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『流転の地球』の意外な楽しみ方
興行収入は7億ドルを突破
中国史上最大規模のSF映画『流転の地球』がNetflixで公開された。劇場公開による興行収入は7億ドル (約770億円) を突破し、『アベンジャーズ/エンドゲーム』『キャプテン・マーベル』に次ぐ年間第3位をキープ。Netflixでは190カ国での配信が決定するなど、公開後も話題に事欠かない。
2019年4月30日(月)に『流転の地球』がNetflixで公開されたことで、世界中の人々が最先端の中国SFを目の当たりにすることになった。SNSでの評価も上々だ。
ハイクオリティな英語吹き替え
これに貢献した存在として注目したいのが、『流転の地球』の“英語吹き替え”だ。Netflixでは、同作を28の言語で配信することを発表しているが、日本版では、日本語、中国語、ポルトガル語、英語の字幕に加えて、オリジナルの中国語音声と英語吹き替えが楽しめるようになっている。この英語吹き替え版はNetflixが独自に制作したものだが、非常にクオリティが高い。英語音声がオリジナルと言われても違和感がないレベルの完成度となっているのだ。
以前からあった吹き替えの要望
実は、『流転の地球』の北米公開時、アメリカのレビュアーからは「字幕が早すぎて追いつけない」という意見も出ていた。英語圏では字幕を用いて映画を見るということが少ないため、映像を観ながら文字を追うということに慣れていない人もいる。とりわけ、ハイテンポなストーリー展開の中で『流転の地球』という作品の映像美を堪能するには、英語話者にとっては英語吹き替えは嬉しいオプションとなっただろう。
中国系声優を起用
Netflixによる『流転の地球』の英語吹き替えが高いクオリティで実現した背景には、ある理由が存在する。それは、主役のリウ・チーを演じたEwan Chungを始め、吹き替えを担当した声優陣のほとんどが、中国系の声優で占められているという点だ。一口に英語と言っても、世界ではイギリス英語から黒人英語まで、様々なイントネーションとアクセントを持つ英語が使用されている。『流転の地球』では、中国系のネイティブイングリッシュスピーカーを起用したことで、作品の中でも出演者が英語で話しているように見せることに成功している。
手がけたのはフランス系のスタジオ
加えて、出演者の口の動きと英語のセリフのシンクロ率が高いという点は、英語吹き替えを手がけたEncore Voicesの力によるところが大きい。同作の吹き替え監督はENCORE VOICESのLuciano Palermiが勤めている。Encore Voicesは、『仮面ライダーアマゾンズ』(2016-2017) でも英語吹き替えを担当している。
新たなスタンダードに?
これまでアニメ作品などでは、キャラクターがアジア人だったとしてもアジア系の声優が起用されることは多くはなかった。今回中国初のSFブロックバスター映画に英語の吹き替えがあてられることになったが、Netflixと吹き替えを担当したスタジオは、中国系声優を起用するという決断を下した。今回の英断は今後、英語吹き替えにおけるスタンダートとなっていく可能性もあるだろう。
また、VG+では『流転の地球』の吹き替えを担当したEncore Voicesに独占取材を敢行した。英語吹き替えの制作の裏側は、以下のリンクからご覧いただきたい。
吹き替え版には欠点も……
ただし、『流転の地球』の英語吹き替えバージョンでは、すべてのシーンが英語で吹き替えられているため、劇中に登場するロシア語や日本語のセリフも英語になっている。こちらも元の言語に合わせてイントネーションは変えられているが、『流転の地球』特有の国際的な雰囲気を最大限に楽しむためには、字幕版での視聴をお勧めする。
とはいえ、『流転の地球』の“二周目”を考えている方には、英語吹き替えでの視聴もマニアックな楽しみ方である。NetflixとEncore Voices、そして中国系声優たちによる渾身の英語吹き替えは一見の価値ありだ。