ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話・第8話・第9話はどうなった?
「スター・ウォーズ」ドラマ『キャシアン・アンドー』は、2022年にシーズン1の配信を開始した作品で、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) に登場した反乱同盟のキャシアン・アンドーを主人公にした作品。反乱軍の知られざる物語が描かれる。
今回は、ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2の第7話・第8話・第9話をネタバレありで解説し、考察と感想を記していこう。4週に渡って配信されるシーズン2の第3週目は、どんな展開が待っていたのだろうか。以下の内容は重大なネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話・第8話・第9話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話ネタバレ解説
ヤヴィンの反乱基地
ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話、第8話、第9話はデンマーク出身のヤヌス・メッツが監督を務める。映画『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(2017)や『オールド・ナイフ 〜127便の真実〜』(2022) の監督を務めたことで知られる。
ヤヌス・メッツ監督はデンマークの兵士達に同行し、アフガニスタンで数ヶ月を過ごした経験もある。ドキュメンタリー映画も手がけるヤヌス・メッツ監督の手腕は、『キャシアン・アンドー』ではどのように発揮されたのだろうか。
『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話は前回からさらに1年後、ヤヴィンの戦いの2年前の物語が描かれる。シーズン1からすでに3年が経過したことになる。ヤヴィンには反乱勢力の基地ができており、人員も相当な数が集っているが、これはルーセンの組織ではない。
ヤヴィンは第1話でキャシアンがTIEアベンジャーの引き渡しを行おうとしていた場所だ。前回キャシアンとビックスは首都惑星コルサントで隠れて暮らす生活で精神をすり減らしている様子が描かれた。どうやらキャシアンとビックスはルーセンから離れてより大きな反乱グループに加わったようだ。そうすると前回ラストのドクター・ゴースト暗殺は、キャシアンとビックスの独断だったのかもしれない。
ビックスは久しぶりに帰ってきたウィルモンに「規則が厳しくなった」と言っているが、英語では「Things are getting really organized around here.」と言っており、反乱勢力の組織化が進められていることが示唆されている。
怪我を負っている様子のキャシアン・アンドーは、この反乱組織について「軍隊は必要」と、ルーセンのグループとの違いを強調する。一方でウィルモンは「ルーセンは行動している」と擁護。少数精鋭のスパイ作戦を得意とするルーセンにも強みはある。同じく少数でも部隊でのゲリラ作戦を得意とするパルチザンもいる。問題はそれぞれの強みを持った反乱グループが団結できていないことだ。
デドラに委ねられるトリガー
ゴーマンではテロが起きたとして、広場も封鎖されている。ゴーマン戦線は「テロリスト組織」と呼ばれ、メディアは街の「緊張状態」を叫ぶ。だがその緊張状態を作り出したのは帝国側だ。この状況はイスラエルが侵略を続けるパレスチナの状況と重なる。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) でも、抵抗する人々を「テロリストと呼ぶな」というメッセージが描かれたが、ディズニーの傘下にあってもクリエイター達は帝国主義への批判を続けている。
