『スター・ウォーズ:アコライト』第4話配信開始
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は2024年6月5日(水) より配信をスタートした「スター・ウォーズ」シリーズの最新作。ジェダイ全盛の時代を舞台に、シスの台頭が描かれる。全8話で構成される『アコライト』も、あっという間に前半の折り返しとなる第4話を迎える。平和な時代に起きたジェダイ暗殺事件に、一体どんな結末が用意されているのだろうか。
今回は、ドラマ『アコライト』第4話の展開をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ず本編をディズニープラスで鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第4話の内容に関するネタバレを含みます。
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ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第4話「昼」ネタバレ解説
ジェダイじゃない
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第4話は、全部で34分と短め。中盤で短めのエピソードを入れるのは「スター・ウォーズ」ドラマではあるあると言える。第4話の監督を務めるのはアレックス・ガルシア・ロペス。Netflixの実写ドラマ版『カウボーイビバップ』(2021) の第1話&第2話を含む5話で監督を務めている。
なお、『アコライト』でシリーズを統括するレスリー・レッドランドは、Netflixの人気ドラマ『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』(2019) を手掛けており、『アコライト』のキャストはNetfllixドラマ組が多くなっている。第4話では監督もNetflixドラマからの起用となった形だ。
『アコライト』第4話の冒頭で登場したのは、第3話のラストで惑星コーファーにいたウーキー族のケルナッカだ。一人で自炊する姿が捉えられているが、部屋の壁には何かの模様がたくさん描かれている。双子を思わせる太陰大極図(陰と陽のマーク)も見られ、その絵の一つは、メイの額に刻まれた紋様と同じものだった。
コルサントのジェダイ聖堂では、パダワンのジェキ・ロンが指導を受けている。コルサントに来ているオーシャは、メイの生存を確認できたことに対しジェキに感謝を述べつつ、メイはジェダイの問題であるとして、もうコルサントを離れるつもりらしい。あまり長くいたい場所でもないのだろう。この時のオーシャの「私はジェダイじゃない (I’m not a Jedi.)」というセリフは、アニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2018) でアソーカ・タノがダース・ベイダーに言い放った「I am no Jedi.」を想起させる。
第3話では、ドラマ『アソーカ』(2023-) でのジェイセンのセリフ「ジェダイになりたい (I wanna be a Jedi.)」を幼い頃のオーシャが引用した。前話の解説で述べたように、オーシャとメイにはアナキンの要素も含まれているし、現在実写化されている中で最も古い時代の主人公であるオーシャは、後の様々なジェダイキャラクターの要素を背負っているように思われる(時系列的にはオーシャから多様なジェダイに分岐していく、ということになるが)。
オーシャがジェキに「寂しくなる(miss you)は禁句」と言っているのは、愛着や執着はジェダイに禁物だからだ。「メイの凶行を止めるのは私じゃない」と話し、ソルにも挨拶せずに去るというオーシャは、ジェダイ以上に執着を捨てて割り切っているように見える。
ジェダイの会議でアノ人登場
メイとカイミールは惑星コーファーに辿り着いていた。二人はケルナッカ探しに出かけるのだが、このシーンのメイの目力がすごい。オーシャとメイの一人二役を演じるアマンドラ・ステンバーグの演じ分けが見事だ。
オープニングロゴの後、コルサントでのジェダイマスターたちによる会議が描かれるが、このシーンに参加している頭の長いセレアンという種族のマスターは、キ=アディ=ムンディだ。クレジットからも確認できる。キ=アディ=ムンディは、映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999) の時点でジェダイ評議会のメンバーだった人物。ヨーダやメイス・ウィンドゥといった面々と共にジェダイ・オーダーの意思決定に携わっていた。
