ネタバレ考察『ホワット・イフ…?』第8話 5人目のネクサス・ビーイング登場が示唆する“6人目”の存在 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ホワット・イフ…?』第8話 5人目のネクサス・ビーイング登場が示唆する“6人目”の存在

© 2021 Marvel

『ホワット・イフ…?』第8話配信開始

MCU初のアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』シーズン1は、MCUフェーズ3までのストーリーを対象に、起こり得た「もしも」の物語を描いていく。公式には『ホワット・イフ…?』の全ての物語は分岐イベントが発生したMCU世界で実際に起きており、“正史”に含まれるとされている。

故に「もしも」のストーリーを通して見えてくる事実も多い。第7話では『キャプテン・マーベル』(2019) の後の行方が知られていない猫のグースに関するヒントが用意されており、第6話ではトニー・スタークが兵器開発をやめた本当の理由が明らかになった。では、『ホワット・イフ…?』シーズン1の大きな転換点となった第8話には、どのようなヒントが隠されていたのだろうか。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』第8話、ドラマ『ワンダヴィジョン』『ロキ』の内容に関するネタバレを含みます。

第8話に登場した“ネクサス・ビーイング”

『ホワット・イフ…?』第8話における最大の事件といえば、アベンジャーズに勝利したウルトロンが6つのインフィニティ・ストーンを全て手に入れたことだろう。魂を感知するソウルストーンの力だろうか、地球以外にも生命が存在していることを知ったウルトロンは、スペースストーンで空間を移動してアスガルドやサカールといった同じタイムライン内の別世界を破壊していく。

宇宙中の生命を殲滅したウルトロンは、“平和”をもたらすという目的を達成。その役目を終えようとするが、その耳に飛び込んできたのはウォッチャーの声だった。自身がたたずむユニバースの“向こう側”にいるウォッチャーの存在を嗅ぎ取ると、ユニバースの“壁”を破ってウォッチャーに迫るウルトロン。混沌に陥っている他のユニバースを見るや、これらの世界にも“平和”をもたらすことが自分の使命だと信じ、他のユニバースへの侵攻を目論むのだった。

ウルトロンに敗北したウォッチャーは、第4話で見捨てたドクター・ストレンジ・スプリームの元へ。現実に干渉しないという誓いを捨てて、ドクター・ストレンジに助けを求めたところで第8話は幕を閉じる。ここから第7話ラストでパーティ・ソーのユニバースにウルトロンが現れる場面へと繋がっていくのだろう。

MCUにおけるネクサス・ビーイング

ウルトロンがマルチバースを超えていく存在に……。こんな展開を誰が予想しただろうか。コミック版では、マルチバース間を自由に移動して各宇宙を繋ぐ存在を“ネクサス・ビーイング”と呼ぶ。今回、MCU世界においてはウルトロンがネクサス・ビーイングの一人になったのだ。

MCUにおいてネクサス・ビーイングが登場するのはウルトロンで5人目。TVA職員やロキなどもマルチユニバース間を移動しているが、ネクサス・ビーイングを“自力でマルチバースを移動できるパワーを持った人物”に限ると、誰もがその力を持てるわけではないことが分かる。

MCUにおけるネクサス・ビーイングの筆頭はワンダ・マキシモフだった。ワンダを演じるエリザベス・オルセンはワンダのデビュー作となった『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) の時点で「ワンダは“ネクサス”で、超常現象や過去・未来、そして別のユニバースと交信できる唯一の人間」と語っていた

「唯一の人間」かどうかは判断が難しいところだが、“人間”の中では最も強い力を持っているということは確かだろう。

次にマルチバースを繋ぐ存在としてMCUに登場したのはカーンである。ドラマ『ロキ』で登場したカーンは、複数の変異体がユニバースを超えて戦争を始めることを示唆した。元々この世界に複数の宇宙が存在することを発見した天才科学者であり、2023年2月17日米公開を予定している『アントマン&ワスプ:クアントゥマニア(原題)』ではメインヴィランとして登場する。

『ホワット・イフ…?』で登場したウォッチャーは、全てのユニバースを見ることができる。ネクサス・ビーイングであるかどうかは、マルチバースに干渉できる/影響を与えられるかどうかもポイントになるが、ウォッチャーは第8話で遂に干渉することを決めた。ウォッチャー自体は種族の名前であり複数存在しているが、『ホワット・イフ…?』で案内役を務めているウアトゥは「干渉しない」という一族の掟を破ることになる。

(ウォッチャーは宇宙全体に影響を与えることができる“コズミック・ビーイング”でもあるため、ネクサス・ビーイングに含めるかどうかは微妙なところである。)

2021年12月17日(金)に全米公開を予定している映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編では、ドクター・ストレンジがマルチバースの扉を開くことが示唆されている。そして、『ホワット・イフ…?』第4話ではカリオストロの書庫での研究を経たドクター・ストレンジが異次元の魔物を呼び出す展開も。数世紀にわたって自身の身体に魔物を取り入れ続け、遂にはウォッチャーと対話ができるようになる。

2022年3月25日(金)全米公開を予定している『ドクター・ストレンジ2』改め『ドクター・ストレンジ・イン・マルチバース・オブ・マッドネス(原題)』では、もう一人のネクサス・ビーイングであるワンダとの対決に注目が集まる。まだドクター・ストレンジがネクサス・ビーイングであるとはっきり描かれたわけではないが、ウォッチャーが頼るほどの人物である。『ホワット・イフ…?』最終話は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』へのヒントにも注目したい。

ワンダカーンウォッチャードクター・ストレンジ、そして第8話の完全体ウルトロンは、マルチバースを移動できるネクサス・ビーイングと考えて良いだろう。それ以外にも、2021年11月5日(金)公開の映画『エターナルズ』で初めて本格的に登場するセレスティアルズなど、多元宇宙を移動する力を持っている可能性がある存在はいる。だが、そうした“コズミック・ビーイング”と呼ばれる宇宙の上位存在を除いて、次のネクサス・ビーイングになりそうな人物も存在している。

ヴィジョンもネクサス・ビーイングに?

