シーズン2第1話・第2話・第3話ネタバレ解説『キャシアン・アンドー』踊るモスマ あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン2第1話・第2話・第3話ネタバレ解説『キャシアン・アンドー』踊るモスマ あらすじ&考察

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ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2配信開始

2022年にシーズン1が配信されたドラマ『キャシアン・アンドー』より、シーズン2の配信が2025年4月23日(水) にスタートした。『キャシアン・アンドー』シーズン2は毎週3話ずつ配信されることになっており、初週は第1話・第2話・第3話が同時配信されている。

『キャシアン・アンドー』シーズン2が配信される直前の週末には、日本の幕張で開催されたスター・ウォーズ セレブレーションでキャシアン役のディエゴ・ルナ、モン・モスマ役のジェネヴィーヴ・オーライリー、ビックス役のアドリア・アルホナ、デドラ・ミーロ役のデニース・ゴフ、シリル・カーン役のカイル・ソーラーらも来日。製作総指揮のサナ・ウォーヘンベルグと、シリーズを指揮するトニー・ギルロイも登場し、イベントを大いに盛り上げた。

最高の盛り上がりの中で配信を開始した『キャシアン・アンドー』シーズン2。直接映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) に繋がるという本シリーズはどのように幕を開けたのだろうか。今回はドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2の第1話・第2話・第3話をまとめてネタバレありで解説&考察していこう。

なお、以下の内容は重大なネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、以下の内容は性暴力に関する描写とそれに対する言及を含むため、ご注意いただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話・第2話・第3話の内容に関するネタバレを含みます。
注意
以下の内容は、性暴力に関する描写とそれに対する言及を含みます。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話ネタバレ解説

1年後のキャシアン・アンドー

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2は3話ごとに監督と脚本家が設定されており、第1話から第3話まではドラマ『イエロージャケッツ』(2021-) のエピソード監督を務めたアリエル・クレイマンが監督を務める。アリエル・クレイマンは第4話から第6話も監督を務めるが、第1話から第3話の脚本はトニー・ギルロイが担当する。

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2は同一の監督と脚本家による作品が毎週2時間半ずつ公開されるということで、ほとんど丸々1ヶ月にわたって毎週「スター・ウォーズ」の映画新作が配信される状態と言っても過言ではない。「スター・ウォーズ」の春がやって来た。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話冒頭のロゴタイトルは、キャシアン・アンドーが帰ってきたという思いで熱くなる。意外にも「スター・ウォーズ」の実写ドラマのシーズン2が配信されるのは、『マンダロリアン』(2019-) 以外では『キャシアン・アンドー』が初となった。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話「1年後」の舞台は、そのタイトル通りシーズン1最終話の1年後、ヤヴィンの戦いの4年前だ。つまり映画『ローグ・ワン』と『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977) の4年前ということだ。

『キャシアン・アンドー』シーズン1では、各地で自然と反乱を牽引してしまうキャシアン・アンドーという人間が故郷の母マーヴァを失い、マーヴァの遺志を受けてルーセン・レイエルが率いる反乱軍の一派に加わった。反乱活動と家族の狭間で苦悩する元老院議員のモン・モスマの苦渋の決断と共に、帝国打倒に向けた動きが加速している。

シーズン2第1話の冒頭では、キャシアン・アンドーはサイナーのテスト施設73で登場。帝国軍の整備士ニヤの助けを受けて、タイ・ファイターの次世代機であるTIEインターセプターTIEアベンジャーを奪取する計画に取り組んでいる。

TIEインターセプターが「スター・ウォーズ」で初めて登場したのは『エピソード4』のさらに4年後の『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983) でのこと。帝国は本格導入から8年前にTIEインターセプターのテスト機を製作していたことが明らかになっている。→【ジュンGさんより、本機は90年代のゲームに登場したTIEアベンジャーと教えていただきました。ご指摘ありがとうございます!】

