解説&考察『シー・ハルク:ザ・アトーニー』本予告にアノ人が登場! 『インクレディブル・ハルク』のオマージュも | VG+ (バゴプラ)

解説&考察『シー・ハルク:ザ・アトーニー』本予告にアノ人が登場! 『インクレディブル・ハルク』のオマージュも

© 2022 Marvel

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』本予告公開

米サンディエゴで開催されているコミコン2022でMCU関連の様々な発表が行われる中、2022年8月17日(水) 18日(木)からDisney+で配信されるドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の本予告と新ポスターが公開された。

本作はハルクことブルース・バナーの従姉妹であるジェニファー・ウォルターズを主人公に据えた作品で、6月から7月にかけて配信された『ミズ・マーベル』に続くMCUドラマになる。

MCUドラマ第1弾の『ワンダヴィジョン』(2021) 以来となる全9話の構成になることが発表されている本作。コメディ要素の強い作品になるとされているが、“弁護士ヒーロー”の誕生にも期待がかかる。今回の本予告では、『シー・ハルク』のテーマになる部分もフォーカスされている。

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』本予告解説&考察

『インクレディブル・ハルク』のオマージュも

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』本予告は、やはりハルクことブルース・バナーがシー・ハルクになったジェニファー・ウォルターズに教えを与えるところから始まる。エアホーンでジェニファーを起こし、シー・ハルクの姿になるかどうかをチェックするブルースは、ジェニファーに「エアホーンでやる必要あった?」と問われ、「コメディのためだよ(For comedy absolutely.)」と回答。本作のコメディ要素を改めて強調している。

続いて岩投げ練習のシーンでは、ブルースはジェニファーに「君はこれから何年もかかる旅に出る」と告げ、シー・ハルクがムーンナイトやミズ・マーベルと同様、今後のMCUで長期に渡って活躍することを示唆する。

また、ブルースは「スパンデックスが君の親友」と主張しているが、スパンデックスは弾性繊維で、水着などに使われる伸縮性の高い素材のこと。マーク・ラファロではなくエドワード・ノートンが演じた『インクレディブル・ハルク』(2008) では、巨大化した後にズボンがボロボロになってしまう描写がある。ハルクはその経験から学んだのだろう。

そして、ブルースは「重要なのはバランス感覚」と説く。これはジェニファーが弁護士という職と、ヒーローとしてのシー・ハルクの力の狭間でどのようにバランスをとっていくのか、というシリーズ全体のテーマに関わる発言でもある。法律の上で闘ってきた弁護士が、法を無視できるほどの力を得たときにその力をどう使うのか、あるいは使わないのか、という点はドラマ『シー・ハルク』の見所の一つになるだろう。

技の訓練の場面では、ジェニファーは握り拳で床を叩き割るハルクスマッシュや、両手を叩いて風圧を起こすサンダークラップを披露している。サンダークラップは『インクレディブル・ハルク』でもブルースが披露したもので、同作では燃え広がる火を消すために使用しているが、『シー・ハルク』ではジェニファーはブルースを吹き飛ばす強力さを見せている。

また、ブルースはやはり「法の世界に戻りたいなら尊重する」と、ヒーロー業界と法曹界が相反するものであるかのように話している。これに対してジェニファーは「本心じゃない」と、画面の向こうの私たちに話しかけてくる。デッドプールでおなじみの“第四の壁”を破る演出だ。やはり『シー・ハルク』は、MCUの中でも異色の作品になりそうだ。

アボミネーションの弁護を担当

続いて超人(super human)たちが次々現れていることが告げられると、カエルのスーツを身にまとったフロッグマンが登場し、予告の終盤ではシー・ハルクのライバルになるティターニアも登場している。弁護士事務所から飛び降りて脱走する人物が登場し、判事も超人としての正体を明かすなど、法律で制御できない局面が訪れていることが強調されている。

そして、初予告でも触れられた通り、超人法専門の部署を新設するという話に入っていく。ところが、前回の初予告の映像とは明らかにジェニファーの様子が異なる。前回は元の人間の姿だったが、今回の映像ではシー・ハルクの姿でこの話を聞いており、超人法の部署について話す人物の「君に新部署の顔になってもらいたい」というセリフも「シー・ハルクに新部署の顔になってもらいたい」に変更されている。

ジェニファーはシー・ハルクの力を手に入れた弁護士だったから声をかけられたのだろうか。それとも先に声をかけられていて、タイミング良く(悪く?)シー・ハルクの力を手に入れたのだろうか。いずれにせよ、弁護士とシー・ハルクという二つの顔を持っているジェニファーにしかできない仕事が待っているようだ。

そして、こちらも前回に引き続き、『インクレディブル・ハルク』と『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) に登場したアボミネーションことエミル・ブロンスキーが登場。ジェニファーが「従兄弟のブルースを殺そうとしたのだから利益相反」と語っていることから、ジェニファーはブロンスキーの弁護を担当することになったようだ。

