解説&考察『THE BATMAN-ザ・バットマン-』最新予告 キャットウーマン、ペンギンらが中心に ヴィランの正体は…? | VG+ (バゴプラ)

解説&考察『THE BATMAN-ザ・バットマン-』最新予告 キャットウーマン、ペンギンらが中心に ヴィランの正体は…?

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『ザ・バットマン』最新予告を解説!

ワーナー・ブラザースより2022年3月4日(金) 米公開を予定している映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のUS予告が公開された。「トワイライト」シリーズや『TENET テネット』(2020) などで知られるロバート・パティンソンが新たにバットマンことブルース・ウェインを演じる『ザ・バットマン』では、「クローバーフィールド」シリーズやリブート版「猿の惑星」シリーズを手掛けたマット・リーヴス監督が指揮を執る。日本では2022年春の劇場公開を予定している。

今回公開された『ザ・バットマン』のUS予告では、2分39秒の中に設定や物語のヒントとなる要素がふんだんにちりばめられていた。今回は、その一つ一つにフォーカスして解説していこう。

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』US予告 解説

ヴィランはリドラー

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の最新US予告がこちらだ。

サイバーパンクな路地裏の店にゴッサム市警が乗り込む。カウンター席に座る人物の顔ははっきりとは見えないが、警察に連行されていく姿を見るにどうやら本作のヴィランのようだ。たった一人の人間に銃で武装した多くの警察が動員されている。

MCUアニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) でウォッチャー役を演じたジェフリー・ライト演じるジェームズ・ゴードンの姿も確認できる。『ザ・バットマン』におけるジェームズ・ゴードンの役職は明かされていないが、これまでのシリーズでは警部や市警本部長として描かれてきた。今回もスーツ姿で現場を指揮している様子がうかがいとれる。

カウンター席の人物は連行されていくが、残されたコーヒーカップの中にはラテアートでクエスチョンマークが描かれていた。「バットマン」シリーズでも有名なヴィランであるリドラーが『ザ・バットマン』のメインヴィランとなることを示唆して予告は本編へと入っていく。

リドラーは、なぞなぞやパズルを仕掛けて警察やバットマンを弄ぶ愉快犯的なヴィラン。非常にIQの高い人物として描かれるが、なぞなぞ遊びのためなら殺人を厭わない残忍な人物である。

1995年のティム・バートン版『バットマン フォーエヴァー』ではジム・キャリーがリドラーを演じた。若き日のジェームズ・ゴードンを主人公に据えたドラマ『GOTHAM/ゴッサム』(2014-2019) ではコーリー・マイケル・スミスがリドラーを演じ、徐々に悪に堕ちていく姿が描かれた。本作では映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(2014) で若き日のブライアン・ウィルソンを演じたポール・ダノがリドラーを演じる。

クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」シリーズに続き、ダークでリアリスティックな雰囲気が漂う『ザ・バットマン』。コミカルな愉快犯として描かれてきたリドラーがどのように描かれるのか注目しよう。

恐怖を与えるバットマン

「“恐怖”は利用できる」と語るのはバットマン自身だろうか。ジェームズ・ゴードンがバットマンを呼ぶときに使用するバットシグナルは、悪党に恐怖を与える抑止力としても機能する。『ザ・バットマン』におけるバットマンはヒーロー活動を始めて2年目。恐怖で街に治安をもたらそうとしているのだろうか。

また、これまでの「バットマン」シリーズでは、警察であるジェームズ・ゴードンがバットシグナルを掲げるようになるまでの葛藤が描かれることが多かった。市民を守るという職務を果たせず、ヴィジランテ(私刑を行う人物)であるバットマンに頼ることに対する葛藤だ。

MCU版「スパイダーマン」でピーター・パーカーがスパイダーマンになるまでのくだりが省略されたが、同じく何度目かのリブートとなる『ザ・バットマン』では、ジェームズ・ゴードンとバットマンの協力関係は自明のものとして描かれるのかもしれない。

闇夜の中で悪党相手にアクションを繰り広げるバットマン。悪党たちの白塗りにした顔はジョーカーを想起させる。『ザ・バットマン』のブルース・ウェインは、ベン・アフレックが演じたDCEU版よりも若い時期に設定されているためか、10人近くの敵に囲まれても余裕の戦いっぷりを見せている。今回のバットマンはかなりの武闘派というイメージだ。

刑務所の面会に訪れたバットマンだが、面会相手の表情は見えない。おそらく冒頭で逮捕されたリドラーだろう。バットマンと面会といえば『ダークナイト』(2008) におけるジョーカーとのそれが有名だ。今回もバットマンは感情をあらわにして「何をした!」と囚人に問いかける。「リドラーが火をつけた」と語るブルース・ウェイン。リドラーは塀の中にいるが、仕込んだ火薬がゴッサムの街を襲っているようだ。

