『ブラックパンサー3』はどうなる?
2018年に公開された映画『ブラックパンサー』に続き、主演のチャドウィック・ボーズマンの死という悲劇を経て2022年11月に公開された映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』。ティ・チャラの死と真摯に向き合いながら、新たなブラックパンサーの誕生を描き、ブラックパンサーの物語を未来へと繋いだ。
両作の指揮をとったのはライアン・クーグラー監督だ。『フルートベール駅で』(2013) で高い評価を受けると、「ロッキー」シリーズのスピンオフである「クリード」シリーズを大成功に導いた。映画『ブラックパンサー』ではマーベル映画では初めてアカデミー作品賞へのノミネートを果たしている。
気になるのは、『ブラックパンサー3』が製作されるのかどうか、そして、ライアン・クーグラー監督が『ブラックパンサー3』の監督を務めるのかどうかだ。
シュリ役を再演したレティーシャ・ライトは、2023年1月に開催されたゴールデングローブ賞授賞式で、米Varietyに『ブラックパンサー3』の進行状況について明かしている。
既に作業に入っていると思います。この2年間は、続編を公開して皆で連帯して互いを支え合っていました。少し休憩が必要です。ライアン(・クーグラー)はラボに戻るまでね。時間は必要です。しかし、皆さんに観てもらえるなら、ワクワクしますね。
レティーシャ・ライトは、『ブラックパンサー3』が時間は必要だがほぼ確実に実現することを示唆している。
ライアン・クーグラー監督が語る
MCUでは、3作続けて同一の監督が指揮をとった例は「スパイダーマン」シリーズのジョン・ワッツ監督と「アントマン」シリーズのペイトン・リード監督、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガン監督のみ。
『ブラックパンサー3』でライアン・クーグラー監督が続投すれば、黒人監督では初めて3作連続指揮をとることになる。それに、メインキャラクターが変更となった作品で続投するのはMCUでは異例のことでもある。
気になる『ブラックパンサー3』での続投について、ライアン・クーグラー監督は、2022年12月に米ニューヨーク・タイムズで語っている。
私が必要とされている限り、続けるつもりです。しかし、すでに私と(共同脚本の)ジョー(ロバート・コール)よりも巨大な存在になっています。1作目と2作目で20億ドルもの興行収入をあげたのですから、会社にとってはそれが最も重要な点でしょう。ですから、私は続いていくことを願っています。私たちがいなくなってもワカンダの映画が長く作り続けられることを願っています。
ライアン・クーグラー監督は「必要とされている限り」として、『ブラックパンサー3』でも指揮をとることに意欲を示している。一方で「ブラックパンサー」フランチャイズは既に自身の手を離れて巨大なコンテンツとなったことを自覚しているようで、マーベル・スタジオの事情を慮ってもいる。
また、自分たちがいなくなってもシリーズが長く続くことを願うというコメントは、チャドウィック・ボーズマンの死を受けてもシリーズを継続し、続編を完成させたライアン・クーグラー監督だからこそ重みのある言葉だ。
以下の内容は、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の内容と結末に関するネタバレを含みます。
トゥーサンとヴァルに注目
このインタビューの中では、チャドウィック・ボーズマンが逝去する前に書かれていた『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』の脚本についても語られている。それを紐解けば第3作目の内容も見えてきそうだ。
当初の脚本では、ティ・チャラは息子の人生から(サノスの指パッチンによって)5年間留守になった父親という設定でした。最初のシーンはアニメーションで描かれる予定で、ナキアが(ティ・チャラの息子の)トゥーサンに話しかけるんです。「あなたの父親について知っていることを教えて」ってね。
そこで彼は自分の父がブラックパンサーであることを知らないということが明らかになります。ティ・チャラには一度も会ったことがなく、ナキアはハイチの男性と再婚しています。そして実写に戻り、ティ・チャラが指パッチンから帰ってきた夜に、ティ・チャラは初めて自分の子どもに会うんです。
『ブラックパンサー』の続編は当初、ティ・チャラが失われた5年を経て自身の息子と向き合う物語になっていたという。これは、『ブラックパンサー』で描かれた“父と子の物語”の反復である一方で、今度のティ・チャラは息子ではなく父として困難に直面することになっていたようだ。
『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』を見て明らかなように、同作からは父と子の物語は排され、母と子の物語が中央に据えられた。唐突にも思えたポストクレジットシーンでのトゥーサンの登場は、当初の脚本の名残だったことが分かる。「ブラックパンサー」の第3弾が作られることになれば、改めて父を知らないトゥーサンの物語が中心になることは想像に難くない。
ライアン・クーグラー監督によると、ティ・チャラと8歳のトゥーサンは夏休みに一緒に時間を過ごすが、そこで事件が起こり一緒に世界を救うことになる、というストーリーが用意されていたという。また、ネイモアはメインヴィランではなく、CIA長官のヴァルの方が活躍する予定だったそうだ。『ワカンダ・フォーエバー』は、「基本的にはワカンダと米国、そしてタロカンの三つ巴の対立になるはずでした。子どもの視点が中心になるのですが」と語っている。
加えて、ヴァルについては、「『ブラック・ウィドウ』や『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に登場する前から本作に入っていました。彼女を登場させるように言われたと邪推する人もいますが、彼女は最初からいたんです」としている。米国が世界の扇動者であるという背景を作品に盛り込むために、MCUの流れとは関係なく、ヴァルは新たなCIA長官として最初から登場させるつもりだったのだという。
結局、ヴァルが登場するスペースはティ・チャラの死について扱う時間を確保するために大幅に縮小されたそうだ。『ブラックパンサー3』では、シュリの活躍はもちろんだが、今回描くことができなかったヴァルの活躍とワカンダ、米国、タロカンによる三つ巴、そして父を知らないトゥーサンから見た世界が描かれることに期待しよう。
一方で、『ワカンダ・フォーエバー』の物語は『サンダーボルツ(原題)』へ繋がっていく可能性もある。ヴァルと三国の三つ巴を中心に考えるネタバレ考察はこちらから。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は全国の劇場で公開中。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のサントラは発売中。
アナログレコード版は2023年2月3日(金)発売予定で予約受付中。
シュリがブラックパンサーになる原作コミック『ブラックパンサー:黒豹を継ぐ者』は中沢俊介による翻訳が発売中。
Source
ニューヨーク・タイムズ / Variety
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