『ホワット・イフ…?』第8話で再燃する“ウルトロン生存説” MCU本編のセオリーを考察 ネタバレあり | VG+ (バゴプラ)

『ホワット・イフ…?』第8話で再燃する“ウルトロン生存説” MCU本編のセオリーを考察 ネタバレあり

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『ホワット・イフ…?』第8話で意外な展開

MCUのアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』はシーズン1が2021年8月より配信されている。10月6日(水)にはシーズン1のフィナーレを迎え、既に製作が決定しているシーズン2の公開までは一休みに入る。一方で、MCUからは11月には映画『エターナルズ』とドラマ『ホークアイ』が公開され、MCU本編の物語が再び動き出す。

ドラマ『ロキ』ではフェーズ4のメインヴィランが決定的になった一方で、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』では新たな脅威も登場。『エターナルズ』では宇宙の上位存在であるセレスティアルズに焦点が当てられることが予想される。そんな中、『ホワット・イフ…?』シーズン1の第8話では、MCUフェーズ2からの脅威の再来を予感させる演出が見られた。

海外を含め、MCUファンの間では、あるセオリーも再燃している。今回は、ネタバレありでMCUフェーズ2のキャラがMCUフェーズ4以降に舞い戻ってくる可能性について考察してみよう。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『ホワット・イフ…?』第8話の結末までのMCU作品の内容に関するネタバレを含みます。

『ホワット・イフ…?』第8話でウルトロン再登場

アニメ『ホワット・イフ…?』における最大のサプライズは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) でウルトロンが勝利した世界線が描かれたことだろう。そして、何よりもヴィジョンのボディを手に入れ、インフィニティ・ストーンを6つ揃えたウルトロンがマルチユニバース間を移動できる存在になるという展開は衝撃的だった。

映画版ではヴィブラニウムで作った最強の人工ボディをアベンジャーズに奪われてしまい、完全体にはなれなかったウルトロン。『ホワット・イフ…?』第8話の世界線では、映画版のようにワンダの妨害が入らなかったのか、ウルトロンは人工ボディに意識をアップロードすることに成功する。

地球上のすべての生命を破壊したウルトロンは、そこに現れたサノスから5つのインフィニティ・ストーンを奪い同じタイムラインの中の別世界へと侵攻していく。キャプテン・マーベルとの激突の末にすべての惑星を壊滅させたウルトロンだったが、ウォッチャーのウアトゥの存在を察知。混沌が広がる他のユニバースでも生命体を殲滅することを新たな任務とする。

第8話で描かれたウルトロンの動向はここまで。第7話ラストでパーティ・ソーの世界線に自身の兵隊であるウルトロン・セントリーを率いて登場していることから、実際に別ユニバースへの侵攻を進めているらしい。

根強いウルトロン生存説

ウルトロンが勝利した世界ではとんでもないことが起こるということはよく分かった。だがここまでの強さを見せられては、MCU本編においても「ウルトロンはまだ生きている」という可能性が心配になる。実は、ウルトロン生存説は海外でも根強いファンセオリーの一つなのだ。

インターネット上を自由に移動できるウルトロンは、人工ボディを欲したようにそもそもは実体を持たない存在だ。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のラストでは、アベンジャーズに敗北したウルトロンはウルトロン・セントリーの一体に意識を移す。森の中でのヴィジョンとの対話の末、ヴィジョンは襲いかかってきたウルトロンを額のマインド・ストーンから放った光で消し去った。

実体を持たないが故に普通に倒しても意味がないウルトロンに対し、ヴィジョンは、マインド・ストーンの力でウルトロンの意識を完全に消し去ったと考えるのが真っ直ぐな解釈だろう。一方で、『エイジ・オブ・ウルトロン』の序盤でウルトロンに消されたと思われていたJ.A.R.V.I.S.は、記憶を捨て、プログラムの一部をネット空間に避難させて生き延びていた。ウルトロンにも同じことができるはずだ。

