「クアントマニア」って何?
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画の第31弾『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が2023年2月17日(金) より、日米で同時公開される。MCUフェーズ4映画の最終作となった『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』、Disney+で配信されたスペシャル番組『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』に続くMCUフェーズ5の第1作目がスクリーンに登場する。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は、「アントマン」シリーズの第3作目。アントマンことスコット・ラングとワスプことホープ・ヴァン・ダインは、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) での活躍により著名人となり、人類復帰後の世界で日々を過ごしている。そんなある日、スコットの娘のキャシー・ラングのある発明品をきっかけに、一同は再び量子世界へと迷い込むことになる。
気になるのは、タイトルについている「クアントマニア」という言葉の意味だ。聞きなれない言葉だが、これは今回の映画のために作られた造語で、実は副題が造語の一単語というのはMCU作品では初めてのことになる。
今回は「クアントマニア」が一体どのような意味を持つのか、英語の意味とこれまでの作品の内容から考察してみよう。
「クアントマニア」の意味は?
英語に隠された意味に注目
映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の副題である「クアントマニア」は、英語表記は「Quantumania」となっている。これは、「量子」を意味する「Quantum」と「マニア/熱狂者」を意味する「Mania」を組み合わせた造語だ。では、この「マニア」とは誰のことを示しているのだろうか。
英語で綴った時の「Quantumania」という単語には、「ANT-MAN(アントマン)」という単語が隠されている。わかりやすく表記すると「qu-ANT-u-MAN-ia」ということだ。「量子マニア」という言葉の中に「アントマン」という単語が隠されているということは、やはりアントマンがクアントマニアであることを示唆しているのだろうか。
特報映像の最後のシーンでは、征服者カーンは「家に帰してやる。時間も与えよう。手を貸すならば」とスコットに語りかける。そして、意味深にスコットを「アントマン」とヒーロー名で呼んだ直後に「QUANTUMANIA」のロゴタイトルが現れる。
この時、「ANT」と「MAN」の間にある「U」が最初に現れ、さらに「U」には光が灯っている。「U」は「You」の省略表記でもあり、カーンがアントマンに「お前だ」と量子世界での決断を突きつけているような演出でもある。
クアントマニア=アントマン?
振り返れば、アントマンことスコット・ラングの活躍は常に量子世界と共に描かれてきた。シリーズ第1作目の映画『アントマン』(2015) では、初代アントマンのハンク・ピムが妻の初代ワスプことジャネットが分子レベルに縮小して消えてしまったことが明かされた。スコットはイエロージャケットの装置を破壊するのと引き換えに量子世界へ入り込んでしまうが、拡大ディスクを使ってなんとか元の世界へと帰還する。
スコットが量子世界から復帰できることを証明したことで、第2作目の『アントマン&ワスプ』(2018) では、ハンク・ピムは量子世界にいるジャネットを連れ戻すための研究を進める。前作で量子世界に入り込んだスコットにはジャネットの意識が混線し、ジェネっとの居場所を突き止める。ハンクは量子トンネルを使って量子世界へ入り、ジャネットを救出する。
『アントマン&ワスプ』の最後には、物質をすり抜ける量子フェージング状態になっているゴーストことエイヴァの治療法を見つけるために、スコットはもう一度量子世界へと飛び込む。その間にサノスがデシメーション(指パッチンによる人口半減)を起こし、実験を共にしていたハンク、ホープ、ジャネットが消えたことでスコットは量子世界に閉じ込められてしまったのだった。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) では、そのスコットがキーキャラクターに。量子世界に取り残されてから5年が経過した後、偶然ネズミが量子トンネルを起動し、スコットは元の世界に復帰した。量子世界にいたスコットは5年の歳月が過ぎた影響を受けておらず、これがピム粒子と量子世界を利用したタイムトラベル実現のヒントとなった。
このように、結果的に人類復帰の最大の功労者の一人となったスコットの物語には、常に量子世界が隣り合わせになっている。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では、娘のキャシーの発明品による事故とはいえ、スコットはあれだけ復帰に苦労した量子世界に三度突入することになる。つまり、「クアントマニア=量子マニア」とはスコットのことを指しているというのが、一般的なセオリーだろう。
クアントマニア=征服者カーン?
一方で、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のキーキャラクターになるのは征服者カーンだ。ドラマ『ロキ』(2021-) シーズン1では“在り続ける者”が時間軸を支配していたことが明らかになり、『ロキ』脚本家のマイケル・ウォルドロンは在り続ける者=カーンを「タイムトラベルをするマルチバースに跨るヴィラン」と形容した。
『ロキ』のラストでは在り続ける者が守っていた時間軸が解放され、マルチバース化が実現。在り続ける者よりも凶暴なカーンが複数襲来することが予告された。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ではカーンは量子世界で登場する。特報映像では、量子世界には未来的な大都市が築かれており、カーンの軍隊と思われるハイテクノロジーな武装をした集団も映し出されている。
このカーンは、時間の流れが異なる量子世界の仕組みを利用し、膨大な時間を費やして軍隊を用意していたのではないだろうか。今後、MCUに複数のカーンが登場するとすれば、量子世界で長い時間を費やし、その仕組みを最大限利用して自分の世界を築いたこのカーンの個体を「クアントマニア」と呼んでも差し支えないだろう。
クアントマニア=ジャネット?
「クアントマニア」のもう一人の候補はジャネット・ヴァン・ダインである。元の世界の計算で31年間量子世界にいたジャネットは、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の特報で量子世界に信号を送るキャシーの装置に警告を発している。量子世界に潜む危険を理解している人間の態度だ。
一同が量子世界に吸い込まれた後は、ジャネットは量子世界を「私たちの“下”にある隠された宇宙」と説明し、ホープの「何を恐れている?」という問いかけに、ジャネットは「あなた達に話していないことがある」と回答している。量子世界にいた30年以上の間に何かを知った様子のジャネット。量子世界についての知識はもちろんスコットを上回っているはずで、「クアントマニア」とはジャネットのことを指している可能性もある。
なお、「Quantumania」に似た英単語としては、「Quantomania」という言葉があり、こちらは「他の要素を排除して測定可能なものにのみ集中する」という意味がある。この単語と絡めている可能性もあるが、「クアントマニア」の本当の意味は何なのだろうか。
3作品を使って量子世界の秘密に迫ってきた「アントマン」シリーズ。最後のミステリーの答え合わせを楽しみに待とう。
映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は、2023年2月17日(金)日米公開。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』特報の解説&考察はこちらから。
『クアントマニア』の上映時間は2時間5分と発表された。フェーズ4の平均を下回る上映時間になる。詳しくはこちらから。
映画『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』は2023年2月1日よりディズニープラスで配信される。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ラストとポストクレジットシーンのネタバレ解説はこちらから。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』の解説はこちらから。
ジェームズ・ガン監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でロケットのオリジンを描くと話している。詳しくはこちらの記事で。
新たにMCUに加わる『デッドプール3』の時系列についてヒュー・ジャックマンが語った内容はこちらから。