ニヤがパスワードとしてキャシアンに教えた「カフリーン」とは、『ローグ・ワン』でキャシアンがソウ・ゲレラの率いるパルチザンの情報員ティヴィックと接触した場所だ。そこでストームトルーパーに見つかったキャシアンは、ティヴィックが足手まといになると考えて撃ち殺している。

ニヤはキャシアンを直視することは禁じられているといい、キャシアンも正式に反乱軍に加わって一年が経ち、それなりの立場であることが示唆されている。この場所でそれなりに楽しく過ごせてたというニヤだが、反乱に加わることを決めたという。こうした市井の人々一人一人の決断が帝国の崩壊という結果を生んだのだろう。

命を賭ける価値はあるかと問うニヤに、キャシアンは、今ここにいる瞬間、戦うことを決めた同志と一緒にいることが価値だと告げる。『キャシアン・アンドー』シーズン2最初の名言だ。「自分に忠実に生きろ。君は恐怖を乗り越えた」という励ましの言葉をかけるキャシアンは、すっかり先輩革命戦士となっている。

それでも、TIEアベンジャーを最初から操れるカリスマ性はない。キャシアンはドタバタしながらもTIEアベンジャーの奪取に成功。『キャシアン・アンドー』シーズン2は冒頭から熱いドッグファイトを見せてくれている。まさに映画並みのクオリティーだ。

ミーナ=ラウの不法移民達

次に『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話では、キャシアンの親友ビックスやドロイドのビー達はミーナ=ラウという星で暮らしていることが明らかになる。シーズン1のラストではフェリックスで暴動を起こした住民達はガンジ・ムーンという月に向けて脱出していた。

家を造りを一通り見せてくれるカメラワークがありがたいが、そこに現れたのは第9話でアクシスと面識があるとしてデドラ・ミーロの指揮のもとビックスに拷問を与えた帝国のドクターだ。これは夢だったが、ビックスはまだ苦痛の記憶を抱えていることが示されている。

また、ビーはちゃんとキャシアンが帰ってくる日を把握している。シーズン1の最終回では、もう二度と会えないのではないかと心配していたビーに、ビックスが「キャシアンは戻る」と言い聞かせている。

モン・モスマの私有地シャンドリアでは、モン・モスマの娘のリーダの結婚式で客人達が集まっている。リーダはまだ若いが、シーズン1でモスマは反乱運動への支援に貯蓄を使い込み、ダヴォ・スカルダンから融資を受けるためにスカルダンの娘とリーダの結婚を取り付けている。

シャンドリアではモン・モスマの従妹で反乱運動に加わっているヴェルや、モスマの協力者の銀行家テイ・コルマの姿も見られる。モスマは幼馴染のコルマに反乱運動のための資金を動かしやすいように新たな基金を設立し、コルマに会長に就任してほしいと依頼していた。そこに現れたのは、反乱組織のリーダーで古物商としての仮の姿を持つルーセン・レイエルだった。キャシアン・アンドーを反乱活動に引き込んだ張本人だ。

ビックスがウィルモンと共に作物に水をやる機械を修理する場面では、ウィルモンが移住先でビーラという人物に好意を寄せているが、修理屋という仕事や“ビザ”がないことで負い目を感じていることが明かされる。ビックスら元フェリックス組はシーズン2では帝国に追われる移民という立場なのだ。ビックスを演じるアドリア・アルホナはプエルトリコ生まれ、キャシアンを演じるアンドーはメキシコ生まれの俳優だ。

帝国の新たなプロジェクト

マルティーン・ディヴァイドでは、デス・スターの開発責任者であるオーソン・クレニックが登場。『ローグ・ワン』では、オーソン・クレニックは主人公ジン・アーソの父ゲイレン・アーソにデス・スター開発を強要。クライマックスではジンとキャシアンがクレニックとの最終決戦に挑んだ。

オーソン・クレニックは極秘の会議を開いており、この会議の内容はユラーレン大佐やターキン総督には皇帝のタイミングで知らされると話している。この会議には帝国保安局のデドラ・ミーロの姿も。デドラはシーズン1最終回でフェリックスの反乱の鎮圧にあたったが、失敗した上にシリル・カーンに助けられていた。

