ネタバレ解説『ウェアウルフ・バイ・ナイト』ブラッドストーンとは? マンシングって? ブレイドに繋がる? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『ウェアウルフ・バイ・ナイト』ブラッドストーンとは? マンシングって? ブレイドに繋がる? あらすじ&考察

© 2022 Marvel

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』配信開始

MCU初のハロウィンスペシャルドラマ『ウェアウルフ・バイ・ナイト』が2022年10月7日(金) より配信を開始した。本作は1時間弱で構成された単発作品だが、MCUの世界観を共有した作品になる。

一方で、ケヴィン・ファイギは本作が「MCUの新たな一面を紹介する」と発言している通り、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』はMCU初のホラー作品になる。これまで様々なジャンルを乗りこなしてきたマーベル・スタジオだが、本作はどのような仕上がりになったのだろうか。そして、MCU世界全体に影響を与えるような仕掛けはあったのか。今回は『ウェアウルフ・バイ・ナイト』の各シーンを解説いこう。

なお、以下の内容は『ウェアウルフ・バイ・ナイト』の内容に関するネタバレを含むため、必ずDisney+で本編を鑑賞してから解説を読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ウェアウルフ・バイ・ナイト』の内容に関するネタバレを含みます。

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』ネタバレあらすじ&解説

ブラッドストーンとは

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』は「マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション」のタイトルロゴから始まり、いつものMCUのオープニング、かと思いきや、クラシックなホラー調アレンジが加わった特別版のオープニングで幕を開ける。冒頭からワクワクさせる作りになっていると共に、MCUとホラーの融合を一発で印象付ける演出になっている。

冒頭のナレーションでは、ヒーローたちが活躍する世界の一方で、モンスターとハンターがしのぎを削る闇の世界が存在していることが紹介される。そして、モンスター・ハンターのリーダーだったブラッドストーン家の死を聞きつけ、モンスター・ハンターたちが世界中から集った、というのが『ウェアウルフ・バイ・ナイト』の設定だ。

モンスター・ハンターたちの目当ては相続品であるブラッドストーン。「最強の石」と称されているあたりインフィニティ・ストーンを想起させるが、ブラッドストーンは「ブラッドジェム」という名前で原作コミックに登場する。元は宇宙から来た隕石のかけらという設定である。原作コミックでは、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) で復活したバロン・ジモもブラッドジェムを狙っていた。

なお、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』では、モノクロの画面でブラッドストーンだけが赤く輝く演出が取り入れられている。これはドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) でも見られた手法で、この時は白黒の映像の中で外界から入ってきたものや血だけに鮮明な色がつけられていた。

デスゲーム開幕

最初に登場するのはメキシコ出身の俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが演じるジャック・ラッセル。本作の主人公だ。ガエル・ガルシア・ベルナルは映画『チェ・ゲバラ&カストロ』(2002)、『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004) でチェ・ゲバラ役、アニメ『リメンバー・ミー』(2017) でヘクターの声を演じたことで知られる。

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ジャック・ラッセルが部屋に入ってモンスター・ハンターたちと順に顔合わせをしていくシーンで流れている曲はTeddy Joyce「I Never Had A Chance」「私には最初からチャンスはなかった」と歌われているが、これは誰にとっての言葉なのだろうか。

モンスター・ハンターのジョシュアはジャックに「人目を忍ぶ仕事だとは分かっているが」と、モンスター・ハンターがエターナルズのように人々に気づかれずに暮らしていることに触れている。そして登場したのはローラ・ドネリー演じるエルサ・ブラッドストーン。原作コミックにも登場するユリシーズの娘である。20年ぶりに帰ってきたエルサの狙いはブラッドジェム。エルサはいずれ父を超えると思われていたが家を出て行ったことで義母のヴェルーサとは不仲になってしまったらしい。

