『シークレット・インベージョン』公式予告 解説&考察 アベンジャーズの不在とニック・フューリーの責任 | VG+ (バゴプラ)

『シークレット・インベージョン』公式予告 解説&考察 アベンジャーズの不在とニック・フューリーの責任

© 2023 Marvel

『シークレット・インベージョン』公式予告公開

マーベルの新ドラマ『シークレット・インベージョン』より、新予告が公開された。この予告は「Official Trailer(公式予告)」と銘打たれ、米時間2023年4月2日(日) に開催されたMLBレンジャーズ対フィリーズの試合中に発表されている。また、前日にはポスターが解禁され、配信日が2023年6月21日(水) になることが公式にアナウンスされた。

『シークレト・インベージョン』は、MCU第一作目の『アイアンマン』(2008) からシリーズに登場しているサミュエル・L・ジャクソン演じるニック・フューリーを主人公に据えた作品。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) 以降身を隠していたニック・フューリーがスクラル人のタロスと共に、別のスクラル人グループによる密かな地球侵略に立ち向かう。フェーズ5では初のドラマ作品になる。

今回は、公開されたばかりの公式予告の内容をチェックしてみよう。

『シークレット・インベージョン』公式予告 解説&考察

フューリーの帰還

冒頭で森の中を歩くニック・フューリーに声をかけるのはタロス。映画『キャプテン・マーベル』(2019) で1995年に出会って以来、二人は30年近い付き合いになる。ベン・メンデルソーン演じるタロスは、『キャプテン・マーベル』でS.H.I.E.L.D.ロサンゼルス支局長のケラーに擬態した時の人間の姿で登場。「君がいなくなってから、状況は悪化した」と指摘している。

タロスは『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) ではニック・フューリーに代わって地球で“ニック・フューリー役”を担っていた。その後も地球で活動を続けていたのだろう。

そして、『シークレット・インベージョン』におけるメインヴィランと言われているキングズリー・ベン=アディル演じるグラヴィクが登場。グラヴィクはタロスと同じスクラル人だが、タロスに対抗する敵の派閥の中心人物である。今回の予告編では、このグラヴィクがロシアの街を爆破するシーンが挿入されている。

ニック・フューリーが「なぜ私が帰ってきたと思う?」と長年の不在を踏まえて問いかけると、オリヴィア・コールマン演じる捜査官のソニア・フォルスワースは、ニック・フューリーに「戦いの準備ができていない」と指摘。この時点でニック・フューリーはアイパッチを外しているが、サミュエル・L・ジャクソンはアイパッチがフューリーの強さの象徴であったことをインタビューで明かしている。

以前の予告編でも登場したタロスがグラヴィクに掴み掛かるシーンを挟み、ニック・フューリーは自分と同じ名前が彫られたお墓の前に立つと、「これは個人的な話だ」と話す。ソニア・フォルスワースは、地球上で陰で行われている戦争は一握りの人々しか知らないと指摘し、ニック・フューリーの責任感を問う。これは「アベンジャーズ」第5弾タイトルの「シークレット・ウォー」をも想起させる表現だ。

アベンジャーズの不在

そして、無数の人体が設置された場所に現れたのはエミリア・クラーク演じるガイア。ガイアはタロスの娘という設定である。フランス語の新聞の見出しには「アベンジャーズ:ニューヨークの戦い」と書かれている。おそらく2012年当時のものだろう。このシーンには「アベンジャーズはどこだ?」という声が重ねられている。

確かにニック・フューリーの不在とアベンジャーズの不在は時期が重なっている。アベンジャーズをまとめる中心人物がいなくなったからアベンジャーズはいなくなったと考えることもできるのだ。映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) ではウォンやフューリーの盟友であるキャプテン・マーベル、そしてハルクが危機対応を担当していた。

フェーズ4では、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) において、元アベンジャーズメンバーのワンダ・マキシモフが事件を起こしてもニック・フューリーは現れず。フューリーが率いたS.H.I.E.L.D.ではなく新組織のS.W.O.R.D.が対応に当たった。

