『THE BATMAN-ザ・バットマン-』2022年公開
2022年3月4日(金)の全米公開を予定している映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は、主人公のブルース・ウェインがヒーロー活動を始めてから2年目の若き日のバットマンを描く。日本では2022年春の公開を予定しており、新たな伝説の幕開けに大きな期待がかかっている。
2021年10月には、公式予告編が公開され、更に期待が高まる。予告編の解説と考察はこちらの記事に詳しいが、今回は更に一歩踏み込んで、「バットマン」シリーズに欠かせないあの大物ヴィランについて考察してしこう。そのヴィランとは、もちろんジョーカーだ。
『ザ・バットマン』にジョーカーは登場する?
ピエロメイクの理由
『ザ・バットマン』にジョーカーは登場するのだろうか。上記の記事でも解説した通り、『ザ・バットマン』には既にリドラーとペンギンという二人のスーパーヴィランが登場することが決定している。また、マフィアのボスであるドン・ファルコーネもストーリーに絡んでくるため、存在感の大きいジョーカーを登場させることはハードルが高いように思われる。
一方で話題になっているのは予告編で登場したピエロメイクのギャングだ。ジョーカーを想起させるメイクをしていることから、『ザ・バットマン』にジョーカーが登場すのではないかと考えるファンやメディアは少なくない。映画『ダークナイト』(2008) ではピエロの覆面を被ったギャングを率いていたジョーカー。本作ではピエロメイクの手下をバットマンに差し向けているのだろうか。
だが実は、『ザ・バットマン』にはこのピエロメイクのギャングについて、一つ重要なヒントが隠されている。それは、このピエロメイクのギャングとバットマンが戦うシーンの背後にある壁面だ。予告編の0分46秒あたりで、画面が暗くて見にくいが、壁に「HALLOWEEN」と思しき文字が書かれている。
つまり、このメイクはハロウィーンに合わせたガイコツメイクの可能性があるのだ。中には顔の半分だけにメイクが施されているメンバーの姿も見られる。これでは顔が隠れない。また、映像の中では銃を持っているメンバーは一人だけで、この銃は護身用である可能性も否めない。
このメイクの集団が犯罪集団なのか、それともただの市民なのかによって、このシーンの意味合いは大きく異なる。今回のバットマンは“狂気”を感じさせるからだ。2020年に公開された第一弾のトレーラーでは、メイクの人物を執拗に殴打するシーンが含まれている。顔の半分にメイクをしたメンバーは目に涙を浮かべ、別のメンバーはバットマンによる“暴力”をスマホのカメラで撮影していた。
“ジョーカーとの繋がり”に見えていたメイクの集団は、予告編に映っていた「HALLOWEEN」と思われる文字により、マット・リーヴス監督のミスリードである可能性が出てきたのだ。
ジョーカー登場は続編で?
では、『ザ・バットマン』にはジョーカーは登場しないのだろうか。過去の報道では、2020年6月に米The Directが関係者の話として、『ザ・バットマン』の続編または3作目でジョーカーを登場させる計画があると報じている。マット・リーヴス監督が手がける新たな「バットマン」フランチャイズは、公式に続編二作品とHBO Maxのスピンオフドラマ二作品の製作が予定されている。
クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト」三部作では、第二弾の『ダークナイト』でジョーカーがメインヴィランに起用された。ヒース・レジャーが演じたジョーカーは今や伝説として語り継がれている。その「ダークナイト」三部作では、第一作目の『バットマン ビギンズ』(2005) のラストでジョーカーの存在を示唆する演出が見られた。今回の『ザ・バットマン』にジョーカーが登場しないとしても、その存在が示唆される可能性はあるだろう。
映画『ジョーカー』のアレが登場
今回公開された『ザ・バットマン』の予告編には、映画『ジョーカー』(2019) の演出を示唆する場面もあった。印象的なのは予告の冒頭で雨が降っているシーンだ。雨は映画『ジョーカー』でも印象的な演出として使用されている。また、メイクの集団は地下鉄に乗っており、これも『ジョーカー』を想起させる演出だ。
2019年はアメリカの『ジョーカー』、韓国の『パラサイト』、日本の『天気の子』と、貧困をテーマにした作品が話題になった。そしてその作品もいずれも“雨”と“地下”が演出において印象的な役割を果たしていた。『ザ・バットマン』では、意図してなのかその二つの要素を取り入れている。
『ジョーカー』との繋がりはそれだけではない。『ザ・バットマン』予告編でバットマンがガラス越しの面会を行うシーンで、リドラーと思われる人物の胸には「Arkham State Hospital(アーカム・ステート・ホスピタル)」と読める文字が見える。「バットマン」シリーズでは、アーカムといえば「Arkham Asylum(アーカム・アサイラム)」という名の精神病院がお馴染みで「ダークナイト」三部作にも同様の名前で登場している。
だが、これまでに一度だけ「アーカム・アサイラム」ではなく、「アーカム・ステート・ホスピタル(アーカム州立病院)」という名前でアーカムが登場した作品が存在する。それは映画『ジョーカー』だ。主人公のアーサー・フレックが母のカルテを求めて訪ねる精神病院の名前が「アーカム・ステート・ホスピタル(アーカム州立病院)」となっており、ラストシーンでジョーカーが収容されている場所もアーカム・ステート・ホスピタルなのだ。
つまり、『ザ・バットマン』には、これまで『ジョーカー』にしか登場しなかったアーカム・ステート・ホスピタルが登場する可能性が高くなっている。リドラーが収容されているアーカム・ステート・ホスピタルにはジョーカーが収容されているのかもしれない。
であれば、『ザ・バットマン』が『ジョーカー』と同じ世界線にあり、『ジョーカー』に登場したブルース少年が大人になった姿が『ザ・バットマン』のロバート・パティンソン演じるバットマンである可能性も生まれる。
しかし、『ザ・バットマン』予告編の「ハロウィーン」も「アーカム・ステート・ホスピタル」も、共に映像が鮮明ではないため、異なる文字列である可能性も残されている。マット・リーヴス監督は予告編にヒントを忍ばせたのか、それともこれらは観る側が何でもジョーカーに結びつけてしまう“呪い”か。その答えは『ザ・バットマン』本編で明らかになる。
映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2022年3月4日(金) 米公開。日本では2022年春公開予定。
2021年5月に日本で配信を開始した『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』で描かれたジョーカーについての解説はこちらから。
ジョーカーはアカデミー賞で主演男優賞と助演男優賞を受賞したキャラクターになった。
映画『ジョーカー』で流れた音楽の解説はこちらから。
映画『ジョーカー』におけるジョーカーの笑い方に関する解説はこちらから。
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