ネタバレ解説 スナイダーカットのジョーカーは何を言っていたのか——『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説 スナイダーカットのジョーカーは何を言っていたのか——『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』

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『スナイダーカット』が公開

ついに日本でも『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』が配信された。『ジャスティス・リーグ』は、2017年に公開されたDCコミックスのヒーロー集合作品。劇場版はザック・スナイダー監督が娘の死を受けて製作途中で降板した後、ジョス・ウェドン監督が引き継いで完成させたもので、今回の『ザック・スナイダーカット』が本来ザック・スナイダー監督がやりたかった『ジャスティス・リーグ』だ。『ザック・スナイダーカット』は上映時間4時間という超大作に仕上がっており、2017年の劇場公開版とは大きく異なる展開を見せる。

その中でも今回注目したいのは、予告編の段階でも話題になっていたヒース・レジャー演じるジョーカーの登場シーンだ。意外な形で『ジャスティス・リーグ』への参戦を果たしたジョーカーはあの場面で何を伝えたかったのか。ネタバレありで解説していこう。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』の内容に関するネタバレを含みます。

ジョーカーは何を言っていたのか

「養子の息子」とは

『スナイダーカット』にジョーカーが登場するのは開始から3時間44分が経ったあたり。レックス・ルーサーがデスストロークことスレイド・ウィルソンにバットマンの正体を告げた後、突如として荒廃した世界が映し出される。パラデーモンとダークサイドのスペースシップが空を飛んでいる。明らかに先ほどとは異なる世界だ。

バットマンが行動を共にしているのはサイボーグ、メラ、フラッシュ、デスストローク、そしてジャレット・レトが演じるジョーカーだ。メラは「アーサーの仇を討つ」と、悪に堕ちたスーパーマンにアクアマンことアーサー・カリーが殺されたことを示唆する。バットマンはメラをなだめようとするが、メラが「心から誰かを愛したことある?」と問いかけたところで、ジョーカーが「彼は大切な人を失う苦痛を知っている」と割って入り、「父、母、養子の息子とか」とその例を挙げる。

バットマンことブルース・ウェインの父と母が殺された理由は様々なパターンが存在するが、作品によってはジョーカーが原因となっていることもある。また、「養子の息子」とはバットマンの相棒であるロビンを指していると考えられる。

原作コミックでは1代目ロビンのディック・グレイソンも、2代目ロビンのジェイソン・トッドもブルースの養子になっている。ザック・スナイダーが監督を務めた『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016) では、ジョーカーによってロビンが殺害されたことが示され、「HaHah, Joke’s on You Batman」と落書きされたロビンのコスチュームも登場する。また、映画『スーサイド・スクワッド』(2016) ではロビン殺害の共犯者としてハーレイ・クインの名前が挙げられており、実際に手を下したのはハーレイだったとテロップで示されている。

『スナイダーカット』のこのシーンでは、バットマンの大切な人を死に至らせた元凶であるジョーカーが「死人を抱えすぎて鈍感になってないか?」と語りかけることで、バットマンを挑発しているのだ。だが、バットマンもジョーカーの扱いには慣れたもの。ジョーカーにとってはバットマンが全てだが、バットマンはリーダーとしてこの世界に向き合わなければならない。否、バットマンはスーパーマンと向き合おうとしているのだろう。そんなバットマンに対するジョーカーの嫉妬心も見え隠れするシーンである。

ジョーカーが口にした「ロイスの死」

ここからジョーカーは直接的にバットマンに自分の存在をアピールする。「俺を殺したら誰がお前を悦ばせる?」「お前には俺が必要だ」と畳み掛けるのだ。そして、更に重要な設定を口にする。バットマンがスーパーマンの恋人であるロイスを死なせたことで世界が狂ったというのだ。

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』では、バットマンはフラッシュから「ロイス・レーンが鍵だ」「彼(スーパーマン)を恐れろ」と告げられる夢を見る。フラッシュは最後には「僕たちを見つけて」と言い光の中に消えていった。この時のフラッシュは、世界が荒廃した後のメカメカしい姿をしており、ブルースはこれがバリーだとは気づかなかったのだろう。時空を超えたフラッシュがバットマンに警告しに来ていたのだが、時を超えるという設定が明らかになった『スナイダーカット』でようやく話がつながったことになる。

