ネタバレ解説『ホークアイ』最終話 ローラについて監督が語る「彼女をもっと知るべき」 今後はどうなる? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『ホークアイ』最終話 ローラについて監督が語る「彼女をもっと知るべき」 今後はどうなる?

© 2021 Marvel

『ホークアイ』最終回の謎が明らかに

MCUドラマ『ホークアイ』は、2021年1月に配信をスタートした『ワンダヴィジョン』から数えて4作目のDisney+オリジナルのマーベルドラマ。2021年12月22日(水)に最終回となる第6話が配信され、ホークアイ初の主演作に幕がおろされた。

一方で、こちらの記事でも紹介した通り、そのラストには多くの謎が残されている。そんな中、第1話、第2話と最終話で監督を務めたリース・トーマスが、最終話のあのシーンについて口を開き、その意図を解説した。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ホークアイ』最終話第6話の結末に関するネタバレを含みます。

ローラの過去に新事実

リース・トーマス監督が米マーベル公式に語ったのは、『ホークアイ』最終回の第6話終盤で登場した“時計”のくだりについて。クリントがずっと気にかけていたロレックスの時計はケイトがマヤの部屋から回収しており、最終的にはクリントから妻ローラの手へと渡った。「ものは大事に」というクリントの口ぶりから、時計はローラのものだったことが明らかになっている。

その時計の裏側にはS.H.I.E.L.D.のロゴマークと共に「19」という数字が刻印されていた。これはS.H.I.E.L.D.のエージェントに割り振られるエージェント番号で、ローラがかつてS.H.I.E.L.D.のエージェント19だったことが明らかになっている。

MCUでは、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) で再登場を果たしたシャロン・カーターはエージェント13、『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) のシーズン2に登場したキャラ・パラマスはエージェント33だった。エージェント19とは、原作コミックでモッキンバードという名のヒーローになるキャラクターのことで、クリント・バートンと結婚していたという設定もある。

監督の意図が明らかに

では、ローラがエージェント19だったという事実には、どのような意味があるのだろうか。リース・トーマス監督は以下のようにマーベル公式で以下のように語っている。

クリントの妻としてのローラを何年も見てきて、やっぱり(ローラのバックストーリーを)広げたいという気持ちがあったんです。私たちは彼女についてもっと知るべきです。家で子ども達と時間を過ごしていた以上のことが彼女にはあるはずです。シーズンを通して小出しにしていくことは、小さな楽しみでした。そして最後により深いキャラクター像を期待させることで、それは結実したのです。

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) で初登場を果たしたローラは、クリントの知られざる家族として、“内助の功”的な立場でMCUに紹介された。当時のMCUはまだ白人男性の主人公しか存在していない時代であり、ローラも主体的な存在としては描かれていなかった。次にローラが登場したのは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) であり、そこでもローラは早々にサノスの指パッチンによって消滅してしまったのだった。

リース・トーマス監督の言う通り、ドラマ『ホークアイ』では、ローラがナターシャのことを知っているようなセリフを発したり、「スパイダーマン」シリーズのネッドが憧れた「椅子の男」ならぬ「椅子の女」としてクリントに的確な助言を送っていた。

そして最終話では、遂に“エージェント”としてのローラの過去が明かされた。それはつまり、ローラがかつてクリントやナターシャ、ニック・フューリーらと共に働いていたということだが、それだけではない。ローラがエージェント19だったという事実は、原作コミックで単独主役の作品が作られるほどの実力を持つ人物だったということをも示している。これまで「クリントの妻」としてしか描かれてこなかったローラにも、多様な側面があるということが示されたのだ。

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ローラの活躍は見られない?

しかし、このコメントを紹介している米マーベル公式に文章には気になる一文も。上記の監督のコメントの直後に「(今後、)ローラのアクションを見ることはないかもしれませんが、クリントがいない間、ローラは家で忙しくクリスマスの精神を守っていたことは間違いありません」と記されているのだ。確かにローラは引退しており、これからモッキンバードになる可能性は低い。それでも、「ローラのアクションを見ることはないかもしれない」というのは残念だ。

実は、“モッキンバードとしてのローラ”をめぐる課題は、MCUの物語上の編成以外にも存在している。原作コミックにおけるモッキンバード=エージェント19はバーバラ・モースという名前のキャラクターであり、そのバーバラはABC制作のドラマ『エージェント・オブ・シールド』のシーズン2-3に登場しているのだ。

『エージェント・オブ・シールド』ではボビーと呼ばれているバーバラは、やはりS.H.I.E.L.D.のエージェントとして描かれる。俳優のエイドリアンヌ・パリッキが演じたバーバラ・モースは、モッキンバードとしてのスピンオフドラマの脚本まで制作されていたことも明かされている。

一方、『ホークアイ』ではローラがエージェント19であり、モッキンバードだったことが示唆された。つまり、このままでは、バーバラ・モース=モッキンバード=エージェント19=ローラ・バートンというパラドックスが生じてしまうのだ。

Disney+>過去作?

ここで思い出されるのが、『ホークアイ』第3話〜第5話の監督を務めたバート&バーティのバートが語った言葉だ。Netflix配信のMCUドラマ『MARVEL デアデビル』(2015-2018) から登場したヴィンセント・ドノフリオ演じるキングピンについて、バートは「(過去のドラマ作品の)キャラクターたちが私たちの世界に入ってくる」と、過去のドラマ作品とDisney+オリジナル作品の“主従関係”を説明したのだ。

バートが語った内容はこちらの記事に詳しいが、映画作品と互いに影響を与え合うDisney+以降のMCUドラマと、それ以前に製作され映画作品に影響を与えることがなかったドラマ作品では、前者の方が優位にあるということである。それは『MARVEL デアデビル』や『エージェント・オブ・シールド』よりも『ホークアイ』の設定が優先されるということであり、言い方は悪いが、過去作のキャラクターを都合よく持ってきたり、なかったことにできるということを意味しているとも読み取れる。

とすれば、MCU世界においてはローラが正式なモッキンバードということになるのだろう。クリントが信頼をよせていた娘のライラが大きくなった時に母のコードネームを引き継ぐという展開もあるかもしれない。

一方で、ブラック・ウィドウやホークアイがそうであるように、モッキンバードも一人だけである必要はない。『MARVEL デアデビル』から『ホークアイ』に登場したキングピンの扱いや描き方については、『デアデビル』ファンからは批判もあがっている。モッキンバードについて、MCUがどのような姿勢を見せるのかということは、MCUの今後のキャラクターの扱い方にもかかわる重大な事項かもしれない。

原作コミック『ホークアイ』はKindleで日本語訳版が発売中。

ドラマ『ホークアイ』は全6話がDisney+で独占配信中。

ドラマ『ホークアイ』(Disney+) 

最終回第6話のネタバレ解説はこちらから。

『ホークアイ』最終回で残された13の謎はこちらにまとめている。

キングピンの最後について演じたヴィンセント・ドノフリオが語った内容はこちらから。

最終回でポストクレジットシーンがなかった理由の考察はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

エレーナの登場シーンで判明した4つの事実については、こちらの記事にまとめている。

エレーナ登場の裏側について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第1話に登場した「サノスは正しかった」という落書きについては、こちらで詳しく考察している。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第2話で判明した、ケイトがウエストコースト・アベンジャーズのリーダーになる可能性についての考察はこちらの記事で。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話に隠されていたカジの過去についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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