『LOST』脚本家が語る心得とは
ドラマに不可欠なショーランナー
『LOST』(2004-2010)『インパルス』(2018) の脚本家として知られるジェフリー・リーバーが、米ドラマ界の現場責任者であるショーランナーの“10の心得”を公開した。米国のドラマは各話ごとに監督が入れ替わるため、シーズンを通して作品を統括する役職として“ショーランナー”の存在が不可欠だ。ショーランナーの多くは脚本家が務めるため、執筆した内容と撮影にかかる時間、それにキャスティグに到るまで、ドラマ制作に関わるありとあらゆる作業に携わる。念頭に置いておくべきルールも多岐に渡るのだ。
SFドラマで活躍
ジェフリー・リーバーは社会現象になったSFドラマ『LOST』の原案となる脚本を執筆した人物。同作の脚本はJ・J・エイブラムスとデイモン・リデロフによって完成させられたが、リーバーの名も共同制作者としてクレジットされている。ドラマ『ダニーのサクセス・セラピー』(2011-2013) でショーランナーを務め、近年はスティーヴン・グールドの同名SF小説を原作としたSFドラマ『インパルス』の製作総指揮も務めている。
ショーランナーのルール
そんなジェフリー・リーバーが語った“10のルール”とは一体どのようなものなのだろうか。リーバーのTwitterからご紹介しよう。
Showruner Rule #1: All scripts are essentially math. Bad scripts are algebra. GREAT scripts are string theory.
— Jeffrey Lieber (@JeffLieber) July 13, 2019
ショーランナーのルール その1
全ての脚本は、基本的には数学だ。悪い脚本は代数学 [アメリカの大学で学ぶ初歩の数学]、良い脚本は弦理論 [高度な数学] である。
ショーランナーのルール その2
脚本上の登場人物の名前を隠してみる。セリフがすぐにそのキャラクターの声で再生されないのなら、やり直すべきだ。
ショーランナーのルール その3
いつだって、優れた作家であるよりも優れた人物でいること。書いたものは直せるが、無駄にした時間は取り戻せない。
ショーランナーのルール その4
何度自分に「1時間半で撮り終える」と言い聞かせたところで、2時間はかかる。
ショーランナーのルール その5
45ページ目に衝撃の展開を置くのであれば、9ページ目と26ページ目に伏線を準備しておくこと。「たった今彼女がエイリアンだってことに気づいたよ!」なんて展開は誰でも書けるのだから。
ショーランナーのルール その6
作家は優れたセリフを考えようとして時間を無駄にする。セリフは後で書くこと。今もっとも重要なことは、“次に何が起こるか”だ。
ショーランナーのルール その7
特殊な例を除いて、スタッフは自分が教えた分だけ働く。結局のところ、雇ったのは自分。
ショーランナーのルール その8 (私の失敗談)
1995年ごろにタラ・リードを「ホットで若い」主演俳優として提案されたら、断ること。それでクビになったとしても。
ショーランナーのルール その9
感情>ドラマティックさ>理論>正確さ
そのキャラクターはどんな理由でミャンマーに行くのか>そのキャラクターは飛行機でミャンマーに行った方が面白くなるのか>ミャンマーに辿り着くまでに、映像にしてどれくらいの時間を要するのか>そのミャンマー行きの便は本当に存在するのか
ショーランナーのルール その10
「S×2÷D=12以下」。言い方を変えると、脚本に書いたシーンの数 × 2時間 (各シーンの撮影に要する平均時間) ÷ 撮影の日数 = 12以下にすること。[この方程式を] 習得しておこう。
ファンタジー作家も共感
長年ショーランナー/脚本家を務めてきたジェフリー・リーバーならではの具体的な助言が並ぶ。ファンタジー作家のサム・サイクスがこのツイートに反応。ルールその2「脚本上の登場人物の名前を隠してみる。セリフがすぐにそのキャラクターの声で再生されないのなら、やり直すべきだ」に対して、「これは、小説家にとっても素晴らしいアドバイスですね」とコメントしている。キャラクターとセリフ作りにおける共通点を見出したようだ。
this is awesome advice for novelists, too https://t.co/nmwOWaVU6K
— Sam Sykes (@SamSykesSwears) July 13, 2019
直接声を聞く貴重な機会に
日本ではあまり馴染みのないショーランナーという役職だが、前述の通り、ドラマ制作の現場には欠かすことのできない存在だ。Twitterユーザーからは、普段聞くことのできないショーランナーの心得を公開したリーバーに感謝の声が集まっている。ショーランナー自身からこのように発信していくことで、将来ショーランナーを目指す人々にとっても情報を得られる貴重な機会となったようだ。
Source
Jeffrey Lieber Twitter