ちなみにジェダイは子どもを持つことを禁じられているが、セレアンという種族は男性が少ないため、キ=アディ=ムンディは例外として子どもを持つことを許可されている。なお、キ=アディ=ムンディは、映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) でのオーダー66(パルパティーンによるクローンのプログラムを利用したジェダイ抹殺指令)でクローントルーパーに撃たれて命を落とすことになる。
『アコライト』第4話の会議では、メイのマスターの正体について、「スプリンター・オーダー(a splinter Order)では?」という声があがる。この「スプリンター」は固有名詞ではなく形容詞であり、単に「ジェダイ・オーダーの分派」という意味で「スプリンター・オーダー」と言っているものと思われる。
メイが脅威だとする会議の声に対し、マスター・ソルは「無軌道なだけだ」と庇う。しかも、「メイがこの3人を狙うのは……」と言って、自分を除外しているところをヴァーネストラ・ロウに「あなたもでしょ」と突っ込まれている。ロウはメイを鍛えたのがジェダイだとも指摘しており、一気にソルが怪しくなってくる。ソルはメイの生存に驚いていたので、流石にソルがメイ側ということはないだろうが……。
ミーティングでは、後に評議会メンバーになるキ=アディ=ムンディが評議会に報告すべきでは、と提案するが、元老院への報告義務や醜聞が生じるのを嫌がり、ロウは内輪で処理することを決めるのだった。ジェダイによる“隠蔽”も、現実社会の私たちと同じような感覚と動機で生まれている。教訓になる。
ロウはメイの追跡をマスター・ホールデンに指示すると、会議後、ソルに対してはメイ生存の可能性を隠していたことについて詰め寄る。ソルは「落ちた」から生きているはずがないと思ったと弁明するが、セオリー的には大体「落ちる」=「生きてる」なのだが、まぁ大昔の話だからしょうがない。
メイは誰かに唆されているというソルの主張に、ロウもメイは彼女のマスターによるマスタープランの一部なのかもしれないと認める。それは「均衡を崩す何か」ですらあるとも。視聴者にシスの台頭を示唆する演出だ。ソルは、メイを殺せばマスターを探れなくなるから、降伏させるために見返りを用意すると、オーシャを呼び戻すことを示唆するのだった。
人を集めるマスターと、人員豊富なジェダイ
ケルナッカのもとを目指すメイとカイミールの方は、道中で①カイミールはマスターに借りがある、②マスターの顔を見たことはない、③マスターは人を集めている、という情報を開示する。人を集めているということは、やはりより大きな計画があるということだろう。一方で、シスの「二人の掟=一人のマスターに一人の弟子」には反する動きのようにも思える。それとも、単に新たなオーダーを作り出すための人員を集めているということなのだろうか。
メイの方は、まだ妹オーシャのことを気にかけている様子。オーシャがジェダイ・マスターのソルのことを慕っていると聞いて、複雑な表情を見せている。メイからすれば、16年前のあの日にオーシャを連れていったソルは仇でもあるのだ。
そのソルはオーシャに協力を要請。ジェダイに戻るわけではないと知ったオーシャは、自分がメイを連れ戻すための餌であることに気づく。メイを生け捕りにしたいソルに対し、メイを「人殺し」と呼ぶオーシャだったが、最後には「それでも君の家族だ」というソルの言葉に負けて協力することに。愛着を利用するのはジェダイとしては掟破りのような気もするが、ここではソルはもうオーシャのことをジェダイとして見ていないということを強調するセリフでもあるように思える。
オーシャは遠回しにジェダイのローブを要求するが、用意してもらえなかった様子。船の中でのブリーフィングによると、ケルナッカは1年以上連絡を絶っているという。船内には、追跡担当のバジルというカワウソのようなメンバーも同船している他、ヨードとジェキをはじめとするジェダイが多数乗り込んでおり、やはりジェダイ全盛の時代の人員の豊富さが見て取れる。オーシャも合わせて10人はいる。平和な時代ということなので、任務もほとんどないのだろう。
なお、この船中のシーンではオーシャがバジルについてジェキに確認するシーンで、「あの子もチームの一員?」と聞いている。このセリフは英語で「Is he, or they, with us?」となっている。英語圏では、「She」でも「He」でもないノンバイナリーの人物の代名詞として三人称単数の「They」を用いることが一般的になりつつある。このシーンでオーシャはバジルのことを「彼」と決めつけそうになったが、そうではない可能性に思い至って言い直したと言うことだ。「スター・ウォーズ」で初めて三人称単数の「They」が使われた瞬間である。
ヨードはオーシャを「民間人 (civilian)」と呼んだり、後でブラスターを返すよう釘を刺したりと除け者扱いしている。ヨードはオーシャと同期で、ジェダイ・ナイトになったばかりだが、ソルはオーシャへの思い入れが強いように見えるので、対抗心があるのだろう。それでも、オーシャはメイの説得が無理であれば対処してほしいとヨードに頼む。しかし、意外にもヨードは、ソルはオーシャをメイという古傷と向き合わせたいのでは、と返答する。ソルの思い入れを読み取っていたからこその嫉妬心だったのだろう。