この荒廃した世界線では、バットマンはフラッシュの忠告を守ることができなかったのだろう。バットマンがロイスを死なせたことでスーパーマンが悪に堕ち、世界が荒廃したという経緯が、ジョーカーの口から語られている。『スナイダーカット』の中盤でも、サイボーグのビジョンの中で、泣きながら遺体を抱えるスーパーマンの姿が描かれている。この遺体はロイスのものだったのだろう。

なお、ザック・スナイダー監督は米Vanity Fairで、以降に続く予定だった二つの「ジャスティス・リーグ」映画で予定していた計画について、以下のように語っている。

ダークサイドが地球に来るんです。スーパーマンはバットマンに「ロイスを守ってくれ。これは私とダークサイドの間の戦争だ。友人として私を助けてくれるというのなら、ロイスを守ってほしい」と告げます。レックスはダークサイドにスーパーマンの弱点はロイス・レーンを殺すことだと教えて、何らかの理由で、バットマンは(ロイスを守ることに)失敗します。ダークサイドがロイスを殺そうとする時に、バットマンは躊躇して死なせてしまう。そして口論が始まるんです。

幻となったザック・スナイダーの『ジャスティス・リーグ』続編の伏線が、『スナイダーカット』では挿入されていたのだ。

バットマンはタイムリープしてる?

『スナイダーカット』では、ジョーカーがバットマンに「かわいそうなロイス、苦しんだだろうな」と語りかける。バットマンの罪悪感に浸け入ろうとしているのだ。さらにジョーカーは「どれだけ世界をぶっ壊せば気が済む?」と問いかける。このシーンの英語のセリフは「I often wonder, in how many alternate timelines do you destroy the world?」となっており、「alternate timelines」という言葉から、この世界に複数の時間軸が存在していることも示唆されている。あるいはこれはジョーカー独特の言い回しなだけで、バットマンは何度も“やり直し”をしているのだろう。

『スナイダーカット』においては、ジャスティス・リーグが一度ミッションを失敗するが、フラッシュが高速移動による時間遡行を成し遂げ、時を戻して見せる。また、『バットマン vs スーパーマン』でバットマンに警告を与えた人物が、荒廃した世界におけるフラッシュであったことが明らかになるなど、時空を行き来する設定が明かされた。2022年公開を予定している映画『ザ・フラッシュ』では、ベン・アフレックとマイケル・キートンが演じる複数のバットマン/ブルース・ウェインが登場することになっている他、ドラマ版のアローバースにはDCEU版のフラッシュも登場しており、DCEUは今後マルチバースで進められることになっている。

2021年はMCUのマルチバース化の可能性が話題になっていたが、DCEUはかねてから時空の移動をストーリーに盛り込むつもりだったのだ。

重要なのは、『スナイダーカット』においてジョーカーがその事実を知っているということ、そしてバットマンがいくつもの世界を破壊したとジョーカーが指摘しているということだ。「どれだけ世界をぶっ壊せば気が済む?」というセリフは、「how many alternate timelines」と表現していることから、「何個の世界を壊せば気が済む?」と問いかけているということが分かる。確かにバットマンは繰り返しディストピアと化した世界の夢を見ていたが、これは夢などではなく、実際に起きる/起きたことなのだろうか。

おそらくバットマンは何度もスーパーマンの闇落ちを防ごうとしたが、失敗し続けているということなのだろう。フラッシュを『バットマン vs スーパーマン』の時代のバットマンに接触させたのも、荒廃した世界/未来のバットマン自身である可能性が高い。

ジョーカーが震えていた理由

一方のジョーカーは「俺はいつも切り札を用意している」と話す。この前にも「この世界を救うには俺が必要」と話しているが、ジョーカーには本当に切り札があるのだろうか。それとも、「バットマンにはジョーカーを殺せない」というルール(後述)を指しているのか。いずれにしても、バットマンたちがジョーカーを生かして共に行動している理由があるはずだ。

