『ザ・バットマン』ストーリーの意外な意図
映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が2022年3月11日(金) より日本の劇場で公開されている。「クローバーフィールド」「猿の惑星」といったSF映画シリーズでお馴染みのマット・リーヴス監督による最新作だ。
『ザ・バットマン』は、バットマンになってから2年という若い時期のブルース・ウェインを描く一方で、クリストファー・ノーラン監督による《ダークナイト》トリロジーよりも更にダークな作風に。ロバート・パティンソンが演じる新たなバットマン像が高い人気を呼んでいる。
三部作の第一弾として公開された『ザ・バットマン』。マット・リーヴス監督は、今回のストーリーに込めたある意図について米ニューヨーク・タイムズで語っている。
以下の内容は、映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の結末部分に関するネタバレを含みます。
『ザ・バットマン』はラブストーリー?
マット・リーヴス監督は、ある人の視点では『ザ・バットマン』は「ラブストーリー」であると語っている。元々SF・ファンタジー要素の強かった「バットマン」作品をマット・リーヴス監督は『ザ・バットマン』でサスペンス、いやサイコスリラーへと昇華させたように思われるが、どこがラブストーリーだったのだろうか。
マット・リーヴス監督は、『ザ・バットマン』の終盤でバットマンがリドラーと面会するためにアーカム・アサイラムを訪れたシーンについて解説している。
バットマンが匿名性を奪われて窮地に追い込まれたときに、そこから抜け出そうとする姿は見たことがありますよね。もう終わった、という感じのね。そこで遊んでみたかったんです。おぉ、リドラーはバットマンの正体を知っているんだ……いいえ、知りません、という具合に。リドラーはバットマンが誰なのかは知りません。これはラブストーリーなんです。そういうシーンなんです。リドラーはバットマンを愛してるんです。
あのシーンでは、それを表現したかったんです。これは別れ話なんだと。愛を期待してそこへ行く。彼があなたを奮い立たせた。けれど、そうでないことが分かった時、あなたは打ちのめされる。そして彼が思ったほど賢くないと気づいた時、ようやく力を取り戻せるんです。
このシーンでは、バットマンはその正体がブルース・ウェインであることをリドラーに見破られたかに思われた。観ている側もハラハラする展開だった。だが、実際にはリドラーはバットマンの正体を知らず、ただウェイン家の御曹司を批判し、復讐のヴィジランテであるバットマンへの共感を表明しただけだった。
このシーンはリドラーによるバットマンへの“告白”だったのだが、リドラーを待ち受けていたのは「お前は何者でもない」と言うバットマンからの拒絶だった。それでもリドラーがバットマン抜きでのフォロワーとの作戦実行に切り替えることができたのは、バットマンが「思ってたより賢くない」と判断したからだったという。
リドラーが送り続けたラブレターは、バットマンにとっては脅迫に他ならず、その思いが届くことはなかった。登場人物の視点の違いを見事に活用したストーリーラインだったが、新たな“友人”を見つけ、ラブストーリーの次へと進んでいくリドラーは、今後、どのような動きを見せるのだろうか。
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映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』は2022年3月11日(金)より日本全国で劇場公開。
Source
The New York Times
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