ドラマ『スケルトン・クルー』配信開始
ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』が2024年12月3日(火) よりディズニープラスで配信を開始した。2024年6月から7月にかけて配信された『アコライト』以来となる「スター・ウォーズ」シリーズ最新作で、MCU「スパイダーマン」を手がけたことで知られるジョン・ワッツが指揮をとる。
『スケルトン・クルー』は、「スター・ウォーズ」シリーズきっての人気作となった『マンダロリアン』(2019-) と同じ新共和国時代を舞台にするとあって注目されている。本作は、子ども達を中心としたジュブナイルものとなるということだが、どんな作品に仕上がったのだろうか。
今回は、初週に配信された『スケルトン・クルー』第1話と第2話の内、第1話をネタバレありで解説&考察していこう。なお、以下の内容はネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『スケルトン・クルー』第1話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『スケルトン・クルー』第1話ネタバレ解説
海賊と帝国
ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』第1話の監督を務めるのはジョン・ワッツ。脚本はクリストファー・フォードとジョン・ワッツが共同で手がける。『スケルトン・クルー』では、ほとんどのエピソードがクリストファー・フォードとジョン・ワッツの共同脚本となっている。全話8話の内、第5話と第6話のみドラマ『ハイ・ポテンシャル(原題)』(2024) のミョン・ジョー・ウェスナーが脚本を手がけることになっており、これらのエピソードは過去編など独立した内容になっていると見られる。
『スケルトン・クルー』第1話「ホントの冒険ができるかも」の冒頭では、舞台となってる新共和国時代の状況が説明される。『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983) で銀河帝国が崩壊して以降、新共和国の時代が始まったが、辺境のハイパースペース航路では宇宙海賊による略奪が起きているという。
「スター・ウォーズ」における海賊は旧共和国や帝国時代にも存在しており、『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020) や『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(2021-2024) に登場したホンドー・オナカーや、フィー・ジェノア、続三部作に登場したマズ・カナタなどが挙げられる。レジェンズの設定ではハン・ソロは海賊に育てられたことになっている。
なので、基本的には海賊は帝国の残党などではないが、『マンダロリアン』シーズン3第5話では、海賊が帝国の残党と繋がりを持っている可能性に言及されている。新共和国パイロットのカーソン・テヴァは、マンダロリアンに海賊を倒させて、帝国が再興しようとしていることを新共和国に警告しようとしていた。
『スケルトン・クルー』第1話の冒頭で貨物船を襲う海賊達は人間っぽくない(いわゆる“エイリアン”っぽい)容姿をしている。帝国軍は基本的に人間に見た目の近い近人間が優遇される(逆に言うとエイリアンっぽい人種は差別されている)ため、この海賊達は帝国軍出身ではないことが分かる。
『スケルトン・クルー』第1話の冒頭では、海賊が制圧した貨物船の船長は、新共和国の庇護下にあることを主張する。だが、助けが来るわけでもなく、海賊側の船長シルヴォは実力行使で金庫を開けるのだった。『マンダロリアン』では、新共和国の行政がとにかく多忙で軍が十分に機能していない様子が描かれていた。実行力がない庇護は抑止にならない、ということだろうか。
一方で海賊には海賊の倫理観がある。金庫の中が空であることが分かると、ブルータスという名の狼男風エイリアンが謀反を起こして船長を殺してしまう。この海賊の中には『マンダロリアン』にも登場した海賊のヴェインの姿も見られる。
ヴェインはゴリアン・シャード船長の下で海賊をやっていたが、ディン・ジャリンによって海賊船が撃ち落とされ、ヴェインは一人逃げ去った。『スケルトン・クルー』が『マンダロリアン』シーズン3より後の話だとすれば、ヴェインはシルヴォの船に移籍したということだろう。そして今度はブルータスが船長に。この体制の変化の速さも海賊ならではだ。
ウィムの家とクレジット