そしてジョーカーは「相棒のガキは二度とよこすな」と再びロビンの存在を示唆する。ジョーカーは、バットマン自身が対応するのではなく、相棒のロビンをジョーカーに寄越したことに恨みを抱いているのかもしれない。ジョーカーはトランプのカードを差し出し、ジョーカーと戦うならカードを破り、休戦するならカードを受け取れとけしかける。

しかし、バットマンはジョーカーのかつての恋人であるハーレイ・クインの名前を挙げて反撃する。いわく、ロビン殺害の実行犯とされているハーレイ・クインもまた、バットマンの腕の中で死に、最後にジョーカーを殺すようバットマンに懇願したのだという。

この“伏線”は2020年に公開されたDCEU映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』で一部回収されたと言える。同作はハーレイがジョーカーと別れたところから物語が始まる

そしてバットマンは必ずジョーカーを殺して約束を果たすと宣言する。これは、相手が悪党でも人を殺さないというバットマンのルールを破ることを意味する。スーパーパワーを持たないジョーカーはこのルールをうまく利用してバットマンを追い詰めてきたし、バットマンに人を殺させること=信念を曲げさせること自体が目的となっている節もある。

だが遂にバットマンは荒廃した世界を前にしてジョーカーを「殺す」と宣言したのだ。カードを取り上げたバットマンに対し、ジョーカーは手を震わせる。殺意を抱くバットマンを前にしたジョーカーの“恐怖”が演技なのか本心なのかはわからない。だがそれが本心だったとしても、それは“死ぬこと”への恐怖ではなく、バットマンとのゲームが終わってしまうことへの恐怖だったのではないだろうか。結局、ジョーカーは「信じかけた(You almost had me.)」と、この時点ではバットマンにジョーカーを殺す意思がないことを見抜き、二人は“休戦”に入る。

スナイダーバースの復活はあるか

この荒廃した世界のシーンは、スーパーマンが登場し、ジョーカーを除く一同が戦闘態勢に入るところで幕を閉じる。ブルースが見ていた夢だったというオチにはなっているが、ジョーカーが話す通り複数の時間軸が存在しているのだとすれば、これは現実に起きた未来または別の世界だと考えられる。

スーパーマンの復活によりステッペンウルフを退けたジャスティス・リーグだったが、ロイスの死とスーパーマンの“闇堕ち”という最悪の可能性を残したまま物語は続いていく、というのがザック・スナイダーが描こうとした『ジャスティス・リーグ』だった。それをジョーカーに語らせるあたり、流石である。つまり、ジョーカーがこのシーンで伝えたかったのは、危機は去っていないということなのだ。

物語としては、バットマンがスーパーマンを倒すために因縁の相手であるジョーカーと組むという逼迫した事態の到来を予告している。だが、2021年5月の時点では、復活した『スナイダーカット』を起点とする“スナイダーバース”を軸にDCEUが展開される予定はない。既に『スナイダーカット』を見た海外ファンの間では、スナイダーバースの復活をワーナー・ブラザースに要求する「#RestoretheSnyderVerse(スナイダーバースの復活を)」キャンペーンがスタートしている。

『スナイダーカット』公開されたのは、ファンが展開した「#​ReleaseTheSnyderCut(スナイダーカット の公開を)」キャンペーンがあったからこそ。ジョーカーがその全貌を明らかにしたスナイダーバースは、スーパーマンの如く復活を果たすことができるのだろうか。

なお、現在公開時期が決定しているDCEU映画は、2021年8月公開予定のジェームズ・ガン監督による『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』、2022年7月公開予定の『シャザム!』(2019) のスピンオフ映画『ブラックアダム』、2022年11月公開予定の『ザ・フラッシュ』、2022年12月公開予定の『アクアマン2』、2023年6月公開予定の『シャザム!』の続編がある。『ジャスティス・リーグ』の続編製作の予定は未定となっている。

『スナイダーカット』で描き方が改善されたワンダーウーマンについての解説はこちらの記事で。

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なお、ジョーカーは2019年、史上初めてアカデミー賞の主演男優賞と助演男優賞を受賞したキャラクターとなった。

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