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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はいつの話?
2022年1月7日(金)、日本でも映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が公開された。MCUフェーズ4では『エターナルズ』(2021) に続く第4作目の映画作品であり、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) から数えると早くもフェーズ4の第9作目になる。
作品を経るごとに混沌としてくるのが作中の時系列だ。MCU「スパイダーマン」シリーズが進行する一方で、MCU世界では様々な物語が進行している。今回は、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がMCU全体の中でどの位置にあるのかを整理しておこう。以下の内容は、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の結末および、『ノー・ウェイ・ホーム』までの全てのMCUフェーズ4作品の内容に関するネタバレを含むので、各作品を観賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』および、同作までのMCUの各作品の内容に関するネタバレを含みます。
MCU「スパイダーマン」シリーズのタイムラインは?
まず最初に、映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) から始まったMCU「スパイダーマン」シリーズのタイムラインについて確認しておこう。「スパイダーマン」シリーズは他のMCU作品と比較して、時系列がはっきりしている作品だ。
何千年というスパンの物語が語られるエターナルズのような作品とは違い、「スパイダーマン」シリーズでは高校生のピーター・パーカーが主人公になっているため、ピーター達の学年や行事に応じて時期が判断できる。そして、MCU「スパイダーマン」シリーズは三部作の中でピーター・パーカーが一学年ずつ進級し、成長する様子を描いていくのがその特徴になっている。
例えば、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) は舞台が夏休みに設定されており、アメリカの学年末は6月なので、6月〜7月が舞台になっていることが分かる。『ノー・ウェイ・ホーム』では“進学”がテーマの一つになっており、4年生の秋学期が舞台になっている。
各作品でのピーターの学年を見ていく前に確認しておくべきなのは、日本とは違うアメリカにおける教育システムだ。小中高で6-3-3年の計12年間を過ごす日本の教育とは違い、アメリカ(ニューヨーク市)では小中高で5-3-4で計12年間を過ごす。14歳で高校に入学したピータ・パーカーは、高校一年生の時にスパイダーマンになっている。また、学年の区切りも6月に学年末を迎え、8月に新学年を迎えるということも押さえておこう。
『シビル・ウォー』〜『ホームカミング』
そして、この条件を前提にして計算していくと、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で受験に挑んでいるピーターは、映画『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』の時点でもまだ高校一年生の終わりで、14歳ということになる。なお、ピーターの年齢については『ファー・フロム・ホーム』で写るパスポートで2001年8月10日生まれとなっており、これを元に計算していく。
『シビル・ウォー』の冒頭では、「現在」と表示されたタイムラインで、ブロック・ラムロウが警察署を襲ったという新聞記事に「2016年」という表記が見られる。『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) の冒頭では「2か月後」という表記があり、後述の理由で同作は8-9月が舞台になっていることから、『シビル・ウォー』は2016年6月〜7月が舞台になっていることが分かる。『シビル・ウォー』で、トニー・スタークは当時高校一年生のピーター・パーカーを招集したのだ。
もちろんニューヨークで活躍する“スパイダーマン”としてのリクルートであり、「自分に何かできるのにしなかったせいで悪いことが起きたら自分のせい」と話すピーターの責任感を買ってのことだ。それでも14歳の少年をドイツで行われる身内の“戦争”に駆り出すとはなかなかの采配である。
そして『シビル・ウォー』の舞台裏から始まる『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) の冒頭では、「2か月後」という表記と共に高校生活に戻ったピーターの姿が描かれる。この時点でピーターは高校2年生の15歳。サブタイトルにある通り、舞台は9月下旬に高校で実施される“ホームカミング”の時期で、8月から新学年が始まるアメリカではピーターは2年生になったばかりだ。2017年公開の作品だが、舞台は2016年8月〜9月なのだ。
『ホームカミング』では、ネッドが吹き替えでも字幕でもリズのことを「上級生」と言っているが、英語では高校4年生を示す「Senior」と言っている。2年生だったピーターが、スパイダーマンの力を借りて二学年も上の相手にアプローチするという点がストーリーの醍醐味だったのだ。
ちなみにアメリカにおける高校の学年の呼び方は以下の通り。
2年生=ソフモア (Sophomore)
3年生=ジュニア (Junior)
4年生=シニア (Senior)
なお、ピーターが1年生でスパイダーマンになった経緯は、今後配信される予定のDinsey+のアニメシリーズ『スパイダーマン:フレッシュマン・イヤー(原題)』で描かれることになっている。
『インフィニティ・ウォー』〜『エンドゲーム』〜『ファー・フロム・ホーム』
