『ザ・バットマン』より削除シーン公開
マット・リーヴス監督、ロバート・パティンソン主演の映画『ザ・バットマン -ザ・バットマン-』より、以前より存在が明かされていた削除シーンが公開された。米ワーナーブラザース ピクチャーズが公式YouTubeチャンネルでリリースし、今英語圏で解読が進んでいるリドラーのなぞなぞページで正しい回答を入力するとたどり着くことができる仕様になっている。
なぞなぞを解いてからこの映像を観たいという方は、こちらのサイトでチャレンジすることができる。
以下の内容は映画『ザ・バットマン』の内容に関する重大なネタバレを含むため、必ず本編を劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ザ・バットマン -ザ・バットマン-』の内容に関するネタバレを含みます。
ジョーカーとの面会シーン公開
『ザ・バットマン』の削除シーンとして公開されたのは、マット・リーヴス監督が本編からカットしたことを明言していたバットマンとジョーカーの面会シーンだった。動画のタイトルは「削除されたアーカムシーン(Deleted Arkham Scene)」となっている。
バットマンはリドラーに面会した時のように仕切られた面会室を訪れると、ガラスの向こうの人物に書類を渡す。その人物は「もうすぐ私たちの記念日だね」と馴れ馴れしくバットマンに話しかけるが、バットマンは冷静に「連続殺人鬼がいる。意見を聞きたい」と尋ねる。
バットマンがアーカム・アサイラムで面会している相手は、バリー・コーガン演じるジョーカーだ。本編でのクレジットは「Unseen Arkham Prisoner(見えないアーカムの囚人)」となっていた。この場面は、本編でカットされなかったバリー・コーガンの登場シーンよりも時系列的にはもっと前になるようだ。バットマンはリドラーの正体を掴むため、ジョーカーに意見を聞きに来たようである。
ジョーカーは、「一周年記念は紙(書類)か……なんで私がそんなに安いって思うの?」と返答。二人が一年前に出会っていたことを示唆している。『ザ・バットマン』の時点で、バットマンとジョーカーの間には因縁があるということになる。バットマンが一年目の時代にジョーカーを捕まえたということだろうか。
「(リドラーについて)気になるかと思ったが」と話すバットマンに対し、リドラーは「私に止められる(or こんなものが気になる[音声が不明瞭])と思ってるんだね」と返答。バットマンは「違うか?」と返しており、妙な距離の近さを感じさせる。少なくともこのバットマンにとって、ジョーカーは二度と会いたくない相手ではなく、場合によっては利用したい相手ということだろう。
写真を見たジョーカーは残虐な写真に喜んでいるが、ゴッサム市警のピート・サベージ本部長が殺された時の写真を見ており、時系列的には二つ目の殺人事件の後のシーンだということが分かる。ジョーカーは「彼(リドラー)はパズルが好きなんだね。馬鹿みたい」とつぶやきながらも、「彼は人生をかけてこれを計画してきたんだ」と分析する。
そしてジョーカーは「彼が誰だか知ってる」と切り出すと、「彼は何者でもない。何者かになりたいだけ。市長、警察本部長……彼には野望があるんだね」と話し出す。後のシーンでリドラーと面会したバットマンが「お前は何者でもない」と言い放っていたが、その言葉はジョーカーの発言から影響を受けていたようだ。
バットマンが「奴には政治的な動機があるのか」と尋ねると、ジョーカーは「いやいや、これはとても個人的なことだよ。彼はこの人たちが待っていると感じている。おそらくずっと前からだ。癒えない傷に、盗まれた金」と話す。かなり事件の核心に迫っている。
バットマンが「奴はなぜ私に手紙をよこす?」と聞くと、ジョーカーは「多分、君のファンなんじゃないか。恨みを持っているのかもしれないけど」と、これまたバットマンに憧れながらブルース・ウェインを恨むリドラーの心情を言い当てている。
ここからバットマンとジョーカーの小競り合いが始まる。ジョーカーは「君がメインディッシュなのかもしれないよ。見解は?」と尋ねる。「まだない」と答えるバットマンに、ジョーカーは「本当に? 基本的に頭悪いんだね。でも今回はちょっと違う。今回の件は君をとても怒らせている」と挑発する。「話を奴に戻せ」「奴が何を考えているのか聞きに来た」と言うバットマンだったが、ジョーカーは「君の方が愉快だ」「君は彼が何を考えているのかハッキリ分かっている。ファイルを読んだろ?」と資料を突き返す。
そして、決定的なセリフを吐く。
君たち二人には共通点がたくさんある。マスクをつけて、復讐をして……なんなら彼の方が高潔だ。彼のせいで君がヤワに見えるって心配しているんだね。
これはほとんど『ザ・バットマン』のストーリーの“答え”にあたる部分だが、「時間の無駄だ」と立ち去ろうとするバットマンに、ジョーカーは追い討ちをかける。
君は彼の動機や、彼が君を愛しているか、憎んでいるかなんてどうでもいいんだろ。深いところでは、恐れているんだ。なぜなら、君には彼が間違っているという確信がない。君は奴らがこうなって当然だと思ってるんだ。奴らがこうなって当然だと思ってるんだ!
そしてジョーカー特有の笑い声を残し、この映像は幕を閉じる。実に5分超の“ジョーカーシーン”が撮影されていたのである。
確かにこのシーンが入ってしまうと、リドラーの動機についてほとんど答えが提示されているので、観客にとってはネタバラシの際の驚きが薄れてしまうところだった。削除も致し方なしというところだが、公式から映像が公開されたのは嬉しいサプライズだ。
内容的には、犯罪者心理は犯罪者に聞くのが一番と考えたバットマンがジョーカーの意見を聞きにいくというシーンになっている。恐ろしいのは、ジョーカーがわずかな情報からリドラーの動機や問題の本質を見抜いていたという点だ。
しかし、バットマンは自分自身に問いが向けられる段階になって背を向けてしまう。後にジョーカーが正しかったことが証明されるわけだが、前述の通りバットマンがリドラーに向かって「お前は何者でもない」とジョーカーの言葉を引用することになるのは滑稽ですらある。
一方で、ジョーカーがバットマンのことを深く理解しているということも窺える。マット・リーヴス監督は『ザ・バットマン』を、バットマンを愛していたリドラーの「ラブストーリー」と話した。ジョーカーにとって、獄中で出会ったリドラーは“フラれ仲間”だったのかもしれない。ジョーカーはなおもバットマンに執着しているように見えるが、続編以降ではどのような動きを見せるのだろうか。
『ザ・バットマン』でジョーカーを演じているのは映画『エターナルズ』でドルイグ役を演じたバリー・コーガン。これまでにないビジュアルでジョーカーを怪演している。今回ハッキリ示された新たなジョーカー像。今後の活躍に期待しよう。
映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』は2022年3月11日(金)より日本全国で劇場公開。
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