ドラマ『ラスアス』第5話はどうなった?
全9話で構成される実写ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1は、第5話で折り返しを迎える。第5話はいつもより2日早い2023年2月11日(土) 午前11時から配信を開始。毎週視聴記録を更新している人気ドラマシリーズとなった『ラスアス』は、後半戦に向けてどんな展開を迎えたのだろうか。
今回はドラマ『ラスアス』第5話をネタバレありで解説していく。必ずU-NEXTで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』第5話の内容に関するネタバレを含みます。
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第5話「耐えて生きぬけ」ネタバレ解説&あらすじ
FEDRAが消えた街
実写ドラマ版『ラスアス』第5話は、第4話と同じくジェレミー・ウェッブが監督を務める。前話はシリーズで初めてクリフハンガー(次回が気になる終わらせ方)で終わる回に。第4話と第5話で合わせて一つのパートになっていることが示唆された。第5話の冒頭ではFEDRA(軍)を打倒して街を占拠した人々の姿から始まる。
もちろんこれは過去編だが、第4話のラストでジョエルとエリーが寝ている間に二人の不意をついたヘンリーとサムが逃げているところを見るに、そう遠くない時系列の話のようだ。革命直後のカンザス・シティーは、反乱軍が闊歩し、それを指揮するキャスリンは冷酷に密告者たちの粛清を始めていた。
メラニー・リンスキー演じるキャスリンは、声は荒げないがはっきり自分の主張を行い、相手を冷静に論破していく独自のリーダー像を示している。しかし、静かに復讐に燃えるキャスリンの判断は冷酷でやもすれば正規軍よりも恐ろしいにものになりつつある。
黒人のスーパーヒーロー
そして、ヘンリーと弟のサムは第4話で殺された医師のエデルスティンと合流。前回スーパーマンの絵が残されていた屋根裏部屋に身を隠す。ここでセキュリティ上声を出して発話できる状況になり、サムは耳が聞こえないということが明かされる。これはドラマオリジナルの設定だ。
近年、聾者のキャラクターがハリウッド大作に登場することは増えてきており、例えばMCUドラマ『ホークアイ』(2021) に登場したマヤ・ロペスは、彼女が主人公のドラマ『エコー』の配信も決定している。MCUでは映画でも『エターナルズ』(2021) に耳みが聞こえないマッカリが主人公の一人として登場した。
スーパーヒーローと絵を描くことが好きなサムは屋根裏部屋の壁に絵を描き始める。サムが描くのは黒人のスーパーヒーローたちだ。サムはスーパーマンのような絵を描いているが、北米でドラマ『ラスアス』を配信しているHBO Maxは、以前にはマイケル・B・ジョーダンが主演を務める黒人のスーパーマンの番組が企画されていると報じられたことがある。サムのような子ども達が自分の姿を重ね合わせられる憧れ存在を持てるように、黒人スーパーマンドラマ/映画の実現を願う。
繋がる時系列
10日が経ち、食料が尽きてきた二人。ちなみに食料は缶だが、原作ゲームでもサムは食料の缶の数を数えていた。戻らないエデルスティンは、キャスリンに尋問を受けているのだろう。ヘンリーとサムは結局殺されることになるエデルスティンのことを諦め、徒歩で逃げることに。ヘンリーはサムが描いた黒人ヒーローの絵を見て、サムの目の周りに同じように模様を入れてやる。第4話ラストではサムの目の周りに何か塗られているようだったが、ヘンリーが塗ったものだったようだ。
逃げ出そうとした二人は銃撃戦に遭遇。第4話中盤のジョエルとエリーだ。そして、前回終盤の螺旋階段へ。第1話と第2話に続き、原作ゲームでプレイヤーが操作するジョエルと出会うキャラクターたちが、それまで何をしていたのかというところに焦点を当てた展開となっている。視点を切り替えられる点がドラマ版『ラスアス』の魅力だ。
ヘンリーはサムに銃を渡してジョエルとエリーに銃を突きつける。前回はジョエルがエリーに銃を渡す回になっており、ヘンリーとサム、ジョエルとエリーは似たような絆と信頼で結ばれていると同時に、子どもに銃を渡さざるを得ない厳しい現実を生きていることが示されている。
ヘンリーとサムは、意外とあっさりジョエルとエリーを助けたいと申し出る。原作ゲームではかなり揉み合った後、ヘンリーがサムに銃を下ろさせて対話が始まる。ゲーム版ではヘンリーは当初ジョエルを追ってきている連中の仲間だと思っていたが、ドラマ版ではヘンリーがジョエルと反乱軍の銃撃戦を見ていたことから、「敵の敵」として認識できている。