プロジェクトを他の部門には極秘で進めるという縦割り構造は帝国の特徴の一つだ。アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(2021-2024) のシーズン3では、パルパティーンがネクロマンサー計画(パルパティーンのクローン計画)を「上層部にさえこの研究を忌み嫌っているものがいる」として極秘に研究を進めるようロイス・ヘムロック博士に伝えている。

今回の目的は“エネルギー自給”で、安定した無限のエネルギーを得ることで帝国の地盤を固めようという計画のようだ。ゴーマンという惑星には葉状のカルカイトという有望な産物があり、3年後までにその産物を安定して帝国が得られるようにしたいという。そして、この会議に集められたのはゴーマンを力づくで支配する可能性に備えるために選抜されたメンバーだというのだ。

労働力に兵器にエネルギー……帝国主義の王道を行く帝国の方針だが、会議では流石に異論も出る。惑星の環境に及ぼす影響、地元住民80万人の処遇。抵抗は確実という意見に、オーソン・クレニックはそれを前提としてこのメンバーを集めたと話すのだった。

さらに啓蒙省からやって来たディー・シャンボとナイサス・オーサーは、物語を作って誇張し、問題の終息時期も決めるという同省の施作を披露。プロパガンダのようなゴーマンのPR映像は同省が手がけたイメージ戦略であり、啓蒙省はいわばプロパガンダ省ということだ。

二人はいかにマーケットに適した物語を打ち込めるかということを話しており、「意見を武器にできる」と語る。非常に現代的なマーケティングの考えであり、コンサル的でもある。『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話はそうした「物語/ナラティブ」の市場への利用が帝国主義にも通じるという優れた例を提示している。

このプレゼンを満足気に見ていたオーソン・クレニック。会場では疫病や災害を起こして住民を退去させるという極端な案も出る中、クレニックはデドラがフェリックスの事件から立ち直れていないことを見抜いていた。そのデドラは、必要なのはプロパガンダよりも過激な反乱であり、反乱に乗じてゴーマンを制圧できると主張。帝国内部から反乱を差し向ける興味深い展開だ。

マヤ・ペイ旅団とは

ビックス達のいる星には、帝国の供給に対する国勢調査が迫っていた。ビザも調べられるという。シーズン1で故郷で戦ったビックス達が、逃げ延びた先で苦境に立たされるというシーズン2の展開は、移民達が直面する現実を共感しやすい形で提示する優れた演出だ。

シャンドリアではテイ・コルマは事業が危機に陥っていて、さらに別居中だと明かす。モン・モスマからすれば、自分に関わった人たちがどんどん不幸になっていっている……。さらにリーダは結婚相手のスカルダンの息子が子どもで手も繋いでくれないと涙する。恋愛結婚ではないが故の苦悩に、モスマは「本当にすまない」と繰り返すことしかできない。モスマは今、革命のために家族を犠牲にした代償に直面しているのだ。

ミーナ=ラウでは、ビーがキャシアンが帰ってこないと寂しがっている。かわいそうだ。このシーンでは、ウィルモンが使っている機械の隣にキャシアンの母マーヴァの絵が置かれている。皆、今もマーヴァと共にあるのだ。

キャシアンはTIEアベンジャーの引き渡し場所の星で謎の集団に捕えられるが、それがマヤ・ペイ旅団の生き残りだったことが分かる。マヤ・ペイはシーズン1で名前が挙がっていた反乱グループのリーダーで、ソウ・ゲレラが「新共和主義者」とした上で「消えた」と話していた。

マヤ・ペイ旅団は奇襲を受けて船と兵士を失い、この星で立ち往生している状態だった。そこに現れたTIEアベンジャーの扱いをめぐり、マヤ・ペイ旅団は仲間割れを起こす。反乱分子同士の内ゲバが始まったところでドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話は幕を閉じる。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第2話ネタバレ解説