ウィルモンはルーセンの指示でゴーマンにいたといい、ウィルモンの父を殺したデドラ・ミードがゴーマンにいるとキャシアンとビックスに伝える。デドラは仇であるばかりでなく、ルーセンやキャシアンを追ってもいると主張するが、ビックスにとってもデドラはドクター・ゴーストによる拷問を指示した仇である。
デドラは、パータガス少佐伝いに皇帝パルパティーンからゴーマンの作戦を実行するよう指示を受ける。オーソン・クレニックは2年前の会議で帝国はエネルギー自給を目指すが、必要であれば抵抗を理由にゴーマンを制圧して資源を得ることを計画していた。
結局有望な代替資源は見つからず、作戦は決行されることになったようだ。「成果が出ていない」として名前が上がっているイードゥーの研究施設は、『ローグ・ワン』でキャシアンやジンが潜入した施設だ。この施設ではデス・スター建設を進めていたゲイレン・アーソが働いており、同作ではキャシアンはゲイレン暗殺の任務を請け負っている。
キャリア形成の中でデドラが進言した制圧案が現実に。48時間以内に艦隊が到着し、戒厳令の中で住民の強制移住が行われるという。これも現実とリンクする展開だ。現実においてはドナルド・トランプ米大統領がガザ地区に住むパレスチナ人の強制移住を提案し、「民族浄化」として強い批判を受けている。
ゴーマンにはカイドー大尉という人物が送られ、作戦はあっという間にデドラの手から離れていく。それでもパータガスは「昇進を思い浮かべろ」「これで帝国の保安局への評価が上がる」とデドラを説得し、あくまで組織内の評価のために作戦は進められていく。
一方、これに不満を見せたのはシリル・カーンだ。「二人でやり遂げようとしたのに」と、やはりこれまでであれば女性キャラが背負わされていたであろう、感情的な役回りを担当している。デドラはそんなシリルに不器用な口付けを交わし、「言った通りにして」と退けるのだった。
怯まぬ心
コルサントではモン・モスマにも帝国の影が迫る。帝国の手が回っているであろう運転手が予定を尋ねてきたのだ。監視されているのか、暗殺を狙っているのか、いずれにせよ気付かれても恐怖を抱かせ、行動を抑制することはできる。
メディアではゴーマンでの“テロ”ばかりが報じられる。その経緯や背景は無視し、人々にゴーマンに対する恐怖と反感を抱かせるのだ。これもパレスチナに対して行われたキャンペーンと全く同じである。
1年前にモスマからの協力の相談を断ったオラン議員は、ゴーマン選出の議員だったらしい。
時間を戻せたらとその判断を後悔している。手遅れになる前に立ち上がらなければならないという教訓だ。オランはモスマの「怯まぬ心」に敬意を表するのだった。確かに逆風の中でここまで戦い続けられる政治家はそうそういない。
カイルはゴーマン戦線の人間に外部から来た扇動者に罪を着せて事態を落ち着かせるよう助言する。外部から来た扇動者とはウィルモンのことだが、カイルは返事の代わりにビンタを喰らわされてしまう。何も知らないカイル、不憫ではある。
フォース・ヒーラー登場
ゴーマンではライランツらゴーマン戦線が会議を開いている。世間から、権力の側から「テロリスト」と呼ばれる人々の戦いが内側から描かれる。前回シンタの死のきっかけをつくってしまった人物も加わり、自分たちがゴーマン人だということだけは守り通そうとスピーチしている。
右肩に癒えない怪我を背負うキャシアン・アンドーは、ビックスに連れられ治癒者(ヒーラー)のもとへ。英語では「フォース・ヒーラー」と言われている。フォースを用いて相手を治癒するフォース・ヒーリングは、レイやカイロ・レン、グローグーも使用することができた。
ヒーラーはキャシアンに感謝した上で、その信念を評価し、魂の強さを集めていると評価。フォース・ビジョンでキャシアンが犠牲になる未来を見たのかとも思ったが、そうではなくキャシアンの元来の性質を評価したようだ。