会合が始まると、ジャック・ラッセルだけ桁違いで100もの怪物を倒してきたことが紹介される。また、死んだユリシーズはぜんまいじかけで喋るメッセージを残しており、最も強く、使命に身を捧げる者が新たな指導者になると予告すると、今から解放される怪物を仕留めた者がブラッドストーンを手に入れて新たなリーダーになると宣言する。

武器は庭に隠しているものを探すなど、ホラーものというよりデスゲームものの様相を呈してきた『ウェアウルフ・バイ・ナイト』。全員がハンターであり、全員が獲物という状況のゲームが始まる。

マンシング登場

カルト的な誓いの言葉が復唱される中、一番手になったジャック・ラッセルが送り出される。「流血無くして平和なし」と怪物の殲滅を誓うこのシーンは、エルサだけ言葉を復唱していない。そのエルサが見つけたレコードプレイヤーから流れている曲はVera Lynn「Wishing」(1939)「願えば現実になる」と歌われている。

先ほどはエルサのいない部屋で「私にチャンスはなかった」と歌われており、今度はエルサだけがいる場面で「願えば叶う」と歌われている。かなり分かりやすくヒントを提示する演出だ。

直後、ジャックと遭遇したエルサは斧使いのジョヴァンからジャックを助けると、ジョヴァンの斧を奪って逃走する。石壁の角に顔を打ちつけられても平気な様子を見るに、エルサも普通の人間ではないのだろうか。更にエルサは出会したサイモンも仕留めるが、その戦いっぷりはジェシカ・ジョーンズを想起させる。

ジャックは解き放たれた怪物に見つかってしまうが、ジャックはモンスター・ハンターではなく、怪物を助けに来た側だった。そして、この怪物というのは原作コミックで登場するマンシングのことだった。原作コミックでは、元は人間の化学者だったが、血清の副作用で植物の怪物になってしまったという設定になっている。MCU版でも元人間という設定になっているのか、ジャックともしっかり意思の疎通がとれている。ちなみにマンシングは、ドラマ『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) でも名前に触れられていた。

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ハンターのリンダに見つかったジャックは咄嗟に逃げるも扉が開けられない棺の保管庫に逃げ込んでしまい、そこにいたエルサと合流する。自分のネクタイを包帯にしてあげる優しいジャックは、エルサを信じて正直に石を狙っていないことを打ち明ける。

ジャックは、エルサと自分の家族には「逃れられない」という共通点があると話し、「良かれ悪しかれ家族は大気のように頭上を漂う」と語る。ジャックが怪物を助け続けることにも家系が関係しているようだ。これまで数多くのマーベル作品で“家族”がテーマになり、「家族は大事」という結論になってきたが、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』は一味違っていそうだ。

ジャックの正体

エルサはおばが生き返れると信じて棺に入れていたドアの鍵を見つけて脱出に成功。ジャックはマンシングを逃すために、エルサは石を手に入れるために協力することに。ここでマンシングの名前がテッドであることが明らかになる。テッドというのは原作コミックにおけるマンシングの元の人格セオドア・サリスのあだ名 (Theodore→Ted)である。

ジャックは脱出路を確保し、エルサはテッドを確保するため二手に分かれる。テッドは一瞬でジョヴァンの頭を燃やす圧倒的な強さを見せるが、エルサはジャックの助言通りに「テッド」と呼びかけて心を通わせることに成功する。

ジャックも(グダグダになりながらも)壁を爆破することに成功。エルサがブラッドストーンを取り外して、マンシングは無事に外界へと逃げ出して行った。ところが、ブラッドストーンに触れようとしたジャックが吹き飛ばされたことで事態は一変する。ブラッドストーンにダメージを受けるということは、ジャックはモンスターであるということが判明したのだ。

エルサもマンシングを逃したことで捕らえられてしまい、二人は檻の中へ。エルサはジャックがモンスターだったことにあからさまな嫌悪感を示している。モンスターへの差別というのも『ウェアウルフ・バイ・ナイト』のテーマの一つのようだ。

