『アントマン&ワスプ:クアントマニア』征服者カーンに注目
2023年2月17日(金) より日米同時公開となった映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』。MCUフェーズ5の幕開けを飾る作品であり、フェーズ6で予定されている「アベンジャーズ」シリーズの第5作目『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ(原題)』と第6作目『アベンジャーズ/シークレット・ウォー(原題)』へと繋がっていく作品でもある。
『クアントマニア』で注目が集まるのは、ジョナサン・メジャース演じる征服者カーンの登場だ。ドラマ『ロキ』(2021-) では“在り続ける者”という名前でその変異体(別のユニバースの同一存在)が登場したが、映画作品にその姿を現すのは本作が初めてとなる。
今回は、映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』に登場した征服者カーンが結局どうなったのかを解説し、そして今後どうなっていくのかを考察していきたい。以下の内容は本編の結末に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で映画を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の結末に関する重大なネタバレを含みます。
Contents
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』カーンはどうなった?
征服者カーンの最後
映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で登場した征服者カーンは、マルチバースの他のカーンたちから量子世界に追放された存在であることが分かった。ミッドクレジットシーンでは多くのカーンたちが協力しており、征服者カーンがいかに異端の存在だったかということが窺える。
ドラマ『ロキ』シーズン1の最終話では、カーンの変異体である“在り続ける者”が征服者カーンの存在に触れていた。変異体の中から他のユニバースを“征服”しようとする者が現れたと話していたのだ。他の時間軸を消し去っていた征服者カーンを、他のカーンたちは唯一閉じ込められる“時間の外”である量子世界へと追放したのだ。
優れた科学者であるジャネットを利用して量子世界からの脱出を図ろうとした征服者カーンは、マルチバース間を移動できる船のエネルギーコアの開発に成功。しかし、船の神経制御機能を通して征服者カーンの所業を知ったジャネットは、巨大化用のピムディスクを使ってエネルギーコアを巨大化させ、征服者カーンの企みを阻止したのだった。
その後、スコットを利用してエネルギーコアの縮小化に成功した征服者カーンは、自身が量子世界に築いた要塞と軍隊ごと量子世界を脱出することを試みる。自分を追放したカーンたちに復讐し、「勝利する」ために進撃を開始するというのだ。
この目論見はハンクのアリたちとスコット&ホープの決死の戦いによって阻止される。スコットはエネルギーコアに巨大化用と縮小用のピムディスクを打ち込むと、船の装置は暴走を始め、征服者カーンは触れたエネルギーコアに吸い込まれ、最後は爆発を起こして消え去ったのだった。
征服者カーンは生きている?
「サノス以来の大ヴィラン」と目された征服者カーンは、これで死んでしまったのだろうか? 『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のミッドクレジットシーンでは、征服者カーンを追放したカーンの変異体たちが、「追放された奴は死んだ」「確かか?」「そうでなければお前を呼び出さない」という会話を交わす。
「確かか?」と確認しているところを見ると、征服者カーン生存ルートもあり得る気がしてこないだろうか。しかも、似たような描写で死んだかに思われていたイエロージャケットことダレン・クロスが生きていたのだから、あの消滅の仕方では説得力がない。
『クアントマニア』の終盤では、征服者カーンはホログラムで進撃のスピーチをした時に、「カーン王朝(カーン・ダイナスティ)」の設立を宣言しようとしていた。これは通信をハッキングしたキャシーに阻まれるのだが、このセリフは「アベンジャーズ」第5弾のタイトル『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ』に通じるものである。
もちろん他のカーンたちによって“カーン・ダイナスティ”が建設される可能性もあるが、『クアントマニア』から『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ』の公開までは2年以上もあるので、その間に征服者カーンが復活して全てのカーンの頂点に立つ可能性もあるだろう。
『シークレット・ウォーズ』に繋がる?
考えられるもう一つの可能性は、征服者カーンが「アベンジャーズ」第6弾の『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』における“シークレット・ウォーズ”を起こすを起こすきっかけになるというものだ。
原作コミックにおける『シークレット・ウォーズ』は、1984年から1985年に刊行されたバージョンと、2015年に刊行されたバージョンが存在するが、いずれもビヨンダーという存在が“シークレット・ウォーズ”の原因になっている。
ビヨンダーとはマルチバースの外側に存在する“コズミックビーイング(宇宙的存在)”である。コズミックビーイングとはエターナルズを創り出したセレスティアルズや、アニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) のウォッチャーら、宇宙全体の事象に干渉できる神のような存在のこと。その中でもビヨンダーは他のコズミックビーイングを瞬殺できるほどの強さを誇る。
そして、映画『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』が原作コミックに準拠するのであれば、『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』にはビヨンダーに相当するキャラクターが登場してしかるべきだ。そして、今回マルチバースエンジンのエネルギーコアに吸い込まれていった征服者カーンが、MCU版のビヨンダーになるという可能性は既に囁かれはじめている。
征服者カーンがビヨンダーに?
