スター・ウォーズ」シリーズに再出演した理由として、『キャシアン・アンドー』の前作にあたる映画『ローグ・ワン』の世界観が好きだったことを挙げている。また、キノ・ロイというキャラクターにも惹かれたとしており、“『キャシアン・アンドー』のキノ・ロイ”というオファーだったからこそ再出演が実現したことが示唆されている。

キノ・ロイという人物

では、アンディ・サーキスは自身が演じたキノ・ロイという人物をどのように捉えているのだろうか。まず、キノ・ロイが長い時間を過ごしてきたであろうナーキーナ・ファイブという場所については、映画『ショーシャンクの空に』(1994) を例に挙げ、「ショーシャンクはオペラが聴けるので贅沢ですよ(笑)」と話し、現実の刑務所よりも過酷なものであるとしている。シャワーはなく蒸気を浴びるだけで、仕事着には着替えるが部屋着と同じ種類の服であることも明かしている。

アンディ・サーキスはナーキーナ・ファイブに収容されている人々についてはこう語っている。

彼らは最下層の人間です。この環境では人間は大事ではありません。非人間的に扱われ、アイデンティティを奪われ、他の人間と全く同じだと感じるのです。その点ではある意味、“大規模な平等”と言えるでしょうね。

では、キノ・ロイはどのようにしてナーキーナ・ファイブにやって来たのだろうか。アンディ・サーキスは自身が演じたキャラクターについて、そのバックグラウンドを以下のように想像している。

私がキノのバックストーリーとして想像していたのは、彼が収監される前は労働組合のリーダーだったということです。彼は現場監督として働くことに慣れています。彼はおそらく労働者の権利を守ろうとしたことで刑務所に入れられました。そして、彼が今までやってきたことだったので権限のあるポジションに就かされたのです。

彼は生まれながらのリーダーですが、本当にただ刑期を終えたいだけなんです。家族がいますから。投獄されましたが、出所して家に帰りたがっているし、それは実現すると思っているんです。

つまり、アンディ・サーキスの考えでは、キノ・ロイはナーキーナ・ファイブで刑期を過ごす中で権限のあるポジションを獲得していったわけではなく、初めからその能力があるということで監督のポジションに据えられているということだ。元は組合のリーダーとして労働者の権利のために戦ったキノ・ロイが、すっかり牙を抜かれてしまった背景には、家族の元へ帰りたいという思いがあるとも話している。アンディ・サーキスがキノ・ロイを「現実世界にも存在するリアルな人物」と表現したように、かつての労働組合のリーダーであっても非人間的な環境の中では心を閉ざしてしまう。

収監された後のキノ・ロイの変化については、アンディ・サーキスは米Colliderで以下のように説明している。

収監された後、彼は自分以外の人々の面倒を見ようという気持ちをほとんど失くしてしまいました。ただ刑期を終えて出る。外に出るために刑期と拷問と感覚が麻痺する日々を生き延びる。その麻痺した感覚によって、少し目標を失いながらも硬直し、強靭な殻にこもってしまったのだと思います。

シーズン1第8話から始まった『キャシアン・アンドー』ナーキーナ・ファイブ編の醍醐味の一つは、キノ・ロイの閉ざされた心がどうなるかということだ。銀河中に火種をばら撒くキャシアン・アンドーは、キノ・ロイとナーキーナ・ファイブをどんな結末に導くのだろうか。

ドラマ『キャシアン・アンドー』はDisney+で独占配信中。

『キャシアン・アンドー』(Disney+)

Source
Vanity Fair / Collider

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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