不法移民と農民の現実

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第2話「サグロナ・ティーマ」では、反乱グループの内ゲバに巻き込まれたキャシアン・アンドーが捕虜になりながら指示を出している。TIEアベンジャーの方に固まったグループと、TIEアベンジャーを動かせるキャシアンを捕虜にとったグループで硬直状態が続いているのだ。

デドラ・ミーロはリオ・パータガス少佐にゴーマン計画の辞退を申し出る。デドラはフェリックスで失敗したアクシス(帝国がルーセン・レイエルにつけたコードネーム)の逮捕に執念を燃やしているが、2年追っても成果は出ていないという。

デドラはアクシスのことよりも、ゴーマン計画に関わることを嫌ったのではないだろうか。デドラはフェリックスの反乱で人民の強さに直面しているからだ。そんなデドラに、パータガスは計画が成功すればゴーマンをデドラの指揮下に置くことを約束するのだった。

ルーセン・レイエルとクレヤはキャシアンにもビックスにも連絡が取れず焦りを見せている。二つの星で起きていることは別々の出来事なのだが、結びつけてしまうのが人間というものだ。一方、モン・モスマの夫ペリンは妻と別居したテイ・コルマに嫉妬している様子。コルマはコルマで痛飲して迷惑をかけたらしい。基金の話もしないといけないのに、何をやっているんだか。

ウィルモンが移住先のミーナ=ラウで想いを寄せるビーラの家は、巨大な農場と加工施設を持っているようだ。ルーク・スカイウォーカーも農民だったが、この星においてはビックス達は移民で、先に住んでいた白人農家のビーラ達は裕福にも見える。現実のアメリカと重なる設定だ。

だが、ビーラもその父ケレンもビックス達に協力的な人々だ。ケレンは帝国が必要なのは穀物で、不法移民の件は承知だから厳しくはないだろうと予想する。現実のトランプ米政権は不法移民の強制送還に力を入れているが、全米の農業労働者のうち不法移民は4割を超えていることから、不法移民の労働に依存している現状では強制送還は現実的な施策ではないと指摘されている。

シリル・カーン登場

『キャシアン・アンドー』シーズン2第2話では、ようやくシリル・カーンが登場。シーズン1での失態で保安部をクビになり、おじさんの紹介で標準局のディストピア施設で働いていたシリル・カーン。シーズン1終盤にはお母さんのお金を盗んでフェリックスへ飛び、反乱の中でデドラを助けていた。

標準局に戻ったシリルはコツコツデータを追って集団窃盗を暴いたことで昇進しており、新人に心得を教える立場になっていた。なかなかやりおる。やはり集団の中にいることで力を発揮できる人なのかもしれない。しかも、シリルはデドラと同居していた。反乱を経てシリルは順調な生活を送っているようだ。

ミーナ=ラウでは帝国軍が到着。帝国兵が「ピーゾは?」と聞いているが、ピーゾはシーズン1で登場した「スター・ウォーズ」世界の麻薬だ。帝国軍の人物はビックスを「ラウ」に誘っている。ラウといえば『バッド・バッチ』に登場した惑星と同じ名前だが、そちらは「Lau」、今回挙がった町の名前は「Rau」で綴りが異なっている。

テイ・コルマの告白

シャンドリアでの婚礼ハイキングでは、ヴェルはフェリックスの反乱を共に戦ったシンタと連絡がついていないことを明かしている。モン・モスマは「息抜きも必要」と言っているが、モスマの夫とテイ・コルマの件も含めて、革命運動の中でもウェットな人間関係から逃れらないというのは妙にリアルだ。

テイ・コルマの方は、人に聞かれてもいいように非常に遠回しにモン・モスマに現状を伝える。モスマが設立を依頼した資金洗浄のための財団はうまく動いており、モスマが反乱運動を支援したことで消えていた残高の問題も、スカルダン家との政略結婚を実現したことで融資を受けて解決していた。