また、今回の『ホワット・イフ…?』第8話では、“AIの生命”に関する新しい設定が登場した。

ゾラAI生存に新たなヒント

注目したいのは、『ホワット・イフ…?』で第8話でウルトロンを倒そうとしていたナターシャとクリントのパートである。ナターシャとクリントは、ヒドラの研究者アーニム・ゾラの脳内データが生き残っていることに着目し、シベリアのヒドラ基地へ出向く。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014) では、ニュージャージーのリーハイ基地の地下でゾラの脳内データが生き残っていたが、他にもコピーが存在していたのだ。

まず、自身をAI化する際にコピーを用意しておくというゾラの危機管理は正しい。そして、ゾラにもできたこの行動を、ウルトロンがやっていなかったと言い切れるだろうか。ウルトロンの場合、意識のコピーを用意していなくても、スペアのウルトロン・セントリーをどこかに用意しておくだけで生き延びることができるだろう。

そして、ナターシャとクリントはこのゾラの意識をダウンロードして、ウルトロン・セントリーにアップロードすることで、内部からウルトロンを破壊することを画策する。第8話ではウルトロンが既に別のユニバースに行ってしまっていたため、ゾラはウルトロン本体の意識にアクセスすることができなかった。

だが、もしかして、これが正しいウルトロンの倒し方なのではないだろうか。インターネットを経由してスペアのウルトロン・セントリーに逃れる、という策を取れるウルトロンは、内部にウイルスを注入して破壊する他ないのではないか。もちろん、ヴィジョンのマインド・ストーンがその役割を果たした可能性は高いが、そうでないとすればMCU本編においてウルトロンが生き残っている可能性は残されている。

なお、ゾラが生き残っていたシベリアのヒドラ基地は、MCU本編では『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) でアイアンマンとキャプテン・アメリカ、ウィンター・ソルジャーの戦いの舞台になっている。この時、施設の一部は破壊されているが、完全に吹き飛んだわけではないので、本編における“ゾラAI生存説”も成り立つだろう。

ウルトロン生存説が根強いワケ

話を元に戻そう。ここまで紹介してきたように、ウルトロン生存説は多くのファンセオリーと同じく、あくまで“否定しきれない”というレベルのものだ。それでも、『ホワット・イフ…?』第8話のゾラAIのようなわずかな描写でさえも、熱心なファンにとってはセオリー再燃のきっかけになる。ウルトロン生存説が根強く残っているのには理由があるのだ。

ウルトロンは1968年に原作コミックで初登場したキャラクター。その後、数多くのコミック版「アベンジャーズ」シリーズで人類の脅威としてアベジャーズの前に立ちはだかってきた。「X-MEN」シリーズのウルヴァリンの骨格になっているアダマンチウムという金属を最初にコミックで使用したキャラクターでもあり、マーベルにおけるロボット系ヴィランの代表格でもある。

そんな人気キャラクターでありながら、MCUにおけるウルトロンの扱いは決して良かったとは言えない。『アベンジャーズ』(2012) のメインヴィランだったロキや、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) 『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』(2019) のメインヴィランだったサノスのように、原作コミックでも人気の大物ヴィランはMCUにおいても複数の作品にまたがって登場してきた。だが、ウルトロンについては、『ホワット・イフ…?』が配信されるまで、登場して退場するまでがたった一作品の中で描かれただけだった。

『スパイダーマン:ホーム・カミング』(2017) ではピーター・パーカーがウルトロンの頭部のようなパーツを拾い上げるシーンが見られたが、これは小ネタという扱いだった。原作では大物だったウルトロンのMCUでの扱いの悪さが、復活を待望するファン心理の原動力になっているのだ。

ウルトロンが生き残っていたら…

では、もしウルトロンが本当に生き残っていたとすれば、どのような展開が考えられるだろうか。こちらの記事では、『ホワット・イフ…?』のウルトロンと同じ機能を持つヴィジョンが次のネクサス・ビーイングになる可能性について解説したが、同じくドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) に登場したホワイト・ヴィジョンも同じ性能を持っている。

ホワイト・ヴィジョンのボディは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のヴィジョンの遺体を活用したものだ。もし、MCU本編でウルトロンが生き残っていた場合、ホワイト・ヴィジョンの身体に乗り込むことができるかもしれない。そうなった場合、インフィニティ・ストーンこそ存在していないが、『ホワット・イフ…?』における“ヴィジョンの身体を持ったウルトロン”が誕生する。

