ドラマ『アコライト』で重要設定が
「スター・ウォーズ」シリーズ最新作『スター・ウォーズ:アコライト』が2024年6月から配信を開始。『アコライト』は、映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999) の100年前を舞台にシスの台頭を描くドラマシリーズとなっている。
『アコライト』第3話では、「スター・ウォーズ」シリーズで長らく謎に包まれてきた重要設定に関わる新展開が描かれた。その謎とは、アナキン・スカイウォーカーの出生の秘密に関わるものだった。今回は、その内容について、これまでのシリーズで描かれた背景や製作陣の発言を元に解説していこう。以下の内容は『アコライト』第3話のネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第3話の内容に関するネタバレを含みます。
ドラマ『アコライト』第3話でアナキンの秘密に迫る?
ドラマ『アコライト』第3話では、アナキン・スカイウォーカーの出生に関わるエピソードを想起させる設定が紹介された。フォースセンシティブとして生まれた双子のオーシャとメイは、フォースを操る魔女の集団で生まれたが、父はおらず、魔女のリーダーであるマザー・アニセヤによって創造されたというのだ。
オーシャとメイを孕って出産したのは魔女の集団の幹部であるマザー・コリルだが、そのお腹に二人の命を宿したのはアニセヤだという。具体的な方法は第3話の時点では語られていないが、コリルはアニセヤがとった命を生み出す方法がジェダイに知られれば、よくないことが起きるということを示唆している。
父がおらず、母がひとりでに妊娠して生まれてきた、という英雄譚はアナキン・スカイウォーカーと全く同じものだ。『エピソード1』でクワイ=ガン・ジンからアナキンの父について聞かれたシミは、「父親はいません。あの子を孕って、産み、育てました。それ以上のことは説明できません」と答えている。
これは、キリスト教においてイエス・キリストの母マリアが処女にして精霊によって孕ったという話が元ネタになっている。具体的な経緯は明かされなかったが、ゆえにアナキンは「特別な存在」というのが、「スター・ウォーズ」における定説だった。
アナキンの父がいない理由
アナキン・スカイウォーカーの母シミがひとりでに妊娠した理由は、当初は「フォースの意思」によるものとされていた。フォースはそもそも、ミディ=クロリアンと呼ばれる、人の細胞内に生息する微生物に由来するものとされている。シミの体内のミディ=クロリアンの意思によって、シミは妊娠したと考えられていたのである。
この定説が覆ったのは、コミック『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』#25でのことだった。
ダース・ベイダーはビジョンの中で、妊娠している母シミの姿を目にする。その背後にパルパティーンが現れ、シミの腹部に操作を加えているような描写が描かれる。このシーンのナレーションは、「父はいなかった。不自然なことに。選ばれし者」となっている。
このページでの描写によって、パルパティーンがフォースの力でミディ=クロリアンを操作し、シミを妊娠させた生まれたのがアナキン・スカイウォーカーであるという説が定説となった。つまり、『アコライト』第3話でマザー・アニセヤがコリルに命を宿したという話は、パルパティーンがミディ=クロリアンを操作してシミを妊娠させたという話の“前例”である可能性が浮上しているのだ。
魔女の集団の中では、ミディ=クロリアンという概念は登場せず、マザー・アニセヤは「糸」という概念を使ってフォースの力を説明している。ジェダイでいうところのフォースやミディ=クロリアンについて熟知しているアニセヤが、ミディ=クロリアンから生命を生み出す方法を知っていても不思議ではない。
知られてはいけない理由
『スター・ウォーズ:アコライト』では、第3話の時点では正体不明のメイのマスターも登場する。マスターはシスの象徴である赤いライトセーバーを持っており、シスの暗黒卿であることが示唆されている。その正体が仮にマザー・コリルなどの、フォースから生命を誕生させる方法を知る人物だった場合、パルパティーンは魔女たちの技を引き継いでアナキンを誕生させたという可能性も出てくる。
ダース・シディアスことパルパティーンは、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) の劇中で、師匠のダース・プレイガスは生命を作り出す方法を知っていたと語っている。しかし、プレイガスはそれらの知識を弟子のパルパティーンに伝えたことで用無しとなり、弟子のパルパティーンに殺されてしまった。
仮にコリルがダース・プレイガスの正体であった場合、オーシャとメイを生み出した方法を「ジェダイに知られたらどうなるか」と発言していたことの意味が分かる気がする。フォースを使ってフォースセンシティブの子どもを産むことができるならば、才能ある子ども達を欲しているジェダイ・オーダーはそれを利用し、その知識を独占するために魔女達を抹殺するかもしれない。パルパティーンがダース・プレイガスにそうしたように。
実際に、ジェダイ・オーダーはそうして生まれたアナキン・スカイウォーカーをジェダイに勧誘した。『アコライト』では、ジェダイ全盛時代におけるオーダーの積極的なリクルート活動も描かれている。後にアナキンを生み出すフォースの秘術をめぐる物語が『アコライト』で描かれていく可能性は十分に考えられる。
パルパティーンの仕業ではない?
だが、このセオリーには問題が一つある。ルーカス・フィルムのマット・マーティンは2019年、コミック『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』#25の例のシーンについて「これはすべてアナキンの頭の中で起きていることです。このコミックに携わった者として確実に言えることは、これが100%意図した意味ではないということです」とコメント。アナキンが見たビジョンは事実とは異なる可能性に触れている。また、同作のライターであるチャールズ・ソウルも、そのコメントに対して「ダークサイドは信頼できない語り手です」と追随している。
But this is all in Anakin’s head. Wouldn’t that idea, a concept that Palps hinted at to Anakin himself, be something likely to freak Anakin out? Something that would linger in his mind? “Oh crap, what if he made me!” Doesn’t make it true. It’s all through Anakin’s lens.
— Matt Martin – INACTIVE (@missingwords) December 22, 2019
I am, in fact, the writer. Matt and I worked closely on this series and this point in particular. I hate explaining stuff in my work in too much detail, but you need to understand the scenario happening here.
The Dark Side is not a reliable narrator.
— Charles Soule (@CharlesSoule) December 23, 2019
元々、『エピソード3』の草稿には、パルパティーンがアナキンにミディ=クロリアンを操ってアナキンを作ったこと、パルパティーンがアナキンの事実の父であることを告げるシーンが含まれていた。ジョージ・ルーカスはこれをカットしており、前述のマット・マーティンもX上で「そのアイデアが採用されなかったのには理由があります」「放棄されたアイデアはたくさんあります。執筆とはそういうものです」ともコメントした。
George planned a lot of things that didn’t make it in the film. He chose not to go that direction for a reason. Old versions of scripts are not statements of fact. They’re riddled with abandoned ideas. That’s the nature of writing.
— Matt Martin – INACTIVE (@missingwords) December 23, 2019
アナキン誕生の秘密は、コミックで描かれ、コメントで否定され、ドラマで再びその真相に迫りつつある。上記のコメントの発信は、『スター・ウォーズ エピソード9/スカウォーカーの夜明け』が公開された直後のタイミングで行われた。それから5年近くが経過し、更なる設定の変更が行われた可能性もある。
『アコライト』が配信されている2024年は、『スター・ウォーズ エピソード1』公開から25年という節目になる。世界各地で『エピソード1』の再上映も行われている中、遂にアナキン出生の真実が明かされることになるのだろうか。第4話以降も、ドラマ『アコライト』から目が離せない。
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』はディズニープラスで独占配信中。
『エピソード1』の200年前を舞台にした正史小説「ハイ・リパブリック」シリーズは講談社より発売中。
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第3話のネタバレ解説はこちらから。
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