シーズン4第3話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』シスター・セージのアレ、フレンチーの言葉の意味は? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン4第3話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』シスター・セージのアレ、フレンチーの言葉の意味は? あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン4配信開始

Amazonドラマ『ザ・ボーイズ』は2019年に配信を開始した人気シリーズ。ガース・エニスとダリック・ロバートソンによる同名コミックをエリック・クリプキが実写化した作品で、スーパーヒーロー作品を揶揄しながら鋭い社会風刺を取り入れた作風が高い評価を受けている。

『ザ・ボーイズ』はシーズン5で終了することがすでに発表されており、シーズン4はクライマックスへ向けた重要なシーズンになる。今回は、シーズン4で初回に配信された最後のエピソードである第3話をネタバレありで解説&考察していこう。

以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。露骨な残虐描写や流血描写、性描写、自殺に関連する内容が含まれるので、注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話「我らは赤旗を掲げ続ける」ネタバレ解説

新生セブン誕生

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話の原題は「We’ll Keep the Red Flag Flying Here」で、これは日本でも歌われる労働歌・革命歌「赤旗の歌」の歌詞の一部である。革命を思わせるタイトルに反して、冒頭に登場するのはホームランダーだ。無罪評決を勝ち取ったホームランダーは勢いを取り戻しており、スターライトと支持者達を非難するスピーチをしている。もうそろそろスピーチ役は退いてもいい気はするが、後任がいないのだ。

ノワール、Aトレイン、ディープが呼び込まれるシーンで少しだけ流れる曲はトゥイステッド・シスター「I Wanna Rock」(1984) だ。

そしてホームランダーは、ファイアクラッカーとシスター・セージを新たなセブンメンバーとして紹介する。これで、セブンはファイアクラッカー、シスター・セージ、ノワール、Aトレイン、ディープ、ホームランダーの計6人に。もう一席空いているが、ホームランダーは息子のために空けておきたいようだ。

ザ・ボーイズに戻れなかったブッチャーは、ジョー・ケスラーとライアンの誘拐計画を練っていた。ゾウも倒せる麻酔薬ハロタンを使ってライアンを拉致するが、その後は対ホームランダーの兵器にはしない、それがブッチャーの計画であり、ケスラーとの約束だ。

セブンに入っても陰謀論を撒き散らしているファイアクラッカーに、流石のホームランダーも引き気味。すっかりセージの言う通りにことを運んでいるようだ。セブン入りで目立っていることに不満を漏らすセージに対し、ホームランダーは「心が狭いと?」と迫るが、セージは「そう思ってる」と真っ直ぐに答える。ホームランダーからしたら、こんな風に対等に話せる相手に会うのも久しぶりで嬉しいのかもしれない。そしてセージは、ここで明確にクーデターを起こそうとしていることに触れる。能力者の力でアメリカ政府を則るのがセージの狙いのようだ。

喋り続けるファイアクラッカーは、「スターライトが女性の味方? トランスジェンダーに女子トイレを使わせて?」とトランスヘイトも披露。陰謀論者がトランスヘイターというのは解像度が高い。だが、それを見てホームランダーはため息をついている。数字のためとはいえ、セブンのレベルがあまりに下がることを嫌っているのかもしれない。

その頃、政治の世界は…

スターライト・ハウスには、子どもが監禁されているという陰謀論を信じたホームランダー支持者が銃を持って乗り込んでくる事件が発生。フレンチーが制圧するが、コリンからはその正体に疑問を持たれてしまう。キスでその疑いをかき消すが、前話ではフレンチーはコリンの家族を殺したことが明らかになっており、その愛の終焉は近いと予想できる。

ロバート・シンガーは会議室で、ヴォートを支援している議員の数を確認している。下院で214名、上院で43名と報告されているが、下院の議席数は435議席、上院は100議席なので、両院ともに過半数に迫る数字ということだ。政党ではなく企業に支配される議会という状況が分かりやすく示されている。

そこにニューマンが入ってくるが、シンガーはヴォートへの規制を強め、軍や警察、全ての政府組織から能力者を排除するべきと主張。表向きは非能力者として振る舞っているニューマンは、それを否定できないでいる。この時、ニューマンは「能力者規制法案」の書類を持っている。「規制」というのは「Ban(排除)」ではなく、ルールの中に組み込むということであり、公に存在を認めるということでもある。政治の舞台でも火花が散っている。