一転して静かな世界で暮らしているのは、メインキャラクターの一人であるウィムだ。ジェダイのフィギュアで遊び、シリアルのような朝食を食べており、「スター・ウォーズ」では珍しいほどに現代の私たちの生活に近い姿を見せている。
ウィムはグリーンミルクのようなものをシリアルにかけて食べている。旧三部作でルーク・スカイウォーカーが飲んでいたのは青いブルーミルクで、続三部作でルークが飲んでいたのは緑のグリーンミルクだったが、ウィムが飲んでいるものはちょっと色が濃くて濁っている。
ウィムの父親は一週間分のランチ代としてクレジット(スター・ウォーズ世界のお金)を与えている。実はこのクレジットは旧共和国時代のものであり、この惑星では古い通貨を使っていることが示されている。ちなみに冒頭の海賊のシーンでブルータスが拾い上げたコインには新共和国の紋章が入っており、新共和国の通貨であることが強調されていた。
ウィムの父親は忙しそうで、ウィムは十分に愛情を受けられていないように見える。ウィムが登校するときに映る街並みも現代っぽい。一応「スター・ウォーズ」は「遠い昔はるか彼方の銀河系」が舞台なので、時が進むにつれて私たちの文明に似た箇所も出てくるのかもしれない。
ファラの発言に注目
ウィムはゾウのような顔を持つニールと合流。二人はライトセーバーごっこをしているが、ウィムだけはおもちゃのライトセーバーの柄を持っており、ウィムのジェダイへの思い入れの強さが示されている。
ウィムは学校に向かうトラムでもパッドでジェダイの絵本を読んでいるが、外を通ったホバーバイクに目を奪われる。学校に着くとそのスピーダーに乗っていた二人の女子生徒がドロイドから何やら注意を受けている。スクールバスの運転手もドロイドなら、学校の教師もドロイドで、“人間の大人の不在”が気になる。
ようやく登場した人間の大人は管理局次官のファラ。演じているのはケリー・コンドンで、この声に聞き覚えがある方もいるかもしれない。ケリー・コンドンはMCUでアイアンマンのアシスタントであるAI・フライデーの声を演じてきた。ファラの日本語吹替はサビーヌ・レンの母ウルサ・レンの声を演じてきた小林優子が演じている。
ファラがやってきたのは、翌日に控えた職業適正テストについて説明するためだ。ここでこの惑星がアト・アティンという名で、子ども達が「大いなる事業」に貢献するために職業適正テストを受けるという情報が明かされる。
気になるのは、ファラが「大いなる事業」の目的を「共和国(Republic)」の平和を保つためと発言している点だ。冒頭の貨物船の船長はきちんと「新共和国(New Republic)」と言っている。先ほどウィムが与えられた通貨が旧共和国のものだったことも含め、少しずつ引っ掛かるポイントを置いている印象だ。
「大いなる事業」というのも、多くの人が動員され、資源が接収されたデス・スター建設計画を思い出してちょっと怖い。『マンダロリアン』では新共和国の闇の側面も描かれた。新共和国では、帝国で働いていた科学者達が洗脳を受けて矯正されるというディストピア社会が実現しており、決して完璧ではない新共和国の姿が明らかになっている。
子ども達は上級会計士、分析官など、なりたい仕事を言っていくのだが、ウィムは父はシステム・コーディネーターだが自分は危険から人々を救う仕事がしたいと宣言。しかし、それはドロイドの仕事だとドロイドに言われてしまう。AIに多くの仕事が奪われた後の時代の子ども達を見ているようだ。
レースがしたいファーン
ワクワクすることがしたいと話すウィムだが、ニールは6人家族の裕福な家庭に帰っていく。ウィムの家は一人っ子のシングルファザー家庭で、家に帰っても誰もいない。それぞれの子どもが抱える事情があることが示されている。
一方、ホバーバイクを乗り回していたもう二人のメインキャラクターであるファーンとKBは、別の子ども達から不調のバイクを揶揄われている。週末にレースがあるというが、ファーンにとっては楽しみはそれくらいしかないようだ。環境は真逆だが『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999) のアナキン・スカイウォーカー少年を思い出す設定でもある。
ファーンは家に帰るとメイドドロイドのメモリを上書きして、自宅にいたように装う。そこに現れたのは先ほど学校でスピーチをしていたファラ次官だ。母が管理局次官という背景が明かされたファーンは、ファラから学級委員長の座を取り戻したことを褒められる。ファーンもまた怒ってくれる大人の不在という問題を抱えているようだ。
ウィムは夜になって帰ってきた父に寝る前に本を読んでほしいと頼むが、父は仕事があると言って断ってしまう。ウィムは大人から十分な愛情を受けられないまま、絵本で描かれるジェダイの冒険の世界に浸るのだった。