コミックの『シークレット・ウォーズ』にも征服者カーンは登場するが、ビヨンダーとは別キャラクターとして登場する。だが、MCUにおいては一つのキャラクターが名のある別のキャラクターになる展開は既に導入されている。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では、かつてイエロー・ジャケットだったダレン・クロスがモードックになって登場した。この展開は、征服者カーンがビヨンダーになる展開に対するファンの拒否感を軽減する地ならしだったのかもしれない。
また、ヴィランがコズミックビーイングになった例はアニメ『ホワット・イフ…?』で紹介されている。同作の第8話では、アベンジャーズに勝利したウルトロンが6つのインフィニティ・ストーンをすべて手に入れ、他のユニバースへの侵攻を開始する。
マルチバースを行き来する存在になったウルトロンを、ウォッチャーは第9話で「コズミック・ビーイングとなった人工知能」と形容しており、いちヴィランからコズミック・ビーイングになった例は既に示されていたのだ。また、『ホワット・イフ…?』で描かれた“もしもの物語”は、ドラマ『ロキ』で時間軸が解放されたことで実際にマルチバースで起きたこととされており、『クアントマニア』とも地続きの物語だと言える。
エタニティを征服する?
では、仮に征服者カーンが復活し、エネルギーコアの力を得てビヨンダー的な存在になったとして、カーンは次に何をするのだろうか。「勝利する」というのがカーンの答えだろうが、もう少し具体的に考察してみよう。
征服者カーンは、「カーン王朝」を築くと宣言しようとしたスピーチの中で、「永遠を征服する」と宣言している。この「永遠」という言葉は英語で「eternity」となっており、映画『ソー:ラブ&サンダー』で登場した“エタニティ”を想起させるワードチョイスになっている。
エタニティとは、原作コミックで宇宙の最高神にあたるコズミック・ビーイング。MCUでは映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017) で、同じくコズミック・ビーイングとっされるエゴのパワーの影響を受けたピーター・クイルが「エタニティ」と呟いている。
映画『ソー:ラブ&サンダー』では、ゴアが目指す「永遠の門」は英語では「gate of Eternity」となっており、最後に門の向こう側にあったシルエットもコミックのエタニティと同じ形をしていた。『クアントマニア』でも字幕では「永遠」となっていたが、映画『ソー:ラブ&サンダー』と同じで、カーンがエタニティのことを指している可能性は十分にある。
『ソー:ラブ&サンダー』では、エタニティは最初に辿り着いたものの願いを叶えるとされており、ゴアは娘を復活させるという願いを叶えた。復活したゴアの娘はソーの養子になり、エタニティの影響か特殊な力を持っていた。ソーの娘がエタニティの力を引き継いだのだとすれば、“ラブ&サンダー”に「エタニティ」の征服を企む征服者カーンの脅威が迫ることになりそうだ。
バトルフィールドを創り出す?
『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』との絡みでも考察してみよう。2015年版の『シークレット・ウォーズ』では映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) で紹介されたインカージョン(マルチバース間のユニバース同士が衝突すること)が理由で、生き残りをかけたシークレット・ウォーズが起きる。一方、1984年版の『シークレット・ウォーズ』では、ビヨンダーが“バトルワールド”という場所を創造し、そこで勝者の願いを叶えると宣言してスーパーヒーローとヴィランたちを戦わせた。
征服者カーンがビヨンダー的な存在になるとすれば、願いを叶えるエタニティを征服した後、『ソー:ラブ&サンダー』に登場した“永遠の門”の向こう側をバトルワールドに変えて、「勝者の願いを叶える」と言ってヒーローたちを戦わせる展開も考えられる。
ビヨンダーは地球のヒーローたちに興味を持っていたが、『ホワット・イフ…?』のウォッチャーも、『クアントマニア』ミッドクレジットシーンのカーン達も、地球のヒーロー達には一目置いている。“征服”するには、ただ滅ぼすのではなく、褒美をぶら下げて分断し、従わせるのが“征服者”の常套手段だ。ワンダやピーター・パーカー、ソーら、多くを失ったヒーロー達は、そんな展開に耐えられうだろうか……。
ポストクレジットシーンの後には「カーンは帰ってくる」と予告されたが、果たして“征服者カーン”は帰ってくるのか、帰ってくるとすればどのような形になるのか。遂に始動したフェーズ5からは、まだまだ目が離せない。
映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は2023年2月17日(金) より劇場公開。
征服者カーンことナサニエル・リチャーズを主人公に据えたコミック『征服者カーン』は邦訳が発売中。
『ロキ』シーズン1最終話のネタバレ解説はこちらから。
エタニティと思われる存在が登場する『ソー:ラブ&サンダー』ラストの解説はこちらの記事で。
ウルトロンがコズミック・ビーイングになる展開を描いた『ホワット・イフ…?』シーズン1第8話の解説はこちらから。
『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』の情報はこちらから。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ラストからポストクレジットまでのネタバレ解説はこちらの記事で。
『クアントマニア』のネタバレありで征服者カーンの強さや能力を考察&解説した記事はこちらから。
カーンとハンク・ピムの共通点から見る『クアントマニア』のテーマの一つは、こちらの記事で解説している。
カーンの「時は檻」というセリフに込められた意味について、演じたジョナサン・メジャースが語った内容はこちらから。
キャシーの重要性について、キャストと制作陣が語った内容の解説はこちらの記事で。
ホープが取り組むサノスが残した爪痕についての解説はこちらから。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』脚本家が語った征服者カーンとサノスの違いについてはこちらの記事で。
スコットの娘キャシーのこれまでと原作コミックでの展開はこちらの記事で。
「アントマン」は三部作であることが公式に明かされた。詳しくはこちらから。
『クアントマニア』で描かれた量子世界の原点について、ペイトン・リード監督が語った内容はこちらから。