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) は、映画の公開時期と同じ2018年4月が舞台になっている。『ホームカミング』から約2年が経過し、ピーターは16歳で3年生の後半(春学期の後半)を迎えているところ。そこにサノス軍が襲来して宇宙まで連れて行かれた挙句、指パッチンで消えてしまうのだから可哀想にも程がある。
ややこしくなるのは、『インフィニティ・ウォー』での指パッチンでピーターがMJやネッドらと共に5年間消えてしまったことだ。年数は経過するが学年は据え置きということになる。ピーターは2018年4月に16歳で消え、5年半後の2023年10月に16歳として戻ってきた。8月の誕生日を6回スキップしたことになる。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) は学年末が舞台になっているため、時期は6月だ。冒頭のミッドタウン高校のニュース番組で『アベンジャーズ:エンドゲーム』(2019) の人口復活から8ヶ月が経過したと語られていることから、『エンドゲーム』のラストは2023年10月だと推測できる(このようにタイムラインが分かりやすい「スパイダーマン」シリーズを起点にMCUのタイムラインが判明することも少なくない)。『エンドゲーム』の終盤では、学校でネッドと再会するピーターの姿が見られた。
『ファー・フロム・ホーム』のミッドタウン高校のニュース番組では、ベティ・ブラントが「学年の半分が過ぎて中間テストも受けていたのに一年間やり直し」になったと語っている。ピーターたちは既に一度終えている高校3年生の秋から人生を再スタートさせたようだ。ベティは「長くて大きな寄り道をしたと思って」と生徒達を慰めている。
『エンドゲーム』の翌年の2024年を舞台にした『ファー・フロム・ホーム』では、16歳で3年生の終わりにあたる夏休みにヨーロッパでの研修旅行を楽しんだピーターだったが、その正体を世界中に暴露されてしまう。この夏、ピーターは4年生に進級すると共にようやく17歳を迎える。
『ノー・ウェイ・ホーム』
そして、『ファー・フロム・ホーム』の直後からスタートする『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、2024年8月頃からクリスマスシーズンの12月までが舞台になる。『ノー・ウェイ・ホーム』のタイムラインについて触れる前に、各作品におけるピーターの学年をまとめておこう。
※アメリカの学年は秋学期から始まり、春学期に終わる。
※ピーターの誕生月は8月
2016年 1年生春学期 (14歳)『シビル・ウォー』
2016年 2年生秋学期 (15歳)『ホームカミング』
2018年 3年生春学期 (16歳)『インフィニティ・ウォー』
〜5年間消滅〜
2023年 3年生秋学期 (16歳)『エンドゲーム』(終盤)
2024年 3年生春学期 (16歳)『ファー・フロム・ホーム』
2024年 4年生秋学期 (17歳)『ノー・ウェイ・ホーム』
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の舞台は2024年
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、『ノー・ウェイ・ホーム』の直後であることと、ピーター達が受験シーズンを迎えていることから、2024年8月〜12月が舞台になっていることが分かる。服装から見ても本作は秋頃がメインの舞台だろう。ピーターやMJは高校4年生になったばかりで、翌年8月に大学に入学するために受験に臨んでいるのだ。
『ノー・ウェイ・ホーム』のラストシーンでは、街のデコレーションからも雪が降るクリスマスシーズンを迎えていることが分かる。まだ高校4年の冬休みの時期だが、ピーターの存在はなかったことになっているため、もう高校生ではない。
指パッチンで消えた人々はベティのいう通りほとんど丸一年間高校生活をやり直しになっており、ピーターは高校4年の秋も途中までこなしていたため、既に4年以上は高校に通ったはずだ。なのに高校生活が丸々なかったことになるという残酷な現実に直面している。
それでも、ラストシーンでピーターはアメリカの高卒認定である「GED: General Educational Development」を受けようとしていることが分かる。ピーターは全く絶望しておらず、前へ進もうとしているのだ。しかし、保護者の同意なしでGEDを受けられるのは18歳からだ。学力的には問題なくパスできると思われるが、ピーターが高卒認定を受けられるのは翌2025年の8月以降になる。
もしピーターが大学進学をするつもりなら2026年以降の入学ということになる。学費の問題はあるが、給付型の奨学金を受けられるレベルの学力はあるはずで、スパイダーマンとしての正体もバレていないのだから問題ないだろう。
『ホークアイ』との繋がり
そして注目したいのは、クリスマスドラマとしてアメリカでは『ノー・ウェイ・ホーム』と同じ時期に配信されたドラマ『ホークアイ』との繋がりだ。
『ノー・ウェイ・ホーム』のエンディングで手製の新しいコスチュームを身にまとったスパイダーマン はクリスマスムードのニューヨークの街をスイングする。最後に映る場面は『ホークアイ』最終話の舞台となったロックフェラーセンターの巨大ツリーだ。
こちらの記事で詳しく紹介したが、ドラマ『ホークアイ』の舞台は2024年12月。監督もそう明言したが、第3話で登場した巳年の旧正月のポスターが古びていたことからも巳年の2024年12月であることが分かる。
つまり、『ホークアイ』の1週間と『ノー・ウェイ・ホーム』のラストは同じ時期が舞台だと考えることができる。一方で『ホークアイ』最終話でケイト・ビショップが倒した巨大ツリーが健在なので、『ホークアイ』最終話よりも『ノー・ウェイ・ホーム』のラストの方が前の出来事であることが分かる。
ドラマ『ホークアイ』では、せっかくニューヨークに来たクリント・バートンがピーター・パーカーについて触れることはなかった。少し不思議にも思えたが、『ノー・ウェイ・ホーム』を見れば、クリントの記憶からもピーターの存在が消えていたことが分かる(スパイダーマンの存在自体は記憶に残っているはずだが)。
MCUフェーズ4の時系列は?