しかし、反乱活動のを受けてテイ・コルマの事業は低迷。コルマは自分ばかりが損している気がすると、遠回しに見返りを求めたのだった。こういうことは本当によくある話だ。コルマは言わなくても気づいてくれるかと思っていたようだが、モスマも家族のことで大変だった。本職は議員だし、反乱活動も見ていなければいけない。

誰かを犠牲にして押し進める革命運動に意味はあるのか、という疑問も浮かぶが、モン・モスマにとってこの状況が厄介なのは、財政的にも困窮したテイ・コルマが裏切りに走る可能性が生まれるからだ。ルーセンもコルマを「厄介なやつ」扱いするシビアさを見せている。

一方でモン・モスマの夫のペリンはスピーチで日常に潜む喜びについて語る。音楽や食事、友との時間。その話は美しく聞こえるが、その場しのぎの快楽主義でしかない。だけどやっぱり、苦しい時代にあってはそれが救いになることもある。非常に微妙な現実を突きつけてくるのが『キャシアン・アンドー』の面白いところだ。

キャシアンがいた場所は…

耐久戦に入っていたマヤ・ペイ旅団はついに交渉に入る。「5ハンドのロスキ流」って、何をやるのかと思えば、じゃんけん大会が開催される。「ロスキ流」というのはローカルルールの確認だったらしい。

キャシアンはその隙に脱走、ドゥーダーというクリーチャーが一行を襲っている間にTIEアベンジャーで惑星からの脱出に成功するのだった。そして、TIEアベンジャーが飛び去る時に、キャシアンがいたこの場所がヤヴィン4であったことが明らかになる。

ヤヴィン4は、『エピソード4』の反乱同盟と帝国軍の戦いの舞台となる場所だ。4年後にはこのヤヴィンの反乱同盟基地を拠点に、反乱同盟がデス・スターを破壊して勝利を収めるヤヴィンの戦いが開戦することになる。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第3話ネタバレ解説

デドラの心理的安心

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第3話「収穫」では、ついにミーナ=ラウに帝国の本調査が入る。ビックスやブラッソを受け入れているケレンは、この星の現状に苦しんでいるらしく、故に反乱活動を支援しているようである。

14歳で結婚式の日を迎えたリーダ。娘と向き合うモン・モスマは、嫌であればやめていいと伝えるが、リーダからすれば今更である。それでも、リーダが決めた以上はモスマはその道を突き進む。すぐに切り替えて自分が前を歩くと言い、結婚式が始まるのだった。そして、「スター・ウォーズ」世界の伝統的な結婚式の一つの形が描かれる。なかなか大仰である。

それと比較するように首都惑星コルサントではデドラとシリルの現代的な暮らしが描かれる。以前のシリルは結構ファッションを楽しんでいたというか、ファッションを通して自己表現をしていたが、安定を得たからか私服もフォーマルになっている気がする。

デドラとシリルはシリルの母イーディと食事をとる。この広い家はデドラの家らしく、シリルは一年前までお母さんのクレジットを盗んでいたのにすっかり立場が変わってしまった。姑然とした態度を見せるイーディに対するデドラの対応に注目が集まる。

だが、シリルは母との関係にまだ問題を抱えていた。イーディは父が失踪して母と二人で暮らしてきたというシリルのバックグラウンドを明かす。一方のデドラは両親は犯罪者で帝国の養育施設で育ったと明かすが、それを隠したり恥じたりする様子はない。母の愛情が不足していると指摘するイーディへの「不足と知らずに育った」という返しも秀逸だ。

デドラを演じるデニース・ゴフは、シーズン1が配信された際に「彼女はアウトサイダーで、重要な存在になる方法、重要に思われる方法を探している」と語っていた。また、女性であるが故に男社会で人の倍の努力を求められているが、支配が安全の一つの形だとも話している。デドラが支配による心理的安心を求める背景には、家族を持たずに育ったという過去があるのだと考えられる。

ここまではイーディのペースだったが、シリルが席を離れたところで流れが変わる。デドラはイーディに対し、今後シリルには言葉を選ぶよう警告し、面会は月2回、ただしデドラとシリルの関係に不安をもたらす場合は頻度は減らすと告げるのだ。