声で脅していると勘違いされるジョエル、それを庇うエリーの関係性はこれまでに見たことのないパターンだ。二人の関係も変化の最中にある。この街一番と二番目ののお尋ね者がタッグを組む。ジョエルとエリーはビルからの食糧を二人に分けてやり、今回もビルの名前が登場する。なお、サムの年齢は8歳と明かされるが、ゲーム版では13歳となっており、5歳も若い設定になっている。
あのコミックが登場
ヘンリー曰く、20年間続いたFEDRAの支配が10日前に終わったが、ヘンリーは軍に協力していた密告者の一人だったという。やはりヘンリーは完全な善人というわけではなく、かつて“罠”をやって生き延びたジョエルのように、手を汚しながら生き延びてきたのだ。
しかし、ヘンリーは誰も殺したことがないといい、先ほども銃には弾は入っていなかったと告白する。ジョエルだって手慣れているわけではなく、人間を殺すことに対してもまだ整理はついていないはずだが、銃撃戦を見たヘンリーはジョエルを傭兵のように扱っている。
一方のエリーとサムの方は楽しそうに笑っている。二人が仲良くしているところを見て大人が和むシーンはゲームと同じだ。会議室で脱出に向けて作戦会議を行う一同。ヘンリーは会議からサムを排除せずに筆談で発言させている。
ヘンリーは、この街では15年前に軍が感染者を地下に閉じ込めたと明かす。人々は地下を恐れており、逃げるには地下を狙えばチャンスがあるというのがヘンリーの見立てだ。地下の感染者は掃討されたと軍の人間が3年前に話したというが、第4話ではキャスリンが地下にうごめく存在を確認している。
ヘンリーは、2体のクリッカーと遭遇しながらも生き延びたジョエルを信頼している。それは第2話のことで、その時はテスがいて助けられたことをヘンリーは知らない。ジョエルとエリーはジョエルが「パパ」であることを否定しつつ、4人で地下道を進んでいく。ゲームでもヘンリー&サムと合流した後のステージは、4人組で進行していく。
ジョエルは地下に住んでいた人々がルールを守らずに感染したと推測する。メモには「イシュ」という名前があるが、ゲーム版で見られるメモにもイシュの名前がある。船の中に住んでいたイシュは、人々と出会い地下で社会を築いて暮らすようになったが、扉を閉めるというルールを守らず(ミスによるもの)感染者の群れが押し寄せてきてしまったが明かされている。
また、サムが拾うコミック『サベッジ・スターライト』もゲーム版『ラスアス』に何度も登場するアイテムだ。『サベッジ・スターライト』は架空のSFコミックで、エリーが大好きなシリーズという設定だ。ドラマ版でもエリーが食いついており、「4・5・5・11巻」を持っていると話している。ゲーム版ではジョエルが「エリーが好きだから」ということで各ステージに隠されているコミックを集めるオマケ要素として登場する。
そして「宇宙の果てを目指して耐えて生きぬけ」というコミックからの引用でエリーとサムは盛り上がる。「耐えて生きぬけ」は第5話のタイトルであり、ゲーム版でもエリーがジョエルに教える標語になっている。ゲーム版のジョエルはこれを聞いた時に「分かった」と受け入れている。
復讐に生きるキャスリン
地下で一泊することになり、ジョエルは、弟を守るために密告していたヘンリーに「ネズミ」と言ったことを謝罪する。自身も生き延びるために人を利用したことはあるからだろう。ヘンリーは、弟のサムが白血病になり、軍が持っていた薬を手に入れるためにレジスタンスのリーダーであるキャスリンの兄を売り渡したと告白する。自分が悪者だとも。
かつての偉大なリーダー・マイケルの妹という素性が明らかになったキャスリン。幼い頃の嵐の夜の兄との思い出を語り、いつでも自分を守ってくれたと話す。キャスリンは優しかった兄と比較し、自分の行いを自分で責めてはいるが、報復を止めることはできない。
マイケルは報復を望まないことは分かっており、マイケルからは「ヘンリーを許せ」という言葉も聞いたが、「許すことに何の意味がある?」と、自分の意志でヘンリーに報復することを誓っている。レジスタンスの隊長は、変化を起こしたのはマイケルではなくキャスリンであり、自分はキャスリンについていくと宣言する。壊れた世界に生きていれば、悪人にならざるを得ず、どうしようもない状況に立たされることもある。弟のために誰かの兄を売り、兄を売られたことの報復として誰かの兄を殺す。救いのない世界である。
