『THE BATMAN-ザ・バットマン-』はなぜDCEUではないのか マルチバースに加わらない理由を製作陣が明かす | VG+ (バゴプラ)

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』はなぜDCEUではないのか マルチバースに加わらない理由を製作陣が明かす

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『THE BATMAN-ザ・バットマン-』はDCEUにあらず

2022年公開映画の最大の目玉の一つである『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は3月11日(金)より日本全国で劇場公開される。クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト」トリロジーの第3作目『ダークナイト ライジング』(2012) 以来、10年ぶりの「バットマン」映画となり、いやがおうでも期待が高まる。

2022年は、世界観を共有するDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)から映画『ブラックアダム(原題)』『ザ・フラッシュ(原題)』『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題)』『バットガール(原題)』の4作品が公開される年でもある。また、2021年公開のDCEU映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のスピンオフドラマ『ピースメイカー』の配信も全米では1月13日よりスタートする。

勢い衰えぬMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で2021年最高の興行収入を叩き出したばかりだが、2022年はDC映画にも期待がかかる。一方で、その先陣を切る『ザ・バットマン』は、DCEU作品には含まれないことが明かされている。2019年に公開された『ジョーカー』と同様、DC映画ではあるが、他のDCEU作品とはつながりを持たない独立した作品として登場することになる。

ベン・アフレックが降板

『ザ・バットマン』では、主人公のバットマンことブルース・ウェイン役もDCEUの『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016) や『ジャスティス・リーグ』(2017) で同役を演じたベン・アフレックではなく、映画『TENET テネット』(2020) のニール役が記憶に新しいロバート・パティンソンが新たに演じる。

元々『ザ・バットマン』はベン・アフレックが監督・主演で製作されると言われていたが、ベン・アフレックが監督を降板。新たに『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008) や『猿の惑星:新世紀』(2014)、『猿の惑星:聖戦記』(2017) で知られるマット・リーヴスが監督を務めることになった。その後、ベン・アフレックはバットマン役も降板し、後に自身のアルコール依存症が降板の理由だったと明かしている。

一方で、ベン・アフレックよりも14歳若いロバート・パティンソンを起用することで、若き日のDCEUバットマンを描く前日譚になるのではという予測も存在していた。それでも、マット・リーヴス監督が指揮する『ザ・バットマン』は、完全にDCEUとは無関係の単独作品として製作されることが決定した。

バットマンという超人気キャラの単独主役作品を制作するのに、なぜDCEUに含まれないのだろうか。その理由を、マット・リーヴス監督と本作のプロデューサーが明かしている。

監督とプロデューサーが理由を語る

ベン・アフレックからバトンタッチする形で『ザ・バットマン』を指揮するマット・リーヴス監督は、英Empire誌の2022年2月号で、『ザ・バットマン』をDCEUの外に置いた経緯について語っている。まず、マット・リーヴス監督は、ベン・アフレックとワーナー・ブラザースに、「個人的な側面に向き合う反復を作れる必要があること」と、それはDCEUの「他の要素と繋がる義務がないこと」を確認したという。

つまり、DCEUという大きな物語に合流する前提を持たず、バットマンことブルース・ウェインの個人的な物語について描くことの合意を得たのである。マット・リーヴス監督と二人でプロデューサーを務めたディラン・クラークは、同監督の意図を以下のように補足している。

ワーナー・ブラザースはマルチバースでこのキャラクター(バットマン)の様々な使い方を模索しています。私たちがそれに関与することはありません。マットはこのキャラクターを感情的な深みに落とし込み、(バットマンを)芯から揺さぶることに関心があるんです。

ディラン・クラークは、『猿の惑星:新世紀』『猿の惑星:聖戦記』でもマット・リーヴス監督とタッグを組んできたプロデューサーで、同監督のこともよく理解しているはずだ。やはりマット・リーヴス監督が描きたかったのは“DCEUの中のバットマン”ではなく、“バットマン”そのものだったのだろう。

