ネタバレ考察『シャン・チー』ウェンウーが『ワンダヴィジョン』と繋がる? 『ドクター・ストレンジ』続編への伏線か | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『シャン・チー』ウェンウーが『ワンダヴィジョン』と繋がる? 『ドクター・ストレンジ』続編への伏線か

© 2021 Marvel

『シャン・チー』と『ワンダヴィジョン』の繋がりに注目

2021年9月に劇場公開された映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は、フェーズ4におけるニューヒーロー第1弾として、初のアジア系主人公であるシャン・チーをMCUに招き入れた。一方、MCUフェーズ4が幕を開けたのは2021年1月にDisney+で配信を開始した『ワンダヴィジョン』からだ。

実は、この両作品にはある共通点が存在する。劇中で全く同じ演出が登場するのだが、それが2022年4月25日全米公開を予定している『ドクター・ストレンジ・イン・マルチバース・オブ・マッドネス(原題)』にも繋がるかもしれない内容になっている。今回は、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』と『ワンダヴィジョン』のネタバレありで、その共通点について考察してみよう。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』およびドラマ『ワンダヴィジョン』の結末に関するネタバレを含みます。

ウェンウーの悲劇

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で一躍人気キャラとなったウェンウー。トニー・レオンが演じた同キャラクターは、一度はリーとの出逢いによって千年にわたって率いてきた組織としてのテン・リングスを手放す。力の源でもある腕輪の方のテン・リングスも封印するが、ウェンウーの過去の所業に恨みを持った組織が現れ、リーは殺されてしまう。

これを機にテン・リングスを復活させたウェンウーは、後に家出した息子のシャン・チーとシャーリンを連れ戻すが、その目的は“リーを取り戻すこと”だった。しかし、ウェンウーが主張していたのは、リーは故郷のター・ローの村に閉じ込められているという荒唐無稽な内容だった。シャン・チーは、母は死んだと説得を試みるが、ウェンウーは聞く耳を持たない。

ウェンウーが主張の根拠としていたのは、耳元に聞こえてきた“リーの声”だった。ウェンウーはター・ローの村で魔物を封印している門の向こう側にリーが閉じ込められていると信じ込むが、そもそも聞こえいてたリーの声は幻聴だった。魔物の親玉であるドウェラー・イン・ダークネスが自身の封印を解かせようと、テン・リングスによって強大な力を持つウェンウーを惑わせていたのだ。

ウェンウーは「助けて」というリーの声に応じて、封印していた扉を破壊するが、ウェンウーは解放されたドウェラー・イン・ダークネスによってその魂を吸収されてしまう。もちろん門の向こうにリーの姿はなかった。

ワンダとの共通点

MCUファンはこのウェンウーの悲劇と非常によく似た展開を知っている。それは、『ワンダヴィジョン』でワンダが置かれている状況だ。『ワンダヴィジョン』最終話では、ワンダはヘックスを解除してウエストビューの街を元の姿に戻す。これと同時に自身が魔法で生み出したヴィジョンと息子のビリー&トミーは消滅。愛する家族を失ったワンダは一人になり、ウエストビューを後にする。

ポストクレジットシーンでは、ワンダが自然の中に建つ小屋で穏やかな暮らしをしている姿が映し出される。しかし、奥の部屋ではスカーレット・ウィッチの姿をしたもう一人のワンダが「禁断の書」とされるダークホールドを読んでいる。そして、ワンダの耳元で「ママ、助けて」という子ども達の声が響いて『ワンダヴィジョン』は幕を閉じる。

ウェンウーが聞いた声も、ワンダが聞いた声も、共に愛する人からの「助けて」という声だったのだ。また、ウェンウーが最初にリーの声を聞いた時のシチュエーションは、「リサーチを進めていた時」とされていた。ワンダもまたダークホールドを読み進めている時にビリーとトミーの声を聞いているため、二人の状況は似ているのだ。

また、リーはギャングに殺されており、ター・ローの村に閉じ込められているはずがない。そして、ビリーとトミーもワンダと愛情を確かめ合って穏やかに別れたはずであり、ワンダに助けを求める理由がない。もちろん、分岐イベントが起きた世界線で変異体のビリーとトミーが生きている可能性もあると言えばあるが、ウェンウーとワンダの状況はあまりにも酷似している。

そしてリーの姉であるナンは、ドウェラー・イン・ダークネスは、ウェンウー以外にも何人もの人間を惑わしてはター・ローに導き、自身を解放させようとしていたと語っていた。ワンダの声が本当にビリーとトミーのものなのかどうかは疑わしいところである。

『ドクター・ストレンジ』続編であいつが再登場?

