ネタバレ注意! 当初は別の展開が予定されていた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』変更された理由とは | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ注意! 当初は別の展開が予定されていた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』変更された理由とは

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公開中

2022年1月7日(金)から日本でも劇場公開された映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。既に複数回観に行ったという方もいるのではないだろうか。本作は過去の「スパイダーマン」映画シリーズからヴィラン達が集結。他作品からのオマージュもたっぷりで、見るたびに新たな発見がある作品に仕上がっている。

米公開からは1ヶ月以上が経過し、徐々に情報公開が進む中、脚本を担当したクリス・マッケナとエリック・ソマーズが製作の経緯について米メディアで語っている。当初予定されていた筋書きから、その内容が大きく変更されていったことが明かされている。

以下の内容は、『ノー・ウェイ・ホーム』に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の内容に関するネタバレを含みます。

『ノー・ウェイ・ホーム』の衝撃の展開

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』における衝撃の展開といえば、サム・ライミ監督版の「スパイダーマン」三部作からトビー・マグワイアが、マーク・ウェブ監督版の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズからアンドリュー・ガーフィールドが登場したことだった。

窮地に陥ったトム・ホランド版ピーター・パーカーの前に現れた二人のピーター・パーカーは、過去シリーズでの経験を糧に若きスパイディーに助言を与え、共闘するのだった。『ノー・ウェイ・ホーム』公開前から二人のスパイダーマンが登場するのではという予想はあったが、これほどまでにストーリーにコミットする形で描かれるとは、多くの人が予想を裏切られたことだろう。

体質上の困難や怪我を乗り越えてスパイダーマンを演じたにもかかわらず、パパラッチからはひどい仕打ちを受け、映画製作会社設立後は出演作品数が大きく減少していたトビー・マグワイア。3作品分の契約があったにもかかわらず、2作品で「アメイジング・スパイダーマン」を打ち切りにされたアンドリュー・ガーフィールド。この二人が再びスパイダーマンのコスチュームを身にまとったこと自体が感動的なのに、それらの過去を踏まえてスパイダーマンを再演し、若きスパイダーマンを助ける姿には心を打たれた。

当初は“救世主”だった

MCU「スパイダーマン」全作で脚本を担当しているクリス・マッケナとエリック・ソマーズは、米Varietyのインタビューでトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドの参加について、その裏側を明かしている。

2019年12月に執筆が始まった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の脚本は、トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドの参加を前提として書き進められていたという。そして、クリス・マッケナとエリック・ソマーズはプロデューサーたちから定期的にトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドの二人との交渉について、定期的に進捗の報告を受けており、その内容は前向きなものだったという。

なお、アンドリュー・ガーフィールドは米Varietyの別のインタビューで、元ソニー・ピクチャーズ共同会長のエイミー・パスカルとマーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギという二人の大物と、ジョン・ワッツ監督から話を受けたことを明かしている。「その提案は本当に本当に魅力的でした」というのがアンドリュー・ガーフィールドの印象だ。

クリス・マッケナとエリック・ソマーズは、その進捗を聞いて「本当に!? すごい!」という反応をしていた一方で、脚本通りの演出が実現することに何の保証もなかったと振り返っている。

また、当初の脚本では、二人のスパイダーマン登場は完成版とは全く違う形だったことをクリス・マッケナが明かしている。

あるマーベルキャラクターに連れてこられた二人(のスパイダーマン)は「さぁ、君を困難から助け出す救いが現れたよ」という感じで、まさにデウス・エクス・マキナな演出だったんですよ。

「デウス・エクス・マキナ」とは、物語の演出において主人公が窮地に陥ったときに絶対的な力を持った存在が現れ、困難を解決に導く手法を指す。トム・ホランドのピーターよりも“先輩”である二人のスパイダーマンは、当初はまさに“救世主”として登場する予定だったのだ。

なお、この「マーベルキャラクター」が誰かということは明かされていないが、恐らくドクター・ストレンジだったのではないかと予想できる。だが後述するように、二人のスパイダーマンを呼び込むのはネッドの役割ではなかったことは確かだ。

そしてこの脚本の形は、恐らく多くのファンが考える二人のスパイダーマン登場の形だったのではないだろうか。物語の終盤にチョイ役で登場して5人のヴィランからMCUスパイダーマンを助けて元のユニバースに帰っていく(何ならマスクも取らない)というのが、“現実的”な予想のはずだ。