それぞれの次の動き

キミコは、過去と向き合うために光解放軍を倒すという。MMはセブンの新人二人に疑問を抱いており、セージについて「イーロン・マスクの方がよっぽどチャーミングだ」と話し、字幕では省略されているが「やつ(マスク)は半分アンドロイドなのに」とも言っている。

「情報提供者として最適」としてAトレインを味方にしたいMMに対して、かつてAトレインに恋人を殺されたヒューイは「ブッチャーを戻そう」と意見する。全員が意見を言える民主的なザ・ボーイズに生まれ変わったが、故に意思決定には時間がかかる。キミコとフレンチーは意見も出さずに出かける始末だ。

ゲームをしているライアンは、「DontBACunt」というアカウントから対戦リクセストを受ける。「DontBACunt」=「Don’t be a cunt(クソになるな)」というアカウント名から、その相手がブッチャーだと分かる。ゲームの映像はなかなかクオリティが高く、『ザ・ボーイズ』は以前からゲーム化待望論があるので、意外と早く実現するかもしれない。

ブッチャーは意外にもストレートにライアンに「話がしたい」と家に来ないかと誘う。「余命半年のカードがある」「余命一ヶ月ならいいよ」というお互いの憎まれ口は、この親子らしいやり取りだ。

セブン会議で決まったこと

スターライトの復活にイラついているホームランダーには、媚を売るファイアクラッカーの言葉が聞こえていない。ちょっと前なら色仕掛けに乗っていたはずだが、やっぱりちょっと大人になったかもしれない。

新人ノワールはアシュリーに「方向性をくれ」とかなんとか面倒臭いことを言っている。多分マネジメント的には黙って立っていてくれればいいので、あまりリソースを割きたくないのだが、新人ノワールは役割を求めているので困ったことになっている。

ホームランダーはセブンの会議の冒頭でヴォートのCEOをアシュリーからセージに交代させることを発表。ディープは静かに喜びを噛み締める(顔はやかましいが)。ホームランダーはもはやセージに判断を委ねるようになっている。大きな変化だ。

セージは、数日前に犯罪分析室から情報が盗まれ、それによってスターライト支持者の容疑が晴れたことを明かす。Aトレインはヴォートから映像を盗んでザ・ボーイズに渡していたのだ。シーズン3では、ディープが犯罪分析室の担当になっているが「私は何もしていません」という二重に間抜けな回答しかできない。

セージはディープを犯罪分析室の責任者から解任するが、ホームランダーはそれを聞いて「よかった」と本音を漏らしている。感情に任せてディープを責任者に任命したのはホームランダーなので、自ら解任することはできなかったのだろう。ホームランダーが散らかした分をセージが整理してくれているのだ。

セージは、ライアンに二つのティーンチームからオファーが来ていると話す。字幕では省略されているが、一つはセージの出身チームであるティーンエイジ・キクスで、もう一つはスターライトが所属していたケープス・フォー・クライストだ。

ディープは多忙でタコのお世話もできない状況に陥っている一方、CEOから降格になったアシュリーは怒り心頭。英語では「ヴァンダービルト大学も出たのに!」と言っており、アシュリーの出身大学が全米トップ20に入る名門大学であることが示されている。ディズニーからのオファーが来ているとして、退職も視野に入れているようだ。このCEO室で縛られているのはニュースキャスターのキャメロン・コールマンである。

向き合うザ・ボーイズ

お菓子作りに励むパパブッチャーはクッキーの中に麻酔薬ハロタンを仕込む。そしてライアンが到着すると、コネクト4とレゴを用意したと告げる。コネクト4はシーズン3第1話でブッチャーがライアンと遊んでいたゲームだ。しっかり思い出を残しているんだけど、でもライアンはもうビデオゲームで遊ぶ歳なんだよね……。

そしてブッチャーは、「ママのレシピで作った」という口説き文句でクッキーを食べさせようとするが、失敗。期せずして親子で真っ当に話し合うことに。死ぬことが怖くないのかと聞かれたブッチャーは、「覚悟してる」と返すが、ライアンには嘘だと見透かされる。帰ろうとするライアンにブッチャーは「フーズボール」を提案。フーズボールとはテーブルサッカーのアメリカでの呼び名だ。

MMはAトレインに接触。スターライトに協力したことをネタにゆすりをかけることもできるが、そうはせず、Aトレインが抱えている不満と罪悪感を指摘する。「主演映画に満足できないか?」というセリフは、英語では「white savior movie/白人救世主の映画」と言っている。前話で撮影していた『トレーニング・Aトレイン』のことだろう。そして、Aトレインがトッド殺害に加わっていたことを見抜いていたMMはそのことを指摘し、本気で行動するチャンスだと告げるのだった。