それはヴィジョンである。『ホワット・イフ…?』第8話でネクサス・ビーイングになったウルトロンだが、その身体は本来ヴィジョンになるはずのものだった。このヴィジョンと完全体ウルトロンの違いはといえば、アップロードされた意識がウルトロンであるか、J.A.R.V.I.S.であるかという点と、マインドストーン以外の5つのインフィニティ・ストーンを持っているかどうかという点だけである。

つまり、ヴィジョンもまた額に埋め込まれたマインドストーンに加え、5つのインフィニティ・ストーンを揃えればネクサス・ビーイングになれる可能性が高い。ウルトロンは本来はAIであり、インターネット上のあらゆる空間にアクセスできるといった力はあるが、それはJ.A.R.V.I.S.も同様だ。

映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、核ミサイルの発射コードにアクセスしようとするウルトロンをJ.A.R.V.I.S.が阻止していたこともあった。なお、トニー・スタークが核ミサイルの発射コードを死守するJ.A.R.V.I.S.を発見したのは、オスロにあるインターネットの中枢施設“ネクサス”でのことである。

映画とドラマを軸にしたMCU本編の世界では、既にインフィニティ・ストーンはサノスの手によって破壊されている。だが、『ホワット・イフ…?』第7話と第8話では、別ユニバースからもインフィニティ・ストーンを移動できることが明らかになった。

ワンダが何らかの形でヴィジョンを復活させ、別のユニバースのインフィニティ・ストーンを手に入れたヴィジョンがネクサス・ビーイングになる可能性はあるだろう。また、単純に別ユニバースのヴィジョンがインフィニティ・ストーンを揃えれば、MCU本編の世界にやってくることもあり得る。これは完全体ウルトロンのパターンである。

ホワイトヴィジョンが伏線に?

また、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) でどこかに飛び去ってしまったホワイトヴィジョンの存在も忘れてはいけない。ヴィジョンのコピーであるホワイトヴィジョンは、完全体ウルトロンのコピーでもある。ホワイトヴィジョンもネクサス・ビーイングになる素質はあるだろう。ホワイトヴィジョンにはマインドストーンが埋め込まれていないが、後から6つのインフィニティ・ストーンを手に入れることはできる。

一方で、そもそも完全体ウルトロンがネクサス・ビーインになれた原因が6つのインフィニティ・ストーンの力によるものなのかどうかは明かされていない。6つのインフィニティ・ストーンさえ揃えれば、誰でもネクサス・ビーイングになれるというわけでもないはずだ。現時点の仮説としては、6つのインフィニティ・ストーンと、その継続的な使用に耐えられる身体(=ヴィブラニウムで構成されたヴィジョンの身体)が条件であると考えられる。その意味ではホワイトヴィジョンは既に半分の条件を満たしているのだ。

なお、MCU世界のネクサス・ビーイングの構成で言えば、少々バランスが悪い状況になっている。ワンダは子どものビリーとトミーを取り返すことに躍起になっており、その姿は『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) でのウェンウーの姿を想起させる。ワンダとウェンウーの共通点についてはこちらの記事に詳しい。

ドクター・ストレンジ・スプリームもまた、愛する人を取り戻すために異次元の扉を開いて魔物を呼び出した。また、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』におけるドクター・ストレンジは、ピーター・パーカーのためにマルチバースの扉を開くようだが、予告映像を見る限りではお人好し過ぎようにも見える。

カーンがマルチバースを移動する動機は“侵略”であり、侵略者カーンの到来は目に見えている。サノスに代わるフェーズ4の大ヴィランがネクサス・ビーイングなのだ。そしてウルトロンは言わずもがな。唯一客観的かつ善なる心を持っているように見えるウォッチャーも、一族の掟を破って世界に干渉することが何を意味するのかはまだ分かっていない。

ヴィジョンのような高尚な精神を持ったネクサス・ビーイングが登場すれば、MCU全体のバランスも取れそうだ。“平和”をもたらすというウルトロンのスローガンに反して、ますます混沌に陥っていくMCUのマルチバース設定。それぞれのネクサス・ビーイングの行く末と、次のネクサス・ビーイング登場に注目しよう。

アニメ『ホワット・イフ…?』はDisney+で独占配信中。

『ホワット・イフ…?』(Disney+)

第8話のネタバレ解説はこちらから。

MCU本編におけるウルトロン生存説についてはこちらの記事で。

第7話のラストから考えるインフィニティ・ストーンに関する新説はこちらから。

『ホワット・イフ…?』での“アイアンマン死に過ぎ問題”についての脚本家の説明は、こちらの記事で。

『ホワット・イフ…?』第7話で見えたキャプテン・マーベルについての新セオリーはこちらから。

『キャプテン・マーベル』の猫のグースのその後に関する考察はこちらから。

 

最終回のメインポスターと注目ポイントはこちらから。

 

11月24日(水)から配信を開始するドラマ『ホークアイ』の予告編とその解説&考察はこちらから。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編の解説&考察はこちらから。

 

映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』のポストレクジットシーンのネタバレ解説はこちらから。

 

『ホワット・イフ』シーズン1最終話までの全話あらすじ&分岐イベントのまとめはこちらから。

『ホワット・イフ…?』第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第6話のネタバレ解説はこちらから。

第7話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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