キャットウーマン、ペンギン、アルフレッド

そんなバットマンの前に現れたのは、ゾーイ・クラヴィッツ演じるキャットウーマンことセリーナ・カイルだ。かつてティム・バートン版ではミシェル・ファイファーが、映画『キャットウーマン』(2004) ではハル・ベリーが、『ダークナイト ライジング』(2012) ではアン・ハサウェイが、ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』ではキャムレン・ビコンドヴァが演じたキャットウーマン。『ザ・バットマン』ではゾーイ・クラヴィッツが新たなキャットウーマンを演じる。

ゾーイ・クラヴィッツは「X-MEN」シリーズでエンジェル・サルバドーレ役を演じた他、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018) ではMJの声を、『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017) ではキャットウーマンの声を演じている。

『ザ・バットマン』のキャットウーマンは、バットマンに「自分の身は自分で守れる」と言い放ち、ハイキックを決めてバイクに乗り込む。髪の長さが変わるのはウィッグなのか、時間の経過によるものなのだろうか。

実写版のキャットウーマンは“泥棒猫”であるか、不幸な目にあって力を得た結果として復讐を誓うというパターンが描かれてきた。前者はスーパーパワーがないパターン、後者はスーパーパワーを得るパターンである。『ザ・バットマン』では新しいキャットウーマン像が描かれるのか、スーパーパワーを持っているのかどうかに注目だ。

「これを続ければ、あなた様は全てを失う」という執事のアルフレッド・ペニーワースの言葉と共に映し出されているのはコリン・ファレル演じるペンギンことオズワルド・コブルポット。ペンギンは『バッドマン リターンズ』(1992) でメインヴィランとして描かれたが、同作をはじめ、容姿と結びつけた差別的な描写が付きまとってきたキャラクターのひとりだ。

ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』では、小悪党からのし上がっていく姿が描かれ、バイセクシャルという設定も加えられた。『ザ・バットマン』では顔に大きな傷があるように見える。いずれのシリーズでも街の実力者になるペンギンだが、オズワルド・コブルポットがペンギンと呼ばれるようになる由来や生い立ち、現在の地位はどのように設定されるのだろうか。

ブルースに忠告するアルフレッド・ペニーワースを演じるのはアンディ・サーキス。これまで何度も実写化されてきたアルフレッドは、海外では26歳のアルフレッドを描く『ペニーワース』(2019-) も放送されている。

イギリス時代の若き日を描いたドラマ版は例外として考えると、『ザ・バットマン』のアルフレッドはかなり若い時期に設定されている。映画『ジョーカー』でダグラス・ホッジが演じたバージョンに次ぐ若さだろう。各シリーズで狂気にも似た忠誠心と強さを見せる元軍人のアルフレッド。『ザ・バットマン』ではブルースへの進言も虚しく「私はどうなってもいい」と突き放されている。

謎解きと狂気

そしてこの場面では、大量の写真が配置され、床に文字が書かれた部屋が映し出される。これはブルースが謎解きのために設置したものか、リドラーが設置したものかは分からない。床には「私の父親の罪?」「嘘はいらない コルソン」「ミッチェル」「再生 (Renewal) は嘘だ」「残忍 (Savege)」という文字が書かれている。

「私の父親」と書かれているのを見るに、犯人は生前ゴッサムの有力者だったブルースの父を恨んでおり、ブルースがそれについて考えている場面だろうか。「嘘はいらない (No Moer Lies)」とは最初の予告映像で事件現場の死体に書かれていた文章であり、それに並べられている「コルソン」は被害者の名前だろう。

「再生は嘘だ」の真意は不明だが、これまでのシリーズでは『バットマン リターンズ』のペンギンや『ダークナイト』のハービー・デントなど、何人もの人間がゴッサムの街の再生を掲げている。権力闘争とは無縁に思えるリドラーはどのような動機で犯行に及んでいるのだろうか。

キャットウーマンからも「身を滅ぼす」と忠告され、ヴィランのペンギンさえも「落ち着け、血の気が多いな」と引くほどに、今回のバットマンは向こう見ず。暗闇の中で大量の銃弾を浴びながら敵をなぎ倒すと、「あなたは誰」という問いかけに「私は“復讐”だ」と答えるのだった。

ブルース・ウェインがバットマンになる動機は、多くの作品においては父と母を殺したギャングをゴッサムの街から一掃するため、というものだ。世界や国を救うというモチベーションはなく、原作コミックではスーパーマンと衝突することも。あくまで個人的な正義からスタートした“ヒーロー活動”は、自身が暗躍するほどにジョーカーやリドラーのような愉快犯が現れるという矛盾に直面する。今回の『ザ・バットマン』でも、“小さな正義”というバットマンの根幹が引き継がれている。