脚本に変化が

この脚本案は2020年の秋に映画の制作が始まった後もそのままだったというが、大きな変化が訪れたのは制作開始から2ヶ月が経過した頃だったという。「設定」「対立」「解決」という三つに分けた構成の内、「設定」と「対立」については既に撮影が完了しており、「解決」にあたる第3幕をテコ入れすることに。

ここでネッドとMJがドクター・ストレンジのスリング・リングでトム・ホランドのピーターを見つけようとすると、誤って別の二人のピーター・パーカーを呼び出してしまうというアイデアを思いついたのだという。クリス・マッケナは「暗闇の中に一筋の光が見えました」と言い、「これでトビーとアンドリューが手に入る!」と喜んだと振り返っている。

結果、トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドのピーター・パーカーは神のような救世主としてではなく、非常に人間的な存在としてMCUに合流することになった。トビー・マグワイアのピーターは体格が強調されない「青年牧師」のような服を着て登場すると、腰を痛めた過去をアンドリュー・ガーフィールドのピーターと共有する。

アンドリュー・ガーフィールドはメイを失ったトム・ホランドのピーターに寄り添うことで、グウェンを助けられず自暴自棄になった過去中途半端な形で終了せざるを得なかった「アメイジング・スパイダーマン」シリーズに向き合う。

色々あった二人がそれらのコンフリクトをなかったことにして英雄のように登場するのではなく、トム・ホランドのピーターと同じ人間として登場したことは、『ノー・ウェイ・ホーム』最大のサプライズであったし、それが最大の魅力にもなった。

脚本が変わった理由とは

では、『ノー・ウェイ・ホーム』の脚本はどのようにしてあの形にシェイプされていったのだろうか。トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドの二人が最初の脚本を手にしたのは2020年12月のこと。公開から約1年前のことである。クリス・マッケナは、この二人の助言が脚本にしっかり反映されていると米Hollywood Reporterに語っている。

二人は素晴らしいアイデアを持っていて、私たちが目指していたものを洗練させ、厚みと幅を広げてくれたんです。それで私たちは二人がトムのピーターを助けて、トムのピーターが最後にどのような人物になるかという点に磨きをかけていきました。

映画のクライマックスには、この二人がピーターを助ける重要で道徳的な場面があります。その多くはトビーとアンドリューのアイデアであり、二人のキャラクターがこの物語に何をもたらすことができるかという点を洗練させてくれました。

物語のクライマックスでは、アンドリュー・ガーフィールドのピーターは、MJを助ける形でグウェンを助けられなかった過去に一つの区切りをつける。このシーンはトム・ホランドのピーターにとっては、周囲の人々を巻き込み続けることで、いつかMJを本当に失ってしまうという教訓を与えたのだろう。

トビー・マグワイアのピーターは過去に自分が死に追いやり、その死が親友の死の引き金にもなったグリーン・ゴブリンを助ける。血で血を洗う争いが、やがて親友まで死に至らせることを身をもって知るからこそ、身を呈してトム・ホランドのピーターを止めたのだ。

この二人との出会いと経験を経て、トム・ホランドのピーター・パーカーはラストでMJとネッドの安全を優先する道を歩むことを決める。そしてこの展開は、ほかでもないトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドの助言によって完成されたものだったというのだから、この映画のテーマの一つである「やり直し」は、何重もの意味を持って輝く。

そして、アンドリュー・ガーフィールドが再びスパイダーマンを演じることに意欲を見せていることにも注目だ。「トビーと私の撮影期間は2週間でしたが、ただ現れて『やぁ! じゃあね!』で終わるのではない何かを成し遂げることができたと思います」と語るアンドリュー・ガーフィールドの『アメイジング・スパイダーマン3』制作の可能性についてはこちらの記事で。

脚本家の二人が語った『ノー・ウェイ・ホーム』のエンディングの意図についてはこちらから。

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は2022年1月7日(金) より、日本全国の劇場で公開。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公式サイト

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Source
Variety1 / Variety2Hollywood Reporter

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『ノー・ウェイ・ホーム』エンディングからミッドクレジット、ポストクレジットの解説はこちらの記事で。

『ノー・ウェイ・ホーム』の終わり方を受けたスパイダーマン達とその他のキャラクターの今後については、こちらの記事で考察している。

トム・ホランドとゼンデイヤが語ったトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドとの共演エピソードはこちらから。

ピーターがドクター・ストレンジの魔法を超越できた理由、ピーターを噛んだクモについての考察はこちらの記事で。

脚本家が語ったヴェノム登場の理由はこちらの記事で。

本作に登場したあの弁護士/デア・デビルについてはこちらの記事で解説している。

 

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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