征服者カーンとサノスの違いは? “強さ”より描きたいことを『アントマン&ワスプ:クアントマニア』脚本家が語る | VG+ (バゴプラ)

征服者カーンとサノスの違いは? “強さ”より描きたいことを『アントマン&ワスプ:クアントマニア』脚本家が語る

© 2023 Marvel

カーンとサノスの違いは?

2008年公開の映画『アイアンマン』で幕を開けたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)も、2023年2月17日(金) 公開の映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で遂にフェーズ5に突入する。『アイアンマン』から『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) までのサノスをラスボスとした「インフィニティ・サーガ」が幕をおろし、フェーズ4からは征服者カーンをメインヴィランに据えた「マルチバース・サーガ」が幕を開ける。

MCUフェーズ5の第1弾となる映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で大々的にスクリーンデビューを果たすのがジョナサン・メジャース演じる征服者カーンだ。ドラマ『ロキ』(2021-) で登場した“在り続ける者”の変異体であり、同作では貪欲に他のユニバースを侵略しようとする存在であることが示唆されていた。一方で『クアントマニア』の本予告ではジャネットがカーンは時間軸を丸ごと破壊しようとしているとも語っており、底知れぬ恐ろしさを持っている。

サノスは一つの宇宙の半分の人口を消そうとしたが、カーンは別の時間軸を宇宙ごと破壊しようとしており、ヴィランとしては格の違いを見せている。サノスも確かにスーパーヒーローたちと観客にかつてない絶望を与えたが、そのサノスとカーンの違いはどこにあるのだろうか。

2025年5月2日に公開を予定している映画『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ(原題)』は「アベンジャーズ5」にあたり、この作品でアベンジャーズとカーンの衝突が描かれると予想できる。実は、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』と『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』は共にコミック作家としても活動するジェフ・ラブネスが手がける。そして、そのジェフ・ラブネスがカーンとサノスの違いについて言及している。

「人間的な一面や弱さも」

GamesRadarの取材に応えたジェフ・ラブネスは、「私にとっては、人間らしさが全てです」と語り、こう続けている。

サノスは確かに偉大で象徴的なヴィランですが、同時にデカい紫色のCGIでもあります。彼は宇宙から来たエイリアンです。私が本当に注力したかったのはカーンが人間であるという点でした。

カーンは非常に孤独なキャラクターでもあります。今後、様々な形で彼の姿を見ることになると思いますが、彼が「アベンジャーズ」レベルの大事件に到達する前に、人間的な一面や弱ささえも紹介しておきたかったのです。

思えばサノスはマルサスの「人口論」をベースに、宇宙全体を飢餓から救うという崇高な目的のために全宇宙の人口の半分を消すという所業をやってのけた。その強い信念を前に、仲間割れしていたアベンジャーズは人間的な弱さを晒してサノスに敗れてしまった。ソーがサノスに“一言いってやる”ために頭を狙わず、指パッチンを許したシーンが象徴的である。

サノスが人間的な一面を見せたのは自分の目的が成就した後。目的のために犠牲にした娘のガモーラへの思いを露わにしたが、カーンの場合は「アベンジャーズ」レベルの展開になる前に「人間的な一面や弱さ」を紹介するとジェフ・ラブネスは語っている。

人間的なヴィラン

サノスとの違いはその“強さ”ではなく、“弱さ”だというのは意外にも思えるが、人間味や弱さを持ったヴィランというのは、フェーズ4の特徴でもある。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) のジョン・ウォーカーカーリ・モーゲンソウ、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) のウェンウー、ドラマ『ホークアイ』(2021) のマヤエレーナ、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) のグリーン・ゴブリンら、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) のワンダ、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022) のネイモアなどがその例だ。それぞれに事情を抱えており、決して己のエゴのためだけにスーパーヒーローたちと対峙したわけではない。

ドラマ『ロキ』では、かつて“在り続ける者”の変異体(別ユニバースの自分)だった地球の科学者がマルチバースを発見し、変異体同士で交流を深めたが他の宇宙を征服しようとする変異体が現れたことが語られた。在り続ける者はTVAを通して時間軸を一つに束ね、マルチバース化を防いでおり、やり方はどうであれより”マシ”な道を模索していた。

それに征服者カーン誕生のきっかけが一人の科学者が始めた交流だったという点にも親近感が湧く。元は地球に生きていた人間の科学者——それが複数の宇宙を脅かす存在になった背景にはどんな物語があるのか。そして、量子世界で軍隊を築いた『クアントマニア』のカーンは、何を目的にアントマンに近づくのだろうか。

まずはフェーズ5の幕開けとなる『アントマン&ワスプ:クアントマニア』をしっかり見届けよう。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は、2023年2月17日(金)日米同時公開。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』公式サイト

¥1,980 (2024/04/24 03:45:31時点 Amazon調べ-詳細)
¥744 (2024/04/24 02:09:38時点 Amazon調べ-詳細)

Source
GamesRadar

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』本予告の解説&考察はこちらから。

「クアントマニア」の意味の考察はこちらの記事で。

プロデューサーは『クアントマニア』を『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』級の重要作になると語っている。詳しくはこちらの記事で。

『クアントマニア』の上映時間は2時間5分と発表された。フェーズ4の平均を下回る上映時間になる。詳しくはこちらから。

『アントマン4』についてプロデューサーが語った内容はこちらから。

『クアントマニア』で描かれた量子世界の原点について、ペイトン・リード監督が語った内容はこちらから。

 

映画『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』は2023年2月1日よりディズニープラスで配信される。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ラストとポストクレジットシーンのネタバレ解説はこちらから。

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』の解説はこちらから。

ジェームズ・ガン監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でロケットのオリジンを描くと話している。詳しくはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
お問い合わせ

関連記事

  1. 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』モスラの全米デビューに込められた監督の熱い想い

  2. 解説&考察『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編 マルチバース化へ、これまでの経緯を振り返る

  3. 続編はある? 『ゴジラxコング 新たなる帝国』監督「2本の映画を撮ったのなら、3本目を撮ったほうが良い」

  4. ネタバレ!『ドクター・ストレンジ MoM』登場の〇〇 再演の可能性と撮影の裏側を語る「少し迷った」