そして新たな姿のバットモービルも登場。これまではSF風味の強いスタイリッシュなデザインだったが、『ザ・バットマン』では無骨で力強いデザインになっている。「黒くて、青くて、死んでるものってなーんだ?」「お前だよ」というリドラーからの挑戦状、敵を殴り続けるバットマン、「地獄で会おう」というメッセージカード、「神よ」と祈るアルフレッド……狂気に堕ちたゴッサムの姿が次々と映し出される。

予告映像のラストシーンでは、車を運転するペンギンが背後の爆発を見て「ザマァみろ!」と喜んでいる。だがその爆発の中から飛び出してきたのはバットモービルだった。追突され横転するペンギンの車。逃げられない状態のペンギンに歩み寄ってくるのは炎に照らされるバットマンだった。

このシーンが特徴的なのは、カメラがペンギンの目線になっており、バットマンが近づいてくることの恐怖や絶望が表現されている点だ。『ザ・バットマン』がバットマンを単純なヒーローではなく、狂気と隣り合わせの危うい存在として描き出すことを示して、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』US予告は幕を閉じる。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』予告考察

本格サスペンスへ

リドラーを中心とした『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の新予告は、本作が本格的なサスペンスとして描かれることを示唆した。これまでコミカルな演出とセットで描かれてきたリドラーが、ただの愉快犯ではない謎多き存在としてシリアスに描くことで、本格サスペンスのサスペンスの趣を醸し出すことに成功している。

2020年8月に公開された予告編では、犯人が「正義を気取るなら嘘はなし」と言い、「嘘」という言葉が強調されていた。また、犯人から「何年も見て見ぬ振りをしてきた代償は?」という問いかけがなされていることから、犯人はバットマンへの“復讐”を試みているようだ。「私は“復讐”だ」と言い放ったバットマンだが、自分もまた誰かの復讐の対象だったとすれば、話は複雑になる。

ヴィランはもう一人?

また、『ザ・バットマン』ではブルース・ウェインの年齢を比較的若い時期に設定し、血の気の多いバットマンの姿が描かれる。ヒーロー活動を始めてまだ2年目というバットマンの狂気を同時に描くことで、サイコホラーの空気感までもたらされている。バットマンが生んだもう一つの“狂気”であるジョーカーとの出会いにも期待がかかるが、それは次回作以降になるだろうか。

というのも、『ザ・バットマン』にはリドラー、ペンギン以外にもカーマイン・ファルコーネの登場も決定しているからだ。ドン・ファルコーネは、ゴッサムを牛耳るマフィアのボスで、映画『バットマン ビギンズ』(2005) にも登場した。この時はトム・ウィルキンソンが演じ、ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』ではジョン・ドーマンが演じた。

『ザ・バットマン』では、まだ映像に登場していないが、ジョン・タトゥーロが演じることになっている。スーパーパワーやコスチュームはないが、ゴッサムの裏社会に君臨するファルコーネの存在感は大きい。リドラー、ペンギン、ファルコーネに加えてジョーカーも登場するとなれば相当な大風呂敷を広げることになるため、続編での登場が有力だが、果たして……。

今回の予告編に隠されたジョーカー登場のヒントに関する考察はこちらの記事から。

新たなトリロジーの幕開け

なお、本作『ザ・バットマン』の後には、二つの続編が予定されている。「ダークナイト」シリーズと同じくトリロジーになる予定だが、さらにHBO Maxで前日譚にあたるドラマシリーズの制作も進められている。前述のドラマ『ペニーワース』も、2021年10月から放送を開始するシーズン3からは配給がepixからHBO Maxに変更される。

『ザ・バットマン』はDCEUとはつながりを持たないシリーズだが、ファンの間ではマルチバース化を前提としていたザック・スナイダー版のDCEU復活を求める動きもある。また、2022年公開を予定しているDCEU映画『ザ・フラッシュ』ではマルチバース展開が予定されており、には、マイケル・キートン版のバットマンとベン・アフレック版のバットマンの登場が予定されている。

次の展開を見逃さないようにしよう。

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2022年3月4日(金) 米公開。日本では2022年春公開予定。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』公式サイト

製作陣が語った『ザ・バットマン』がDCEUに加わらない理由はこちらから。

2021年5月に日本で配信を開始した『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』で描かれたジョーカーについての解説はこちらから。

キャットウーマンを演じたゾーイ・クラヴィッツが語った思いはこちらの記事で。

DCEU最新作『ザ・スーサイドスクワッド “極”悪党、集結』のハーレイ・クインについての解説はこちらから。

『ザ・スーサイドスクワッド』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

DCEU初のドラマ『ピースメーカー』についての考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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