光解放軍のアジトに潜入したキミコとフレンチー。キミコの痛快アクションとハイになっているフレンチー視点のファンシーな映像が展開される。このシーンで流れている曲は、フランス出身のバンドであるLes Terribles「La Nuit, le Jour」(2005)だ。

キミコが戦っている間、フレンチーは死んだ家族と並ぶコリンと、今まで殺してきた人々の幻覚を見る。そして、幻覚の中で現れたのはシーズン3で登場したかつてのフレンチーのボス、リトル・ニーナだ。コリンの親を殺したこと、人殺しの怪物であることを指摘される。一方のキミコは、光解放軍のアジア系の女性と遭遇し、困惑した態度を見せるのだった。

ライアンとテーブルサッカーで遊ぶブッチャーは、容赦なくライアンを倒すが、ライアンはタワーではいつも勝たせてもらえると話す。ホームランダーは世間のことばかり気にしているから、こうして父と無邪気に遊べるのは貴重な時間だ。

ライアンは手違いで人を殺したことを明かし、ホームランダーから「気にすることない」と言われた目を潤ませる。シーズン3第3話では、ブッチャーはライアンに「お前がベッカにしたことを忘れられると思うか」「もう顔も見たくない」と言い放ってしまっていた。ライアンはやはりそのことを覚えていて、今度のことで、自分は嫌われてもしょうがないと思い詰めていたのだ。

ブッチャーも正直になり、どうしても人を遠ざけてしまうという自分の悪癖を吐露する。自分は悪い人間だと認め、何も成し遂げずに死ぬことは怖いということも認める。弟も妻も亡くし、ベッカが残したライアンを正しく導くこともできない、それが何よりも怖い。ブッチャーがシリーズで最も正直になった瞬間ではないだろうか。

明かされるアニーの闇

シスター・セージはアニカという職員を尋問するが、追跡を依頼されたと告白した時点でホームランダーが殺してしまう。それを見たアシュリーは退職願をシュレッダーにかける。進むことも出ることもできない、まさに生き地獄である。

アニーはファイアクラッカーのオフィスで待ち伏せしていた。部屋にあった「キリスト・銃・赤ん坊」という標語は、米保守派が大事にしているものだが、「赤ん坊」というのは「女性は子どもを産むもの」と考え、中絶を禁止する差別的な思想と繋がっている。また、部屋にはファイアクラッカーの番組「真実の爆弾」の大きな絵が飾られているが、ファイアクラッカーがまたがる爆弾には放射能のマークがついており、これが原子爆弾であることも分かる。

アニーが「なぜ私を嫌うのか」と問うと、ファイアクラッカーは3年前にスパークラーという名前で同じオーディションに出ていたことを明かす。そして、アニーがデマを撒き散らしたこと、「デブのヤリ○ンとは話さない」と言い放ったことを指摘する。

アニーは、母に言われたようにしたと弁明し、謝る。アニーの母はいわゆる“ステージママ”で子どもをスターにするためなら何でもする人物だったが、アニーがやったことは事実。ファイアクラッカーは否定するほど逆効果だと考え、最終審査を辞退したという。「いずれその本性に世界が気付く」と告げ、アニーは絶望的な表情を浮かべるのだった。

つまり、ファイアクラッカーは、スターライトへの復讐として、同じように「否定するほど逆効果」なデマを広めているということだ。アニーにも、他のザ・ボーイズメンバーと同じように過去が追ってくる。ヒーローに返り咲いてしまった今、矛先を向けられたアニーは相当追い詰められた状況に立っている。

ヴォート・オン・アイスの悲劇

スケートリンクでは、『ヴォート・オン・アイス』の「メリー・クリスマスをハッピー・ホリデーと言わないで」という内容の歌の稽古が行われている。「メリー・クリスマス」はキリスト教の宗教的な挨拶なので、多様な宗教の人々がいるアメリカでは、近年はクリスマスの挨拶は「ハッピー・ホリデー」と言うようになっている。

それを否定する保守的な歌なのだが、歌詞の中ではクリスマスを「キリストが生まれた日」と誤認している点がポイントが高い。これはよくある勘違いをネタにしており、クリスマスはキリストの誕生を祝う日だが、キリストの誕生日は特定されていない。また、おそらくこのシーンはMCUドラマ『ホークアイ』(2021) の劇中ミュージカルのパロディだ(元ネタ自体がパロディなのでオーマジュと言った方が正しいか)。