最後に、MCUフェーズ4の時系列をまとめておこう。ドラマ『ワンダヴィジョン』は、モニカが指パッチンから復活してから3週間で復帰するシーンが描かれており、『エンドゲーム』ラストの翌月にあたる2023年11月が舞台と推測できる。次にドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』はサムが「空軍と組んで半年になる」と発言していることから、指パッチンからの復帰後&スティーブから盾を引き継いだ後に復帰したとして、2024年4月〜5月が舞台ということになる。
この両作のタイムラインの考察はこちらの記事に詳しい。
ドラマ『ロキ』は『エンドゲーム』で枝分かれしたタイムラインが舞台で、目時間の流れ方が異なるTVAが舞台。2023年10月以降を舞台にした作品は『ロキ』で起きた事件の影響を受けていると考えてよい。
こちらの記事で考察した通り、『ロキ』でTVAが時間軸の枝分かれを剪定する力を失っていなければ、『ノー・ウェイ・ホーム』でヴィランを治療して帰しても「変異体」と見なされてTVAに剪定されていたはずだ。
映画『ブラック・ウィドウ』は過去編で、『シビル・ウォー』の間の出来事が描かれている。2016年の『シビル・ウォー』の中でトニー・スタークと決裂してからラストでスティーブ・ロジャースと共に捕らえられた仲間を助けに行くまでの物語になっている。『ブラック・ウィドウ』のタイムラインはこちらの記事に詳しい。
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は、劇中に指パッチンから帰ってきた人向けのセラピーのポスターが見られることから『エンドゲーム』後であることは確実。そして、清明節の日=4月5日にター・ローの村への道が開かれる描写があるため、2024年3月〜4月が舞台ということになる。
何千年というスパンで物語が描かれる映画『エターナルズ』が最も厄介だ。同作については幸い、プロデューサーのネイト・ムーアが『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』と同じ時期であると発言してくれている。ティアマットの《出現》が食い止められたのは、2024年6月ということになる。
そして『ホークアイ』と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が2024年12月。ここにスパイダーマンが登場した過去の作品も加えると、以下のようなタイムラインになる。
2016年9月 『スパイダーマン:ホームカミング』でバルチャー逮捕
2018年4年 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で指パッチン
2023年10月 『アベンジャーズ/エンドゲーム』で人口復活
2023年10月 『ロキ』で神聖時間軸が崩壊
2023年11月 『ワンダヴィジョン』のワンダ事変
2024年4月 『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で二代目キャプテン・アメリカ誕生
2024年4月 『シャン・チー/テン・リングスの伝説』でテン・リングス復活
2024年6月 『エターナルズ』でティアマット《出現》未遂
2024年6月-7月 『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でスパイダーマンの正体暴露
2024年12月 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で新スパイダーマン誕生
2024年12月 『ホークアイ』で二代目ホークアイ誕生
こう見ると、やはりMCUフェーズ4は次々と新ヒーロー誕生が生まれていることが分かる。
そして2022年5月4日(祝・水) 日本公開予定の映画『ドクター・ストレンジ/マルチ・バース・オブ・マッドネス』では『ノー・ウェイ・ホーム』後の2024年12月以降が舞台になることはほぼ確実。ワンダも登場するが、2023年11月の『ワンダヴィジョン』のラストから1年以上が経過していることになる。果たしてどのような物語が描かれるのだろうか。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のポストクレジットシーンになっていた『ドクター・ストレンジ/マルチ・バース・オブ・マッドネス』予告編の解説はこちらの記事で。
映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は2022年1月7日(金) より、日本全国の劇場で公開。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のサウンドトラックはAmazonで配信中。
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『ノー・ウェイ・ホーム』と『ホークアイ』の詳しい繋がりについてはこちらの記事で解説している。
当初予定されていた別の展開と、その内容が変更になった意外なきっかけはこちらの記事で。
ピーターがドクター・ストレンジの魔法を超越できた理由、ピーターを噛んだクモについての考察はこちらの記事で。
『アメイジング・スパイダーマン3』の可能性も? アンドリュー・ガーフィールドが本作への出演について語った内容はこちらから。
トム・ホランドとゼンデイヤが語ったトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドとの共演エピソードはこちらから。
ネッドのこれまでの活躍と原作コミックでの設定はこちらの記事にまとめている。
映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
映画『エターナルズ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
ドラマ『ホークアイ』最終話のネタバレ解説はこちらから。
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