初掲:2022年9月11日
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『サンダーボルツ』メンバー発表
米時間2022年9月10日(土)、米ディズニーのファンイベントD23 ExpoでMCU映画『サンダーボルツ(原題:Thunderbolts)』のキャスト発表が行われた。マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギが直々に各メンバーを発表しており、マーベルが本作への力の入れ具合がよく分かる演出になっている。米HollywoodReporterのTwitterではその時の様子が動画でアップされている。
Sebastian Stan returns as the Winter Soldier and joins the #Thunderbolts at #D23Expo pic.twitter.com/lndbeLeapx
— The Hollywood Reporter (@THR) September 10, 2022
サンダーボルツは原作コミックにも登場するマーベルのヴィランチーム。原作コミックでは“サンダーボルト”の異名を持ち、レッド・ハルクに返信するロス将軍が結成したチームで、その異名の複数形であるサンダーボルツという名前が冠されている。
MCUでは一部の大物ヴィランを除いては一作で退場となるパターンが多く、サンダーボルツがどのようなメンバーになるのか注目が集まっていた。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) ではヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ(ヴァル)が登場し、チームメンバーを集めていることが示唆されていた。そしてこの度、具体的なメンバーが明らかになっている。
7人のサンダーボルツ
発表の舞台でケヴィン・ファイギが最初に呼び込んだのは、コンテッサ・ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌを演じるジュリア・ルイス=ドレイファス。アベンジャーズにとってのニック・フューリーの立場にあたり、チームに欠かせない人物だ。
続いて呼び込まれたのは、レッド・ガーディアン/アレクセイ・ショスタコフを演じるデヴィッド・ハーバー。映画『ブラック・ウィドウ』(2021) に続く登場だ。映画『アントマン&ワスプ』(2018) のメインヴィランだったゴースト/エイヴァ・スターを演じるハナ・ジョン=カーメンの姿も。こちらは2021年4月の考察記事で予想した通りの人選になった。
そして、もちろんUSエージェント/ジョン・ウォーカーを演じるワイアット・ラッセルも登場。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の伏線が回収されることになる。映画『ブラック・ウィドウ』からはオルガ・キュリレンコが演じたタスクマスターも参戦。また、同作からドラマ『ホークアイ』(2021) にも登場したブラック・ウィドウ/エレーナ・ベロワを演じるフローレンス・ピューのビデオメッセージも紹介された。
サンダーボルツの7人目のメンバーとして最後に紹介されたのは、ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズを演じるセバスチャン・スタン。バッキーのサプライズ参戦に会場は大いに沸いた。バッキーは『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に続き、ヴァルやUSエージェントと共演することになる。
では、このサンダーボルツの7人の初期メンバーはそれぞれどのような立場にあり、どのような特徴を持っているのだろうか。各メンバーの登場作品も含めて、振り返ってみよう。
サンダーボルツメンバーまとめ
ヴァル
ヴァルは、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で初登場。同作でジョン・ウォーカーをUSエージェントとしてリクルートし、映画『ブラック・ウィドウ』では、エレーナにホークアイ抹殺の指示を出した。エレーナはこの作戦に失敗したわけだが、なおもヴァルと共に働いているのだろうか。
