女性をモノのように扱わない——ドラマ『ザ・ボーイズ』がコミック版から改善したポイントとは | VG+ (バゴプラ)

女性をモノのように扱わない——ドラマ『ザ・ボーイズ』がコミック版から改善したポイントとは

©️Amazon Studios

『ザ・ボーイズ』の裏側が明らかに

Amazonプライムのオリジナルドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン2がいよいよ2020年9月4日(金)より配信を開始する。これに先駆け、Amazonでは8月28日(金)より『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』の配信を開始。『ザ・ボーイズ』の出演者や製作陣が登場し、同作について語るトークショーとなっている。

8月28日に配信されたエピソード1「胸糞悪いシーズン1の裏側」には、ブッチャーを演じたカール・アーバン、ホームランダーを演じたアントニー・スター、スターライトを演じたエリン・モリアーティ、Aトレインを演じたジェシー・T・アッシャー、そして製作総指揮にしてショーランナーを務めるエリック・クリプキが登場。俳優のアイシャ・タイラーによる進行の下、テレビでは絶対に放送できない過激なトークが繰り広げられた。

原作コミックから改善したポイントは?

一方で、中にはエリック・クリプキがいつになく真剣な表情で語ったテーマも。番組では、女性ファンからTwitterに寄せられた「『ザ・ボーイズ』におけるセックスや性暴力の描写はなるべく画面に出さずに描かれている。女性をモノとして扱うこともない。それは可能なことなんです」という投稿が取り上げられた。これに対し、エリック・クリプキは以下のように語っている。

とても嬉しいです。それは私たちが意識してやっていることです。原作コミックにはかなりきつい性描写があります。原作者のガース・エニスはショッキングに描いていますが、少しやり過ぎだと思います。このドラマは男女ともに観れるようにしました。制作にあたって大事にしたことは、性的な描写が物語の進行に必要かどうかということです。ショックな描写ばかりだと複雑なストーリーが薄いものになってしまいます。ですから、意識的に不要な性描写は削っているんです。気付いてくれて嬉しいです。

作中、性暴力の被害を受けるスターライトを演じたエリン・モリアーティは、こう続ける。

同意します。私が嬉しく思っている点は、原作よりもドラマの方が女性キャラクターを力強く、繊細に描いていることです。

このコメントに、司会のアイシャ・タイラーは、コミック作品に対する自身の思いを明かしている。

私はコミックを読むのが大好きなんですが、コミックには昔から弱い部分があります。長い間そうでした。それは、少女の模範になる女性がいないということです。せいぜい下着同然のワンダーウーマンくらい。男性たちはみんなヒーロースーツにマントで多少お腹が出ていても隠せますが、女性はほぼ下着です。(『ザ・ボーイズ』では) そんな問題もうまく取り上げていますね。

『ザ・ボーイズ』シーズン1には、スーパーヒーロー集団のセブンに新たに加わったスターライトが、商業的な理由で露出の多いヒーローコスチュームを着るよう強要される場面が登場する。激しい戦いを繰り広げる女性キャラクターに防御機能を無視した衣装を着させがちなコミック界の慣例を揶揄した展開だ。

また、シーズン1のエピソード1冒頭でのロビンの死について、「批判はなかったか」との質問も。これにはエリック・クリプキは「映画やドラマにおいて、女性が無残に殺されるのは力強い男性の主人公に動機を与えるための常套手段になっています」と認め、女性主人公の物語が十分に作られていないという問題点も指摘している。

更に、シーズン2では原作で男性キャラクターだったストームフロントをドラマでは女性のキャラクターに変更したことについて、エリック・クリプキは「かなりの物議を……」と説明。一部のファンから「お前ら社会正義戦士 (Social Justice Warrior) かよ」「ふざけんな、もう見ねぇ」との声が聞かれたことを紹介しつつ、クリプキは「さよなら、お前らなんか知ったこっちゃない」とバッサリ。司会のアイシャ・タイラーは「疲れる議論でしょうが、避けては通れない道ですね」とまとめた。

Amazonプライムビデオで配信されている『ザ・ボーイズ』は、ガース・エニスとダリック・ロバートソンの原作コミックを実写化したSFドラマ。「スーパーヒーローが実在したら」というコンセプトの下、腐敗したヒーロー達とそれに立ち向かう一般人チーム “ザ・ボーイズ” の戦いが描かれた。

エリック・クリプキが『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』で語った通り、原作の問題点と向き合いながら、原作の良さを生かした作品づくりが行われている。『ザ・ボーイズ』のファンが「それは可能なことなんです」と話したように、作り手の覚悟次第で、如何様にでも工夫できるということが証明されている。

『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』は8月28日(金)より配信中。

『ザ・ボーイズ』シーズン2は2020年9月4日(金) より配信開始。シーズン1はAmazonプライムビデオで独占配信中。

VG+編集部

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