そこに潜入していたのは、MMとヒューイ。MMはAトレインからニューマンがホームランダーと会うという情報提供を受けていた。ヒューイが盗み聞きする中、セージは、ファイアクラッカーはスターライトを潰せると主張し、シンガーを殺してニューマンが大統領になった後には能力管理局の解散、運動、本、教師を排除していくと説明する。ファシズム国家の作り方をよーく理解している。

ヒーローを街に配置し、警察を超える権限を与えると話すセージに対し、ニューマンはシンガーと結託する軍がそれを許さないと反論。大統領になっても自分の正体は明かさないとするニューマンに、ホームランダーは子ども達のために正体を明かすよう説得している。ホームランダーが「スタンに何かを証明するためか?」と言っているセリフの「スタン」というのは、ニューマンの養父でヴォート社元CEOのスタン・エドガーのことである。

ダクトの中から盗み聞きしていたヒューイは、ホームランダーの肩に汗を垂らしてしまい、ホームランダーがその汗の匂いを嗅いだことで、潜入がバレてしまう。ヒューイの匂いを覚えているのか……。

ニューマンにとっては、自分の正体に関する証拠を握っているヒューイを殺せないが、ニューマンは正体を明かすべきだと考えているホームランダーにとってはそんなことは関係ない。ホームランダーが目からビームを放つと、MMがその目にスポットライトを当て、目測を誤らせる。それによってクイーン・メイヴ役の役者が犠牲になって会場はパニックに陥る。スケートシューズで関係ない負傷者も出まくりのグロテスクな展開に。

サルトルの言葉

この危機からヒューイを救ったのはAトレインだった。かつてヒューイの恋人を奪った存在だ。Aトレインもまた、自らの過去と向き合い、償おうとしているのかもしれない。過去に追われる酷い1日を経験したフレンチー、キミコ、アニーはオフィスで酒を飲む。フレンチーが引用する「意思に反して世に出ても、全ての責任を負わねばならない」という言葉は、哲学者サルトルのもの。人間は自由であると共に責任を負っているという考えだ。

自分で洗濯を下す人間には、孤独と責任が付きまとう。この考えは、過去に苛まれる3人に刺さる言葉でる。アニーは、他人を批判するのは簡単だが、自分で選択することは大変だと吐露する。だが、深い話をする前にアニーはマリファナを取りに行ってしまう。キミコはフレンチーに、フレンチーはキミコに隠している過去を共有するよう迫るが、お互いそうはせず、フレンチーの「お互いの問題は解決できない」という言葉で話は打ち切られてしまう。

アニー、フレンチー、キミコ、それぞれが自分自身で過去を抱え込む中、ヒューイは、前話のアニーと同じように“行動したAトレイン”の影響を受けてか、母と話をすることに。自分の過去と向き合うことは、自分で行動することでしか達成されないのかもしれない。

ヒューイの母は産後うつに悩まされていたこと、自殺未遂をしたこと、その翌日に姿を消したこと、ヒューイに電話しようとしたがヒューから止められていたことを明かす。そして許してもらおうとは思わないが、と前置きした上で、謝罪の言葉を口にするのだった。「他のみんなと同じようにボロボロだった」という言葉が、今のザ・ボーイズメンバーの状況と重なる。

セージの机にあったのは…

ブッチャーは、ジョー・ケスラーからクッキーを捨てて麻酔剤を無駄にしたことを詰められていた。ケスラーはやっぱりライアンを兵器として利用するか、そうでなければ殺そうと考えていた。ブッチャーはとんだやつと手を組んでしまったものだ。ライアンを狙うケスラーという敵が一人増えてしまった。ケスラーから消すか……?

シスター・セージはしょうもないリアリティショーを観て、ジャンクなブルーミングオニオン(花が咲いたように盛り付けられたオニオンリング)を食べ、ディープを抱いてしまう。最後のカットで、テーブルの上に血のついた器具が置かれていることが分かる。これはおそらくロボトミーの器具だ。ロボトミーは器具を直接脳に挿入して、精神病を治そうとする治療法で、もちろん現在では行われていない。

このシーンでの、セージの“らしくなさ”を見るに、おそらくセージは自らロボトミーを施して、一時的に“賢さ”を解除しているのではないだろうか。それを示す演出がテレビと食べ物と、ディープ、というわけだ。賢すぎるのも疲れてしまうので、オフが必要ということならば、セージの弱点が見えてきそうではある。

ちなみにセージはこのシーンで、「『トランスフォーマー2』観る?」と聞き、ディープは「シャイアは友達だ」と返しているが、同作で主演を務めたシャイア・ラブーフは元交際相手から性的暴行などで訴えられ、その事実を認めている。ディープは「『ハニーボーイ2』にも誘われている」とも言っているが、シャイア・ラブーフが訴えられたのは『ハニーボーイ』の共演者である。

ホームランダーの相談相手

自宅待機激おこお父さんと化したホームランダーは、遅くに帰ってきたライアンに詰め寄るが、ライアンはブッチャーの家にいたことを隠そうとする。だが、それは通用しない。なぜならホームランダーにはブッチャーの匂いが分かるからだ……!