ヒーラーは、大抵の人は過去を背負うが、中には少数だが自分を集めながら生きる人、使命を持った“メッセンジャー”がいると語る。確かにキャシアンは様々な人との出会いでメッセージを受け取り、またメッセージを伝え、反乱の火花を散らせることに貢献してきた。一方で、ヒーラーは、キャシアンにはいるべき場所があり、それはビックスなのかもしれないと語るのだった。
キャシアンはヒーラーに触れられたことで怪我が良くなっていたが、フォースの力を信じようとしない。ジェダイ・オーダーの崩壊から17年、人々はジェダイとフォースのことを忘れ去ってしまっている。
キャシアンを助けた人物
それでもビックスから受け入れるように告げられたキャシアンは、ゴーマンへ向かうことに。組織からは規律と忠誠を求められうが、キャシアンは「行き来が制限されれば俺は去る」と我が道を行く。キャシアンがそうしてきたから反乱は拡大してきたのだ。
飛び立とうとするキャシアンに声をかける人物はデイヴィッツ・ドレイヴン。『ローグ・ワン』にも登場した将軍で、後にキャシアンにゲイレン暗殺の指示を出す人物だ。
ゴーマンに即席の兵が集められる中、アンドーとウィルモンはゴーマン入り。一方のヤヴィンでは、反乱組織の採用係となったヴェルがビックスを訪ねる。ヴェルもシンタを失い、ルーセンの元を離れたようだ。
ヴェルによると、ドレイヴンとドドンナはキャシアンを昇進させたいと考えているが、キャシアンが規律を守らないことに危機感を抱いている。ジャン・ドドンナは、映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977) で、デス・スターの弱点を解説していた人物だ。
ヴェルは、キャシアンはもうルーセンの駒ではなく、すでにリーダーの一人なのになぜ規律を守れないのかと問う。それに対してビックスは、「彼は必要とされる場所に行く」と答えるのだった。それが“メッセンジャー”の役目なのだろう。
ちなみにキャシアンはこのメッセンジャーの話をしている時にはすでにその場にいなかったが、映画『ローグ・ワン』では、キャシアンがジンに「君はメッセンジャーだ」と言う場面がある。この時は文字通り、帝国の科学者だった父ゲイレンがデス・スターに弱点を仕掛けたことを伝える存在として表現されている。
キャシアンとウィルモンはデドラ暗殺の任務のためにゴーマンに到着。キャシアンとウィルモンが交わす「フェリックス」「石と空」という言葉は、シーズン1ラストのフェリックスでの反乱とマーヴァのスピーチを経験した者にしか分からない言葉だ。キャシアンを助けたホテルの職員は、1年前にキャシアンがヴァリアン・スカイとして潜入した際に16年前の虐殺事件いついてキャシアンに話した人物だ。
この職員には帝国軍によって父を殺された過去がある。その話を聞いてくれたキャシアンの顔を覚えていたのだろう。今度は違う名前で、しかも帝国の許可なしに宿泊しようとしたキャシアンが反乱組織の人物だと分かり、協力してくれたのだ。
ちなみにこの場面で、別の職員がオルデランへの便がキャンセルになったと言っているが、オルデランはベイル・オーガナやレイア・オーガナがいる惑星だ。帝国側にはオーガナ家からの支援を断ち切る狙いがあると見られ、同時にオーガナ家もただゴーマンを放置していたわけではないということも示されている。
翌朝のデドラ暗殺を狙うキャシアンが、帝国の人員の多さに気づきながらも朝を待つところで『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話は幕を閉じる。そう、キャシアンはまだゴーマンで何が起きようとしているのかを知らないのである。
『キャシアン・アンドー』シーズン2第8話ネタバレ解説
KXシリーズ登場
ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第8話の冒頭では、カイドー大尉がゴーマンの広場に要塞を築いていることをキャシアンが知る。パータガス少佐は、ゴーマンの叛意は十分に宣伝されたとしてキャプテン・カイドーによる強硬策を指示。相変わらずの報道は反乱と労働者の連帯を結びつけて非難している。「我々は十分我慢した」というのが帝国側のスタンスだ。
ゴーマン戦線のライランツはこれが罠だと気づくが、市民はもう止められない。情報を提供して反乱を扇動したシリルに詰め寄るが、シリルもまた各地に採掘機が投下されているという話を聞いてことの重大さに気づいている。帝国の狙いは最初からゴーマンの地下資源で、そのためにシリルもデドラもゴーマンに送られていたのだ。
想定外の事態にキャシアンは広場に出ることを決め、事態の好転を「希望」するというキャシアンに、ホテルの職員は「希望こそ反乱の礎」と伝える。『ローグ・ワン』から『新たなる希望』へと続いていく、希望のリレー。その種はゴーマンにもあったのだ。
デモ隊が行き交い、スモークが焚かれる広場で、日中に広場に出るはずだというデドラを探すキャシアン。一方のシリルは帝国の建物に入るが、通された部屋にいたのは6体のKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドだった。
KXシリーズは『ローグ・ワン』でキャシアンの相棒として活躍したK-2SOと同型のドロイドで、『キャシアン・アンドー』ではシーズン1でも登場している。帝国ではバトル・ドロイドの製造が禁止されているため、アラキッド・インダストリーズ社が製造したセキュリティ・ドロイドを活用している。
昇進のために
そして、広場の出口を塞ぐために現れたのはストーム・トルーパーだった。保安局だけでなく、軍の部隊が投入される異常事態だ。新米の兵士たちも現場に投入される。出動を告げられた時にヘルメットのグラスがずれ落ちているのが新米らしくていい。
シリルはデドラに接触、怒りを露わにしてデドラがやったことを咎める。デドラは皇帝のエネルギー計画に必要な石がゴーマンの地下に埋まっていると明かす一方で、「何年も前から計画されていた」として責任を回避しようとしている。
自分には変えられない大きな流れの中で、状況を昇進に利用しただけだとデドラは主張しているのである。虐殺に加担する多くの人はそのように言い訳するだろうが、引き金を引くのはそうした一人一人の人間だ。
シーズン1のラストでは、マーヴァが市民の立場で「働いて日々を過ごし、奴らの動力となった」「我々が侵食を許した」と語った。シーズン2では、帝国の内部で昇進や生活のために悪に加担する卑近な人々の姿が描かれている。
緊張が高まり、広場では「我らはゴーマン人」という歌が唄われる中、カイドーに問われたデドラは作戦実行の指示を出す。新米兵たちは暴動を起こすための“餌”で、帝国側のスナイパーが兵士を狙撃、ゴーマン人から撃たれたことを装い、自作自演で戦闘を起こしたのだった。ブラスターを使っているからまだ「スター・ウォーズ」の雰囲気が残っているものの、世界でずっと起きていることを考えるとかなり辛いシーンだ。
民衆を巻き込んだ銃撃戦が繰り広げられ、人が死んでいく。デドラはシリルに「止められない」という態度を見せていたが、自ら引き金を引いたのだ。カイドー大尉が「私は引き金、あなたは指」と言った通りに。ゴーマン人達はモロトフカクテル(火炎瓶)で形勢が有利になるが、ここでカイドーはKXシリーズを投入。ドロイドによる市民への攻撃が始まる。
「お前は誰だ?」
デドラに別れを告げたシリルは広場で途方に暮れるがキャシアンを発見。思い返せばシリルはモーラーナ1で殺人事件を起こしたキャシアンを追い、仕事をクビになってもキャシアンを捕まえるためにフェリックスまで行った経緯がある。今のシリルには個人的な恨みを晴らすことしかできないのだろう。
