『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話あのシーンを考察
Amazonプライムビデオの人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) もあっという間にシーズン4に突入。2024年6月13日(木) より第1話から第3話までの初回3話が配信されている。シリーズを手掛けるエリック・クリプキ監督は、シーズン5が『ザ・ボーイズ』のフィナーレシーズンになることを発表しており、いよいよシリーズはクライマックスを迎える。
今回は、シーズン4の未来を占う展開が待っていた、シーズン4第3話のラストについて考察してみよう。ラストシーンの演出は、今後の展開について、ある可能性を示唆するものとなっている。以下の内容は『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話のネタバレを含むので注意していただきたい。なお、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。露骨な残虐描写や流血描写、性描写が含まれるので、注意していただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話ラストの意味は?
ホームランダーの“中年の危機”
『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話のラストでは、ホームランダーは息子のライアンがブッチャーに会いに行っていたことを知って激昂する。ホームランダーは自分が欲しかったものすべてをライアンに与えているにも拘らず、自分の思い通りに動いてくれないことが納得いかないのだろう。
周りはイエスマンばかりで、長年のライバルであったブッチャーも余命わずかとなり、全てを手に入れたはずなのに今ひとつ満足感が得られない。一方で、白髪やシワが増えてくるなど、“完璧”だったはずのホームランダーが衰えを感じ始めている。こうした家族・仕事・身体の変化は、いわゆるミッドエイジクライシス(中年の危機)が起きる要因の代表的な例である。
3人のホームランダー
思わず物を投げて鏡を割ってしまったホームランダーは、割れた鏡の中に映る複数の自分と対話を始める。ここでホームランダーの本心が明らかになる。スターライターから嫌われていること、ライアンがブッチャーと時間を過ごしていたことがホームランダーの心にのしかかっているらしい。人から嫌われること、家族が遠ざかることに極端に弱いのがホームランダーだ。
鏡の左下に映るホームランダーは、「ライアンのために強くならなきゃ。彼を遠ざけるな」と優しく語りかけ、右に映るホームランダーは、「お前はまだ愛を求めている。膨大な愛を切望してる」と強い口調で迫る。右ホームランダーは「お前のせいであの子はひ弱になる。いずれ裏切られる」と突き放すと、左ホームランダーは「まだ間に合う、お前の息子だ」と諭すのだった。
このやりとりを見るに、左のホームランダーはまだライアンに愛着を持っており、右のホームランダーは愛情に関して強い不安を抱えているように思える。そして、上段のホームランダーが、まとめ役のような感じで、「そろそろ愛情への執着を克服しよう」「人間を超越しないと」と告げる。満場一致で「原点に立ち返ること」を確認し、ラボの映像がフラッシュバックして『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話は幕を閉じる。
ホームランダーの狙いはクローン?
研究所に戻る理由
『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話へ向けて、様々な可能性を示唆するラストだった。ホームランダーは、シーズン3で登場したソルジャー・ボーイのDNAから生み出された後、幼少期は研究施設で育てられた。家族の愛情を受けられなかったことがホームランダーのトラウマになっているのだが、彼はわざわざそこに戻るという。その狙いは何なのか。
もしかすると、ホームランダーは自分のクローンを作ろうとしているのではないだろうか。ライアンはベッカという人間の母を持ち、そのせいで人間に対して冷酷になることができず、ベッカという存在によってブッチャーとの間に絆を保っている。「人間的」であることによって溝ができてしまい、息子から思い通りに愛情を受けることができない。それにいつ裏切られるかも分からない……であれば、「人間を超越する」という発想に至ったのかもしれない。
ホームランダーは自分のDNAから新しい子どもを作り出し、まごうことなき自分の分身を新しい子どもとして迎え入れるのではないだろうか。今後、ライアンがブッチャーの側につくことがあれば、ブッチャー&ライアン vs ホームランダー&ミニホームランダーという親子対決が実現するかもしれない。
ホームランダーのクローンが登場するのは原作コミックと同じ要素ではあるが、原作コミックの展開に向かうルートは既に断たれている。であれば、ドラマ版『ザ・ボーイズ』では、「ホームランダーのクローン」という要素だけを摘出し、コミックとは違う形で登場させるという可能性はある。
ヒントはあのビンに
ホームランダーのクローン登場を予期させる演出は、同じシーズン4第1話の中に見られた。それは、ホームランダーが自身の白髪の陰毛をビンの中に集めていたことである。ホームランダーは大事な物を入れている箱の中に、ストームフロントの写真やマデリンの哺乳瓶、そしてブラック・ノワールの剣などを入れている。死んでしまったか殺してしまった自分の大事な人たちの形見を集めているのだが、この中に自分の白髪の陰毛を大事に保管しているのだ。
ホームランダーはラボに戻った後、この毛を用いて自分のクローンを作り出すのではないだろうか。『ザ・ボーイズ』シーズン4はウイルスがキーアイテムになると言われていたが、能力者を殺せるウイルスに対抗するのがホームランダーのクローンだとすれば、ブッチャーとホームランダーの勝負の行方は分からなくなる。
『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話ラストシーンの鏡の中のホームランダー同士の対話は、ホームランダーがクローンを生み出す兆候とも言える。結局、ホームランダーの理解者は自分自身しかおらず、信じられるのも自分だけ。それは、せっかくアドバイザーに迎えたシスター・セージの助言を守らず、ライアンの初舞台に介入してライアンを泣かせたことからも明らかだ。
人間を超越した先で…
それに、老いを痛感しているホームランダーは、自分とそっくりな存在を作り出すことで、関節的に“永遠”になることもできる。それが「人間を超越する」ということの意味なのかもしれない。セージにはライアンは自然に生まれたことが武器になると言われたから、それも気にしていそう。
だが、ホームランダーがもう一人の息子をクローンとして作り出したとすれば、ライアンくんの気持ちは一層ホームランダーから離れてしまうことになりそう。ホームランダーは、愛への渇望を捨て、人間味を捨て、クローンを生み出すことで永遠になり、それで幸せになれるのか……。まずは、シーズン4第4話でホームランダーが向かう先を注視しよう。
ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。初回は3話同時配信。
原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。
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