帝国仕込みの関白宣言。お母さんにマウントをとり続けられてベッドに突っ伏していたシリルもテーブルに戻ることができた。上記のようにデドラは「支配」を心理的安定のために欲しているため、自分を取り巻く環境をコントロールすることで安心を生み出しているのだろう。そのやり方は、なんとなく、小さい規模で活用できれば良い人生が送れそうだ。

踊るモスマ

結婚式では、シャンディ・マールという2万5000年前にシャンドリラが侵略された時に盗まれたという寺院の像が紹介される。ルーセンは会場にいたアースキンという人物がナブー生まれで、母はゴーマン出身だと知る。ゴーマンは帝国が資源を狙っている惑星で、アースキンはモン・モスマに救われたとも語っているため、今後の展開に関わってくる可能性は高い。

事業で困っているテイ・コルマは、スカルダンに接近していることをモン・モスマに示唆して会場を後にする。モスマはすでにスカルダンに融資を受けて助けられているため、このままではスカルダンに権力が集中する。それ以前にコルマはすでに不安定な状態だ。その姿を見たルーセンは、結婚式の場であってもやはり冷徹な判断を下すことになる。

来週話をするから大丈夫だと主張するモスマに、ルーセンはなんであれテイ・コルマは反乱グループの弱点になると指摘。早急に“手を打つ”ことを示唆する。モスマにとってはテイ・コルマは幼馴染であり、自分の苦境を助けてもらうために巻き込んだ相手でもある。だがルーセンにとってはコマの一つに過ぎない。それよりも革命運動において、議員であり資金源であるモン・モスマを失うわけにはいかないのだ。

革命のために家族を捧げ、幼馴染を捧げようとしているモン・モスマは、酒を飲んでパーティーの「奇妙な熱気」に身を委ねる。踊るモン・モスマ。シーズン2第1話から第3話の最大のハイライトだ。帝国時代には結構良い音楽があったことも分かる。

踊るモン・モスマを眺めるペリンの姿は印象的だ。ペリンがスピーチで提唱した快楽主義は、今確かに現実から目を背けたいモスマの拠り所になっている。踊っても現実は変わらないが、現実が変わらないなら踊るしかない。こうしてモスマは伝統と帝国支配の中で、かつての自身の結婚式の時に見た「酒に酔った母」になったのだった。

帝国の性暴力

コルサントの古物店に戻ったクレヤは、キャシアンとの通信に成功。クレヤはミーナ=ラウに近づかないように告げたかったようだが、ミーナ=ラウの通信が遮断されていることがキャシアンに伝わったことで、キャシアンはむしろミーナ=ラウへ急ぎ向かうことになる。

ウィルモンとビーラが一時の別れを惜しんでいると帝国軍が到着。実は一行の面倒を見ていたケレンが通報していたのである。前日にビックスを誘っていた帝国士官が再び現れ、ビックスに襲いかかる。ビックスはなんとか逃れたが、「スター・ウォーズ」の実写作品で初めて性暴力が描かれることになった。

このシーンについて、海外では一部の視聴者、特に男性から「『スター・ウォーズ』で性暴力を描く必要はない」として強い拒否感が表明されている。だが、帝国支配の時代において性暴力が描写されないのは奇妙ですらある。フラッシュバックを引き起こす可能性があるため、トリガー警告がなかったことは問題だったが、現実でも起きている暴力をようやく描写できたということには意味があったと言える。

ビーは…?