キャシアンとシリルの渾身の殴り合い。「スター・ウォーズ」を観ているということを忘れてしまいそうだ。シリルは手榴弾の爆発に巻き込まれながらも、ブラスターをキャシアンに向け、決定的な場面を迎える。だがここで、キャシアン発した言葉は、シーズン2第8話のタイトルである「お前は誰だ?」だった。
キャシアンからすれば、兵士でもない見覚えのない相手に殺されそうになっている状況だ。率直な疑問として出た言葉だろうが、シリルは、自分は何者なのか、何のために生きているのかと問われた気持ちになったはずだ。“メッセンジャー”としてのキャシアンの力が発揮された瞬間である。
デドラに言われるままに行動して虐殺に加担した自分、人々が殺されている中で個人的な恨みを晴らそうとしている自分——シリルが逡巡している間にライランツがシリルを射殺。『キャシアン・アンドー』の人気キャラの一人であったシリル・カーンはここで役目を終えることになった。
K-2SOの「過ち」
KXアンドロイドが路上の人々を襲う中、車両でKXを轢いて倒したのは前回シンタを誤射して死なせてしまったサムだった。前回ヴェルに言われたように、人生をかけてシンタの死を償おうとしているのだろう。
ウィルモンは恋人のドリーナを置いていけないと言い、キャシアンにこの件を広めるよう頼む。キャシアンはメッセンジャーなのだ。キャシアンは立ち去る前にサムが倒したKXドロイドを車両に乗せて走り去る。後のK-2SOだ。
『ローグ・ワン』でキャシアンの仲間として登場したK-2SOは、公式サイトで「過去にとある”過ち”をおかしている」と紹介されていたが、詳細は明かされていなかった。K-2SOは警備ドロイド時代の記憶を消されているのだが、シーズン2第8話では帝国によるゴーマン虐殺に加わっていたことが明らかになった。
KXシリーズはバトル・ドロイド製造が禁止されている中で造られている警備ドロイドなので、武器を使わずに素手でゴーマンの人々を殺していた。K-2SOは『ローグ・ワン』では自分の意思でブラスターを使ってチームを助けているが、『キャシアン・アンドー』では帝国の言いなりになっていた時代の「過ち」が描かれている。
ゴーマン戦線のドリーナはラジオで帝国による虐殺・殺戮を発信。広場で数百人、路上で数千人が犠牲になる、根絶やしにされると伝える。その中で、またも生き延びるキャシアンの悲壮な表情。キャシアンはメッセンジャーなのだ。
デドラが震えて涙する中、コルサントでは「死没した英雄達の帰郷」が報じられ、虐殺は「外部から支援された反乱」に置き換えられる。帝国の殉職者が追悼される一方で、虐殺の死者が弔われることはない。そして、シリルの母は涙を流すのだった。
『キャシアン・アンドー』シーズン2第8話のラストは、黒い画面が無音で映し出される。この数秒は、現実でも起きている虐殺の犠牲者に対する追悼のようにも感じた。
『キャシアン・アンドー』第9話ネタバレ解説
動き出すモン・モスマ
アニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2020) でも触れられたゴーマンの虐殺。コルサントではゴーマン選出の議員であるオランが逮捕されている。『キャシアン・アンドー』シーズン2第9話では虐殺を糾弾するモン・モスマの演説をめぐる展開が描かれる。『反乱者たち』シーズン3第18話「極秘輸送」へと繋がるエピソードだ。
「極秘輸送」では、ゴーマンの虐殺を受けて皇帝を批判する演説を行ったモン・モスマが逃亡の身となり、エズラや反乱勢力の中でも有数の腕を持つ凄腕パイロットのヘラ・シンドゥーラらゴースト・チームがその手助けを行った。
モン・モスマは、同じ信念を共有するベイル・オーガナ議員に、皇帝は一線を越えている、立ち上がって真実を伝えなければと語り、演説を行うことを伝える。一方のベイルは、自らの役目として留まって時間を稼ぐと話す。
だが声はあげなければならないとして、ベイルはヤヴィンの反乱勢力のリーダーシップをモスマに譲り、自らは帝国の内部で戦うという。人質になるようなものだが、実際に『エピソード4』ではベイルはオルデランごとデス・スターの攻撃で消え去ることになる。そしてベイルは、モン・モスマに迅速な脱出の準備をするよう助言するのだった。
