第6話ネタバレ解説『シー・ハルク』女性を憎悪する集団、背景にある実際の事件とは あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

第6話ネタバレ解説『シー・ハルク』女性を憎悪する集団、背景にある実際の事件とは あらすじ&考察

© 2022 Marvel

『シー・ハルク』第6話はどうなった?

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』が後半戦に突入。MCUの新キャラクター、シー・ハルクことジェニファー・ウォルターのドタバタ劇を描くコメディドラマは全9話で構成され、第6話から後半に入っていく。第5話ではあのキャラの登場も示唆されたが、第6話はどんな展開が待っていたのだろうか。

今回は『シー・ハルク』第6話の各シーンを解説していく。以下の内容はネタバレを多分に含むため、必ずDisney+で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第6話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第6話「ただのジェン」ネタバレあらすじ&解説

ブライドメイドのお願い

GLK&Hでの初仕事となるアボミネーションの弁護、そこから派生したウォンの依頼、そしてその間に進められていたタイタニアからの商標権に関する嫌がらせと、次々舞い込む問題をクリアしてきたジェニファー。第6話の冒頭では、ブルースが「危険」という理由で処理したジェニファーの血液サンプルの件と、第3話ラストでのレッキングクルーによるジェニファー襲撃が回想される。やはりレッキングクルーはジェニファーの血液を狙ったのだろうか。

第6話はジェニファーが友人から結婚式の招待を受けるところから始まる。ジェニファーはルルという高校時代の友人から「ブライズメイドのお願い」を受け取っているが、ブライズメイドとは新婦のサポートをするアシスタント役。欧米の文化で、当日だけでなく、式場やドレス選びといった事前の段階から手伝いをする。

第5話でスーパーヒーローのコスチュームを手がけているルークからスーパースーツを手に入れたジェニファーだが、結婚式には持っていかないと話す。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) で修学旅行にスーツは置いていくと言ったピーター・パーカーを想起させる。また、第5話ラストでスーツとは別にルークからもらったコスチュームがワンピースであることも明かされている。

ジェニファーは第4の壁を破ると、今回の第6話は一話完結の結婚式エピソードであると紹介してくれる。シー・ハルクがワンピース姿で式場に到着したシーンで流れている曲はSaFireの「The Vibes」(2020)

新婦以上に注目を集めてしまったジェニファーは、「“勝負の日までシェイプアップ”の効果だね」と言われているが、結婚式までにシェイプアップすることを英語で「tone up for the big day」と言う。

ルルはシー・ハルクとして登場し、視線をかっさらうジェニファーにご立腹の様子。ジェニファーは結婚式には「ただのジェン」として出席することを約束し、「She-Hulk」の代わりに「Just Jen」タイトルロゴが現れる。第5話では「タイタニアのシー・ハルク」に乗っ取られていたし、タイトルロゴで遊ぶというのは『シー・ハルク』の十八番になりそうだ。

ミスター・イモータルとは

ジェニファーの休暇中、ニッキは超人法の部署でマロリーのアシスタントを務めている。マロリーのもとに相談に来ているのは原作コミックにも登場するミスター・イモータル。グレイグ・ホレスという本名も原作と一致する。原作コミックでのミスター・イモータル自身の能力は不死身というだけで、スーパーヒーローらしい強さはない。

ミスター・イモータルは1989年にコミック『ウエスト・コースト・アベンジャーズ』で初登場。東海岸を守るアベンジャーズ、西海岸を守るウエスト・コースト・アベンジャーズに続く五大湖を守るグレート・レイクス・アベンジャーズのリーダーを名乗った。だが、グレート・レイクス・アベンジャーズ自体は寄せ集めの集団である。

ドラマ『ホークアイ』(2021) では、原作でウエスト・コースト・アベンジャーズのスポンサーになるモイラ・ブランドンがケイト・ビショップのおばとして紹介された。また、『ワンダヴィジョン』(2021) で登場したビリーとトミー、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) で登場したイーライ・ブラッドリー、『ロキ』(2021) で登場したキッド・ロキは、原作コミックでヤング・アベンジャーズのメンバーになる。

ケイトも含め、ウエスト・コースト・アベンジャーズ関連のキャラクターの登場も相次いでおり、MCUでも単一のアベンジャーズという概念を超えて、ヤング・アベンジャーズなどの派生チームが誕生する流れが感じられる。

ミスター・イモータルは離婚訴訟の相談に来ているが、不死身の能力を利用して、法的に一度死ぬことで離婚を成立させようとしていた。ニッキとマロリーがそのやり方に懸念を示す中、ミスター・イモータルはオフィスの窓から飛び降りて事務所を立ち去ってしまう。嫌な状況と向き合わないミスター・イモータルの人間性をよく表している。

