「スター・ウォーズ」ファンダムが抱える問題
「スター・ウォーズ」シリーズの《スカイウォーカー・サーガ》の第8作目、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017) で知られるライアン・ジョンソン監督が、“有害なファンダム”について語った。「スター・ウォーズ」のファンダムを巡っては、作品の出演者らに対する人種差別・性差別がかねてから問題になっている。
『最後のジェダイ』でメインキャラクターとして活躍したローズを演じたケリー・マリー・トランは、公開当時、有害なファンからの苛烈な差別を受けて全てのSNSを閉鎖。ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(2022) では、出演者の一人で黒人女性のモーゼス・イングラムに対する差別DMが問題になり、「スター・ウォーズ」公式が「レイシストになることを選ばないでください」と異例のコメントを発表した。
一方で、《続三部作》でフィン役を演じ、同じく有害なファンダムからの人種差別を受けたジョン・ボイエガは、俳優を守る態度を見せるようになったスタジオの“変化”を後のインタビューで指摘している。『最後のジェダイ』の時代から『オビ=ワン・ケノービ』までに、有害なファンへの対応にどんな変化があったのだろうか。
『最後のジェダイ』ライアン・ジョンソン監督が語る
ライアン・ジョンソン監督は、米WIREDで過去の対応の違いについて語っている。
有害なファンに餌を与えるな、というのが常識だった時期もありました。無視しろと。しかし、それは間違っています。感染症と戦う身体のように、シャットダウンしなければなりません。「こんなのファンじゃない」という声がたくさん届いているのを見ると勇気づけられますよね。そうして追いやるんです。
(『最後のジェダイ』の時は)本当に憂鬱でしたよ。しかし、希望の光があるとすれば、ファン層は聡明になっていき、「いや、こんな人たちは叩き出さなきゃいけない」と気づいているということです。
「スター・ウォーズ」のファンダムにおいて、そうした差別を行うのは1%に過ぎないということを前提に、ライアン・ジョンソン監督はこう続けている。
しかし、その1%の人たちが「作品を批判したらレイシスト認定される」というペテンを展開するんです。誠意のある主張とは言えません。これは非常に明確なことですが、あなたがその作品を好きか嫌いかの話ではなく、あなたがネット上で有害で攻撃的であるか、そして嫌悪すべきセクシストでレイシストであるかどうかの話をしているのです。
ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の配信時にモーゼス・イングラムが被害を公表した際には、主演のオビ=ワン・ケノービ役ユアン・マクレガーが動画を投稿し、「吐き気がする」「あなた方は「スター・ウォーズ」ファンではない」と強い言葉で差別を批判した。かつて差別問題でスタジオを非難したジョン・ボイエガもこの一件に対し、ユアン・マクレガーの声明で「流れが変わった」と発言している。
ライアン・ジョンソン監督は、有害なファンは無視するというのが常識だった時代があったとした上で、本来はそうすべきではないと明言した。差別を見て見ぬふりをするのではなく、公式や強い立場にある人物が差別に反対する姿勢を明確にすることが、これからの常識になっていくだろう。
なお、今回は一部の有害なファンについて語ったライアン・ジョンソン監督だが、米Insiderでは、「スター・ウォーズ」ファンのことを「愛してる」と語っており、“99%”のファンに対しては好意的な感情を抱いているようだ。米WIREDのインタビューでは今後の「スター・ウォーズ」シリーズについてルーカス・フィルムとキャシー・ケネディ社長と話し合いを続けているとも語っている。
生まれ変わり、新しい時代を迎えようとしている「スター・ウォーズ」の今後の展開に期待しよう。
「スター・ウォーズ」からはスカイウォーカー・サーガの4K UHD コンプリートBOXが発売中。
オビ=ワン役のユアン・マクレガーが発表した声明の詳細はこちらの記事で。
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