アースキンとは誰か
キャシアン・アンドーは、記者のロニ・グジャとして議会場に潜り込むことに。クレヤに「この任務で終わる」と告げるが、クレヤは「虐殺を目撃したのに?」「モスマは命懸けで糾弾する」と指摘する。キャシアンは「自分のことは自分で決める時」と返すが、クレヤは「そうするための戦いでしょ」と食い下がる。確かにこの反乱は、自由を奪われ、帝国に人生を翻弄されている者たちの戦いだ。
シーズン2第3話で母がゴーマン出身だと話していたアースキンはモスマの部屋に取り付けられていた盗聴器を見つけるなど、信頼できる部下として活躍している。だがアースキンは第3話で出会ったルーセンの部下にもなっていた。
アースキン・セマージは『反乱者たち』でもモスマの補佐官を務めていおり、モスマと共に逃亡生活に入ることになる。ただの政治家の補佐官であれば人生までは賭けないかもしれないが、ルーセンの下で反乱運動に加わっていたのであれば、全てを捨ててモスマについて行ったのも不思議ではない。
モスマは議会での演説という形で、皇帝に言論での戦いを挑もうとしているが、盗聴器によって言論さえ封じられている。そんな中、シスの暗黒卿と見紛えるファッションに身を包んだルーセンがモスマの前に現れる。
アースキンが自分の指示で動いていたことを明かすと、さらに演説後にモスマをヤヴィンに送るオーガナのチームは危ないと言い出す。幼馴染のテイ・コルマをリスクとみなして葬ったルーセンに対し、モスマはルーセンが今度はモスマのこともリスクだと考えているのではないかと疑っている。つまり、ルーセンが用意したチームと行けば殺されるのではないかと。
ルーセンは自分を信じるように言うと、「ひとりか」と聞いて「友達は方々に」と答えたらその人物がルーセンが用意した人物だと教える。この言葉はシーズン2第5話のタイトルであり、キャシアンがゴーマン用のスパイセット一式を受け取るときに「友達を訪ねるの?」と店の人物に聞かれて返した言葉だ。「友達は方々に」は合言葉だったのである。
議会潜入作戦
モン・モスマは自分のために仕えていると思っていたアースキンがルーセンの指示で動いていたことにショックを受け、アースキンを即時解雇。モスマのメンタルもかなりきつい状態になっているのだろう。
キャシアンは、ゴーマン戦線を止めず破滅に導いたルーセンに怒りを抱いている様子。ルーセンが預言した通り、ゴーマンは「赤々と燃え」て、反乱運動をさらに推し進める力となりつつある。キャシアンは目の前で虐殺を目撃したからこそ、そうして各地で人の命を燃やしながら反乱を進めようとするルーセンに嫌気がさしているのだ。
「俺の道は自分で決める」と言うキャシアンに対し、ルーセンは「私に必要とされてたろ」と食い下がる。アルダーニ、ナーキーナ、フェリックス、サイナー(シーズン2第1話でTIEアベンジャーを盗み出した場所)、ミーナ=ラウ、ゴーマンと、キャシアンが訪れた星の名をあげていくのだ。部下の仕事をちゃんと覚えている点は偉い。
クレヤはベイル・オーガナのチームを「脅威」と見積もり、ルーセンはモスマ護衛のためにキャシアンを議会へ送り込む。「友達は方々に」という合言葉を教えたのは、ここまでモスマがキャシアンと面識がないからだ。
議会は入管証が目視なのがちょっと面白い。ベイル・オーガナのチームも3人が議会に潜入。演説後のモスマを広場で待つ乗り物まで護衛するつもりらしい。一方で、ベイルはチームの3人と面識がないと言う。ベイルを信じるか、ルーセンの警告を聞くか、モスマは演説以外の部分でも選択を迫られていたのだ。
アースキンはキャシアンと合流。ここでも「友達は方々に」というキャシアンの合言葉が活用される。合言葉を言う側をキャシアンに委ねているのはルーセンの信頼の現れとも考えられる。
虐殺を虐殺と呼ぶこと
