ネタバレ考察『ホークアイ』第5話で描かれた“もう一つの側面” エンドゲーム後の世界の複雑さを映す | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ホークアイ』第5話で描かれた“もう一つの側面” エンドゲーム後の世界の複雑さを映す

© 2021 Marvel

『ホークアイ』配信中

2021年6月に配信を開始した『ロキ』に続くMCUドラマ『ホークアイ』は、ホークアイことクリント・バートンとホークアイに憧れるケイト・ビショップを主人公に据えた物語。アベンジャーズをやめて家族とクリスマスを過ごしたいクリントと、スーパーパワーがなくても人助けをしたいケイトのドタバタ劇がコミカルに描かれる。

最終回目前となった『ホークアイ』第5話では、驚きの展開が待っていた。同時に最後のあの展開に引けを取らないくらい重要な描写も登場している。今回はその場面が持つ意味を『ホークアイ』第5話のネタバレありで解説していこう。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ホークアイ』第5話の内容に関するネタバレを含みます。

初めて描かれた“もう一つの側面”

そのシーンとは、『ホークアイ』第5話冒頭で映画『ブラック・ウィドウ』(2021) のその後のエレーナ ・ベロワが描かれた場面だ。姉のナターシャ・ロマノフから解毒剤を託されたエレーナは、世界中のウィドウたちの洗脳を解く活動に取り組んでいた。エレーナは元ウィドウのアンナの住処に侵入するが、アンナは既に洗脳が解けていたばかりか、暗殺を生業にして金銭的に大成功をおさめていた。

姉のナターシャとの合流についても揶揄され、気持ちの整理がつかないままお手洗いに立ったエレーナは、顔を洗おうとしたその時、サノスの指パッチンによって消滅してしまう。ここまでは何度も描かれてきた光景だ。ピーター・パーカーやクリントの家族、ニック・フューリーらが消滅した瞬間など、あの瞬間の人々の様子は様々な視点で繰り返し描かれてきた。

しかし、今回の描写が一味違うのは、消えてから戻ってくるまでが“消えた人目線”で描かれている点だ。『ワンダヴィジョン』(2021) 第4話ではモニカ・ランボーをはじめ、病院で復活する人々の姿が描写された。これがMCUで初めて指パッチンからの復活が描かれた場面だが、消えてから復活するまでが消えた人の感覚で、“リアルタイム”で描かれたのはエレーナが初めてのことだ。

これまで、指パッチンによる消滅から復活した人々は、クリントの家族や『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) におけるピーター・パーカー達のように、元の生活に戻ってそれなりに人生を楽しんでいた。『ホークアイ』第5話においても、エレーナの復活に直面したアンナは、エレーナと一緒にいたソーニャも消えて復活したが状況を受け入れていると話していた。つまり、指パッチンから復帰して通常の生活に入っていった人々がいた一方で、復帰後に苦境に立たされた人々もいたということである。

復帰者の厳しい現実

『ワンダヴィジョン』第4話では、モニカ・ランボーは母のマリアが癌でなくなったことと、自分が長らく消えていたことにショックを受けながらも、わずか3週間後には職務に復帰している。同じく姉を亡くし、5年の歳月を失ったエレーナとモニカを分かつものは何なのだろうか。

それはひとえに“拠り所”だろう。モニカの場合は家族はいなかったようだが、S.W.O.R.D.での仕事があり、キャプテン(大尉)の位もあった。クリントの家族にはクリントがいたし、ピーター・パーカーにはおばのメイと高校の友人たちがいた。もちろんアベンジャーズも(実際に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告ではドクター・ストレンジを頼っている)。

だが、ウィドウたちの洗脳を解くためにために世界を転々としていたであろうエレーナには仕事がなく、心を許せる姉のナターシャは消えた人々を復活させるために死んでしまっていた。父のアレクセイと母のメリーナもいるはずだが、第5話時点では言及されていない。それに、アレクセイやメリーナもエレーナをサポートできるかというと微妙で、逆にサポートが必要な立場かもしれない。

いずれにせよ、幼い頃からスパイとして育てられ、2017年にその洗脳が解かれるまでは、エレーナは自分の人生を持っていなかった。レッドルームを破壊した後も、エレーナは他のウィドウたちを助けることに自分の人生を捧げていた。そして5年が経ち、姉を失い、エレーナに残ったのは幼い頃から身につけていた暗殺のスキルとウィドウの武器だけだったのではないだろうか。

アンナは復活したエレーナに暗殺の仕事をオファーしているが、英語では「contract work」となっており、安定した雇用契約ではなく、一回ずつの契約で仕事をこなしていく請負業務であることを示している。世界は消滅した人々の復帰に期待しておらず、残された席は少ない。元の人生が豊かだった人々はまだ戻る場所があるが、そうでない人、孤独だった人ほど困難を強いられる様子が描かれているのだ。

なお、映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンでは、エレーナはエージェントであるヴァル(ヴァレンティーナ)に報酬を上げるよう要求している。それほど高額な報酬は得られていないようだ。

