『ファウンデーション』映像化の壁
Apple TV+で2021年9月24日(金)より配信を開始するドラマ『ファウンデーション』の新情報が明らかになった。『ファウンデーション』はアイザック・アシモフの代表作の一つである小説「ファウンデーション」シリーズを実写ドラマ化した作品。動画配信プラットフォームとしてNetflixやAmazonプライム、Disney+を追うApple TV+の新たな主力として期待されている。
とはいえ、アシモフの「ファウンデーション」シリーズを実写化することは一筋縄ではいくことではない。1990年代にはニュー・ライン、ソニー、HBOが映像化に挑戦して挫折した作品だ。実写化困難とされた『ファウンデーション』をApple TV+はどのようにして実写化するのか。その鍵を握るのは製作総指揮と脚本を務めるデヴィッド・S・ゴイヤーだ。
3つの要素と1つの答え
デヴィッド・S・ゴイヤーは、米The Hollywood Reporterのインタビューで、『ファウンデーション』の映像化を困難にしていた3つの要素を説明している。
私が思うに、(今回のドラマ版以外の)他の実写映像化プロジェクトも直面した3つの難関が『ファウンデーション』にはあるんです。1つ目は、物語の舞台が1,000年以上にわたるため、大幅に時間を跳躍する場面があり、それを伝えるのが難しいんです。2〜3時間の映画にまとめることはまず無理ですね。
2つ目の理由は、原作がアンソロジーのようになっていることです。1冊目にはサルヴァー・ハーディンをメインにしたいくつかの短編が収録されており、それから100年飛んで他のキャラクターが登場するんです。
3つ目は、これが感情的な物語ではなく、思想や観念についての書物だということです。ですから、多くの出来事はスクリーンの外で起こることになります。本の中では、1万もの世界の中に存在する帝国は文字通り章と章との間で崩壊していきます。
そして、この問題を解決するためにドラマ『ファウンデーション』ではある設定を取り入れたのだという。
もちろん、これではドラマは成り立ちません。そこで、何人かの登場人物の寿命を延ばすという方法を考えました。おおよそ6人の登場人物がシーズンと世紀を跨いでいきます。そうすることで、半分はアンソロジーに、半分は継続的な物語にすることができるんです。
要点を整理すると、デヴィッド・S・ゴイヤーが『ファウンデーション』の実写化が頓挫してきた理由として挙げたのは、①描かれる時間のスパンが長すぎる、②メインキャラクターが固定されない、③描かれないことが多い、という3つのポイントだ。いずれもスケールの壮大さが原因になっているが、なんとゴイヤーはこの難題を「6人の登場人物の寿命を延ばす」という方法でクリアしたというのだ。
まだ物語や設定の詳細は語られていないが、この“改変”が何度も頓挫してきた『ファウンデーション』の実写映像化を実現させたことは間違いないだろう。また、デヴィッド・S・ゴイヤーが「シーズンを跨ぐ」と発言している通り、ドラマ『ファウンデーション』は全80話、80時間規模を目指して製作されている。
一文でピッチ
なお、このインタビューでデヴィッド・S・ゴイヤーは、企画のピッチの段階で、Apple社から冗談交じりに「一文でピッチできますか」と聞かれたと回想している。これに対して「ハリ・セルダンと帝国による1,000年にわたるチェスゲームで、全てのキャラクターは駒だが、このサーガの中でいくつかの駒は王や女王になる」と説明したという。
壮大な物語を一文で言語化したデヴィッド・S・ゴイヤー。ドラマ『ファウンデーション』では壮大なスケールの世界観の完全実写化に期待しよう。
ドラマ『ファウンデーション』は、2021年9月24日(金)よりApple TV+で独占配信。
配信開始直前に公開された新映像と場面写真はこちらから。
原作のアイザック・アシモフ『銀河帝国の興亡』は、鍛治靖子による新訳版が東京創元社より2021年8月31日(火) に発売。
Source
The Hollywood Reporter
あらすじと予告編はこちらから。
第1話のネタバレ解説はこちらから。
『デューン』もドラマ化が進んでいる。