そもそも、「『ワンダヴィジョン』で回収されなかった12の疑問」の記事でも指摘したとおり、ホワイト・ヴィジョンは何処かへ飛び去ってしまったままで、どこへ行ったのかは分からない。マーベルはホワイト・ヴィジョンを味方として配置したいのか、脅威として配置したいのか、その方針も不明である。

ホワイト・ヴィジョンは現時点でニュートラルな存在だ。『エイジ・オブ・ウルトロン』のラストでは、ヴィジョンとウルトロンの対話の中でヴィジョンは「人間の欠点を愛する」と宣言した。ホワイト・ヴィジョンにそのあたたかみがなければ、ウルトロンと対立したJ.A.R.V.I.S.とは異なり、ウルトロンの意識と合流することもあり得るかもしれない。

この辺りの考察は、他のヴィランと違いウルトロンがAIであることから、いくらでも柔軟な提案ができてしまう。『ホワット・イフ…?』でゾラのコピーが登場したように、MCU本編においても様々な展開の余地があるだろう。

『ホワット・イフ…?』はファンサービス?

一方で、見方を変えれば、『ホワット・イフ…?』第7話から第9話は根強いファンの声に対するMCUからの応答だとも考えられる。ウルトロンがアベンジャーズに勝利し、あのサノスすらも一撃で倒し、ネクサス・ビーイングにまでなってしまう様は、これまでのウルトロンの扱いを精算してくれるレベルのものだ。『ホワット・イフ…?』シーズン1におけるメインヴィランがウルトロンだったと言ってもいいだろう。

また、完全体になったウルトロンがユニバースを超えて他の世界に干渉できるとすれば、MCU本編にも影響を与えうる。そもそもウルトロンでなくても、どこかの次元でインフィニティ・ストーンを揃えてマルチバース間を移動する存在が登場し得るということを示した意味は大きい。本編におけるウルトロン生存説が事実でなかったとしても、私たちはいつ別ユニバースのウルトロンが現れるかと怯え続けることになるからだ。これはマーベルなりのウルトロンファンへ向けたファンサービスなのかもしれない。

『ホワット・イフ…?』脚本家のA.C.ブラッドリーが、同作を最初から映画に絡ませるつもりで作ってはいないと話していることも重要だ。『ホワット・イフ…?』は『ロキ』や『ドクター・ストレンジ・イン・マルチバース・オブ・マッドネス(原題)』のプロットが完成していない時点で製作がスタートしている。結果、冒頭でも書いた通り、『ホワット・イフ…?』でウルトロンが登場する頃には、フェーズ4に入ってから登場した脅威があまりに多くなっている。

『ワンダヴィジョン』ではワンダ自身が市民の脅威になり、ホワイト・ヴィジョンも野放しの状態だ。アガサも息を潜めている。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、ヴァルことヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌがU.S.エージェントらを率いてチームを結成している様子が描かれた。『ブラック・ウィドウ』でも同様だ。『ロキ』では遂にフェーズ4のメインヴィランとされるカーンが登場。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』では異次元の魔物と共に新生テン・リングスも紹介された『エターナルズ』のセレスティアルズもおり、ここにウルトロンが加わると、流石にアベンジャーズでも対応できないだろう。

『ホワット・イフ…?』におけるウルトロンの“復活”が、生存説を主張してきたファンのガス抜きでしかないのか、それとも伏線になるのか……『ホワット・イフ…?』最終話とフェーズ4の今後の展開に注目しよう。

最終回のメインポスターと注目ポイントはこちらから。

『ホワット・イフ…?』最終話第9話のネタバレ解説はこちらから。

アニメ『ホワット・イフ…?』はDisney+で独占配信中。

『ホワット・イフ…?』(Disney+)

『ホワット・イフ』シーズン1最終話までの全話あらすじ&分岐イベントのまとめはこちらから。

『ホワット・イフ…?』脚本家がファンの間でささやかれる「アイアンマン死にすぎ問題」に応答した内容はこちらから。

第8話のネタバレ解説はこちらから。

『ホワット・イフ…?』から考えるインフィニティ・ストーンに関する新説はこちらから。

 

11月24日(水)から配信を開始するドラマ『ホークアイ』の予告編とその解説&考察はこちらから。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編の解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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