翌日寝坊してトラムに乗り遅れたウィムは、ホバーバイクに乗ってファーンのように近道しようとするが、森の中で小さな谷に落ちてしまい、何かの入り口を見つけることになる。すぐにアンドロイドに連行されたウィムはここで、レースを取り締まられたファーンと出会う。
ウィムは迎えにきた父に、森の中で失われたジェダイ聖堂を見つけたと主張。ここでファーンに森に何かがあるということを知られてしまうことになる。ウィムとニールは本物の冒険に出るために森へ。ロープで谷を降りようとして案の定二人とも転げ落ちる場面等は、可愛いけど心配してしまう、絶妙なジュブナイルコメディに仕上がっている。
宇宙へ…
ところが、ここに先に着いていたのはファーンとKBだった。両グループは権利を主張し合うが、ファーンはそこは元々開発地だった場所で毒ガスが漏れて生存者もろとも蓋をされたと怖いことを言う。スティーブン・スピルバーグの小説『スタンド・バイ・ミー(原題:ザ・ボディ)』を思わせるちょっと怖いジュブナイルになりつつあるが、ファーンの特徴はおどろおどろしい作り話をすることだ。
ファーンは、ウィムとニールに入り口の周りの土を掘らせることに。ファーンが中に入りたいのは、バイクの動力となるコンバーターを探すためだった。ある程度掘れたところでメカニックに強いKBが入り口のドアを開き、いよいよ4人は中へと進んでいく。子ども同士と言うことで、やたらと「女子」と「男子」で分け合って言い合いしているのが気になるが、それは「子どもっぽさ」の表れであり、成長しなければいけないということも指摘されてもいる。
入ってきた扉が閉まると、KBが電源を起動し、この場所が宇宙船だったことが明らかになる。宇宙船がどのようにしてあの森の中に埋まることになったのだろうか。宇宙船の中には片目のドロイドも。『ローグワン』(2016) に登場したK-2SOに似たタイプのドロイドだ。K-2SOは元々帝国の警備を担当するセキュリティ・ドロイドだった。
ウィムが押しては行けなさそうなスイッチを押したことで宇宙船が動き出し、ウィムを捜しに来たウィムの父が見守る中、4人は飛び去ってしまう。自動操縦で宇宙に出た船は、惑星を覆うバリアを超えて宇宙へ。初めての宇宙に感動するが、宇宙船はすぐにハイパースペースジャンプしてしまうのだった。4人の子ども達の運命やいかに。
ドラマ『スケルトン・クルー』第1話ネタバレ感想&考察
惑星アト・アティンと新共和国
ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』第1話は、惑星アト・アティンに暮らす子ども達の“退屈と冒険”を描き、子ども達を「スター・ウォーズ」らしい宇宙の旅へと連れ出した。最近の「スター・ウォーズ」ドラマではディストピア世界の描写がよく出てきており、『マンダロリアン』の他に帝国時代を舞台にした『キャシアン・アンドー』(2022-) でも刑務所のナーキーナ・ファイブで伝統的なディストピア像が描かれた。
平和であっても、退屈な日常は子ども達にとってはディストピアだ。行動は全てアンドロイドに管理されており、そこに大人の愛情は介在しない。子どもの数に対して、アト・アティンの街は明らかに大人の数が少ないというのも気になるところ。「大いなる事業」に従事するために徴集されているのだろうか。
加えて、新共和国の人々は仕事に追われているということも『マンダロリアン』で描かれている。行政は十分に機能しておらず、ゆえに新共和国に加盟していない辺境の惑星のトラブルに介入することができなかった。そして、この背景は続三部作においてファースト・オーダーの台頭に対応できず、レイア・オーガナ将軍の私設軍が対応することになった結果と矛盾していない。
ただ、アト・アティンがこうした新共和国の事情と繋がりがあるのかどうかは、この先の『スケルトン・クルー』のエピソードを観ていく必要があるだろう。クレジットの件といい、ファラ次官の「共和国」発言といい、なんだか裏がありそうな惑星アト・アティン。ここで退屈を感じている子ども達はどんな冒険を経験することになるのか、続いて同時配信された第2話を観ていこう。
ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』は2024年12月3日(火) よりディズニープラスで独占配信。
絵本『STAR WARS マンダロリアンとグローグー』は2025年1月20日発売で予約受付中。
2025年のウォールカレンダーも発売中。
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