『エターナルズ』(2021) におけるセレスティアルズ出現や、『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』(2021) と『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) での混乱にもニック・フューリーは関与せず。ムーンナイトやシー・ハルクといった新ヒーローたちには、チーム加入のお声がけがないままだ。

ニック・フューリーを演じるサミュエル・L・ジャクソンは、フューリーが『エンドゲーム』後に地球を離れた理由については、アイアンマンことトニー・スタークとブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの死が影響している話している。

旧友たちを失い、精神的に動揺しているニック・フューリー。それでも今回は戦うために地球に舞い戻ってきた。その背景には何があるのだろうか。

ニック・フューリーの戦い

ニック・フューリーは、「この戦争は私が戦わなければならない。一人で」と言い切る。何がそこまでニック・フューリーを追い込んでいるのだろうか。「終わりは近い」というテロップの後、ヘリコプターからのミサイルで車両が攻撃されると、ガイアかマリア・ヒルと思われる人物が倒れた誰かに寄り添っている。

次の場面ではニック・フューリーが10人ものエージェントから銃口を向けられると、ウォーマシンことローディが登場。ニック・フューリーが「最重要指名手配」となっていることを告げる。今度はガイアがフューリーに何者かの計画に巻き込まれていることを告げると、グラヴィクは「偉大なるニック・フューリー」と発言。ニック・フューリーを取り巻く状況が複雑になっていることがこれでもかと示されている。

なお、このシーンで一瞬映るアタッシュケースには「ダメージ・コントロール局」の名前が記されている。ダメージ・コントロール局は、映画『アイアンマン』(2008) で名前が登場し、映画『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) から登場している機関で、ニック・フューリーが去った後はフェーズ4においてスーパーヒーローが絡む事件に対応している。

ダメージ・コントロール局は映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではピーター・パーカーを逮捕・尋問し、スターク・インダストリーズを家宅捜査。ドラマ『ミズ・マーベル』(2022) ではスーパーパワーを手に入れたカマラ・カーンを追い、高校に部隊を投入して顰蹙(ひんしゅく)を買った。

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022) では、『ミズ・マーベル』にも登場したダメージ・コントロール局の刑務所が登場。同局の部隊はシー・ハルク確保のために出動してもいる。また、『シー・ハルク』ではスーパーヒーローの活動について定めたソコヴィア協定が廃止されたことも明かされており、それがダメージ・コントロール局の台頭を後押ししたと考えられる(詳しい考察はこちらから)。

S.H.I.E.L.D.なき後のアメリカでスーパーパワーを持つ人々と対峙してきたダメージ・コントロール局。かつて超人たちをリクルートして地球の危機を救ってきたニック・フューリーに武器を向けることになるとすれば、事態は一層複雑になりそうだ。

そして、『シークレット・インベージョン』予告編の数々のアクションシーケンスの中には、グラヴィクがグルートのように腕を伸ばす場面も。ラストはニック・フューリーが「最後の戦いだ」と言い残して公式予告は幕を閉じる。地球で密かに進んでいたこの“戦争”は、いつ始まったものなのか、ニック・フューリーにどれほどの責任があり、なぜフューリーがそこまで背負いこむのか……。

疑問は尽きないが、シリアスでサスペンス調の仕上がりになっていることが期待されるドラマ『シークレット・インベージョン』。配信開始を楽しみに待とう。

ドラマ『シークレット・インベージョン』は2023年6月21日(水)よりディズニープラスで独占配信。前回の予告の解説&考察はこちらから。

原作コミック『シークレット・インベージョン』は日本語訳が発売中。

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サミュエル・L・ジャクソンが語ったニック・フューリーが消えた理由についてはこちらの記事で。

『シークレット・インベージョン』は映画『アーマー・ウォーズ(原題)』との繋がりもあるという。詳しくはこちらの記事で。

5月3日(水・祝) 公開の映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』新予告の解説&考察はこちらから。

映画『マーベルズ』の新ポスターと注目ポイントはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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