ミスター・イモータルのケース

ルルに近況を聞かれたジェニファーは、仕事とスーパーヒーローの両立を得意げに話すが、ルルの関心はロマンスの方。結婚を控え、ロマンスに価値を見出しているルルは勝手に「残念」「落ち込まないで」とジャッジしてくる。よくある光景だ。さらにそこにタイタニアも登場。因縁の相手の登場に苛立つジェニファーに声をかけたのはジョシュ。良い奴そうに見えるが、ここでもジェニファーはルルに片付けを頼まれて何かとスムーズにいかない。

ジェニファーは片付けをすんなり受け入れているが、これもブライドメイドの役割だ。それにしても待遇に不満があってスタッフの半分が帰ったという設定がいかにもアメリカらしい。

GLK&Hの方では、結局ミスター・イモータルとの集団交渉が行われていた。インテリジェンシアというサイトに上がっている動画でミスター・イモータルの能力を知ったという人々は、偽名も使い詐欺まがいのことをしてきたミスター・イモータルに対して正当な訴えを持っている。

なお、インテリジェンシアのことをマロリーは「憎悪に満ちた幼稚な男たち向けのサイト (The one for hateful man babies)」と表現している。ミスター・イモータルは「一生女を理解できん」とミソジニー発言もしており、当該サイトはミソジニストの男性向けのサイトであることが示唆されている(後述するが、そうしたサイトは英語圏で実際に存在する)。なお、インテリジェンシアについては後で再登場する場面で解説するが、名前自体は原作コミックにも登場するグループの名前である。

ミスター・イモータルは、1981年に買ったApple社の株とクロムウェル女男爵の金を賠償に充てることを提案。Apple社の設立は1976年で、1981年はAppleがPC市場に参入した年なので、事実なら見る目がある。また、ミスター・イモータルの最初の妻と話すクロムウェル女男爵は1497年に亡くなっているので、ミスター・イモータルは実に500年以上生きていることになる。

結婚式場ではジェニファーのいとこのチェドがDJインクチェディブル・ハルクを名乗ってフロアを沸かしている。着替えたジェンはまたも片付けを押し付けられると、付き添いになると聞かされていたジョナサンが犬だと分かり、散々な状況。それでもお酒と音楽があれば楽しめる。この時かかっている曲はアニー・レノックス「Walking On Broken Glass」(1992)。「人生は粉々に砕け散り、私は砕けたガラスの上を歩いている」「あなたは私を傷つけたがっていて、私を本当にうまく傷つける」と、ジェニファーの心情が代弁されている。

GLK&Hでは、ニッキが賠償額の配分を見事に仕切ってみせていた。それもお金の処理だけでなく「目を見つめての謝罪」など、被害者が本当に求めているものも把握しており、かなりの有能さを見せている。

vs タイタニア

ジェニファーはブルース・バナーに電話しているが連絡が取れない様子。第2話では、ブルースは第1話で迎えに来た惑星サカールの宇宙船に乗って宇宙に旅立ってしまった。やってきたジョシュに、ジェニファーは結婚式に出た理由を自分の成功を見せつけたかったと話す。シー・ハルクは魅力的だと語るジェニファーだったが、ジョシュはそのままのジェンの方がよいと声をかける。ジェニファーをそれを喜びながらも、初めは嫌がっていたシー・ハルクの姿を求めるようになっており、アイデンティティの揺らぎが感じられる。

そんな中、嘔吐するために外に出たジェニファーをタイタニアを襲う。インフルエンサーだったタイタニアはシー・ハルクに嫉妬しているのだ。シー・ハルクとタイタニアが式場で戦いを始めた時、いとこのチェドが流す曲はマーシャ・グリフィス「Electric Boogie」(1990)

それにしてもシー・ハルクと互角レベルの戦いができるタイタニアはどのようにして能力を手に入れたのだろうか。変身せずに力を発揮できているところを見ると、スティーブ・ロジャースやカーリ・モーゲンソウのように超人血清を打ったのかもしれない。とすれば血清の出どころは超人血清の再生産に成功していたパワー・ブローカーだろうか。

ミソジニストのウェブサイト

そして、第6話の最後を締めくくるのは、ミスター・イモータルの動画が投稿されていたインテリジェンシア。ニッキとマロリーが「ふしだらなシー・ハルク (Slutty She-Hulk)」というタイトルでシー・ハルクの胸部をアップにしたサムネの動画をクリックすると、「ハルクキング」という文字と共に会員登録のページが表示される。

ニッキは普段自分がぶつけられているミソジニー(女性憎悪)な言葉を並べて審査にパスすると、そこに書き込まれていたのはシー・ハルクへの大量の殺害予告だった。第3話と同じく「キャンセル」という言葉も見られる。「シー・ハルクは男だったらキャンセルされてる」と、現実でもネット上に溢れている詭弁も書き込まれている。