むしろゴーマンを非難するカールー議員らの演説が披露される中、ホディ選出の議員が発言権をオルデランのベイル・オーガナ議員に譲り、ベイルは先任議員が緊急時において自由かつ妨害なく他の先任議員に発言権を譲ることができるという条項17-252を発動させる。「緊急事態」と明言したカールー議員のスピーチを利用し、シャンドリラの先任議員であるモン・モスマに発言権を譲るのだった。
ベイルのチームには確かに保安局のスパイがいた。しかし、その工作員はルーセンのスパイであるロニ・ヤング監査官の工作員だという。ルーセンがモスマを手中に収めるために敢えて送り込ませた工作員かも、と疑いたくなる展開だ。
モン・モスマはついに皇帝批判の演説を始める。モスマに演説を続けさせるため、保安局が動力制御室に入るのを妨害した二人の技術者はファインプレー。こうして様々な人々のお膳立てのもとにモスマの演説は進行する。
モスマの演説は、『反乱者たち』でエズラ達が観ていたホログラムの録画とは少し違う内容になっている(服装も異なる)。客観的現実が失われ、真実が奪われる時、悪が勝利を収める、議会の真実はゴーマンの広場で失われたと語るモスマ。そして、ゴーマンで起きたことを「正当な理由なき虐殺」と定義する。
「虐殺」を「虐殺」と言うことが大事なのだということを思い知らされると同時に、人々が帝国主義に飲み込まれる時に、それがどれだけ難しいかということを改めて実感する。そしてモスマが「私たちが生み出した怪物、パルパティーン皇帝」と名指ししたところでマイクと放送が切られるが、モン・モスマは既に仕事を果たしていた。
ここから描かれるのはキャシアンとモスマの逃走劇だ。シーズン2第9話にしてようやくキャシアンとモン・モスマが出会う。「友達は方々に」という合言葉を告げてモスマに合流したキャシアンは、オーガナ組の保安局スパイを公衆の面前で射殺。モスマに、シーズン2第9話のタイトルである「ようこそ反乱へ」と告げる。
モン・モスマは長らく議員として反乱活動を続けてきたが、ついに非合法な領域へと足を踏み入れ、体制から抜け出すことになった。これからはキャシアンと同じく追われる身だ。このキャシアンとのやりとりを経て、モスマはこの後、反乱同盟宣言で自らが前線に立つことを表明することになる。キャシアンは帝国側に通じていた運転手のクロリスも殺し、アースキンとも協力してモスマを以前住んでいた家へと送り届けるのだった。
第9話の緊迫の逃走シーンは『キャシアン・アンドー』シーズン2のハイライトの一つと言える。余談だがコルサントの議会周辺の作りが、スター・ウォーズ セレブレーション ジャパンが開催された幕張メッセに似ている。
反乱に加わるメルシ
ヤヴィンでは、採用活動中のヴェルがチェックしていたブラスターにかつてシリルがいたモーラーナの企業のロゴが刻まれているのを見つける。その持ち主を聞いたところ、手を挙げたのは、ナーキーナ・ファイブからキャシアンと共に逃げ延びたメルシだった。メルシは反乱軍に志願したのである。
メルシは、映画『ローグ・ワン』にも反乱同盟の軍曹として登場してジンを助けることになる。ナーキーナ・ファイブでキャシアンが助けた一人が、希望を繋ぐことになる。反乱運動がここまで拡大していなければ、リアリストのメルシが合流することはなかったかもしれない。キャシアンの一つ一つの行動と、反乱運動の拡大は確実に成果を生んでいる。
キャシアンがモン・モスマを送り届けたアパートには、負傷したウィルモンとゴーマンの虐殺を生き延びたドリーナの姿があった。モスマはここからヤヴィンで演説をするために別行動を取り、キャシアンはウィルモンとドリーナと共に別の船でヤヴィンへ向かうことになる。
キャシアンに感謝を伝えるモスマに、キャシアンはこれを無駄にしないよう頼む。モスマは後に新共和国の指導者となるが、キャシアンがその光景を見ることはない。希望を次に繋ぐしかないのだ。
ダントゥインではなくヤヴィンへ?