『ワンダヴィジョン』は、『ドクター・ストレンジ』(2016) の続編にあたる『ドクター・ストレンジ・イン・マルチバース・オブ・マッドネス』に繋がるとされている。同作のあらすじでは、タイムストーンの研究に取り組むドクター・ストレンジの前に、「敵となった旧友」が現れ、ドクター・ストレンジは「恐ろしい悪を解き放ってしまう」とされている。

『シャン・チー』でウェンウーを惑わせたドウェラー・イン・ダークネスは、原作コミックにおいては「ドクター・ストレンジ」シリーズに登場する。ドウェラー・イン・ダークネスは、当初は『シャン・チー』ではなく『ドクター・ストレンジ・イン・マルチバース・オブ・マッドネス』でのMCU参戦も予想されていた。

また、『シャン・チー』に登場したドウェラー・イン・ダークネスは原作コミック版とはデザインが大きく異なる(本来は人型である)ことから、本体は別の場所で生きているという可能性も残されている。ワンダに語りかけていたのは本体であり、ビリーとトミーの声に惑わされたワンダがマルチバースを開けるようになったドクター・ストレンジを介してドウェラー・イン・ダークネスを解放する、またはワンダが解放したドウェラー・イン・ダークネスをドクター・ストレンジが止めようとする展開も考えられる。

ワンダがマルチバースをつなぐ存在=ネクサス・ビーイングになるということが、MCU世界と闇のユニバースを繋いでしまうということだとしたら……。それはあまりにも悲しいので、違う展開を期待したい。

“山”にも注目

また、『ワンダヴィジョン』ではアガサがワンダの持つ力を“カオス・マジック”だと指摘したが、原作コミックでは、ワンダゴア山を介して異次元空間に封印されている太古の神・クトーンが、このカオスマジックをワンダに授けたことになっている。クトーンは暗黒の魔術を操る存在で、スカーレット・ウィッチはクトーンの将来的な器として選ばれたことで強い魔力を持つことになった。

なお、カオス・マジックの詳細はこちらの記事で解説している。

MCUにおいてはワンダのカオス・マジックがどこからやってきたものなのかは明らかになっていない。だが、“山を介して異次元空間に封印されている”というシチュエーションは、『シャン・チー』のドウェラー・イン・ダークネスの状況に似ていないだろうか。原作では別キャラだったレディ・ロキとシルヴィを掛け合わせて登場させたドラマ『ロキ』のように、MCUではクトーンとドウェラー・イン・ダークネスを掛け合わせる展開も想像できる。

なお、ワンダが住む小屋が建っている山岳地帯の映像には、Disney+での『ワンダヴィジョン』最終話配信から3ヶ月後に謎の微修正が加えられている。その変更は立っている木の本数が増えている程度のものだが、わざわざ配信開始から3ヶ月後に変更が加えられたこから、今後、この場所が重要になる可能性が指摘されている。ワンダは“山”の封印を解くことになるのだろうか。

家族の存在によって幸せを手に入れたウェンウーとワンダ。共に最愛の存在を失い、それを取り戻すために力を手にして突き進む。しかし、ワンダはウェンウーのようにはならないことを願うばかりだ。まずは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でのドクター・ストレンジの活躍を見て、『ドクター・ストレンジ・イン・マルチバース・オブ・マッドネス』の公開を楽しみに待とう。

映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』は2021年9月3日(金)より全国で公開中。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』公式サイト

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劇伴を収録した『シャン・チー/テン・リングスの伝説 オリジナル・スコア』 も発売中。

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ドラマ『ワンダヴィジョン』はDisney+で全話配信中。

Disney+

『ワンダヴィジョン』最終話のネタバレ解説はこちらから。

『シャン・チー』のネタバレレビューはこちらから。

『シャン・チー』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編解説とマルチバース合流までの経緯はこちらから。

ドラマ『ホークアイ』の予告編とその解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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