シーズン4第2話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』陰謀論のメカニズム、ファイアクラッカーの狙いとは あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン4第2話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』陰謀論のメカニズム、ファイアクラッカーの狙いとは あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン4配信開始

2019年に配信を開始したドラマ『ザ・ボーイズ』はシーズン4に突入。2024年6月13日(木)よりシーズン4の初回3話の配信を開始した。『ザ・ボーイズ』を手掛けるエリック・クリプキ監督はシーズン5が最終シーズンになることを明言しており、『ザ・ボーイズ』のクライマックスは近い。

今回は、全8話で構成されるシーズン4の第2話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。露骨な残虐描写や流血描写、性描写が含まれるので、注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話「堕ちた者たちの生き様」ネタバレ解説

サプライズゲストとAトレインの苦難

『ザ・ボーイズ』シーズンシーズン4第2話は、ビギーことノートリアス・B.I.G.「Hypnotize」(1997) の曲と共に始まる。この曲はビギーが射殺される5日前にリリースされたビギーの代表曲の一つ。だが、黒人たちがドラッグディールに勤しむシーンで流すにはあまりに定番といいうか、ステレオタイプな選曲である。それもそのはず、このシーンはヴォート御用達のアダム・バーク監督が指揮する撮影シーンという設定になっている。

そして車から登場したのは、超有名コメディアンのウィル・フェレルだ。長らくトーク番組の『サタデー・ナイト・ライブ』で司会を務め、『俺たちニュースキャスター』(2004) といった映画での主演などでも知られる。近年では『バービー』(2023) でマテル社のCEOをコミカルに演じた。『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話ではコーチ・ブリンクという劇中劇の役で登場しており、監督からは「フェレル」と呼ばれていることから、本人役であることが分かる。

Aトレインの新作は『トーレニング・Aトレイン』というタイトルで、白人コーチがAトレインをゲットーでの生活から抜け出させようとする典型的なストーリー。善き白人メンターと悪しき黒人コミュニティというステレオタイプな設定だ。一方で、Aトレインのセリフには「俺の人生は変わらない」「俺の望みは関係ない」と、Aトレインの現状を示す本音が含まれているように思える。

アダム・パークはAトレインへの注文として「俺の望みは関係ない」というセリフは「What I want doesn’t matter.」ではなく「What I want don’t matter.」だと指導する。もちろん文法的には前者が正しく、後者は若者やギャングっぽい乱暴な言い回しとなっている。

ロケ地には“新人”のブラック・ノワールもいた。前回登場したノワールが、シーズン3でホームランダーに殺されたオリジナルの中身を入れ替えた新人であることがここで示される。「ここには残りたいけどモチベーションに問題がある」と面倒臭い後輩ムーブをかますが、Aトレインはただ与えられた役割をこなすよう告げるのだった。後輩ノワール、セブンのアキレス腱になりそうな雰囲気。

それぞれの仕切り直し

アニーは、スターライトの施設を運営していたキアラのお見舞いに来ていた。キアラは前話の暴動でリンチを受けて重傷を負っている。テレビでは、前回のホームランダーによる謀略について、スターライト支持者の2名が容疑者になったと報じられている。無実の容疑者が黒人男性なのは、アメリカの歴史と現状を反映している。

ヒューイは前回ラストで登場した母と対峙。ヴォートの美容ケア部門ヴォータリティで働いているらしい。「ヴォータリティ=Voughtality」というのは、「バイタリティ=Vitality」と「ヴォート=Vought」を掛け合わせた言葉だ。

ヒューイは6歳の時以来に現れた母にイラついているが、母はここ2年、元夫のヒューと話し合っていて、治療に関する全権を委任されているという。ここ2年というのはヒューイがザ・ボーイズとして戦っていた期間であり、ヒューイが父のそばにいてやれなかった陰で父は母を頼っていたのである。急に父を奪われてしまう感覚、けれどその責任はヒューイにもある。