ドレイヴンはヤヴィンに戻ったキャシアンに、ゴールド中隊がモスマを運ぶと伝えている。確かに『反乱者たち』ではゴールド中隊が極秘に輸送していたモスマをゴーストが受け取り、共同で帝国艦隊の追撃をかわして逃げ延びることに成功した。いわゆる“ハンドオフ作戦”である。
ただし、モスマが共和国再建のための同盟(反乱同盟)結成のためのスピーチ(反乱同盟宣言)を行ったのはヤヴィンではなくダントゥインの軌道上だ。モスマとアースキンはゴースト・チームと合流した時点でダントゥインを目指していたので、作戦の変更があったのか、ダントゥインを経由してヤヴィンへ向かう作戦だったものと考えられる。
キャシアンはビックスに「君といたい」と言い、宣言していた通りこの任務を最後に反乱活動をやめると告げる。しかし翌朝、ビックスはすでにヤヴィンを発っており、残されたビデオでは、ビックスはキャシアンが自分のために戦いをやめるのであれば自分を許せなくなる、と語っていた。これは勝たなければならない戦いであり、二人のために反乱を選ぶ、勝利した時にあなたを捜すと。
シーズン1でモスマが直面した「反乱が最優先」という標語とも少し違う、二人のためにも反乱を全うしなければならないというメッセージ。だが、落ち込む間もなく、キャシアンには新たな出会いが待っていた。
ゴーマンから持ってきたKXシリーズの修理が完了し、電源が入れられる。起動したドロイドは「怒らせたのなら謝ります。勘違いなら銃口をどけてください」といういかにもK-2SOっぽいセリフを発して、『キャシアン・アンドー』シーズン2第9話は幕を閉じる。
『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話・第8話・第9話ネタバレ感想
「スター・ウォーズ」史に残る重要な出来事
ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第7話・第8話・第9話では、やはり「スター・ウォーズ」の正史に沿ってゴーマンの虐殺が描かれることになった。この事件についてモン・モスマが皇帝を糾弾して議会を離れたことで反乱運動は更に加速していくことになる。
キャシアンが逃がし、エズラやヘラ達がそれを繋ぎ、ゴーストの中から反乱同盟宣言が行われる——それぞれのストーリーが一連の流れとしてつながっていくのが「スター・ウォーズ」フランチャイズの面白いところだ。
モスマは、この直後に行う反乱同盟宣言で同盟を組んで立ち上がること、議員を辞して、遠い政治の場ではなく反乱運動の前線に立つことを表明。共和国再建のための戦いに賛同を募ると、反乱分子の船が次々とダントゥインに集結し、反乱同盟が誕生した。そして、モスマは議長として反乱同盟を率いることになり、反乱同盟が勝利した後には新共和国元老院の初代議長となっている。
最終週はどうなる?
『キャシアン・アンドー』シーズン2の最終週は『ローグ・ワン』の1年前ということになるだろう。だが、K-2SOも登場し、メルシも合流、シリルは死に、ビックスも去ったため、もうあまりやることがない気もする。そのまま『ローグ・ワン』につながってもおかしくない展開だが、今回果たせなかったデドラに対するケジメを片付けるのだろうか。
シーズン2第7話・第8話・第9話では、生き延び続けるメッセンジャーとしてのキャシアンの姿が描かれた。『ローグ・ワン』まであと2年もある中で疲れている様子を見るに、最期の瞬間こそが安らぎを得られる瞬間だったのかもしれない。
だが、シーズン2第9話では、キャシアンは帝国に勝利してビックスと再会するという約束をしたようにも思える。キャシアンは、ジンと共に迎える最期の時にビックスに思いを馳せていたのだろうか。もしくは、シーズン2最後の週でビックスに関する展開がもう一段階待っているのかもしれない。
虐殺を描くこと、現実を生きること
今回はゴーマンの虐殺を描くショッキングなエピソードもあった。フィクションで虐殺を描くということには責任が伴う。2023年10月にイスラエルの死者のみを追悼し、支援を表明したディズニー社の作品であれば尚更だ。
モスマは議会ではっきりと「虐殺(Genocide)」という言葉を使い皇帝を批判したが、イスラエル軍の行為に対して米国の多くの大手メディアは「虐殺」という言葉を使うことができない。『キャシアン・アンドー』シーズン2の制作が終了したのは2024年2月だが、クリエイターのトニー・ギルロイは本作と現実との繋がりについて、米The Hollywood Reporterの取材に、過去6,000年の歴史のどの時代においても通じると一般化している。
エンターテインメントの中でしか自由な表現ができないのが現在のハリウッドだ。その様子は『キャシアン・アンドー』で描かれた帝国時代の様子と恐ろしく重なる。ディズニーからは映画『ウィッシュ』(2023) や実写版『白雪姫』(2025) など、帝国主義と植民地主義を批判する作品が出続けている。一方で現実社会で声をあげる人はほんの一握りだ。私たちがモン・モスマのように声をあげればこそ、物語は無力ではないということが証明されるはずだ。
ドラマ『キャシアン・アンドー』はディズニープラスで独占配信中。
ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第10話・第11話・最終回第12話のネタバレ解説&考察はこちらから。
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