スナイパー戦
住宅街を行く4人。ゲームの展開を考えればマズイ展開が予測できる。ゲームと同じく、一行を狙ってきたのはスナイパーだ。原作通りジョエルが一人で回り込んでスナイパーを排除することに。だが、ジョエルがエリーに自分を信頼するかどうかを聞く展開はゲームにはなく、まだ信頼を積み重ねている途中であるドラマ版オリジナルの描写だ。
スナイパーを見つけたジョエル。ゲーム版では部屋に入ってきた時に襲いかかってくるが、ドラマ版ではジョエルが銃を突きつけて動かないように指示、というより懇願する。しかし抵抗したスナイパーのアンソニーにジョエルは手を下すしかなかった。
一行を追う人間の敵が現れ、ジョエルがスナイパーとして後方支援をする展開もゲーム版と同じ。ゲーム版のドラマと違いは、車両ではなく人が走って襲いかかってくる点だ(人を掃討した後に武装車両がやってくる)。ジョエルは見事なスナイパースキルを披露して車両の運転手を仕留める。トラックが爆発する描写は、第1話の飛行機落下に続いて“プレイヤー”ではない視聴者を飽きさせない工夫だろう。ゲームでは迫り来る敵を倒し続ける緊迫の場面だが、ドラマではそれを延々と見せられても楽しいわけではない。
「すべてより大事?」と、サムの命の価値を勝手に決めるキャスリン。ヘンリーはサムを守るために投降するが、そこで燃え盛るトラックが地下に落下していくと、ものすごい勢いでクリッカーたちが溢れ出す。やはり軍がヘンリーに与えた情報は誤りで、感染者は地下で生き延びていたのだ。ゲーム版では車両が炎上して住宅に突っ込み、その崩れた住宅から感染者たちが溢れ出してきてジョエルがスナイパーとして後方支援をする。この辺りも割とゲーム版の展開をなぞっているのだ。
だが、実写ドラマ版『ラスアス』は感染者の量が違う。大量に襲いくるゾンビはゾンビパニックもののお手本のような展開だ。しかし、ドラマオリジナルの展開で風向きが変わる。ブローターと呼ばれる第4段階の感染者がここで登場するのだ。
ブローターは人間が感染してから数年経った状態で、頭がキノコ状になっている第3段階のクリッカーに対して、全身がキノコのガワに覆われている。ブローターは全身が強化されており、胞子の塊を投げたり、捕まえたプレイヤーを両手で引き裂いてくる。実写ドラマ版でも、レジスタンスの隊長がこの引き裂き攻撃で顎を引き裂かれている。
ヘンリー&サムを助けようとするエリーと、エリーをスナイパーライフルで援護するジョエル。それを引き止めたのはキャスリンだったが、結果、キャスリンは少女のクリッカーに襲われて最後を迎える。思いのほかキャスリンの最後はあっけなく、復讐は果たせないまま退場となった。また、今回はブローターとは戦わず。後編戦に持ち越しとなった。
あのラストは…
モーテルで一息つく間、ジョエルはヘンリーに「守るべきものがいる」という共通点について触れる。エリーはあくまで「荷物」のはずだったが、いつの間にか兄弟のヘンリー&サムと同じように大事な存在を守っているかのような口ぶりだ。
改めてコミックの「耐えて生きぬけ」を確認したジョエルは、意外にもヘンリーにワイオミングについてきていいとオファーする。ヘンリーはサムと共にジョエルの旅に加わることを表明するが、この後の展開を知っているゲーム履修済勢は胸が痛くなるばかりだ。
『サベッジ・スターライト』を楽しそうに読み聞かせるエリーに、サムは怖いものはないのかと尋ねる。エリーは筆談で「独りぼっちになるのが怖い」と明かすと、同じ質問をされたサムは「怪物になっても中身は自分のまま?」と聞き、左足の噛まれた痕を見せるのだった。
ゲームでは、サムがエリーと一歳違いなので、もう少し具体的な会話がなされる。既に感染者に噛まれていることを隠しているサムが感染者についてエリーに聞くと、「中身はもう人間じゃない」という答えが返ってくる。サムはヘンリーが感染者は家族と一緒に天国に行くと言ったと話すが、「信じたいけど信じない」と正直な気持ちを吐露するのだ。
ゲーム版では翌朝発症するまでサムは噛まれたことを他の三人に伏せていたが、ドラマ版ではエリーにだけ明かしている。エリーは、ジョエルと第3話で交わした「症状のことは隠す」という約束を破り、噛まれた痕を見せると、自分の血は薬だ言って掌を切ってサムの傷口に塗ってやるのだった。実際には効果はないが、これも大切な存在の心を守る道の一つだ。