フレンチーがコリンとの愛を深める一方、キミコはカウンセリングに行き、心因的な無言症の原因かもしれない自分の過去と向き合うよう助言を受ける。だが、キミコは両親や過去について語ることを拒否する。オフィスではブッチャーが自分の余命についてチームに共有しており、過去と向き合いたくないキミコと、未来がないブッチャーが対比で描かれている。

ブッチャーがみんなに自分の状況を共有できたのは偉い。しかし、チームの新たなリーダーであるMMはブッチャーにクビを言い渡す。「俺のボーイズだ (The Boys is mine.)」というブッチャーの言葉は、チームだけでなくこの番組自体に対する発言とも受け取れる。ちなみに、いつもヒップホップTシャツを着ているMMだが、シーズン4第2話ではエリックB&ラキムのTシャツを着ている。

セージの論破

ホームランダーは息子のライアンをヒーローとしてデビューさせるプランを進めている。いつも通り広報部のセス・リードとエバン・ランバートが新しいプランをプレゼンしている。ライアンのヒーロー名は「ホームボーイ」。ホームランダーのサイドキック(助手)としてデビューさせるつもりらしい。

これに口を挟んだのは、ホームランダーのブレインになったシスター・セージだ。「MGM時代のナンシー・レーガンよりダメ」と言っているが、ナンシー・レーガンは元俳優で、その後はロナルド・レーガン大統領のファースト・レディとして広く知られている。セージは、MGMスタジオに所属していた俳優時代のナンシーよりもダメだと言っているのだ。

セージは、「ガンパウダー以降はサイドキック制は廃止されている」と申し立てる。シーズン3では、ソルジャー・ボーイがサイドキックのガンパウダーに虐待を加えていたことが明かされている。ちなみにセージはティーンエイジ・キクスの元メンバーという設定になっているが、原作コミックではガンパウダーもティーンエイジ・キクスのメンバーである。

セージは、ライアンは実験によってではなく自然に生まれたことを売りにするべきと主張。人工的に作られたホームランダーとは違うということだ。それに、セージは「選ばれし者」は単独ヒーロー用の言葉だと主張して、ハリー・ポッター、「マトリックス」のネオ、「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカーといった白人の単独ヒーローを例に挙げている。

論破されたホームランダーは、自分が入っていないライアンの“犯罪解決計画”を承認。セージの助言を受け入れる余裕を見せている(ギリギリだが)。セージが「ホームランダーは私を信用している」と言った時のアシュリーの顔よ。その後、アシュリーとエレベーターに乗ったセージは、アシュリーが髪を抜いたことも、マデリンが母乳を与えていたことも知っていた。まるで脚本を知っているようでもあり、かなりのチートキャラであることが分かる。

そこに乗り込んできたディープがライアンのデビュー戦への“出演”を希望すると、アシュリーはディープがPETAの監視対象のリストに入っていると拒否するのだった。PETAは、日本語では「動物の倫理的扱いを求める人々の会」と訳される動物愛護団体だ。

カピバラを知らないほど無知なディープだが、セージはディープに「優れた者として振る舞うべき」と助言。ディープ出演の案が受け入れられる。セージは賢いが能力者至上主義らしい。設定を理解しており、ホームランダーに影響を与えられるセージは、『ザ・ボーイズ』のゲームチェンジャーになりそうだ。

ホームランダーの老い

ザ・ボーイズのミーティング中、ヒューイは母との軋轢に、キミコは心理療法士の名刺に気を取られていた。前回、トッドとシスター・セージが一緒にいる写真を撮ったMMは、セージを盗聴してハリスバーグのホテルに現れることを突き止める。ハリスバーグはペンシルベニア州にある街の名前だ。ちなみにセージは32歳らしい。スターライト支持者を容疑者にされたアニーは、死体が急に現れたことにAトレインが絡んでいると見て、ヒューイと張り込みに向かっている。