他の5人のメンバーを見るに、ヴァルは順調にリクルートを進めていたと見られる。USエージェント、レッド・ガーディアン、バッキーと、5人中3人がスーパーソルジャーであり、なかなかのリクルートの手腕を見せている。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のプロデューサーでマーベル・スタジオの副社長でもあるネイト・ムーアは、ヴァルについて「ダークなニック・フューリー」と語っている。
もっとも、ヴァルは今回の5人のメンバーを『ブラック・ウィドウ』周辺から3名、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』周辺から2名集めており、わりとコスパの良い動きをしているとも考えられる。
レッド・ガーディアン/アレクセイ・ショスタコフ
ソ連が生み出したスーパーソルジャーが現場復帰。レッド・ガーディアンことアレクセイは『ブラック・ウィドウ』の舞台になった2016年にナターシャ・ロマノフ達と共に洗脳されていたウィドウを救出。ウィドウ達とエレーナ、メリーナ、タスクマスターと共に世界各地にいる残されたウィドウ達を助けるために飛び立った。
それから数年が経過し、アレクセイは共に旅立ったエレーナ、タスクマスターと一緒にヴァルの下で働いているのだろう。元妻役だったメリーナがいない点は気になるが……。アレクセイは、かつて任務でオハイオに住んでいたことがある。サンダーボルツ結成を機に、またアメリカにカムバックすることになるのだろうか。それにしても、旧ソ連のレッド・ガーディアンと米政府のUSエージェントが同じチームに入るとは、時代である。
ゴースト/エイヴァ・スター
映画『アントマン&ワスプ』で登場したゴーストは予想通りのカムバックを果たす。ゴーストことエイヴァは、初代アントマンのハンク・ピム博士の助手として働いていた父エライアス・スターの量子トンネル実験の失敗に巻き込まれ、自身の身体が物質をすり抜ける“量子フェージング状態”になってしまった。父は死に、エイヴァはS.H.I.E.L.D.に保護され能力を制御するスーツを与えられたが、結局は兵器として利用されていた。
S.H.I.E.L.D.の崩壊によってビル・フォスター教授に保護されるが、エイヴァは既に寿命が2-3週間という状態になっていた。治療のためにアントマンらと対立するが、最終的には初代ワスプことジャネットの力で症状が緩和し、最後にはビルと共に逃亡生活を送っている。
MCUヴィランとしては珍しく、再登場を示唆する退場の仕方で、唯一ヴァルとの接点が見えないキャラクターでもある。USエージェントやバッキーは東海岸のニューヨークにいたが、ゴーストは西海岸を拠点にしていたため、ヴァルのリクルート範囲の広さがうかがえる。ビル・フォスター教授のその後も気になるところだ。
なお、ゴースト・スーツはS.H.I.E.L.D.が開発したものであり、サンダーボルツはS.H.I.E.L.D.の装備を持つ人物が手に入ったことになる。『ホークアイ』で描かれたエレーナの武器はレッドルーム製だし、バッキーの腕はワカンダ製で、サンダーボルツはほとんど予算をかけることなく高水準の装備を確保していることになる。備品は各自で準備する個人事業主チームらしい特徴だ。
USエージェント/ジョン・ウォーカー
最も順当なサンダーボルツの人選はUSエージェントことジョン・ウォーカーだろう。超人血清を打っているため実力に間違いはないが、何と言っても最大の武器はその忠誠心だ。二代目キャプテン・アメリカを襲名しながらも、事件を起こして軍を不名誉除隊となってしまったジョン・ウォーカー。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、USエージェントとして再びユニフォームを着る機会を与えてくれたヴァルに対して忠実な態度を示していた。サンダーボルツでは特攻隊長としての活躍に期待したい。
また、ジョン・ウォーカーはドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では手製で盾を作り、ヴィジランテとしてフラッグ・スマッシャーズに対応しようとするなど、単に任務のためだけに動く人物でもない。また、相棒のレマーが殺されたことへの復讐よりも、人命救出を選び、最後にはサムとバッキーとのわだかまりもなくなったようだった。正義を重んじる性格でもあり、生活に困っている感じもある他のメンバーたちと同じ熱量でやっていけるのかにも注目だ。
なお、原作のジョン・ウォーカーはタスクマスターからキャプテン・アメリカの戦闘スタイルを教えてもらっている。タスクマスターには他人の能力をコピーする能力があるからだ。ジョン・ウォーカーにとっては憧れの先代の技を学べる絶好機になる。
