『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で描かれた量子世界 その原点をペイトン・リード監督が語る | VG+ (バゴプラ)

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で描かれた量子世界 その原点をペイトン・リード監督が語る

© 2023 Marvel

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』公開

MCU映画第31弾、フェーズ5のキックオフ作品となる映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が2023年2月17日(金) に劇場公開を開始した。シリーズの主人公スコット・ラングとホープ・ヴァン・ダインが一家丸ごと量子世界へと迷い込むストーリーで、フェーズ6までの大ヴィラン(悪役)となる征服者カーンとの対面が描かれる。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で注目が集まっているのは、その量子世界の中身である。『アントマン』(2015)、『アントマン&ワスプ』(2018) でも紹介された量子世界は、今回の作品では大きく姿を変えて登場している。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の内容に関する若干のネタバレを含みます。

『クアントマニア』で描かれた量子世界

スコットたちが訪れた量子世界には、異形の人々が住んでおり、独自の文化圏を形成している。ハンク・ピムは『アントマン&ワスプ』でジャネットを迎えに行くために量子世界に足を踏み入れているが、今回は量子世界に入るやいなや「前と違う」と言い、量子世界に新しい世界が築かれていることを示唆した。

前作から『クアントマニア』までの間には約7年の時間が経過している(『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) での人口復活までの5年と、人口復帰から約2年)。しかし、量子世界は時間の流れが異なるため、より時間が進んでいるのだろう。『アントマン』の時とも、『アントマン&ワスプ』の時とも違う未知の世界が広がっているのだ。

量子世界に現れた征服者カーンがもたらした影響も大きいだろう。マルチバースで起きている別の歴史を描いたアニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) シーズン1第5話では、量子世界にゾンビウイルスが発生し、それに感染したジャネットが実物大の世界に戻ってきて感染が拡大するという物語が描かれた。わずかな変化でも世界に大きな影響を及ぼしうる可能性が量子世界には広がっているのだ。

参考にしたのは往年のSF作品

まるで「スター・ウォーズ」の銀河のような世界として描かれた『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の量子世界。MCUフェーズ5のキックオフに相応しい圧倒的なSF世界を構築したペイトン・リード監督は、どのようにして量子世界を設計していったのだろうか。

The National Newsのインタビューに答えたペイトン・リード監督は、『クアントマニア』の量子世界を築くために得たヒントを明かしている。

電子顕微鏡から、70〜80年代のヘビメタ雑誌のようなものまで、あらゆるものを参考にして、その要素を取り入れたいと思いました。本当に多くのものを参照しましたよ。『フラッシュ・ゴードン』や『バーバレラ』といったあらゆる奇抜なもの、60年代、70年代、80年代の古いSF書籍の表紙も参考にしました。そして、アーティストチームを集めて、「私たちは量子世界を創り上げるんだ」と言ったんです。

ペイトン・リード監督が量子世界を創り上げるために参考にしたのは、『フラッシュ・ゴードン』や『バーバレラ』といった過去のSF作品だったという。『フラッシュ・ゴードン』は、元は新聞に連載されていたスペースオペラのコミックで、1980年に実写映画化され、クイーンが主題歌として「フラッシュのテーマ」を提供した。同作はカルト的な人気を誇るSF映画で、2023年3月31日(金) からは、日本で『フラッシュ・ゴードン 4K』が上映される。

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『バーバレラ』は元は1962年に発表されたフランスのSFコミック(バンド・デシネ)で、1968年に実写映画化されている。こちらもジャンルとしてはスペースオペラであり、ペイトン・リード監督が量子世界で自分の宇宙を作ろうとしていたことが分かる。

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独自の世界観に

ペイトン・リード監督はこう続けている。

独自の歴史と倫理観を持つ鮮明な世界が作りたかったんです。そこではどうやって移動するのか、物理法則はどうなっているのか、そうしたことを全て理解する必要があったので、非常識なビジュアルアーティストたちを集めて、「一番ファンタスティックなアイデアを持ち寄って、それがどんな風になるのか見てみよう」と言ったんです。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』に登場する量子世界は、独自の言語を用いて、独自の文化を築いている。そこでは挨拶がわりに腕を切り落とし、飲めば言葉が理解できる飲み物がバーで提供される。「ファンタスティックなアイデア」を持ち寄った結果、これまでのどのMCU作品にもなかったユニークな世界を出現させることに成功している。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』に続くフェーズ5の映画第2弾として、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は2023年5月3日(水・祝) から日本で公開される。同作でも、その予告編からはカラフルでユニークな世界が舞台になっていることが窺える。SFの想像力でどんどん新たな世界を構築していくMCUの今後にも期待しよう。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は2023年2月17日(金) より劇場公開。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』公式サイト

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Source
The National News

【!ネタバレ注意!】『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ラストからミッドクレジット、ポストクレジットシーンの解説&考察はこちらから。

【!ネタバレ注意!】キャシーはどのような立ち位置として描かれたのか、制作陣とキャストが語った内容はこちらから。

【!ネタバレ注意!】征服者カーンの強さと能力の解説&考察はこちらから。

【!ネタバレ注意!】征服者カーンがラストでどうなったのか、今後の展開の考察はこちらの記事で。

【!ネタバレ注意!】征服者カーンとハンクに共通する『クアントマニア』のテーマの解説はこちらから。

【!ネタバレ注意!】『クアントマニア』で描かれたサノスの影響についての解説はこちらから。

 

キャシーのこれまでと原作コミックでの展開はこちらの記事で。

マーベル公式とペイトン・リード監督は「アントマン」シリーズを「三部作」と表明した。詳しくはこちらの記事で。

一方で、「アントマン」シリーズには早くも『アントマン4』に関する話題も出ている。詳しくはこちらの記事で。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』脚本家が語った征服者カーンとサノスの違いについてはこちらの記事で。

 

2023年5月4日(水・祝) 公開の映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』新予告の解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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