J・J・エイブラムスによるエモーショナルな映画!?『ホットウィール』実写映画化 | VG+ (バゴプラ)

J・J・エイブラムスによるエモーショナルな映画!?『ホットウィール』実写映画化

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『バービー』に続くマテル社の玩具の実写映画化

全米興行収入が280億円を突破し、アメリカにピンク色の旋風を巻き起こしているマーゴット・ロビー主演、グレタ・ガーウィグ監督作『バービー』(2023)。全米では2023年7月21日に公開され、日本でも2023年8月11日に全国公開されることが決定されている。着せ替え人形であったバービー人形を社会的に大きな影響を与える物語に変えたグレタ・ガーウィグ監督とマーゴット・ロビーだが、そのあとに続くようにマテル社はいくつかの玩具の実写映画化を計画している。

マテル社と言えばアメリカにおいても最大手の一つに数えられる玩具メーカーだが、映画という分野においては同規模のライバル玩具メーカーのハズブロ社の実写映画版「トランスフォーマー」シリーズ、実写映画版「G.I.ジョー」シリーズ、『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(2023)などで押され気味な印象だ。しかし、ここからマテル社の反撃の狼煙が上がるのかもしれない。

マテル社の抱える大量の実写映画化企画

現在、マテル社は紫色のティラノサウルスが主人公の『バーニー&フレンズ』(1992-)を『NOPE/ノープ』(2022)のOJ役のダニエル・カルーヤがプロデューサーとなり、実写映画化が進行している。『バーニー(原題:Barney)』というタイトルの実写映画化作品では、子供向けとは異なり『ミッドサマー』(2019)や『LAMB/ラム』(2021)などを製作したA24フィルムズのような作風になると報じられている。

他にもメトロ・ゴールドウィン・メイヤー・スタジオ(MGMスタジオ)製作の化粧のコンパクトの中に部屋がつくられた女児向け玩具の「ポーリー・ポケット」シリーズや、占い玩具の「マジック8ボール」のホラー映画、ヴィン・ディーゼルが主演で卓上ボクシングゲーム「ロック・エム・ソック・エム・ロボット」シリーズの実写化も進んでいる。

さらには誰しもプレイ経験があるといっても過言ではないカードゲーム「UNO」シリーズの映画化すらも企画されている。「きかんしゃトーマス」の実写化など現在のマテル社が抱える実写映画化の案件は45件を超えると言われており、実写映画版『バービー』の勢いに乗っていこうとしているようだ。

その中でも注目されているのが、『LOST』(2004-2010)や『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)、リメイク版「スタートレック」シリーズ、「スターウォーズ」シリーズの続三部作を制作したJ・J・エイブラムスによる『ホットウィール(原題:Hot Wheels)』だ。

エモーショナルな作品になる?『ホットウィール』

「ホットウィール」シリーズは1986年に発売が開始されたミニカーであり、様々なデザインが存在し、熱烈な愛好家も多い玩具だ。オレンジ色のレーンを宙返りするキットなどが有名だろう。愛好家の中には幼少期に「ホットウィール」シリーズで初めて自動車というものに触れて、それから自動車業界に入り、自動車デザイナーになったという人々も多い。

J・J・エイブラムスは『ホットウィール』はエモーショナルな映画になるといった旨の発言をしており、マテル社側もそれに関して概ね認めている。しかし、ミニカーの玩具の映画のどこがエモーショナルなものになると思う人もいるだろう。だが、「ホットウィール」シリーズのデザインについて紐解いてみると、そもそも「ホットウィール」シリーズにはエモーショナルな要素があったことがうかがい知れる。

「ホットウィール」シリーズと言えば実物の自動車では不可能に近い奇抜なデザインや、ド派手なホットロッドなどが特徴的な玩具だ。そのデザインには一部、シボレーやクライスラー、ダッチなどの著名な実物のカーデザイナーが携わっている。つまり、「ホットウィール」シリーズはそのような著名なカーデザイナーが法律やビジネス上の理由で不可能になった夢の自動車をミニカーにしたものであり、「ホットウィール」シリーズそのものが自動車業界の夢の産物というエモーショナルな存在なのだ。

受け継がれる夢と映画化

シボレーやクライスラー、ダッチなどの著名な自動車を手掛けるカーデザイナーたちが不可能とされた空想、夢、カーデザインを子供向け玩具として落とし込んだ「ホットウィール」シリーズ。それは正しく魔法の玩具であり、「ホットウィール」シリーズ愛好家を生み、新しいカーデザイナーの卵を産んでもいる。その受け継がれてきた夢をマテル社の映画部門であるマテル・フィルムズは映画化しようとしているのだ。

それを踏まえるとJ・J・エイブラムスというSF作品の名手を起用したことには、物語やカースタントだけではなく、これまで自動車産業の商業ラインの中で不可能とされてきたカーデザインが、映画のためだけにある種のコンセプトカーとして実物の自動車になる。これほどまでにカーデザイナーにとってエモーショナルなことがあるだろうか。実写映画版『ホットウィール』において、どのホットウィールが実写化ならぬ実車化されるのかについても期待が高まる。

ネット上にミームを生むほど大ヒットを果たし、アカデミー賞など数多くの映画賞の衣装部門の受賞歴のあるジャクリーヌ・デュランが衣装デザインを務め、今年のアカデミー賞受賞の可能性すらあると言われている『バービー』。そのあとに続くようにA24フィルムズ風の『バーニー』や「ポーリー・ポケット」シリーズ、「マジック8ボール」のホラー映画、ヴィン・ディーゼル主演の「ロック・エム・ソック・エム・ロボット」シリーズに「UNO」シリーズなど数多くの実写映画化の企画が進むマテル社。

その実写映画化企画案の中に並ぶことになった自動車産業やそこに携わる人々、そして自動車と「ホットウィール」シリーズの愛好家たちの夢が詰まったJ・J・エイブラムス製作の『ホットウィール』。その続報に期待していきたい。

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「ホットウィール」公式サイト

実写映画バービーの続編とマテル社CEOの方針はこちらから。

実写映画版『バービー』初映像はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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