ライアンはデビュー戦に向けて、ディープや新人ノワールとスタントの練習に取り組んでいる。やりすぎの演技を注意された新人ノワールは、それでも自分の案を主張するがホームランダーに嗜められている。ライアンの「人命救助って全部リハーサルがあるの?」とは正しい疑問だ。ディープはセージから助言された通り、アシュリーに対して人種的優位を強調して脅しをかける。シーズン1のディープが戻ってきたかのようだ。ディープを増長させるのもセージの作戦なのだろうか。

超聴力でスタッフの会話を盗み聞きしているホームランダーは、「映画『ヴォートの夜明け』はシワ消しで900万ドル飛んだ」という話を耳にしてしまう。『セックス・アンド・ザ・シティ2』(2010) と並ぶ、とも言われている。ホームランダーは若いライアンとの対比で、より自分の老いを実感していくことになる。

トゥルースコンの陰謀論

ヴォート・ガーデン・インに到着したMM、キミコ、フレンチーの3人だったが、そこにいたのはブッチャーだった。あくまで一般人として来ているというテイで行動を共にするブッチャー。そのホテルで行われていたのは「トゥルースコン」という陰謀論者の集まりだった。

この場面で流れている曲は、トーキング・ヘッズ「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」(1983)。「私は普通の人間だ。家を焼き尽くそう」「炎には炎を、だ」と、奇しくも陰謀論者が言いそうな歌詞が並んでいる。「ハウス」にはホワイトハウス=政府という意味もあり、2021年のオルタナ右翼による米国議事堂襲撃事件も想起させる。

このイベントは、右側に「地球平面説」の主張、左側には「Starlight is a Lizard Person(スターライトはトカゲ人間)」という主張など、まさに陰謀論者の巣窟という雰囲気。トカゲ人間は有名な陰謀論で、レプティリアンというトカゲのような宇宙人が人間に擬態して社会に紛れているという陰謀論が存在する。

他にも「ミニオンは奴隷プログラム」「気候変動はデタラメ」「ソルジャー・ボーイとリバティー、極秘恋愛?」「ストーム・フロントは生きている!」といった文字が確認できる。MMの「電波系のナチばかり」とは正しい評価だ。その中でキミコは捕えられている子どもの写真を見て、決闘をしている幼少期の過去がフラッシュバックする。その影響でビールをがぶ飲み。シーズン4はキミコがその過去と向き合う回になりそうだ。

ファイアクラッカーの陰謀論詰め合わせ

シスター・セージが向かったのは、配信番組「ファイアクラッカー 真実の爆弾」の出張イベント(営業)ステージだった。舞台を設定しているスプリンターという能力者で、演じるのは『ザ・ボーイズ』を手がけたドラマ『スーパーナチュラル』(2005-2020) にも出演していたロブ・ベネディクトだ。このシーンでは分身能力を使って一人でステージ設営をこなしている。

ファイアクラッカーは、“オルタナ・スープ・ムーブメント”のリーダーとして紹介されており、やはりオルタナ右翼のスターであることが分かる。ファイアクラッカーは、スターライトが子どもを売買しており、その隠蔽のためにスターライト支持者がホームランダー支持者を殺したという陰謀(というか嘘)を言いふらしている。その後も、スターライトはオプラやトム・ハンクスと結託して子どもの宅配サービスを営んでおり、トランスの子どもも扱われている、ソーダを頼めばアドレノクロムが届けられる、など、メチャクチャな内容だ。

有名司会者のオプラ・ウィンフリーと俳優のトム・ハンクスは、アメリカの極右勢力であるQアノンが提唱する陰謀論で悪魔崇拝の集団に所属しているとされている。もちろん根拠のないデタラメであることは、ファイアクラッカーが提示する根拠を聞けば明らかだ。

「トム・ハンクス出演作のタイトルは合計311文字」というのは真偽を確かめる手間をかけるほどの価値もないが、「311」が児童ポルノ通報用のコードというのは本当だ。だが、トム・ハンクスは2024年にも2本の映画に出演する予定で、トム・ハンクスが新しい作品に出演するたびにその文字数は増えていくはずだ。

