『ワンダヴィジョン』“考察させる”戦略 配信ドラマならではの伏線攻勢、過去と今後のMCUを巻き込んだ大胆なアプローチ | VG+ (バゴプラ)

『ワンダヴィジョン』“考察させる”戦略 配信ドラマならではの伏線攻勢、過去と今後のMCUを巻き込んだ大胆なアプローチ

© 2020 Marvel

人気を集める『ワンダヴィジョン』

Disney+で2021年1月15日(金)より配信を開始したドラマ『ワンダヴィジョン』。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) のその後を描くMCU最新作で、人体実験を受けてスーパーパワーを身につけたワンダ・マキシモフと、シンセゾイド (人格を持ったアンドロイド) のヴィジョンを主役に据えた作品だ。批評サイトのRotten Tomatoesでは、批評家からの評価が94%、一般視聴者からの評価が79%と、第3話配信時点で高い水準を維持している。

同じくDisney+で配信され人気を集めた『マンダロリアン』(2018-) は、「スター・ウォーズ」フランチャイズの最新作として制作され、爽快な冒険譚として愛された。一方の『ワンダヴィジョン』は、アメリカの昔懐かしいシットコム (シチュエーションコメディ) 風に仕上げながらも、エピソードを経るごとに時代が進んでいく不思議な展開を見せる。そして、その最大の特徴は、ワンダとヴィジョンの置かれている状況について全く説明がなく、全編にわたって謎だらけという点だ。

『ワンダヴィジョン』人気の秘密

そしてここにこそ、『ワンダヴィジョン』の人気の秘密がある。つまり、謎こそが肝なのだ。これまでにもMCUと世界線を共有するドラマシリーズは存在していたが、『ワンダヴィジョン』の物語は決してサイドストーリーではなく、今後のMCU全体に影響を及ぼす重要な作品とされている。『ワンダヴィジョン』においてワンダとヴィジョンが置かれている状況や、この世界の真実は今後のMCU本編にも影響を及ぼすことになる。

そして、『ワンダヴィジョン』で次々と示される謎を明らかにするヒントは、過去のMCU作品の中に散りばめられている。例えば、第2話「チャンネルはそのまま」でラジオから聞こえてくる声は、『アントマン&ワスプ』(2018) に登場したFBI捜査官ジミー・ウーの声と一致している。劇中に挿入されるCMも過去のMCU作品を想起させるものが多い (『ワンダヴィジョン』のCM解説はこちらから)。こうしたヒントを読み解いていくことで、徐々に劇中世界の片鱗が明らかになっていく。

考察させる戦略

つまり、『ワンダヴィジョン』の人気の理由の一つは「考察できる」ということだ。配信ドラマという公開形態は、テレビや劇場公開と違い、映像を止めて繰り返し鑑賞できるため考察にはもってこい。各話約30分で毎週配信とストーリーが短く区切られていることも、考察を促進する要因になっているだろう。同じ“ドラマ”でも、テレビドラマとは違う配信ドラマという形態が人気獲得に一役買っているのだ。

ファンの間では、シーズン7まで制作されたドラマ『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) を巻き込んだ考察も繰り広げられている。ドラマも含めると広大になり過ぎた感もあるMCU。全てを網羅しているファンは多くない。だからこそ、視聴者と批評家が一体となって知識やアイデアを持ち寄るのだ。
(そして、Disney+で過去作を見返して考察を深めていく。)

こうして、早々に答えを教えるのではなく、じっくり“考察させる”という『ワンダヴィジョン』の戦略が見えてくる。ウェブメディアや批評サイト、SNS全盛期の今、公式に示されるヒントがごくわずかであっても、情報収集と情報発信には事欠かない。視聴者は毎週ネタ明かしのために次週の『ワンダヴィジョン』を楽しみにしているわけではなく、考察のための新たなヒントと新たな謎を楽しみにしているのだ。

MCUでは異端の存在

もちろん、配信ドラマにおける“考察させる”戦略自体は目新しいものではない。だがMCUはシリーズ自体に大量のファンがいて、『ワンダヴィジョン』は大きな注目を集める作品だ。そして何より、MCUという枠組みの中においては、ここまでファンを (良い意味で) 突き放した作品はこれまでに存在しなかった。謎だらけの『ワンダヴィジョン』は、MCUの中では異端の存在なのだ。

MCU作品は、単純なシリーズものではなくユニバースで展開していくという条件から、シリーズを経るごとに謎が明らかになっていくという構成を作ることは難しい。巨大フランチャイズであるがゆえにスケジュールや興行成績によって監督の変更も起こりやすく、MCU内の他シリーズも巻き込んでしまうため、伏線の張り方にも気を遣う。ドラマとして制作された『ワンダヴィジョン』なら全9話=映画約2本分の長さで伏線を張り、回収するという作業が可能だ。

更に『ワンダヴィジョン』は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』後の仕切り直しのタイミングでフェーズ4の第一弾の作品として登場し、MCUにおける過去の蓄積を活用しながら、フェーズ4以降のMCUを方向付ける物語を提供している。『ワンダヴィジョン』のマット・シャックマン監督は、同作の第3話までに登場した全てのものに意味があり、後今後MCUのストーリーに影響を与えるということを明言している。『ワンダヴィジョン』が今後のMCU全体の伏線をも張り巡らしているということだ。

“考察させる”『ワンダヴィジョン』の先には、果たしてどんな光景が待っているのか。引き続き、じっくり考察していこう。

バゴプラでは各話のネタバレ解説記事と劇中で放送されるCMの考察まとめ記事を配信中。

ドラマ『ワンダヴィジョン』はDisney+で独占配信中。

Disney+

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