ジャックは「力を抑えるシステム」を使っているといい、月に一度、満月の夜に閉じこもれば安全だと話す。5日後まで満月は訪れないというが、石を使えばすぐに怪物に変身させられてしまうと知ったジャックは、エルサの臭いを覚えて事態に備えることに。この方法は過去に一度成功したという。

石を持ったヴェルーサが登場すると、自分手を汚さずジャックにエルサを始末させるために、石を使ってジャックをモンスターに変身させる。そしてジャックが変身したのはウェアウルフ(狼男)だった。クラシックなホラーの画を撮るためとはいえエルサはちょっと怯えすぎだと思うが。

ウェアウルフ・バイ・ナイトは檻を破ると無双状態。見た目はかなりクラシックな狼男だ。原作コミックのオリジナル版とほとんど相違はなく、上半身の服は破れてなくなり、ズボンだけ残っている点も原作コミックを踏襲している。

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なお、ウェアウルフ・バイ・ナイトが戦うブラッドストーン家の衛兵たちはドラマ『ロキ』(2021-) に登場したTVA(時間変異取締局)に装備と武器の形状が似ている。もしかすると予算削減のために小道具を使い回したのかもしれない。予告編のリアクションでは『ウェアウルフ・バイ・ナイト』にTVAメンバーが登場すると喜ぶファンもいたが、これは事実ではなかったので注意していただきたい。

最後の曲は?

エルサは見事な剣の腕前でハンター二人を倒し、ウェアウルフ・バイ・ナイトは衛兵を一掃する。直後、ヴェルーサのブラッドストーンの力の前にウェアウルフ・バイ・ナイトは窮地に追い込まれるが、ここはエルサがヴェルーサを仕留めてことなきを得る。

ジャックはウェアウルフ・バイ・ナイトのままでエルサに襲い掛かろうとするが、ここはエルサが宥めてジャックは逃げていく。ナターシャとハルクで見た流れだ。また、まだ生きていたヴェルーサは助けに来たテッドによって退治される。意地悪で魔女的な養母がヴィランで最後には罰せられるという作りも含め、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』は極めてクラシカルな作りだった。

モンスターに対して偏見を抱いていたエルサは、自身が助けたモンスターに恩返しをされるという経験を経て、心変わりしただろうか。エルサはブラッドストーン家の新たな主となると、ブラッドストーンの光によって世界に色がつき、Judy Garland「Over The Rainbow」(1939) が流れる。言わずと知れた『オズの魔法使い』の主題歌である。「信じた夢は現実になる」「虹の向こうのどこかで青い鳥が飛ぶ」と歌われている。

人間の姿で目を覚ましたジャックは、テッドが作ったキャンプで平和な朝を迎える。二人は談笑し、ジャックは助けてもらったお礼にテッドに寿司を奢ることを約束してスペシャルドラマ『ウェアウルフ・バイ・ナイト』は幕を閉じる。

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』考察&まとめ

ミッドナイト・サンズ結成が加速?

ハロウィン・スペシャル『ウェアウルフ・バイ・ナイト』は、54分(本編は約48分)という短さもあって、お話としては様々な設定が深掘りされないままで終わってしまった。それでも、ジャック・ラッセル/ウェアウルフ・バイ・ナイトという新キャラの紹介としては申し分なく、次回MCU作品に登場するのが楽しみになった。これはガエル・ガルシア・ベルナルの魅力的な演技も手伝ってのことだろう。

一城の主人となったエルサ・ブラッドストーンは、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) のシャロン・カーターや、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) のシャーリンのように、パワーを得てラストを迎えるというパターンだった。エルサ・ブラッドストーンは、原作コミックでも父からブラッドストーン(ブラッドジェル)を引き継ぐ設定になっている。単独コミック『ブラッドストーン』で生まれたキャラクターであり、今後も主要キャラとしての扱いを受けるだろう。

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エルサはコミック『ゴーストライダー』から誕生したチーム“ミッドナイト・サンズ”のメンバーでもある。ブレイドやモービウス、ムーンナイトら神秘的な力を持つメンバーが所属しており、ドラマ『ムーンナイト』(2022) で主演を務めたオスカー・アイザックはムーンナイトでミッドナイト・サンズに参加したいと話していた。ワーウルフ・バイ・ナイトもそのメンバーであり、エルサと合わせてミッドナイト・サンズ結成を加速させる作品になったと言ってもよいだろう。

『ブレイド』に繋がる?