ちなみにファイアクラッカーが「311」という数字を出した時に、「この数字はもちろん……?」という感じでオーディエンスに答えを求めているのだが、誰も答えることができていない。陰謀論を信じてしまう人たちは、本当に子どもを守るための知識は備えていないということが表現されている。

なお、「アドレノクロム」というのは、シーズン3第7話でもヴォート・ニュース・ネットワークのテロップにこのワードが登場している。アドレノクロムは止血作用のある化合物だが、陰謀論者の間では「子どもの脳から採取される若返り薬」とされている。陰謀論者の中では、セレブたちはこの若返り薬を使っているという設定になっているのだ。

それから、オプラはハリーとメーガンに会った後、自宅で軟禁されている、という話の「ハリーとメーガン」というのは、イギリスの王族を離脱してアメリカに移住したハリーとその妻のメーガンのことだ。こんな話を信じるのか? というキミコの問いに、ディープは「月面着陸のような馬鹿げた話でも、人は信じてしまう」と答える。ディープは月面着陸捏造説を信じているようだ。

ムカデ人間…?

フレンチーとキミコは、シスター・セージから耳打ちされて会場を出たスプリンターを追うが、フレンチーにコリンからのテキストが届く。ビールを8缶飲んで豪胆になっているキミコは、自分に遠慮しているように見えるフレンチーに気を使うなと突き放す。だが、フレンチーは別の問題を抱えている様子だ。

フレンチーとキミコは脱衣所に残されていたスプリンターのスマホから「ディープの碧海の間に午後9時」という情報を入手。サウナに入ったスプリンターは、自分の分身と一緒にムカデのように“つながって”いた。これは映画「ムカデ人間」シリーズのオマージュだと思われる。同作では、人間の口とお尻を縫い合わせる異常な計画が描かれる。

Aトレインを追うヒューイはアニーに、スターライトのスーツは象徴であり、人々には象徴が必要だと諭していた。実務を担当していたキアラの意識が戻らず、スターライト支持者は指導者の存在を求めていたのだ。シーズン4のアニーは、人々が過去の幻影を追うことに困惑している。過去に戻りたくないアニーは、父に関われなかった後悔を抱えるヒューイとは対照的だ。

Aトレインは、兄のネイサンの息子である甥たちにヒーロー譚を聞かせていた。そこに現れたネイサンは、ヒーロー活動は撮影所で撮影しているという真実を明かす。マーベルの『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018) では父と叔父の間で揺れるマイルス少年の姿が描かれたが、『ザ・ボーイズ』では虚像の叔父さんの視点が描かれる。「叔父さんはヒーローじゃない」という言葉と甥からの視線が辛い。

ネイサンたちが去り、アニーは乗り込もうとするが、家族のことで悩むAトレインの姿を見たヒューイはそれを止める。結果、Aトレインを取り逃がしてしまうが、この行動が未来を変えることになる。

陰謀論のメカニズム

シスター・セージはファイアクラッカーに接触。ホームランダーの代理だと言って先程のミーティングで撮ったセルフィーを見せている。セージはこの集まりを「近親相○者の集会」と言っているが、このエピソードの舞台になっているペンシルベニア州は近親婚が認められていない。だが、この集会に参加するような共和党の支持者が多い南部のアラバマ州では近親婚が認められている。カリフォルニア州なども合法だが、特にアラバマ州はネットなどで「cousin f*cker」と揶揄されることがある。2019年にはアラバマ州で性暴力や近親相○による妊娠でも中絶は認めないというとんでもない法律が成立したことは記憶に新しい。

セージはファイアクラッカーのスーパーパワーを聞き出す。火花を出すことしかできなさそうだが、それでもファイアクラッカーは「与えているのは目的」だと話す。ここに来る人々はクスリなどにハマって仕事も家も子どもも失い、政治家や大手メディアが関心を持たない人々だと言う。そうした弱者に寄り添って、ストーリーを与え、目的を与えるのがファイクラッカーのやり方なのだ。