一緒に起きておくことを約束したエリーは、翌朝発症したサムに襲われる。ここからはゲームと同じ展開だ。ヘンリーはジョエルを牽制しながらも自らの手でサムを葬ると、混乱してジョエルに銃をむけた後、自ら命を絶つ。原作でも共に困難を乗り越えた矢先の悲劇であり、キャスリンに続いて唐突に幕が下りる無情な物語・人生・世界に直面させられる。
サムとヘンリーを埋葬したエリーとジョエル。ゲーム版でも二人の墓は作られる。ドラマ版では、エリーは筆談に使っていたボードに「I’m Sorry」と書き残すと、憮然としているジョエルを置いて西に向かって歩き始める。これは第2話でテスを失った時と逆の展開で、現実を受け入れて次に進もうとする側と困惑する側が逆転している。
エンディング曲はAgnes Obel「Fuel to Fire」(2013)。原作ゲームとは関係のない曲だが、その歌詞は「私に忘れないでいてほしい? それとも次に進んでほしい? あなたが遠くに行ってしまうことと同じくらい、私はあなたのものだってことは確か」と、エリーの立たされた状況に近い歌詞が歌われている。
ドラマ『ラスアス』第5話感想
復讐というテーマ
胸糞展開である。ビル&フランクの回とは真逆で、ゲームの展開をなぞりながらも、キャラクターの背景を肉付けすることでより残酷な結末を迎えている。また、オリジナルキャラとして登場したキャスリンは“復讐”という重要なテーマをドラマ『ラスアス』に持ち込んだが、深掘りされることはなく退場することになった。
一方で、ドラマ『ラスアス』はジョエルとエリーの他者との出会いを通して、二人と視聴者に少しずつ情念を植え付けているような印象がある。復讐に生きて散ったキャスリンとの出会いが、今後のジョエルとエリーに影響を与える可能性もあるだろう。
ヘンリーやジョエルの今生きている大切な人を守るという姿勢と、大切な人を失い復讐のために生きるという姿勢は前者を強く想っているほど後者に陥りやすくなるという残酷な関係にある。ヘンリーは自死することを選んだが、キャスリンの姿からは、情念の強さが闇堕ちを生むという「スター・ウォーズ」的なメッセージも読み取ることができる。
ジョエルとエリーが受け取った言葉
ポジティブな方面を見るならば、ジョエルとエリーがヘンリーとサムとの出会いで得た印象的な言葉は「耐えて生きぬけ」だ。ゲームにも登場するエリーが好きなコミックからの引用で、厳しい現実が続く『ラスアス』の世界で、これ以外ないという標語である。
原作ゲームではただ無法者たちから襲撃に遭っていただけだったヘンリーには、密告者だったという設定が付け加えられた。何を犠牲にしてでも大切な存在を守るというメッセージの裏返しでもあり、実際にジョエルはそうして生きてきた。
ジョエルはテスから「救える人を救って」と言われ、ビルからは救う価値のある人間を救い守ってやるように言われた。とにかく「愛する者を守って生き抜け」というのが去りゆく者たちのメッセージであり、残されたジョエルとエリーは確かにそれを受け取って前に進んでいく。
ジョエルとエリーはまたも、「The Last of Us(残された私たち)」になってしまった。ドラマ『ラスアス』も全9話の真ん中に位置する5話が終了したが、ゲームでもヘンリー&サムの物語が終わったあたりで半分が終わる頃になる。ここからは後半戦へ。実写版ではどんな展開が待っているのか、引き続き注視しよう。
なお、第5話は前倒しで2月11日(土)に配信されたため、2月13日(月)は最新話の配信はないが、この日は日本語吹き替え版の第1話が配信される。ゲーム原作のキャストが揃った日本語版も楽しみに待とう。
ドラマ『THE LAST OF US』は2023年1月16日(月)よりU-NEXTで独占配信。
原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。
『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。
ドラマ『THE LAST OF US』第6話のネタバレ解説はこちらから。
第1話のネタバレ解説はこちらから。
第2話のネタバレ解説はこちらから。
第3話のネタバレ解説はこちらから。
第3話について監督が話した裏側はこちらの記事で。
公式からは第3話のイチゴのシーンが公開されている。キャストとプロデューサーが語った背景と合わせてこちらの記事で紹介している。
第4話のネタバレ解説はこちらから。
シーズン2決定の情報はこちらから。
シーズン2について製作陣が語った内容はこちらの記事で。
ジョエル役のペドロ・パスカルが主演を務める『マンダロリアン』はシーズン3が3月1日(水)より配信開始。