『ホークアイ』第5話のラストでは、エレーナの雇い主がケイトの母エレノアであり、エレノアがキングピンを頼っていたことが明らかになっている。つまり、エレーナへの仕事の発注はエレノア→キングピン→ヴァル→エレーナという流れになっており、キングピンからヴァルに直接発注があったかどうかは分からないが、少なくとも間に二人のエージェントが入っていることになる。

ヴァルは自分の報酬もあげてほしいと不満を漏らしていることから、まあまあの額の中抜きを経てエレーナの元に仕事が回ってきているのではないだろうか。

『シャン・チー』のポスターの意味

ドラマ『ホークアイ』第5話で初めて描かれたこうした復帰者の一面は、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) でも示唆されている。映画の冒頭でシャン・チーがケイティの家に行く場面、建物の入り口付近の壁に「指パッチン後の世界 孤独じゃない」「話したいですか? 助けを求めてください」と書かれたポスターが貼られているのだ。広告主は「NATIONAL BLIP SUPPORT HOTLINE」となっており、全米を対象にした公的な組織であることが窺える。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) 第3話では、指パッチンで消えていた人々に手を差し伸べるというGRC (Global Repatriation Council: 世界再定住評議会) なる組織の存在が明かされていた。ここでも「大きな変化に戸惑う多くの人々」に「元通りの生活」を提供することが謳われていた。

復帰した直後のエレーナの様子、胡散臭さの漂うヴァレンティーナがエージェントになっていること、薄給の殺し屋稼業を続けている姿を見れば、『シャン・チー』で指パッチンから復帰した人々に公的な支援が必要とされていた理由が見えてくる。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) では、指パッチンによって“消えなかった悪人”を成敗するため、クリントはローニンになっていた。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、“戻ってきた悪人”のために割りを食う人々の声をカーリとフラッグ・スマッシャーズは代弁した。だが、“戻ってきたものの居場所がなく薄給の仕事を続けざるをえない人々の存在”はどうだろうか。

『ホークアイ』第1話では、劇場のトイレに「サノスは正しかった」という落書きがされていた。第4話ではクリントが使うモイラ宅のマグカップにも「サノスは正しかった」と記されており、このスローガンが商品化までされていることが分かる。モイラもそのような信条の持ち主なのかもしれない。つまり、復帰後の世界で世間が許すような暮らしに戻れなかった復帰者たちは、常に「消えていた方がよかった」という世間のヘイトに晒されているのだ。

4つの立場

以上をまとめると、『エンドゲーム』後のMCUには以下の人々がいることになる。

①復帰者を歓迎する人々
②復帰者を疎む人々(カーリやモイラら)
③元の生活に戻れた復帰者(モニカ、クリントの家族ら)
④復帰後も苦境に立たされている復帰者(エレーナ?)

もちろん、エレーナが苦境に立たされていると決めつけるのは早計に過ぎるかもしれない。彼女自身の選択で今の生き方を選んでいると考える余地も必要だろう。

一方で、クリントがナターシャと初めて出会ったときに「抜けたがっている」と思い弓を放たなかったというエピソードと、第4話でケイトが初めてエレーナと対面したときに弓を放たなかった場面は韻を踏んでいる。また、会って間もないケイトにあれほど心を開いているエレーナの姿を見れば、その背景には孤独感があるようにも思える。

いずれにせよ、ドラマ『ホークアイ』(と『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーン)はエレーナの姿を通して、新たな立場の人物をMCUに紹介しているように見える。それは、ケイトにとってはロキが父の仇で、クリントが恩人であり、エレーナにとってはクリントが姉の仇であり、マヤにとってもクリントが父の仇であるように、MCUフェーズ4ではそれぞれの立場というものが非常に複雑に描かれていることと通底している。

物事を単純化せず、多様な立場の人々を描く姿勢を保ちながら、MCUフェーズ4の一年目は『ホークアイ』最終話となる第6話と共に幕を閉じる。以上の考察は合っているのかどうかも含め、最終回で描かれる物語にも注目しよう。

原作コミック『ホークアイ』はKindleで日本語訳版が発売中。

ドラマ『ホークアイ』は2021年11月24日(水)より、Disney+で独占配信中。

ドラマ『ホークアイ』(Disney+) 

最終話第6話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第5話でキングピンが登場したことについて、監督はMCUと過去のドラマシリーズにつながりが生まれることを明言。詳細はこちらの記事で。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第1話に登場した「サノスは正しかった」という落書きについては、こちらで詳しく考察している。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第2話で判明した、ケイトがウエストコースト・アベンジャーズのリーダーになる可能性についての考察はこちらの記事で。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話に隠されていたカジの過去についてはこちらの記事で。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

エレーナの登場シーンで判明した4つの事実については、こちらの記事にまとめている。

エレーナ登場の裏側について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

ドラマ『ホークアイ』シーズン2の可能性についてはこちらから。

 

MCUの時系列における『ホークアイ』の位置と、フェーズ4のタイムラインについての解説はこちらの記事で。

スパイダーマンが本作に登場するかどうかの考察はこちらから。

 

映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『エターナルズ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編解説と考察はこちらから。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

 

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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