マロリーはニッキにこれをジェニファーへ知らせないよう言うが、ニッキはこの事実をボイスメッセージに残す。一方、ジョシュと過ごすジェニファーを監視する人々と「次の段階に入れるか?」と確認するハルクキングのメッセージが映し出される。

第3話ラストでレッキングクルーが使おうとして折れた注射器の改良版と思われるものを入れたケースが閉じられると、そこには放射性物質のハザードシンボルが貼られていた。つまりこれは、ガンマ線を含むシー・ハルクの血液を採取するための注射器だと考えられる。そうでなければ何か放射性物質を注入するための注射器ということだろう。

マロリーは「単なる嫌がらせ」と言っていたが、インテリジェンシアは相当やばいところまで行っている。ハルクキングには目的がありそうだが、女性のスーパーヒーローというだけで何もしてないのに憎悪をぶつけられる社会の状況とミソジニーサイトを活用して、シー・ハルクに対する包囲網を張っているように思われる。

そしてインテリジェンシアは完全に架空のお話ではない。2010年代中盤に入り、北米では女性蔑視主義者たちのネット上での活動が活発になっている。これまでにもあった4chanなどの掲示板での攻撃に加え、インセルズ・ドット・ミー (incels.me) などミソジニー専門のウェブサイトが立ち上げられ、女性に対する直接的な暴力を呼びかける書き込みが数多く投稿された。そしてインセルズ・ドット・ミーは、ヘイトスピーチと暴力扇動の温床になった。

北米では女性蔑視主義者によるテロも複数起きており、2014年にカリフォルニア州で女性への復讐を唱える文章を投稿していたエリオット・ロジャーが銃乱射で6名を殺害し、ミソジニストの間で英雄視されるようになった。

2018年4月には車で次々と通行人をはねて10名を殺害したアレク・ミナシアンがエリオット・ロジャーを英雄視し、インセルズ・ドット・ミーから影響を受けていたことが明らかになっている。同年10月にはドット・ミー (.me) を管理するドメインレジストリによって、インセルズ・ドット・ミーは暴力行為やヘイトスピーチの助長を制限するポリシー違反で閉鎖された。

このように、ジェニファーへの殺害予告が並ぶ『シー・ハルク』のインテリジェンシアは、空想の産物ではなく、現実に起きていることの地続きのものである。MCUで初めての女性単独主人公になったキャプテン・マーベルが登場した時には、「もっと笑え」という言葉が投げかけられ、公開前にレビューサイトで低評価をつけるという嫌がらせも横行した。女性のスーパーヒーローが現れればミソジニーの標的になるという今の社会の現実を、『シー・ハルク』は残酷にも映し出している。

ドラマ『シー・ハルク』第6話ネタバレ感想&考察

ハルクキングの狙いは?

ゾッとするラストが待っていた『シー・ハルク』第6話。明るい作風とは裏腹に、女性蔑視に関する現代社会のシビアな問題を扱っている。第6話のタイトルである「ただのジェン (Just Jen)」も、ジェニファーはただジェニファーであるだけなのに男たちの憎悪に晒されるという理不尽な状況を示しているようにも思える。

一方、そうした状況を利用しているように見えるハルクキングは何者なのだろうか。レッキングクルーが口にした「ボス」の正体が、原作コミックでレッド・ハルクになるロス将軍である可能性については第3話の解説記事で考察した。しかし、ヴィランチームのサンダーボルトを結成することになるであろうロス将軍がミソジニーを利用して作戦を進めているとすれば、少しも同情できない。

インテリジェンシアは原作コミックでレッド・シーハルクや、新たにハルクの力を手に入れるアマデウス・チョウを生み出したスーパーヴィランのグループの名前でもある。ハルクキングがシー・ハルクの血を狙っているとすれば、新たなハルク誕生につながる可能性は高い。

なお、2023年7月28日米公開を予定している映画『ザ・マーベルズ』では、韓国の人気俳優パク・ソジュンが原作コミックで韓国系アメリカ人であるアマデウス・チョウを演じるという予想もある。パク・ソジュンの『ザ・マーベルズ』出演自体はほぼ決定しており、『シー・ハルク』が『ザ・マーベルズ』への布石となる可能性もあるだろう。

少しずつ闇の部分が明かされてきた『シー・ハルク』。ラスト3話でどんな展開が待っているのか、そしてデアデビルはいつ登場するのか。引き続き注視しよう。

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』はDisney+で独占配信中。

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』

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D23 Expoで発表された7人のサンダーボルツメンバーのまとめはこちらの記事で。

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『シー・ハルク』第7話の解説はこちらの記事で。

第5話の解説はこちらの記事で。

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9月9日からは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が追加映像と共に再上映される。詳しくはこちらの記事で。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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