人の人生にストーリーや目的を与えるという施し、それが陰謀論のメカニズムだ。陰謀論にハマっていく人たちは理由や意味を与えられることで満たされるから、地道な努力をして真の問題解決にコミットするわけではない。「隠れた悪と戦う戦士と、孤独で何者でもない人間、自分がどちらであると信じたいか」というファイアクラッカーの問いかけは芯を食っている。そうして人々を集め、利益を得るのは、陰謀論を流布するリーダーだけなのだ。

この話で認められたファイアクラッカーは、セージから「ディープの碧海の間に午後9時」と指定される。一方で、MMとブッチャーは喧嘩を始める。MMは妻のことを言われてブッチャーを殴ってしまうのだが、その後の「本物の兄弟になれると思ったのに」という言葉が悲しい。一番関係が古いMMとブッチャーの友情もシーズン4の見どころになりそう。

酔ったキミコは、子どものことを思うなら、おとぎ話じゃなく人身売買組織を追えとブースの人間にブチ切れる。ごもっともだ。このイベントに出ている人はほとんど創作活動に打ち込んでいるだけなのだが、実在する人々をありもしない嘘でネタにしているのだからタチが悪い。そうして騒ぎを起こしかけているキミコをフレンチーがサポート。こちらのコンビはお互いが必要みたい。

ヒューイとアニーがオフィスに帰ると、そこにはAトレインがいた。先程の尾行について、Aトレインは気づいていたのだ。Aトレインは事件時のスターライト支持者の映像を渡し、これでアリバイを証明できると助言する。Aトレインは、二人が兄と甥といるところに踏み込まなかったことに恩義を感じていたのだ。

そもそも『ザ・ボーイズ』はヒューイが恋人をAトレインに殺されたことから始まった物語だが、今家族の問題を抱えているヒューイは情をかけたのだ。それでも怒りが収まらないアニーに対し、Aトレインは反論せずに去っていく。冒頭のウィル・フェレル演じるコーチ・ブリンクの「もっといい人生を歩める」という言葉を、Aトレインは自ら実行することにしたのかもしれない。

ライアンはリハーサルした初任務の本番に挑むが、そこに結局ホームランダーが登場してしまう。自分が目立たなければ気が済まないのがホームランダーだ。ライアンはホームランダーの指示通りに犯人役のコイを投げ飛ばして殺してしまう。ライアンはシーズン2では期せずして自らのビームによって母ベッカに致命傷を負わせてしまっている。あのトラウマが蘇ったのではないだろうか。

あのパーティは何?

できない社員みたいなディープとバイトみたいなノワールの会話を挟んで、一同は午後9時にディープの碧海の間の隣の部屋に集合。しかし、これはシスター・セージが仕組んだ罠だった。おそらくファイアクラッカーの演説中にセージから耳打ちされたスプリンターは、わざと盗み見されるように更衣室にスマホを置いていたのだろう。

ファイアクラッカーはディープを罵り、その字幕は「フラ公」となっているが、英語では「Surrender Monkey(降伏するサル)」となっている。これはフランス人に対する侮蔑語で、アニメ『ザ・シンプソンズ』(1989-) から広まったアメリカのスラングである。

全てを見透かしていたセージは、MMらを殺すようファイアクラッカーに指示。ファイアクラッカーは日本人のキミコを中国人と間違うアジア系への典型的な差別を披露している。一同は戦闘を開始。スプリンターは裸にはなってしまうが分身できるため手強い相手だ。

