『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』背景が明らかに
MCUフェーズ4の映画最終作として2022年11月11日(金) に劇場公開された『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、2023年2月1日(水) よりディズニープラスで配信を開始する。すでに劇場で鑑賞したという方も多いと思われるが、ここにきて物語の背景についての証言が集まっている。
その中でも、今回は前作『ブラックパンサー』(2018) のメインヴィランとして登場したキルモンガーことウンジャダカについてのストーリーに注目したい。以下の内容は『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の重大なネタバレを含むため、未見の方は必ずディズニープラスで本作を視聴した後に読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ブラックパンサー』および『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の内容に関するネタバレを含みます。
シュリの前に現れたキルモンガー
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』におけるハイライトの一つといえば、シュリがハート型のハーブを摂取して祖先の平原に行った場面だろう。シュリはそこでキルモンガーと出会い、「兄のように気高く生きるか、俺のように仕事を果たすか」と選択を迫られるのだった。
この展開については、ファンの間で様々な憶測を呼んだ。キルモンガーことウンジャダカの父ウンジョブは、シュリとティ・チャラの父であるティ・チャカの弟で、キルモンガーはシュリの従兄にあたる。血は繋がっていると思われるため、歳上で先に死んだキルモンガーが“先祖”として登場したという説もある。
一方で、兄ティ・チャラや父ティ・チャカ、母ラモンダが出てこなかったことから、血の繋がりはそれほど重要ではなく、祖先の平原に行く人が共感を抱いている人物が登場するという説も有力だ。実際にシュリはキルモンガーと同じく、復讐のために世界を燃やしたいという気持ちを抱いていた。
スーツに秘密が
米Marve Entertainmentl公式YouTubeは、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のブラックパンサースーツについてのメイキングを公開。その中でビジュアル・デべロップメントのヘッドであるライアン・メイナーディングが、シュリとキルモンガーのつながりについて語っている。
シュリの新しいスーツは50〜60の候補から選ばれたといい、ティ・チャラのものと比べて「より獰猛なタイプのブラックパンサー」になっていると説明する。その上で、スーツが持つメッセージについてこう話す。
マーベル・スタジオとマーベル・コミックの面白さは、キャラクターが背負っているものがあって、それをキャラクターから別のキャラクターへと受け継いでいくことです。そのシンボルは新しいキャラクターが引き継ぐと別のものになり、変化します。最初に作ったスーツが次の作品やその次の作品にどう反映されるかが、ストーリーテリングを進めるにあたって役に立つんです。
『シビル・ウォー(/キャプテン・アメリカ)』でブラックパンサーのスーツを作った時、あれは“ティ・チャラのスーツ”でした。映画『ブラックパンサー』では、ティ・チャラがシュリに自分で作ったものだと説明して、シュリは新しいスーツを作りましたよね? キルモンガーはその(シュリが作った)ゴールドのスーツを手に入れて、自分のものにしてしまいました。
『ブラックパンサー』では、シュリが新しいスーツをティ・チャラに見せるときに、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) でティ・チャラが着ていた旧型のスーツを「サンプルA」と紹介した。ティ・チャラは「私のデザインだ」と言うが、シュリは「古すぎ。機能してるだけ」と批判して自分が作ったシルバーとゴールド二種類の首飾りに収納されたスーツを紹介する。
ゴールドのスーツを見たティ・チャラに、シュリはニヤリとしながら「それがいい?」と聞くが、ティ・チャラは「惹かれるが目立ちたくない」とシルバーを選ぶ。シュリはゴールドの方が好きだったようだが、結果、残ったゴールドのスーツはキルモンガーによって使用されることになる。
この展開を踏まえ、ライアン・メイナーディングはこう続ける。
シュリのスーツはティ・チャラのスーツとキルモンガーのスーツが合体したようなものなんです。シルバーとゴールドのミックス。それが、最後にネイモアと戦うために彼女が必要としていたパンサーだったのです。最終版のデザインにはそれぞれのスーツから細かな要素が取り入れられていますが、基本的にはシルバーとゴールドの二つでデザインされたシンプルなものです。失った兄をレペゼンするのと同時に、キルモンガーから学ばなければならなかったことを渋々表現しています。
シュリが『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で新たに自分用に作ったスーツは、ティ・チャラとキルモンガーの要素を自覚的に取り入れたものだったということだ。シュリは、ネイモア戦で追い詰められた時に「兄のように気高く生きるか、俺のように仕事を果たすか」というキルモンガーの言葉を思い出し覚醒する。ネイモアを倒すためにはキルモンガーの固い意志が必要だったのだ。
その後、シュリは母ラモンダの言葉を思い出し、ネイモアにトドメは刺さず、ティ・チャラのように気高い道を選ぶことになる。ティ・チャラとキルモンガーの両方の要素を取り入れて、シュリは新たなブラックパンサーになったのだった。
ネイモアとの共通点も
実は、『ブラックパンサ/ワカンダ・フォーエバー』でキルモンガーと通じているのはシュリだけではない。米マーベル公式が配信する『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の公式Podcastでは、プロダクションデザイナーのハンナ・ビーチラーがキルモンガーとネイモアの共通点について語っている。
ライアン(クーグラー監督)はヴィランに多くの名前を与えるのが得意なんです。特に先住民については、人々が彼女ら・彼らを一つの場所に押し込めて、一つの名前を持つことを許さないと感じているからだと思います。だからキルモンガーはたくさんの名前を持っています。ネイモアも多くの名前を持っていますね。彼の人民にとっては、彼はククルカンですが。
確かに、キルモンガーのワカンダ名(本名)はウンジャダカであり、アメリカで与えられた名前はエリック・スティーヴンスだった。その後、傭兵として恐れられて“死の商人”を意味するキルモンガーという異名を与えられている。
一方のネイモアは『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で語られたようにいくつもの異名を持っている。“ネイモア”はその存在を恐れたスペイン人が呼んだ「El niño sin amor(エル・ニーニョ・シン・アモレ/愛のない子ども)」が元になっており、タロカンの民からは蛇の神の名前である“ククルカン”と呼ばれている。
呼び名が変わるのは、植民地主義によって歴史を歪められた人々にとって目新しいことではない。アメリカ大陸の先住民たちは「インディアン」と呼ばれ、「ネイティブ・アメリカン」と呼ばれ、後から英語でつけられた名前で呼ばれている。アフリカから連れてこられたアメリカ黒人たちもNワードで呼ばれ、アフロ・アメリカンと呼ばれ、アフリカン・アメリカンと呼ばれるなど、変遷を辿っている。
ワカンダからアメリカに渡ったキルモンガーと、中米から海底へと潜ったネイモアは同じく複数の視線からつけられた複数の名前を持っているという点で共通していた。第1作目で散りながらも、第2作目の主人公とメインヴィランにも影響を与えるキルモンガーというキャラクターの存在の大きさには驚かされる。アニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) では違う時間軸のキルモンガーの姿が描かれたが、今後のMCUでも再会できることを願いたい。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』はブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールドが予約受付中。
Source
Marve Entertainmentl YouTube / Wakanda Forever: The Official Black Panther Podcast
『ブラックパンサー』からはオコエのスピンオフ作品の計画が進められている。詳細はこちらから。
『ブラックパンサー3』についての情報はこちらの記事で。
新たにワカンダの王になった人物についてはこちらの記事で。
ネイモアの過去とタロカンの歴史についての解説はこちらから。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ラストとポストクレジットの解説はこちらから。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』と『アベンジャーズ5』の脚本家が語る征服者カーンとサノスの描き方の違いはこちらの記事で。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』本予告の解説&考察はこちらから。