次に繋がりが見えてくるのが、2023年以降に公開予定の映画『ブレイド(原題:Blade)』だ。前述の通りブレイドもミッドナイト・サンズのメンバーだが、同時にヴァンパイア・ハンターでもある。モンスター・ハンターであるエルサの登場によって、“ハンター”という職業がMCUに紹介されたことは、『ブレイド』への導入だったのではないだろうか。

MCUでは、ドラマ『ロキ』(2021-) とドラマ『シー・ハルク』(2022) でヴァンパイアの存在に触れており、『ブレイド』までに世界観を調和しようとする努力が感じられる。また、ブレイドはヴァンパイアと人間の両方の血を継いでおり、人間とモンスターの対立が紹介された『ウェアウルフ・バイ・ナイト』で深掘りできなかったテーマを扱うにはピッタリの作品だと言える。

『ブレイド』は、映画『エターナルズ』(2021) のラストから繋がることが明言されているが、『ウェアウルフ・バイ・ナイト』勢が登場すれば更に熱い展開になる。『ブレイド』が様々な作品のお膳立てを受けているとすれば凄い話だが、同作は先日、撮影開始2ヶ月前のタイミングでバッサム・タリク監督の降板が発表されたばかり。制作が難航していることも伝えられており、まずは無事に完成することを願おう……。

深掘りされなかったテーマ

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』で触れられながらも深掘りされなかったテーマが“血筋”と“差別”だろう。モンスター・ハンターのリーダーの一族だったエルサは反発して家を出たが、モンスターに対する嫌悪は持ち続けていた。また、ジャックが少し触れた自分の家系については明かされないままだった。

原作コミックではウェアウルフ・バイ・ナイトの力はジャック・ラッセルの先祖が狼男から受けた呪いのせいで代々引き継いでしまうものである。おそらくMCU版でもジャックはそのことを示唆して家族から「逃れられない」と言ったのだろう。

人間だが呪いを受けて怪物になってしまうジャック。原作の設定通りなら、マンシングも人間だったが後天的に怪物になってしまった存在だ。それはハルクやキャプテン・アメリカ、スパイダーマンだって同じことだ。SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)に目を向ければ、後天的にヴァンパイアになったモービウスもいる。先述のようにブレイドは人間とヴァンパイア両方の血を継いでいる。

様々な背景を持つモンスターと、それを狩ろうとするハンター。この関係性は、言い換えればヴィランとヒーローの関係にも当てはまる。モンスターと断じた相手を勝手に裁いていいのか、モンスターに対する偏見をなくしていくにはどうすればいいのか……今後『ウェアウルフ・バイ・ナイト』を引き継ぐ物語では、この辺りのテーマも掘り下げられていくことに期待しよう。

また、MCU的には「モンスター」「ヒーロー」「ヴィラン」をどのように区切るのか、という問題も出てくるだろう。他作品との繋がりで言えば、『ワンダヴィジョン』のスピンオフドラマ『アガサ:カヴン・オブ・カオス (Agatha: Coven of Chaos)』は相性がいいかもしれない。モンスターを従えるアガサの姿も見てみたい。

多くの期待を残した『ウェアウルフ・バイ・ナイト』。次の登場はいつになるのか、目を凝らして
MCU作品を見ていこう。

なお、2022年冬には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデイ・スペシャル(原題:The Guardians of the Galaxy Holiday special)』が配信されることが発表されている。こちらも楽しみだ。

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』は2022年10月7日(金) より、Disney+で配信中。

『ウェアウルフ・バイ・ナイト』(Disney+)

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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