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『高い城の男』シーズン3 ショーランナー交代の裏側に、原作小説への愛

『高い城の男』がいよいよシーズン3に突入

アメリカでは10月7日より配信開始

Amazonスタジオによるオリジナル・ドラマシリーズ『高い城の男』(2015-)のシーズン3が、いよいよ10月7日からアメリカで配信を開始する。『高い城の男』は、1962年に発表されたフィリップ・K・ディックの同名F小説を実写ドラマ化した作品である。第二次世界大戦で枢軸国が勝利し、大日本帝国とナチスドイツに分割統治されたアメリカを舞台にした歴史改変SFだ。名作SF小説の実写化、そして、リドリー・スコット監督が製作総指揮を務めるということで大きな話題を呼んだ。

シーズン2終了から、1年半以上が経過…

『高い城の男』はこれまで、2015年11月にシーズン1、2016年12月にシーズン2と、年に一回のペースで公開されてきた。だが、今回公開されるシーズン3は、約二年ぶりの新シーズン。シーズン2のクライマックスでは、明らかにシーズン3へと続くであろう展開で幕を閉じたが、2017年1月にシーズン3の制作が発表されてから1年半以上が経過しての公開となる。時間的にも間隔が空いての公開となったわけだが、実はシーズン2とシーズン3の間には、ある大きな変更点が存在している。

シーズン3からの最大の変更点

ショーランナーの交代

アメリカのテレビドラマ制作においては、シリーズ全体の構想を担当する製作総指揮の他に、現場で制作の指揮をとる「ショーランナー」という役職が定着している。制作期間が長いテレビドラマシリーズの場合、監督と脚本はエピソード毎に担当者が変わることが多い。一方ショーランナーは、シリーズ全体の展開やキャスティングを理解している現場監督のような存在だ。『高い城の男』では、シーズン2の撮影中にショーランナーのフランク・スポトニッツが降板。理由は、スポトニッツとAmazonスタジオとの「方向性の違い」とされている。

エリック・オーバーマイヤーが就任

『高い城の男』のシーズン2は、残った製作陣で完成させたAmazonスタジオだが、シーズン3の撮影開始に当たっては、新たなショーランナーが必要になる。そんな降板劇の余波を受けて、新たなショーランナーに就任したのは、エリック・オーバーマイヤー。オーバーマイヤーは、人気法廷ドラマシリーズの『ロー&オーダー』(1990-2010)や、HBOドラマシリーズの『Treme』(2010-2013)に携わってきたベテランプロデューサーだ。ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』(2002-2008)では、シーズン4のプロデューサーを務め、全米脚本家組合賞とエドガー賞を受賞している。『高い城の男』のシーズン3は、テレビ界の大ベテランの手に委ねられる格好となった。

フランク・スポトニッツが降板した理由

スポトニッツの『高い城の男』愛

そもそも、フランク・スポトニッツが『高い城の男』のショーランナーを降板した理由はどこにあるのだあろうか。公式な発表は、「方向性の違い」ということだけであった。しかし、シーズン2の内容とスポトニッツがメディアに話していた彼自身のストーリーを照らし合わせると、あるヒントが浮かび上がってくる。それは、フィリップ・K・ディックの原作小説に対するスポトニッツの愛情である。

初めての出会い

フランク・スポトニッツは、2016年に行われたSCIFI PULSE誌のインタビューで、『高い城の男』の原作者であるフィリップ・K・ディックの作品との出会いについて、こう語っている。

初めてフィリップ・K・ディックの作品に触れたのは、リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』(1982)だった。それから、UCLA (カリフォルニア大学ロサンゼルス校) の本屋さんで『高い城の男』と出会ったんだ。あれは衝撃的な読書体験だったよ。悪人が勝った世界という設定にはヤラれたね。たくさんの力強いアイデアが溢れている作品なんだけど、「善人が勝つとは限らない」という気づきを与えてくれたことは、今でも僕の中に残っているよ。

by フランク・スポトニッツ

奇しくも、彼が初めて触れたフィリップ・K・ディックの作品は、『高い城の男』の製作総指揮を務めるリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』だったというのだ。学生時代に衝撃を受けた『高い城の男』のドラマを、リドリー・スコット製作総指揮の下、自らがショーランナーを務める日が来ようとは、スポトニッツ自身は夢にも思わなかったことだろう。

ドラマ化にあたっての苦悩

このエピソードから分かることは、フランク・スポトニッツにとっては、『高い城の男』は特別な作品だということである。そして、スポトニッツが同作に対して抱いている特別な感情は、制作にも影響を及ぼしていたようである。ドラマ化にあたっての苦悩について、彼は以下のように答えている。

ドラマ化の話をもらった時、大学時代のこの本への愛着を思い出して、原作を読み返すことなく“Yes”と答えたんだ。(中略) テレビシリーズとして作り変える為には、本にはないオリジナルの話を創りあげなければいけなかった。これには数週間悩まされたよ。当然のことながら、フィリップ・K・ディックに対して誠実でないと批判されている他のライターのようになりたくなかったんだ。最終的には、原作中の最も重要なテーマ――冷徹な世界の中で、どうすれば人間らしくあることができるのか、そして現実の本質とは何か――を描きだすことにしたんだ。あくまでもテーマに忠実に、ストーリーを作っていったんだ。

by フランク・スポトニッツ

彼の“原作愛”がひしひしと伝わってくるインタビューではないだろうか。私たちも、自分が好きな作品を実写化する、それもオリジナルの話を作り出さなければならないとすれば、相当に頭を悩ませるだろう。そして公開されたドラマ版『高い城の男』シーズン2は…そのエピソードのほとんどが、原作にはないオリジナルストーリーだった。これを、原作を愛するスポトニッツの降板と結びつけずにいることは難しいだろう…。

もっとも、ドラマ版『高い城の男』が原作のテーマに忠実な作品であるかどうかは、エリック・オーバーマイヤーが新たにショーランナーに就任したシーズン3をチェックする必要がある。Amazonスタジオは、降板したスポトニッツも納得の仕上がりを見せられるのか、それとも新たな『高い城の男』を創り上げるのか、日本での公開を楽しみに待とう。

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