確かにバットマンというキャラクターは、スーパーパワーはないにもかかわらず、どんなヒーローよりも強い個性を持ったキャラクターでもある。ヒーロー活動の動機は幼い頃に両親を殺したギャングへの復讐と、ゴッサムの街に平穏をもたらすことであり、国や世界を救おうとするスーパーマンの正義とは一線を画す“小さな正義”を貫くヒーローだ。故にジョーカーというバットマンと表裏をなすキャラクターの魅力が際立つことにもなった。

『ザ・バットマン』ではそうしたバットマンことブルース・ウェインの魅力が改めて描かれるということである。他のスーパーヒーローたちのまとめ役ではない、ヒーロー2年生の若き日のバットマンの苦悩が描かれることになりそうだ。

なお、『ザ・バットマン』はDCEUに含まれないまま、三部作が製作される予定だ。更に前日譚となるスピンオフドラマの製作も予定されている。DCEUに合流せずに大ヒットを記録した映画『ジョーカー』のように、新たな伝説を作ることになるのだろうか。

DCEUのバットマンはどうなる?

一方で気になるのは、DCEUのバットマンがどうなるのかということだ。2022年、DCEU映画では『ブラックアダム』が7月29日全米公開、『ザ・フラッシュ』が11月4日全米公開、『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』が12月16日全米公開、そして『バットガール』が年内にHBO Maxで配信される予定だ。ドラマ『ピースメイカー』を合わせるとDCEUからは通算15作品が出揃うことになり、これはMCUでいうならば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017) くらいまで来た計算になる。

しかし、DCEUではいまだにバットマンの単独主役映画は作られないままである。ベン・アフレックの離脱がその理由だが、ベン・アフレックは2022年にDCEUに戻ってくる。2021年に公開された(DCEUに含まれない)『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』にはバットマンとしての新カットの撮影にも挑んだベン・アフレック。11月4日全米公開の『ザ・フラッシュ』では、『ジャスティス・リーグ』以来、5年ぶりに正式なDCEU作品にバットマン役としてカムバックを果たす。

しかも『ザ・フラッシュ』には、かつてティム・バートン監督版の「バットマン」でバットマン役を演じていたマイケル・キートンも同役で出演する。二人のバットマンが登場するマルチバース設定が導入されることになっており、バットマンという長い歴史を持つキャラクターが“拡張”されることになる。

ここで『ザ・バットマン』プロデューサーのディラン・クラークの言葉を思い出さずにはいられない。「ワーナー・ブラザースはマルチバースでこのキャラクター(バットマン)の様々な使い方を模索しています。私たちがそれに関与することはありません」。ディラン・クラークとマット・リーヴス監督は、こうしたDCEUのマルチバース展開とも距離を置きたかったのだろう。

だが、見方を変えれば、DCEUで拡張するバットマン『ザ・バットマン』のシリアスなバットマンとを、ファンは両方楽しむことができるということでもある。DCEUに『スーサイド・スクワッド』(2016) のジョーカーがいて、その外に映画『ジョーカー』のアーサーがいるように、DCは、DCEU映画とDC映画をうまく使い分けていくことになるのだろう。

なお、DCEUのバットマンであるベン・アフレックは、『ザ・フラッシュ』でバットマンに復帰しながらも、2021年12月には米The Playlistのインタビューで、今はIP映画をやりたくないと話している。IPとは知的財産権のことで、「バットマン」のような著名なキャラクターを扱った作品のことである。

この先、DCEUのバットマンがどうなっていくのかは不透明だが、まずは、10年ぶりのバットマン映画になる『ザ・バットマン』と、2022年に怒涛のラッシュを見せるDCEU映画たちに注目しよう。

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は3月11日(金)より全国でロードショー。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』公式サイト

『ザ・バットマン』とDCEU4作品を含む2022年公開予定のSF映画まとめはこちらの記事で。

『ザ・バットマン』予告映像の解説&考察はこちらから。

2021年5月に日本で配信を開始した『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』で描かれたジョーカーについての解説はこちらから。

キャットウーマンを演じたゾーイ・クラヴィッツが語った思いはこちらの記事で。

DCEU最新作『ザ・スーサイドスクワッド “極”悪党、集結』のハーレイ・クインについての解説はこちらから。

『ザ・スーサイドスクワッド』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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