「真のジェダイ」とは
森の奥深くに進んでいく一行は巨大羽ありダンゴムシに遭遇。光によってくる習性の虫はライトセーバーと相性が良くなさそう。ダンゴムシの気配を感じながらも刺激して死に至らしめてしまったと反省するオーシャは、ジャッキに「真のジェダイがあるべきように (a true Jedi should)死を受けいれられない」と話す。
これは『エピソード3』でのアナキンの「あるべきジェダイの姿じゃない(I’m not the Jedi I should be.)」というセリフと重なる。先の「I am not a Jedi.」発言と合わせるとほぼアナキンのセリフになる。
ちなみにジャッキが聞き返す「True Jedi(真のジェダイ)」というワードは、ゲーム「レゴ スター・ウォーズ」シリーズで用いられるステータスで、スタッドというコインのようなアイテムを集めると(なぜか)その称号を得ることができる。ネット上ではある種のミームになっており、『アコライト』で復唱されたのは、ファンサービスの一環だと思われる。
オーシャはメイを失ったことに対して「寂しい(miss)」という感情を抱いていたことを吐露。冒頭でジャッキに「禁句」としていたワードを自ら口にする。一方のジャッキは、何を失ったかよりも、何を生き延びたかが大事だとオーシャを励ます。生への執着もまた執着であり、あまりマスターからは出てこない励ましの言葉かもしれない。
メイの決断
一足早くケルナッカのもとに向かうメイとカイミールだったが、メイは、武器を使わずにジェダイを倒すというミッションを「最後の学び(レッスン)」であり、「テスト」とは言っていないと解釈するなど、不安定な精神状態になっている。丸腰で倒すのは「不可能」とも言い始めている。やはりオーシャとの再会がメイに強い影響を及ぼしていることが分かる。
その直後、メイはカイミールを罠にかけて捕える。ジェダイを殺す必要も約束を果たす必要もないと開き直り、オーシャが生きていると分かった今、妹の方が重要だと主張するのだ。ケルナッカに投降してジェダイの元へ行くと話すメイは、おそらくここに辿り着く前からそのように考えていたが、まずケルナッカの居場所を知る必要があったのだろう。メイは、マスターでもガイドなしでここまで来られないと確信している。
この直前にカイミールはここから南に10分のところにケルナッカがいるという情報を口にしており、メイはカイミールにとって用無しになったのだ。なんだか、ダース・プレイガスがフォースと生命の秘密をパルパティーンに話した途端に殺されたという話を思い出すが、メイはカイミールを殺さないだけ優しい。ケルナッカを通してジェダイと交渉できればジェダイに匿ってもらえるというのがメイの見立てだった。
一方、オーシャは以前の感覚が戻り、メイと向き合えると主張するが、ソルはメイではなく過去と向き合わなければならないと返答する。第1話での「過去を考察せねば」というセリフといい、ソルは過去を探る『アコライト』というシリーズの意義と、自分の生き方をメタ的に重ねているようだ。そして、ソルはこれが終われば「全て説明する」と話す。メイに対して、ということだと思うが、それ以上に何か隠していることがあるとも捉えられる。なお、このシーンの冒頭ではソルが何者かの気配に気づいている。
驚きのラスト
メイはケルナッカの家にたどり着くがバジルに見つかり、一同が集結。メイが動き出したのは第2話の直後だが、ジェダイチームは臭いを追跡して真っ直ぐにケルナッカの元に迎えたのなら、もうメイに追いついていてもおかしくない。
しかし、メイがケルナッカの家に入ると、ケルナッカはすでに殺されており、メイは先にマスターが来ていたことを悟るのだった。マスター・ケルナッカ、思ってたよりも見せ場がなかった。だが、第7話の監督は第3話と同じくコゴナダが務めるらしいので、再び過去回が描かれる可能性はある。
ジェダイ警察が到着し、表に出てくるよう求められるメイ。今出ていけばケルナッカ殺害も自分の罪にされてしまうと考えたのだろう、メイは出て行くことができないでいたが、ここでまさかの展開が訪れる。ソル達の後ろで事態を見守っていたオーシャの背後に、マスターが現れたのだ。おどろおどろしい演出はさながらホラー映画のようで、素性が知れないことによって一層恐怖心が掻き立てられる。
マスターはオーシャの目の前まで来ると赤いライトセーバーを出し、8人のジェダイも臨戦態勢に。マスターはオーシャをフォースの力で投げ飛ばすと、急にカメラの方を向くホラー演出を挟んで、左手一本で8人のジェダイを吹き飛ばしてしまう。この人物の強力さを示すと共に、オーシャに関心はない(あるいは守ろうとしている)ということが明らかになった。
前半戦のラストでジェダイと赤いライトセーバーが交わることになり、『アコライト』は次週から後半戦へと入っていく……。
『アコライト』第4話ネタバレ考察&感想
“マスター”の正体は…?