MM達が逃げ込んだ隣の部屋で行われていたのは、“マーベラス・ミス・レイチェル”のお祝い。パキスタン系の結婚式パーティを描いたドラマ『ミズ・マーベル』(2022) を思わせる演出だが、これはおそらくユダヤ教の成人のお祝いだろう。人々が歌っているのは「ハバ・ナギラ」というヘブライ語の民謡で、ユダヤ教徒のお祝いで歌われる曲だ。MMも小声で「Mael tov」とユダヤ系のお祝いの言葉を述べている。

スプリンターとファイアクラッカーの乱入で会場はパニックに。激しい戦闘の後、ザ・ボーイズは取り押さえられてしまい、ファイアクラッカーは「シオニスト組織を探ったからCIAから攻撃を受けた」と配信を始める。こうして偶然を結びつけて陰謀論を作るのだ。

そこにブッチャー参上。頼りになるー。ブッチャーはスプリンター達にのしかかられて身動きが取れない状況になり、MMたちに逃げるよう言う、それどころかMMたちは全員でブッチャーを助けて制圧。スプリンターは本体を倒したこと、「ホロコーストは捏造」のビデオから好きだったとファイアクラッカーに告げて全員死亡したのだった。

この一連のシーンでは、陰謀論者による反ユダヤ主義が強調されている。現実では、イスラエルによるパレスチナ侵攻と虐殺が続いているが、アメリカでは反ユダヤ主義とイスラエル批判が混同して語られてしまうこともしばしばあり、イスラエルに対する抗議の動きが出遅れたという問題がある。陰謀論を批判する『ザ・ボーイズ』で、他の時事問題と同じようにイスラエルの問題を批判できるかどうかという点には注目したい。

フランス人のフレンチーを演じるトメア・カポンは実際にはイスラエル人で、2023年10月の時点で、自身のSNSに「我々は勝つ」と投稿したこと(その後、追加で「パレスチナ人をハマスから解放せよ」と投稿した)が話題になった。カポンは知り合いがハマスの人質になったとも明かしている。『ザ・ボーイズ』シーズン4の配信に合わせて、トメア・カポンは米Deadlineのインタビューに答え、改めてこう話している。

みんなに聞かれますが、もちろんパレスチナの人々の解放は重要です。しかし、何から解放するのでしょうか? テロからの解放、ハマスからの解放です。しかし、イスラエルに対しても同じことが言えます。イスラエルをあらゆる過激派から解放しなければいけない。おかしな人々が私の美しい国を乗っ取ろうとしているんですから。そういう人たちはどこにでもいて、哀しいことに過激派は新たなメインストリームになっています。

ハマスの攻撃によって知り合いが殺されたということも明かしている一方で、「停戦(ceasefire)」などの言葉は使わず、イスラエル軍によるパレスチナの民間人への残虐行為に触れることもなく、国内の「過激派」を非難するにとどまっている。『ザ・ボーイズ』で忖度なしに戦争犯罪に対する批判が行われるかどうかは、ファンの間でも注目されているポイントだ。

各々の結果と答え

息子のデビューを台無しにしたホームランダーは、自宅で泣きじゃくるライアンにミルクシェイクをあげている。ライアンが泣いている理由は、単独での任務を邪魔したことではなく、スタントコーディネーターのコイを殺してしまったことだった。

邪魔が入ったことの悔しさは理解できるが、人を殺したことの後悔は理解できないホームランダー。人を守るのが仕事だと思っていたライアンはショックを受けている。それにライアンが愛していた母ベッカは普通の人間だ。母を死に至らしめたことも含め、ライアンは簡単に割り切ることはできないだろう。

それでもホームランダーは、「崇高な使命がある」「選ばれし者だ」と主張してミルクシェイクは持っていってしまう。歳をとってきたけれど、中身はまだまだ子どもなのだ。一方、Aトレインの映像のおかげで、逮捕されていたスターライト支持者は釈放。Aトレインが一歩を踏み出したから、とアニーはスターライトとして光を掲げて人々に希望を与えていた。1エピソードでまたホームランダーとアニーの状況は逆転しつつある。