全てを与えているのにブッチャーのところに行ってしまうライアンに、ホームランダーは感情を抑えられなくなっている。だが、ホームランダーが与えているのは「私が欲しかったもの」でしかない。自分しか基準に出来ない哀しきモンスターなのだ。

ついに物を壁に投げつけてDV親父と化したホームランダーは、鏡の中の自分たちと話し合う。ホームランダーにはこれしかいないのだ。まだ愛を求めていると自分に指摘されたホームランダーだったが、今こそ愛への渇望を乗り越えるべきだという結論に至る。その手段は「スタートに戻る」こと。ホームランダーは隔離された環境で育てられたとされているが、スタートに戻るというのは、何を意味するのだろうか……。

このシーンの意味はこちらの記事で別途考察している。ホームランダーのクローン登場もあるかも?

エンディング曲は、ヴォート・オン・アイスで歌われるはずだった劇中歌「Let’s Put The Christ Back In Christmas」のフルバージョン。映像のフルバージョンも、ヴォート・インターナショナルの公式YouTubeにアップされている。

ラストに劇中パロディ曲のフルバージョンが流れるという展開も、ドラマ『ホークアイ』の「ロジャース・ミュージカル」を踏襲したものだ。『ホークアイ』の最終話では、ミッドクレジットシーンでパフォーマンスのフルバージョンが流れている。こちらは実際にミュージカルの全編が上映されることにもなったが、『ザ・ボーイズ』版は果たして……。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話ネタバレ考察&感想

なかなかタフな初回3話だった。『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話では、スターライトの過去の闇が明らかになり、3話かけてザ・ボーイズのほぼ全員がその過去と向き合うことを迫られている。まだ元気なのはMMくらいか。

そんなザ・ボーイズメンバーをよそに、Aトレインは黙々と過去の清算に取り組んでいるように見える。そのAトレインから影響を受けて、ヒューイは母と向き合うことにしたが、Aトレインを非難してきたスターライトもまた、自らの過去に向き合うことになりそうである。

アニーが自らファイアクラッカーへの仕打ちを発表してしまえば、対スターライト特化人員であるファイアクラッカーのセブン内での存在意義がどうなるのかということは気になるところ。シスター・セージの“ロボトミー”という弱点も垣間見えた。もしかすると、逆にロボトミーで一時的に知能をアップしていて、セージの特殊能力はロボトミーに耐えられる治癒能力、という可能性もあるかもしれない。セブン新メンバーの二人からも目が離せない。

ブッチャーはライアンと対話することができたが、ライアンを狙うジョー・ケスラーの動きが心配だ。やっぱりザ・ボーイズに戻らなきゃ! と思うが、ザ・ボーイズメンバーはそれどころじゃないかも……。シーズン4では、ブッチャーとライアンの共闘が状況を打破する鍵になるかもしれない。

あとはホームランダーがどう動くのか。愛を求めることをやめるなら、ライアンまで捨ててしまうということにならないだろうか。結局孤高に戻ってしまうならいつものパターンだが、まぁ、いつも自分自身と話し合って決めているから結論は変わらないのかもしれない。

非常に上質な群像劇を見せて、『ザ・ボーイズ』シーズン4はスタートを切った。全8話で残り5週間、もう次週が折り返しの第4話だなんて勿体無い気はするが、早く観たいのも事実。短い間だが、最終話までの旅路を楽しもう。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。初回は3話同時配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。

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『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話のネタバレ解説&考察はこちらから。

シーズン4第3話ラストの意味はこちらの記事で考察している。ホームランダーのクローンの登場もあるかも?

シーズン4第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

『ザ・ボーイズ』シーズン3最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』シーズン1最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

 

『ザ・ボーイズ』のシーズン5での終了についてエリック・クリプキ監督が語った内容はこちらの記事で。

『ジェン・ブイ』シーズン2についての情報はこちらから。

「ザ・ボーイズ」フランチャイズの更なるスピンオフ展開についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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