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第4話は非常に考察がはかどるエピソードだった。やはり「マスターは誰か」ということが主題になるが、普通に考えれば怪しいのはカイミールである。
まず、カイミールは直前にメイに宙吊りにされていたが、ジェダイの面々はカイミールを見つけることなくケルナッカの家に辿り着いている。また、メイは案内がいなければケルナッカの居場所には辿り着けないとも言っていた。道中ではメイから「彼(マスター)と取引を?」と聞かれて、「俺はしてない(I didn’t.)」と言ってから「俺たちはしてない(I mean, we didn’t.)」と言い直していたり、カイミールもマスターも身振りが大袈裟だったりと、ヒントとも取れる演出が散見される。
直前でメイの戦意が喪失して裏切ろうとしていたため、カイミールは先回りしてケルナッカを始末したのかもしれない。ジェダイマスターを倒して8人のジェダイを吹き飛ばすなんて相当な実力の持ち主であり、あっさりメイの罠にかかったことは気になるが。
やはり問題は、カイミールがマスターの正体だとすれば、ストーリーとして分かりやす過ぎることと、ヴィランにしては小物っぽすぎることだ。カイミールはミスリードで、正体となる人物は他にいるのかもしれない。あるいは、“マスター”とされているこの人物もまた“アコライト=従者”であり、より大きな計画の一部でしかないのかもしれない。
ヴァーネストラ・ロウが関与?
少なくとも、この時点でこの任務に同行していたジェダイメンバーはマスターとされている人物ではないことが明らかになった。ジェダイマスターのヴァーネストラ・ロウは当初ソルをこの任務にアサインしなかったが、それは“彼”が現場に現れることを知っていて、ソルを殺したくなかったからかもしれない。ロウはやたらと情報を隠蔽しようともしていて怪しい。
会議の後に廊下でソルとロウが話しているシーンでは、二人が口論になりかけているところをマスター・ホールデンとキ=アディ=ムンディに見られている。実はロウはそれに気づいてから態度を軟化させて、メイがより大きな計画の一部かもしれないと認め、ソルの任務参加を認めるのだ。ロウの態度の変化は、評議会に報告するべきと主張していたキ=アディ=ムンディが自分の不審な動きを密告するかもしれないと考えての行動だった可能性もある。
まだまだ終わりそうにない(というか可能性が広がった)『アコライト』のサスペンスパート。残るターゲットはソルだけとなったが、一行は無事真実に辿り着くことができるのだろうか。ちなみに続く第5話も第4話と同じくアレックス・ガルシア・ロペスが監督を務める。第4話の本編30分弱という長さを考えると、第4話と第5話で一つのストーリーと考えていいのかもしれない。ジェダイは新たな脅威と自らの過去にどう向き合うのか、次の展開を楽しみに待とう。
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』はディズニープラスで独占配信中。
『エピソード1』の200年前を舞台にした正史小説「ハイ・リパブリック」シリーズは講談社より発売中。
第4話のラストを受けたのマスターの正体についての考察はこちらの記事で。
第5話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第3話で示唆されたアナキン誕生の秘密について、これまでの経緯をまとめた記事はこちらから。
『アコライト』第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。
『アコライト』時系列の解説とパルパティーン登場の可能性についての考察はこちらの記事で。
『アコライト』のマスター・ソルについての紹介はこちらの記事で。
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