踊るモスマ。戦うビックス。急ぐキャシアン。ひと足先に会場を去るテイ・コルマを迎えにきた運転手は、フェリックスの戦いにも参加した反乱グループのシンタだった。シンタに想いを寄せていたヴェルは、ここでようやくシンタと再会すると共に、従姉の幼馴染であるコルマの死、シンタが手を汚すことを知ったことになる。

TIEアベンジャーで駆けつけたキャシアンは上空からビックスとブラッソを援護。しかし、ブラッソは逃げる中でストームトルーパーに撃たれ、死んでしまう。これでキャシアンは父、母、フェリックス時代からの親友を失ったことになる。

それでもキャシアンは残った仲間たちと生き延びなければならない。キャシアンはビックスとウィルモンと共にTIEアベンジャーでミーナ=ラウを後にするが、そこにドロイドのビーはいない。ビーはケレンの妻のタリアに預けられたままなのだ……。

泣きそうなキャシアン。そして、踊るモスマ。反乱運動の中で翻弄されながらも選択を下した人々を映し出し、『キャシアン・アンドー』シーズン2第3話は幕を閉じる。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話・第2話・第3話ネタバレ感想&考察

シーズン2はどんなシーズンに?

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2の第一週目、第1話・第2話・第3話は前シーズンから1年後が舞台になった。おそらく3話ごとに1年ずつの舞台はジャンプすると思われ、4週(=12話)かけて反乱の4年間が描かれることになるのだろう。

今回、キャシアン・アンドーとビックスたちはブラッソを失い、しかもビーを連れてくることもできなかった。一番キャシアンのことを心配していて、会いたがっていたビーが置いていかれることになったのだ……。キャシアンも多くを失ったが、ビーはマーヴァに続いてブラッソを失い、仲間は自分を残して星を離れてしまった。

ブラッソはタリアに充電器も預けたし、タリアはメンテナンスもできると話していた。ということは、ビーはもうミーナ=ラウに取り残されるということだったのだろうか。

モン・モスマの陣営でも、テイ・コルマが始末されることになった。厄介な存在になったことは確かだが、モスマにとっては幼馴染であり、苦境を助けてくれた人物でもある。

シーズン1は様々なキャラクターが紹介された群像劇だったが、『ローグ・ワン』や『エピソード4』以降ではほとんどの人物は登場していない。『キャシアン・アンドー』シーズン2は、シーズン1に登場した人々が反乱運動の中で死んでいくシーズンである可能性もある。それでも前に進んだキャシアン・アンドーとモン・モスマが映画シリーズで重要な役割を果たすことになったのだろうか。

一方で、キャシアンもまた『ローグ・ワン』で命を落とすことになる。仲間を失うほどにキャシアンの最期には異なる意味が付与されていく。シーズン2を終えた後に観る『ローグ・ワン』にはどんな感想を抱くことになるのだろう。一方で、第3話ではルーセンがモスマを生かすという強い気持ちを表明した。モスマはそうして生かされ、新共和国の初代議長となったのかもしれない。

帝国の動きにも注目

帝国側では、『ローグ・ワン』のメインヴィランであるオーソン・クレニックが登場。前述のように、パルパティーンが直接指揮していた計画は複数あり、その内の一つであるエネルギー計画を仕切る姿が見られた。内部から分断するのがパルパティーンのやり方だ。

オーソン・クレニックのゴーマン計画は3年後を目処にしているということで、シーズン2は丸々ゴーマンに関するストーリーラインが進行することになりそうだ。デドラはカイルとくっついたようだが、ゴーマン計画には乗り気ではない。一度人民の力を目の当たりにしたデドラは、同じような局面に出会した時にどう動くのか。もうデドラとカイルで仲良く暮らしたら……とも思うが……。

さぁ、革命へのカウントダウンは始まっている。残り3週、『キャシアン・アンドー』シーズン2から目が離せない。

『キャシアン・アンドー』シーズン2第4話・第5話・第6話のネタバレ解説&考察はこちらから。

ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1最終回第12話のネタバレ解説&感想はこちらの記事で。

シリル・カーンを演じたカイル・ソーラーが語ったシリルのキャラクター像はこちらから。

デドラ・ミーロを演じたデニース・ゴフが語ったデドラのキャラクター像はこちらから。

 

ドラマ『スケルトン・クルー』の解説&感想はこちらから。

ドラマ『スケルトン・クルー』のKBのバックストーリーはこちらから。

ドラマ『アコライト』の解説&感想はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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