タスクマスター/アントニア・ドレイコフ
そのタスクマスターは、かつてナターシャ・ロマノフが起こした爆破に巻き込まれた少女が父のドレイコフによって強化人間になった姿。『ブラック・ウィドウ』のラストでは、ドレイコフの洗脳が解かれてアントニアとしての人格を取り戻している。映像を見た相手の能力をコピーする能力によって、ブラック・ウィドウやウィンター・ソルジャー、ブラックパンサーらの動きや技を完璧に習得している。
『ブラック・ウィドウ』では瀕死の状態でエレーナらと共に飛び去っていったが、エレーナ、アレクセイと共にサンダーボルツに加わったようだ。タスクマスターのその後については、演じたオルガ・キュリレンコが『ブラック・ウィドウ』公開時に語っており、「彼女を捕らえようとする悪の組織が常に存在する」と予測していた。
アントニアがチームに加わることは、そうした組織からの自衛の意味もあるのかもしれない。一方で、様々なヒーローの技を吸収し、メンバーを鍛えることができるタスクマスターの加入は、サンダーボルツにとって育成面でも大きな意味を持つだろう。
ブラック・ウィドウ/エレーナ・ベロワ
映画『ブラック・ウィドウ』でナターシャと再会を果たしたエレーナは、ドラマ『ホークアイ』で2代目ホークアイことケイト・ビショップと打ち解ける様子が描かれた。一方で、ホークアイを抹殺するというヴァルからの任務は途中で棄権。クリント・バートンと共にナターシャを追悼し、ホークアイへの復讐を諦めたのだった。
また、『ホークアイ』では『ブラック・ウィドウ』後のウィドウ達の洗脳を解こうとする旅の様子も描かれた。エレーナが忍び込んだ館のウィドウの洗脳は既に解けており、財を成して自分の人生を生きていた。エレーナは自分が自分の人生を生きていないことに気づくが、直後には指パッチンで5年の間消滅してしまう。戻った時には最愛の姉であるナターシャは死んでおり、大きな喪失を味わっている。
『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンでは、ヴァルにギャラの交渉をする姿も描かれた。ヴァルとはエージェントとして付き合っているようだが、最愛の人と人生の目的を失ったエレーナはどのようなモチベーションでサンダーボルツでの戦いに挑むことになるのだろうか。それにしても再びアレクセイと同じ職場になるとは……。
ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ
ウィンター・ソルジャーとして数十年間ヒドラの人間兵器として利用されてきたバッキーは、唯一、アベンジャーズからのサンダーボルツ移籍ということになる。親友のスティーヴ・ロジャースがキャプテン・アメリカの盾をサム・ウィルソンに譲った後、それを政府に返したサムに対して釈然としない気持ちを抱えていたバッキー。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で二人は和解し、バッキーは新たなキャプテン・アメリカの誕生を見届けた。
しかし、バッキーの方はこれといった行き先がないまま。一時匿ってもらっていたワカンダにも、しばらく来ないように言われている。元アベンジャーズメンバーの再就職問題というのは確かにあり、サンダーボルツがその受け皿になったということなのだろうか。
もしかすると、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で最後の最後に共闘したUSエージェントことジョン・ウォーカーがヴァルに口利きしてくれたのかもしれない。曲者だらけのサンダーボルツだが、このメンバーならバッキーもまとめ役として活躍できるかもしれない。どこでもいいからバッキーに新たな居場所ができることを願うばかりである。
以上が、7人のサンダーボルツメンバーのこれまでの経緯と現在の状況だ。アメリカ政府、旧ソ連政府、ナチスドイツのヒドラと、様々な場所で働いていた人物が集まっている。一方で、彼女ら/彼らはいずれも組織に利用され、捨てられた人々だと言える。サンダーボルツはどんな戦いに挑むのか、そしてサンダーボルト・ロス将軍は登場するのか。続報と公開を楽しみに待とう。
映画『サンダーボルツ(原題:Thunderbolts)』は2024年7月26日(金) 米公開。
『シークレット・インベージョン』の予告解説&考察はこちらの記事で。
同時に公開されたMCUドラマ『ウェアウルフ・バイ・ナイト』の予告編はこちらから。