『シャン・チー』では、アボミネーションは自身をコントロールできるようになり、更生の道を歩んでいるように見えた。ヴィランでも更生すれば釈放するか、ヒーローとして活動させる道を歩ませるというのが新しいMCUの形なのかもしれない。その判断と世間の説得には、専門家であり当事者であるジェニファーの力が必要になりそうだ。

アボミネーションの弁護士になったことで、ジェニファーは世間から注目を集める。ニュースのテロップには「速報:シー・ハルクがアボミネーションを弁護 (She-Hulk to defend Abomination)」と表示されている。自分で力をコントロールして変身できるジェニファーは、シー・ハルクとしての活躍がSNSで拡散され、人気を集めている。これは『シャン・チー』や『ミズ・マーベル』でも見られた展開で、SNSで注目を集めたヒーローがアベンジャーズの中でも人気者という扱いになっていきそうだ。

ウォン登場

そんなジェニファーの前に現れたのはウォン。『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) に続く登場になり、フェーズ4では大忙しだ。「私たちのユニバースは崖っぷち (Our universe is on the edge of a precipice)」と強い言葉でジェニファーに語りかける。『マルチバース・オブ・マッドネス』で起きているとされたインカージョンと関連があるのだろうか。

ちょうどサンディエゴ・コミコン2022では、インカージョンがメインの要素になるコミックの「シークレット・ウォーズ」が「アベンジャーズ 」第6弾のサブタイトルになることが発表された。

しかし、シー・ハルクの姿のまま「私は弁護士」とウォンの誘いを断る。「本に従う」と言うジェニファーにウォンは「ヴィシャンティの書?」と、『マルチバース・オブ・マッドネス』に登場した「どんな敵も倒せる書物」の名前を挙げるが、ジェニファーは「アメリカの法の書物」と答えている。そう、「法」をテーマにする限りは、ソコヴィア協定のような国際的な枠組みやマルチバースのような概念ではなく、最大でも国という単位が『シー・ハルク』の軸になる。より大きな問題に取り組むウォンを登場させてその違いを明確にしている点は巧い。

ヒーローとして讃えられるシー・ハルクはスターになっていく。『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) では地球で嫌われていることを気にしていたブルースは嫉妬心を覗かせると、ジェニファーを崖から突き落とす。落ちていくジェニファーの姿は、映画『アベンジャーズ 』(2012) やドラマ『ホークアイ』(2021) でのホークアイの落下シーンを想起させるアングルになっている。しかし、違っているのはジェニファーがその左手の中指を立てている点。中指にモザイクが入ったままジェニファーは落ちていく

現れたのはデアデビル?

そして本予告のラストで登場したのは、見覚えのある棍棒を握るヴィジランテ(自警団)のような人影。その顔が映し出される前に『シー・ハルク』の予告は幕を閉じる。しかし、その正体は明らかにチャーリー・コックス演じるデアデビルだ。一瞬ライトに照らされた場面では赤と黄色のコスチュームを身にまとっていることが分かる。

チャーリー・コックス演じるデアデビルことマット・マードックは、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) にピーター・パーカーの担当弁護士として登場。その後、MCU版ドラマ『デアデビル』の製作が報じられ、サンディエゴ・コミコン2022では『デアデビル ボーン・アゲイン(原題)』のタイトルで18話が制作され、2024年春に配信されることが発表された。チャーリー・コックスがマット・マードック役を続投し、キングピン役をヴィンセント・ドノフリオが再演する。

『シー・ハルク』は『デアデビル』と同じく弁護士が主人公の作品とあって、デアデビルとの共演にも期待がかかっていたが、今回の本予告でクロスオーバーが確実となった。一方、デアデビルは武器を構えていることからも、二人が対立する可能性は低くない。

シー・ハルクは弁護士としてもヒーローとしても表舞台で問題を解決しようとしているのに対し、デアデビルは法で裁けない悪人を闇夜に紛れて制裁するヴィジランテだ。シー・ハルクは西海岸のロサンゼルスが拠点で、デアデビルはニューヨークが拠点という違いもあり、その街の司法が腐敗しているかどうかも立場の違いを分けることになるだろう。

このように、『シー・ハルク』の物語はアメリカ国内の規模で展開されていく可能性が高い。この点は国際的な物語が展開された『ムーンナイト』『ミズ・マーベル』との大きな違いになるだろう。

新時代のアベンジャーズの中で、シー・ハルクはどのような立ち位置におさまるのか、8月の配信を楽しみに待とう。

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』は2022年8月18日(木) よりDisney+で独占配信。

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』公式サイト

同日公開された映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』特報の解説&考察はこちらから。

脚本家が語った『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の見どころはこちらから。

2023年夏配信が発表されたドラマ『エコー』では、デアデビルとキングピンが登場する可能性もある。詳しくはこちらの記事で。

コミコン2022で発表された『デアデビル ボーン・アゲイン』を含むMCUフェーズ5全作品のまとめはこちらから。

2024年5月公開が発表された『キャプテン・アメリカ:ニュー・ワールド・オーダー』についてはこちらの記事で。

2024年11月公開のMCU版『ファンタスティック・フォー』についての発表はこちらの記事で。

2025年5月公開が発表された『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』についてはこちらから。

2025年11月公開が発表された『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』についてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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