薬をやっているフレンチーはコリンからの着信を無視すると、シーズン3にも登場したフレンチーの知り合い、シェリーとビデオ通話をつなぐ。会話の内容によると、コリンのフルネームはコリン・ハウザーで、判事の息子、フレンチーは過去にコリンの家族を殺してしまったのだという。

フレンチーの過去についてはシーズン2第6話で描かれている。この時はランプライターを追っている途中にオーバードーズした仲間の元に駆けつけたことで、目を離したランプライターによってグレースの孫が焼き殺されるという事故が起きてしまった。コリンとも薬物依存症のグループミーティングで出会っており、フレンチーの過去の罪、そして薬の問題が再び持ち上がろうとしている。

母と対峙したヒューイは冷静に振る舞うことができない。母はビリー・ジョエルのチケットを買うとよく即した日に消えたといい、ヒューイは母を許していなかった。だが、母は父ヒューのためだったと語る。背景が詳しく語られていない点がもどかしい。ヒューイは、自分の同意なく父に関する判断を下せば裁判を起こすと言い放ち、さらに亀裂は深まるのだった。

キミコはかつて所属していた光解放軍がニューヨークに潜伏しているというニュースを見て、カウンセラーの名刺を破り捨ててオフィスを飛び出す。過去に決着をつけたいキミコと入れ替わりでブッチャーがオフィスに帰還。やっぱり、過去から逃れられないキミコと、未来がないブッチャーは交代で描かれている感じがする。

ブッチャーを追放したMMはブッチャーに助けてもらった礼を言うが、ブッチャーはいいリーダーの条件はクソ野郎であることだと言い、自分を助けずにセージを追うべきだったと強がる。「半年で死ぬバカを心配した」「次は誰かが死ぬ」と警告を与えながらも、ブッチャーは自分の人生を振り返り反省の言葉を述べ出す。

残された時間で正しい行いをしたい、ライアンを救いたいというブッチャーは、ついにMMに「お前の力が必要だ。頼む」と助けを求める。シーズン3は助けを求められないブッチャーがテーマになっていたが、シーズン4では第2話で早くも助けを求めた。それでも、MMは「手遅れだ」と返答し、シーズン4第2話は幕を閉じる。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話ネタバレ考察&感想

ブッチャーは自分の余命について皆に話すことができて、MMに助けを求めることもできた。けれど、物事は良い方向へ転がらない。これまで損ねてきた信頼はそう簡単に取り返せるものではないのだ。だから、今回トゥルースコンで皆を助けに来たように、ブッチャーは拒否されても拒否されても何度でも行動を起こして、少しずつ信頼を勝ち取るしかないのではないだろうか。

ホームランダーの方は息子との向き合い方に苦労している。だが、これがもしかするとホームランダーにとって、自分と違う存在、他者にちゃんと向き合おうとする機会になるかもしれない。ライアンにはベッカの影があり、普通の人間としての心を捨て切ることは難しい。それがライアンとブッチャーを結びつける絆でもある。その輪から外れているホームランダーは、執拗にその要素を否定するか、自分から歩み寄っていくしかない。ホームランダーは果たしてどちらを選ぶのか……。

今回、ファイアクラッカーは逃走した。あまり強くはないファイアクラッカーだが、シスター・セージと同じく人を動かせるのは強みである。セージはホームランダーのような大物を動かし、ファイアクラッカーは陰謀論者のような兵隊を動かすことができる。二人が組めば、案外厄介なことになりそうだ。

『ザ・ボーイズ』シーズン4はこの後どんな展開になっていくのか、まずは初回一斉配信となった第3話までを続けて観ていこう。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。初回は3話同時配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。

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『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

『ザ・ボーイズ』シーズン3最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』シーズン1最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

 

『ザ・ボーイズ』のシーズン5での終了についてエリック・クリプキ監督が語った内容はこちらの記事で。

『ジェン・ブイ』シーズン2についての情報はこちらから。

「ザ・ボーイズ」フランチャイズの更なるスピンオフ展開についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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